
インタビュー
「バイオハザード レクイエム」開発者インタビュー。原点は“回帰”せずともそこにある――ラクーン事件のその後を描くシリーズ最新作[gamescom]
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「gamescom award 2025」では「Best Visuals」や「Best Audio」など4冠を達成し,その期待の高さが窺える(関連記事)。そんなバイオハザードシリーズ待望の最新作では,シリーズの“核”であるラクーンシティと深く関わる物語が描かれるという。
果たしてそれは,どのような考えで制作されているのか。そして,初めてのプレイヤーでも楽しめるのか。gamescom 2025の会場でプロデューサーの熊澤雅登氏,ディレクターの中西晃史氏に話を聞いた。
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「バイオハザード レクイエム」公式サイト
[プレイレポ]「バイオハザード レクイエム」で描かれる洋館の恐怖という原点。閉鎖空間で逃げ回ることしかできない無力感を体験
![[プレイレポ]「バイオハザード レクイエム」で描かれる洋館の恐怖という原点。閉鎖空間で逃げ回ることしかできない無力感を体験](/games/917/G091773/20250820063/TN/001.jpg)
カプコンがドイツのゲームイベント「gamescom 2025」に出展している「バイオハザード レクイエム」のプレイレポートをお届けする。試遊内容は,6月にアメリカで開催されたイベント「Summer Game Fest: Play Days」のものと同じだったが,今回はムービーを撮影できたので,合わせて掲載する。
4Gamer:
大きな話題となったSummer Game Festでの発表から2か月ぐらい経ち,gamescomでも新トレイラーが話題となりました。
あらためてこれまでの反響についてお聞きできればと思います。
熊澤雅登氏:
ラクーンシティが舞台になる,それに関わる物語が新たに描かれるというファンの皆さんの反響は正直ちょっと想像以上でしたね。
その期待感はしっかり届いていますし,よりよいものに仕上げていかなければと開発へのさらなるモチベーションになっています。
中西晃史氏:
シリーズ史上一番ではないかという盛り上がりを感じていて,身が引き締まる思いですね。
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4Gamer:
前作「バイオハザード ヴィレッジ」の発表で,VILLAGEという文字からのVIIIを連想させる演出もかなり盛り上がったと思いますが,シリーズ史上一番と感じるほどですか。
中西氏:
そうですね。あ,タイトルですが,今回はナンバリング的に9作目になるから「レク(9)イエム」というわけではないと,ここで伝えておきたいと思います(笑)。
熊澤氏:
本当に偶然というか,“合ってしまった”んですよね。英語タイトルも「Requiem」で,qと9がという(笑)。
4Gamer:
まさに気になっていたのが「レク(9)イエムって意味?」……という話ではなく,このサブタイトルに込められた意味でして。
中西氏:
「gamescom 2025 Opening Night Live」で主人公・グレース・アッシュクロフトのバックグラウンドストーリーを公開しましたが,あの映像にある通りグレースのお母さんはラクーン事件の生存者であるアリッサ・アッシュクロフトなんですね。
4Gamer:
「バイオハザード アウトブレイク」の主要人物の1人ですね。
Summer Game Festの発表から「グレースってもしかして……」と話題になっていましたが,ついに公式にそれが明かされたと。
中西氏:
はい。ご存知の通りアリッサはジャーナリストで,あれからも事件を追っていたようだと。そしてあのムービーのような最後を迎えてしまいます。
4Gamer:
何かを知ってしまったのか。最後まではっきりと描かれていませんが,どうやら……という終わり方でした。
そしてこれはそうとうにグレースにとってトラウマになりそうな出来事だなと。
中西氏:
ええ。グレースは「なぜ母はこのような目にあったのか」というところから,今回の物語へとつながっていくわけですが,このようにラクーンシティの出来事は,そのあとも多くの人に何かしらの暗い影を残しているわけですね。
4Gamer:
それはグレースのように,直接関わっていない家族や周囲の人にも,と。
中西氏:
そうですね。本作は主人公・グレースの物語でもあり,ラクーンシティに関係のあった人たちの事件後の物語を描きたいという思いもありました。
アリッサやその死をきっかけに,娘であるグレースが事件の悲劇や自身の無力感と向き合いながら歩む。その彼女の心の旅路を描きながら,ラクーンシティの事件で被害にあった人やそれに関わる人たちについても描く。それを象徴するという意味で“Requiem”とつけたのが理由の一つです。
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4Gamer:
ラクーンシティのその後みたいなところを描きたいというのは以前からあったのでしょうか。
中西氏:
「あの後,あれに関わった人やその周りってどうなってるんやろなあ」みたいなのは以前からあって,でしっかりとやってみたいなとは思っていました。
でもなんていうか,ちょっと変な例えですけど,炊飯器にご飯炊いて忘れて,1週間後に「あれ開けたらどうなってるんやろ……」みたいな感覚があって。そういうことありません? 意味分かります?
4Gamer:
そういうことはあまりないですけど,意味は分かります(笑)。開けるの恐いなあ……開けてしまっていいのかなあという。
熊澤氏:
中西の例えは一旦置いておくとして(笑),「バイオハザード7」と「ヴィレッジ」でイーサン・ウィンターズの物語がひとつ落ち着いたので,いまならラクーンシティの物語に向き合うのにいいタイミングではないかというのもありました。
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中西氏:
これまでバイオハザードシリーズでは,いろいろな作品で,いろいろな時間軸で,いろいろなキャラクターが動いています。
もちろん今後も,さらにその先の話なんかも描いていくことにもなるかもしれないわけですが,そのように“進めていく”という意味でも,ラクーンシティの話をここでしっかりやっておきたいなと。
4Gamer:
トレイラーやデモプレイで公開されている,グレースが巨大な女性のようなクリーチャーに追われるシーンですが,グレースがかなり恐がっているところが強調されていますよね。
どこから来るか分からない怪異に怯えながらも,必要そうなものを見つけては使い,建物からの脱出を目指す。このシーンをまず公開したのはどういう考えがあってのことだったのですか?
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中西氏:
1人の主人公を立てて,その物語を軸としたストーリーテリングなゲームになると。そこでやはり,プレイヤーにはグレースと同じ気持ち,気がつけばなんだか分からない場所にいる恐怖を感じてほしいんですね。
あのシチュエーションでは,ほんと何もできなくてパニック状態です。でも彼女はFBI分析官で,本来は高い集中力と洞察力があって武器の取り扱いもできるわけですね。
物語が進んでいくと,元からあるその力を発揮できるようになる。そしてゲームとしてはこれまでのシリーズ同様,プレイを進めると戦う手段が増えていくわけです。
ここも物語の体験とゲームプレイがシンクロしているというか,プレイヤーの没入感にもつながると考えていて。
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4Gamer:
最初は怯えてよろめいたりもするけど,置かれた状況に向き合い強くなっていくと。
熊澤氏:
ええ。今回の物語はグレースの成長というのも描きたいもののひとつにあります。
プレイヤーはそれを体験しながら,自分自身も操作が上手くなっていくような,そういったゲームプレイの部分ともつながっていけばと考えています。
4Gamer:
あの洋館ですが,これぞバイオというか,何度見ても本当に恐くて。グレースはどんな人かを見せるとともに,バイオハザードとはどういうゲームかを見せているのかなと感じました。
中西氏:
閉鎖空間ってやっぱ恐いんですよね。
突き当たりに来たときとか部屋に入るときとかはもちろん,直線の廊下すら恐い。それを感じていただくために,カメラでの見え方とかオブジェクトの見せ方とかはかなり考えてやっているシーンです。
まだ言えないことは多いですが,ほかのロケーションやシチュエーションも同じく,恐怖の描き方はいろいろと考えています。
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4Gamer:
恐怖といえば,あの大きな女性のようなクリーチャーっていったい何者なんですか?
中西氏:
うーん,それは秘密です(笑)。
恐怖の存在という話でデザインのコンセプトを伝えると,「見た瞬間にヤバいと分かる」ことは考えました。
まったくのクリーチャーではなく,女性的なシルエットをベースに,人間っぽさを残しながら異様な大きさにすることで,恐怖の中に違和感や不安みたいなものが出ると思っていて。
4Gamer:
ああ,分かります。「かつて人間だったかもしれない」と思えることで,クリーチャーの背景にあるものが想像できるような。たとえば光を避ける挙動であれば,「こういう姿になる前にいったい何があったんだろう」みたいに。
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中西氏:
やはり怪物にしちゃうとそれはバイオらしさがなくなるんで。
でも実は,元々はあんなに大きくなかったんですよ(笑)。でも追いかけてくるのに恐さがほしいなと。それで「人間っぽさ」を残すことを意識しながら調整しましたね。
4Gamer:
これは私たちが何かと都合よく使いがちなのですが……ラクーン事件に向き合うとか恐さの表現とかの話を聞くと「原点回帰」って言葉が浮かぶのですが,そうではなく,これまでのシリーズに向き合いながら新しいものをという感じなんですね。
熊澤氏:
そうですね。私たちも原点回帰とは一度も言っていなくて。
中西氏:
それでいうと,これまでの作品でも言ってないんですよね。
バイオハザードシリーズで共通している“恐怖”のコアな部分を突き詰めたら,自然とそう見えるんだと思うんです。
だからメディアの皆さんやファンの皆さんが「原点回帰だ」というのは分からないとか間違っているとかではなく,作品によっては「そう言ってもらえるだろうな」ということもあるんですね。本作でも新しさとルーツにあるものを両立させるのが大事だと思ってます。
熊澤氏:
「バイオハザードシリーズ,原点回帰ばっかりしてる!」みたいに見えるかもしれないですが(笑),それはつまり根底にあるものは変わらなくて,それが作品によってどう表側に見えてくるかみたいなところはありますよね。
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4Gamer:
なるほど。回帰しなくても,軸にあるものはずっと変わらないという。
そこで気になるのが……これ,初めてのプレイヤーでも楽しめますか? というところです。
シリーズを知っている人間はどうしても「あのラクーンシティの出来事が!」と盛り上がりますが,それは逆に知らない人にとっては「知らなくて楽しめるのかな……」と不安になる要素でもあったりするのかなと思いまして。
中西氏:
それは大丈夫です。過去作を知らなくても100パーセント楽しめます。
というのも,グレース自身がまずアンブレラ社やラクーン事件のことをあまり知らなくて,母のことがあって調べていくわけですね。
つまり一緒にかつてあった出来事を追うことができるんです。ゲームプレイも,たとえばハーブを拾って「これなんだろう?」みたいなとこから始まって,自然に理解できるんです。
熊澤氏:
グレースのセリフも行動も「初めてのバイオ」感があるものになっていると思います。
そういう意味では,初めての人にも,久しぶりに戻ってくる人にもおすすめできる,エントリーポイントのようなゲームになると思います。
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4Gamer:
なるほど。ではむしろ,本作でラクーン事件を知り,過去作に戻ってそれを追うという楽しみ方もできそうですね。
新しい要素で一つ聞きたかったのが,一人称視点が加わったことです。あれは例のシーンのためだけではなく,通常の視点として切り替えができるんですよね。
中西氏:
はい。視点切り替えでゲームプレイもだいぶ印象が変わると思います。
視点が違うとナイフひとつの挙動も変わるので,そこはかなり突き詰めて作っています。探索だけでなく戦闘もいろいろな視点で楽しんでほしいですね。
4Gamer:
いい時間になりました。最後に読者へのメッセージをお願いします。
熊澤氏:
最初にお話ししたことになりますが,発表から本当に大きな期待をいただいていて,チームの力になっています。ありがとうございますと伝えたいですね。
中西氏:
これだけの期待を裏切るわけには行かないので,必ず期待に応えるクオリティで届けたいと。初めての人も久しぶりの人も,ぜひ楽しみにしていてください。
4Gamer:
ありがとうございました!
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