
インタビュー
[インタビュー]猫,潜水艦,そしてキリン。元SIE・吉田修平氏がBICで見た,韓国インディーの現在地。「もう2,3年したらドカンといくかも?」
でもインディーには比較的近づこうとはしてますよね。
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コナミさんにしてもバンナムさんにしても,インディーのファンディングしたりコンテストやったりとかっていうのは,やっぱりインディーのインスピレーションをクリエーター達に与えようとか,そういうところがあるのかなとは思いますね。
4Gamer:
あぁそっちの意味合いなんですか。
吉田氏:
社内のクリエーターとインディークリエーターの交流みたいなものもありますし,そこで刺激を受けたりというのがプラスになると思ってらっしゃるのかな,という。
4Gamer:
直接的な何かを目指しているわけではないんですね。
吉田氏:
私,コナミさんのコンテストの審査委員とか関わってますけど,もうほんとに一銭にもならないことを,自社のお金で何年もやってるわけですよ。昔は銀座の本社でイベントまでやってましたからね。
それは,いい効果があるわけなんです。
4Gamer:
あるんですね。何のためにこれやってるのかなというのは,ちょっと外から見えづらいので。
吉田氏:
そうですよね。
NEOWIZさんもね,この間私も聞いたんですけど,このコンテストは紐付きじゃないんですか,と。「そのコンテストで1000万まで差しあげますみたいなこと言ってますけど,優秀作品はNEOWIZに優先交渉権とかあるんですか?」と聞いたら,そうじゃありませんと。
コンテストをやることで,NEOWIZというブランドイメージというか,そういうものを高めていく効果もあり,それをインディーパブリッシャーとして拡大しようとしているので,そのあたりの効果も狙ってらっしゃるんだとは思いますね。
4Gamer:
日本ではそういう動きがあんまりないですよね。
吉田氏:
そうですね。パブリッシングというレベルまではいってないですしね。コナミさんも,バンナムさんもね。
4Gamer:
韓国だと,NEOWIZ然り,パールアビス然り,KRAFTON然り,かなりの数の大手がやってるんですけど,なんか日本は動き悪いですね。
吉田氏:
確かになんなんでしょうね。
4Gamer:
みんな重要性は分かってるんだと思います。京都にも結構来てますし。
吉田氏:
うん,そうですね。
私はプレイステーションをやっていたので,大手パブリッシャーの1社ですよね。自分はやっぱり当時からインディーゲームとか小さいゲームもすごい好きでした。「風ノ旅ビト」とか。
いいゲームをサポートしてパブリッシュすることができたんですけど,そのときにやっぱりすごく感じたのは,マーケティングのチームって,やはりAAAを扱うときと,小さいタイトルを扱うときで全然違うんですよね。
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4Gamer:
態度がですか?
吉田氏:
態度というか,ノウハウとか,考え方とか,アプローチとか。小さいけど良いゲームを作っても,やはりマーケティング部隊はもっと大きなゲームを一生懸命押すわけですよ。
まぁそれは「プラットフォーマーであること」という理由もあって,ハードを引っ張るようなタイトルがあったら,それにわーっと群がっちゃう。で,ちっちゃいゲームにはあんまり手をかけてくれないんですよね。
4Gamer:
仕方のないことだろうとは思いますが,でも逆に大手だからこそ,小さいものにもちゃんと目を向けてほしいなと思います。
吉田氏:
やっぱりインディーパブリッシャーとして専門でやってる人たちが扱った方が,小さいゲームであってももっと丁寧に扱えるだろうとは思いますよ。その両方のパブリッシュを成功させてる会社はなかなかいないよね,という気はします。
4Gamer:
金銭感覚も合わないでしょうしね,大手だと。
吉田氏:
それこそ,テイクツー・インタラクティブがプライベート・ディビジョンを売却したじゃないですか。それも,もしかしたら同じような考え方かもしれないですね。※
あそこは「グランド・セフト・オート」みたいなデカいタイトルのパブリッシュもしながら,プライベート・ディビジョンでインディーゲームのパブリッシュもしてたんですけど,そこはもうあっさりやめましたよね。
※Annapurna Interactiveは2024年9月にスタッフが総辞職したが,メンバーを引き継いで今年1月に新会社が設立されている。その会社が,Take-Two InteractiveのインディレーベルだったPrivate Divisionを引き継いだとされている(Bloomberg)
4Gamer:
うーん……インディー専門のパブリッシャは結構あるんですけどね。
吉田氏:
今すごい増えてますよね。しかもそういう会社さんも,最近では他業種から入ってくることも多くて,集英社さんとか講談社さんとか,松竹さん,TBSさん,東急不動産さんにパルコさん……。
4Gamer:
フジテレビも番組作ってましたしね。
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ゲーム開発・販売バラエティ番組「電脳遊戯最高会議」,FODで本日配信開始。約1か月での開発に挑んだ中道慶謙さん,けんきさんにインタビュー

ゲーム開発の舞台裏を追う番組「電脳遊戯最高会議」の配信が本日(2025年7月28日),動画配信サービス「FOD」でスタートする。ここから誕生したゲーム2本の概要と,その開発者である中道慶謙さん,けんきさんへのインタビューをお届けしよう。
吉田氏:
そうですね。4Gamerもパブリッシングを始めてもいいんじゃないですか,そのうち。
4Gamer:
いやあ……でも他国のメディアなんかだと結構やってますよね。知り合いの海外メディアも年間数十本とか出してて,結構すごいです。
吉田氏:
まぁ海外のゲームメディアも,すごくビジネスが苦しくなりましたしね。
4Gamer:
気持ちはすごく分かります……。
まぁでもパブリッシャーの話なんですが,集英社はまぁなんか分かります。講談社も理解できる。松竹はウチの親会社関連ですけど,そこも分かります。皆さん“コンテンツ屋さん”ですからね。コンテンツをビジネスにしていれば,まぁ10個に1個ぐらいしか当たらないことも分かってると思うんですよね肌感覚で。
しかし東急不動産とかパルコとか大丈夫なのかなぁ……? ってちょっと思います。内部の話を聞いたことはないですが。
吉田氏:
そうですよね。他業種で,クリエイティブ系やられてないところは,ね。
4Gamer:
数字をKPIにしちゃうと,どうしても,ね。腹くくれてるんですかね。
吉田氏:
数字でみるしかないから,やっぱり運がいいかどうかだと思いますね最後は。だから,例えば松竹さんなんかはいいスタートを切ってますよね。
4Gamer:
若干身内風味なので(注:松竹の子会社は4Gamerの株主なのだ)褒めづらいんですが,いやあ松竹はすごくうまくやってると思います。タイトル選定も素晴らしいですし。
吉田氏:
そう,すごい見る目もあるし,運も良かったと思うんです。そしてそれは,親会社にしてみればサポート続ける理由になりますからね。
それこそ講談社も「違う冬のぼくら」が出てなければどうなっていたか,集英社も「都市伝説解体センター」が出てなければどうなっていたか,というのはあるみたいですし。
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4Gamer:
やはり最後は運ですか。まぁ運も大事ですけど。
吉田氏:
集英社ゲームズは,元ジャパンスタジオ(SIEジャパンスタジオ)のメンバーで,みんな私の部下だった人たちなので,応援してるんですよね個人的にも。
でもやっぱり最初はヒットが出なかったので,大丈夫かなって心配してて。でも本人たちが一番心配ですよねそんなの。だから集英社の偉い人と話す機会があった時に,とにかく「ヒットはすぐに出ないかもしれないので辛抱してください」と言ったら,「いや,それは分かってますよ」と言ってましたから,良かったなぁと。
4Gamer:
コンテンツを扱ってる会社ですから,そこは分かってくれそうですね。
吉田氏:
そうそう。逆に現場がすごくプレッシャーを感じてるみたいだけど,「そんなにプレッシャーを感じないで,のびのびやってよ」って言われてるようなので,そういうのいいなと思いました。“都市伝説”が出る前の話ですけど。
4Gamer:
理解している人が上だといいですね。
吉田氏:
なのでまぁインディーのデベロッパーにしてみれば,マーベラスさんみたいにサポートしてくれる会社が……。
4Gamer:
増えてくれば,ですね。
吉田氏:
そう,増えていくのはすごくいいことだし,パルコさんとかは違った視点で入ってくるので,メディアミックスされたりとか,マーチャンダイズされたりとか,イベントがあったりとか,すごく可能性が広がってると思いますよ。
4Gamer:
全体感としてすごく良い方向だとは思います。
吉田氏:
メディア観点で,ページビューなんかはどうなんですか。インディーゲームは。
4Gamer:
いいですね。真面目な話……ってこれ言っていいのかどうか分からないんですが,大手メーカーの商業ゲームよりはるかにたくさん読まれることも多いですね。
吉田氏:
素晴らしいですね。ほんとに良かった。
4Gamer:
記事ランキングの上位のほとんどがインディー,とか結構ありますしね。つまりまぁ……これも言っていいのか分からないんですが,ユーザーさんも本当のところは大手メーカーの作品にちょっと飽きてるということなのでは,と。
吉田氏:
もうシリーズものとかばかりなので,なんか新しいものほしいですしね。
4Gamer:
そんな感じかなぁ,と。まぁウチだけかもしれませんけど。
吉田氏:
まぁでもよかった。……いや,よかったんですかね。
4Gamer:
うーん,よかったんですかねえ……?
吉田氏:
私はインディーゲームが好きなので,日本でも盛り上がってほしいと思ってるし,そういう意味では良かったです(笑)。
4Gamer:
ユーザーさんも本当に面白そうなものには敏感ですしね。
吉田氏:
YouTubeでも,インディーゲームを取り扱うと人気があったりしますよね。そういう人が取り扱ったゲームの記事とかを調べよう,みたいな流れがあるのかもしれないですね。
あと大手のゲームは,誰がプレイしてもほとんど同じみたいところがあるけど,インディーゲームはそもそも作品にクリエイターの個性が出ますしね。
4Gamer:
そういうのがいい方に出てるんでしょうね。
昨今の日本のゲーム業界は,ちょっと踊り場に差し掛かり気味に感じていて。スマホゲーはまぁちょっと勝てないし。
吉田氏:
スマホゲーは,なんかきつそうですよね。
4Gamer:
中韓とタメ張って勝負するのは,なかなか至難の業だと思います。
吉田氏:
そうですよねえ。
4Gamer:
コンソールも,AAAは厳しくなってきたし。
吉田氏:
確かにそうですね。まぁ,カプコンさんは良い感じですけど。
4Gamer:
カプコンはすごいです。任天堂さんとかKONAMIさん※とか含め,“西の会社”が強いんですよねー。
※KONAMIは大阪で創業されている
吉田氏:
いやあ私は,セガを応援してるんですよね。社長になった内海州史さんは,ソニーで同期入社だし。
4Gamer:
あ,そうなんですね。
吉田氏:
そうなんです。同じ部署に配属されて,しかも私がプレイステーションの立ち上げで久夛良木さんのチームに入ったとき,彼はアメリカに行って,SCEアメリカの立ち上げをやってるんです。
もう,すごい長い付き合いで,ほとんど腐れ縁ですね。彼が水口さんとキューエンタテインメント作った時に,うちがパブリッシャーとしてゲーム作ってもらったこともあったりして。
“プレステの父”こと久夛良木健氏が,30周年を迎えた初代PSの開発秘話を語る。TGS 2024基調講演「ゲームで世界に先駆けろ。」視聴レポート[TGS2024]
![“プレステの父”こと久夛良木健氏が,30周年を迎えた初代PSの開発秘話を語る。TGS 2024基調講演「ゲームで世界に先駆けろ。」視聴レポート[TGS2024]](/games/990/G999027/20240926039/TN/014.jpg)
本日(2024年9月26日),日本最大のゲームイベント「東京ゲームショウ2024」が開幕し,基調講演「ゲームで世界に先駆けろ。」が実施された。今回の基調講演にはPlayStationの生みの親として知られる久夛良木健氏が登壇し,初代PSから現在に至るまでの開発秘話が語られた。
4Gamer:
そんなに長いお付き合いだとは知らなかったです。
吉田氏:
内海君がセガ行って辞めて,また戻ってきて,今いい感じで頑張ってるので,ぜひとも成功してほしいなと。
4Gamer:
内海さんって,ホントにどこにでもいますよね。私はWeb3のイベントでよくお見かけしますが。
吉田氏:
そう,彼のいいところは,パーティーとかやると来るんですよね。ふらっと。
4Gamer:
ふらっと(笑)。でも確かにフットワーク軽いイメージあります。
吉田氏:
人によっては,偉い人ってアントラージュみたいなメンバー引き連れてウロウロしてるじゃないですか。彼は1人か,せいぜい2人くらいで来るんですよね。ふらっと(笑)。そこはすごくいいですね。
4Gamer:
セガにもインディーがんばるように言ってください!
まぁでも良かったです。BICは吉田さんの印象も比較的いいようでしたし。
吉田氏:
いやよかったですよ。あとはもっと集客※があればねえ……。あ,でもさっき話を始めたときよりは,ちょっと増えたかな?
※運営委員会の発表によると,過去最多の来場者数を記録したとのこと。昨年より密度が薄く感じたのは,B2BをなくしてB2Cの公開日を1日増やしたことによる分散では……という意見もあるようだ。
4Gamer:
そうかも……? 僕もこれちょっと疑問なので気にしておきます。
ではプレイでお忙しいのにお時間ありがとうございました。来年もこの場所でお会いできることを期待しています!
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―――2025年8月16日収録
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