
インタビュー
空港からゲームの物語へ。パルコの「PARCO GAMES」がTGSで示した,ゲームブランド/レーベルとしての出発点[TGS2025]
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ファッション,エンターテインメント,アートなど多岐にわたる領域で日本のポップカルチャーを発信してきた同社が,いよいよ本格的にゲームパブリッシング事業へ参入する。
これまでもインディーゲームイベントやPOPUPイベント,メディアプロモーションなど,さまざまな形でゲーム事業に関わってきたパルコ。「クリエイターイズムから生み出され,ユーザーの心を動かす『物語』を感じられる作品」をテーマの一つとして掲げ,日本のみならず全世界に向けて作品を発信していくという。
そんな「PARCO GAMES」が東京ゲームショウ2025のインディーゲームエリアに初出展。ブランド発足直後の出展ということで注目を集めた同ブースと「PARCO GAMES」について,会期最終日にパルコ ゲーム事業開発部 部長の西澤優一氏に話を聞いた。
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「PARCO GAMES(パルコゲームズ)」公式サイト
[インタビュー]パルコは,ゲームのために,何ができるか。PARCO GAMESのキーパーソンたちに聞く,ゲーム部門立ち上げの思いとは
![[インタビュー]パルコは,ゲームのために,何ができるか。PARCO GAMESのキーパーソンたちに聞く,ゲーム部門立ち上げの思いとは](/games/713/G071314/20250814024/TN/014.jpg)
パルコは2025年8月19日,インディーゲームのパブリッシングを行う新事業「PARCO GAMES」の立ち上げを発表した。今回4Gamerは,新事業の立ち上げに際して,ゲーム事業開発部のキーパーソンにインタビューを実施。今ゲーム事業に参入する狙いや思い,理念などを聞いた。
空港をテーマに,ゲームの物語への旅立ちや世界とのつながりをイメージしたブース展開
4Gamer:
2025年8月に発表されてすぐの東京ゲームショウ初出展ということで注目もあったかと思いますが,4日間を振り返ってみていかがでしょう。
西澤優一氏:
そうですね。まずパッと思ったのはふたつあって,「あっという間だったな」という感覚と「駆け抜けたな」という実感が残っています。
最初は4日間って長いかなと思っていたんですけど,始まってみると本当に多くのお客さんに来ていただいて。正直予想以上でしたし,ゲームもすごくプレイしていただけました。
これまでもいろいろな形でゲームに関するイベントには関わってきましたが,自分たちがゲームパブリッシャとして出展するのは当然初めてのことです。しかもそれが日本最大のゲームショウであるTGSというところで,楽しみではありましたが同時にやはり不安もありました。
ゲームファンの皆さんの生の声を聴けるというシチュエーションにも緊張がありましたが,結果的にすごく刺激をいただけた,いい4日間になったなと思っています。
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4Gamer:
これは連日のことなんですが,ブースの近くを通ると歩いている人たちから「えっ,パルコ?」「なんでパルコが?」って声がよく聞こえてきて。やっぱりブランドとしての名前の強さもあるなと感じました。
西澤優一氏:
ありがとうございます。4日間通して実際それは本当にありましたね。「あのパルコ?」って声をかけていただいて「はい,そのパルコです」と(笑)。
それで「パルコが立ち上げたゲーム事業です」ってお話しすると,すごく親近感を持って中に入っていただけるということがたくさんあったので,本当にありがたいなと思っています。
4Gamer:
ブースもすごくオシャレで,コンセプトもしっかりとあるのが一目で伝わるところも,なんというか「パルコだな」と思いました。
西澤優一氏:
そう言っていただけるとうれしいです。
コンセプトはエアポート(空港)で,それがブース全体のモチーフになっています。なぜそこに着想したかというと,僕たちの扱うゲームのそれぞれ持つ世界観に飛び込んでいただきたい,旅立ってほしいという思いがまずありました。
あとは,日本だけではなく海外の方々ともコミュニケーションをしたいというのもありますね。
その思いを抱えてTGSに臨むと決めたとき,この考えをシンボリックに落とし込むなら「空港」だろうと。そこからいろんな旅に出る,そういうことを表現したいなと思ってこの形にしました。
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4Gamer:
設営はどうでしたか? いろいろなイベント企画や店内の装飾などで,そのあたりはノウハウがあると思いますし,実際に初めての出展とは思えないくらいコンセプトを見事に表現したブースになっていて。このあたりはやっぱりおてのものみたいなところがあるのかなあと。
西澤優一氏:
いえいえそんなことはなく,すごく大変でしたよ(笑)。
まず,最初はコマ数のリアリティが全然ピンと来なくて。パルコの店舗のフロアなら感覚的に分かるんですけど,幕張メッセの大ホールの中だと広さの感覚が全然違うわけです。しかもこんなに高さを出せる環境って,パルコの店舗にはあんまりないんですよ。
そういう会場だからこそ「立体的にどう見せるか」はかなり重要なんですが,やはり難しかったですね。
通路を歩くお客さんが一瞬で何を感じるか,色はどうするか……そういうことを考えながら「じゃあ真っ白にしてみよう」と。空港のテーマにいろんな思いを盛り込んでいきました。
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4Gamer:
白地に黒文字でっていうのが,シンプルだからこそすごく目立ってました。
西澤優一氏:
ありがとうございます。
しっかりとコンセプトを持ってパブリッシャとしてのアピールをすることは大事ですが,やはり主役はゲームですから。僕らの色をあえて付けすぎず,真っ白なキャンバスに3タイトルを置く。そんな空間にしたかったというのも白を基調とした理由になっています。
今回は3つのタイトルを出展しましたが,それぞれのタイトルにはそれぞれの色があるわけですね。足を運んでいただいた皆さんにそれが届けられていればうれしいです。
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4Gamer:
近年,出版や芸能などゲームメーカーとは異なるジャンルからゲームパブリッシングに参入し,それぞれの得意とする部分で存在感を示しています。
それでいうとファッション,エンタメ,アートなどさまざまなカルチャー領域での事業展開を行うパルコは,お客さんからもデベロッパからもいろいろ期待されるのではないかなと思います。
西澤優一氏:
確かに大きな期待をいただけているのは感じていて,それに対するプレッシャーみたいなものはあります。ですがそれよりも,期待していただけることがなによりありがたいことだと感じています。
皆さんの期待を,驚きの方法で飛び越える。そういうことを続けていきたいと思います。
4Gamer:
最初の大きなイベントであるTGSを終え,次はどのような展開を考えているのでしょう。
西澤優一氏:
直近では大阪の梅田で行われる「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT」にも出展します。
その先はまだこれからですが,「PARCO GAMES」がアピールしたい場所やパブリッシングタイトルに合うところがあれば積極的に出していきたいですね。
お客さんはもちろん,クリエイターや業界の方々と双方向でやり取りできるのがイベントの醍醐味だと分かったので,東京だけじゃなく関西,そして海外にも広げていきたいと思っています。
あとは何より,今年(2025年)の冬にリリースを予定している「南極計画」「Constance」「The Berlin Apartment」というパブリッシングタイトルですね。発売も近いですし,いろいろな形でゲームファンに作品の魅力を届けていきたいと思います。
4Gamer:
想像を超える展開を期待しています。本日はありがとうございました。
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「PARCO GAMES」がリリースを予定している3つのパブリッシングタイトル
最後にあらためて,「PARCO GAMES」の最初のパブリッシングタイトル3つを紹介しよう。
まずは「Trüberbrook」で知られるドイツのBlue Backpack(btf Gamesから社名を変更)が手がける「the Berlin Apartment」と「Constance」の2タイトル。前者はベルリンのアパートの一室を舞台に,その出来事を通じて街の1世紀に及ぶ歴史を描くアドベンチャーゲームだ。
後者の「Constance」は,心の病を抱える少女のカラフルながらも退廃的な心象世界を旅する2D探索アクションである。
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the Berlin Apartment |
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Constance |
個人的な話になるが,このBlue Backpackの2タイトルには以前から惹かれるものがあり,実は筆者は昨年のTGS 2024で取材していた。そのふたつともをパルコがパブリッシングを担当すると聞いたときは,「さすが,目のつけどころがパルコだよっ!」と思ったと同時に「自分のセンスもなかなか悪くないな,ふふん」という気持ちになった。
そのときの取材記事が以下の2つ。ゲームの雰囲気を知りたい人はぜひ読んでほしい。
一つのアパートが舞台の,ミニマムだけど壮大なベルリンの物語。人を通して街の歴史を描く「The Berlin Apartment」[TGS2024]
![一つのアパートが舞台の,ミニマムだけど壮大なベルリンの物語。人を通して街の歴史を描く「The Berlin Apartment」[TGS2024]](/games/824/G082493/20240928034/TN/011.jpg)
ミニチュアを使ったアートスタイルが特徴的なSFアドベンチャー「Trüberbrook」で知られるbtfの新作は,これまたミニマムに,しかし壮大な物語を描くゲームだった。ドイツ・ベルリンにある一つのアパートを舞台に,かつての住人を通して街の歴史を描くアドベンチャーゲーム「The Berlin Apartment」を紹介しよう。
心のモヤモヤを払うように,自身の内面世界で絵筆を振るう。ラン&ジャンプなテンポ感も特徴の2D探索アクション「Constance」[TGS2024]
![心のモヤモヤを払うように,自身の内面世界で絵筆を振るう。ラン&ジャンプなテンポ感も特徴の2D探索アクション「Constance」[TGS2024]](/games/806/G080656/20240930024/TN/010.jpg)
ドイツのデベロッパ・btf Gamesの新作「Constance」は,絵筆を使ってさまざまな力を使う少女が主人公の探索アクションだ。東京ゲームショウ2024のブースで,ゲームを試遊しながらディレクターのSebastian Drews氏に話を聞いた。やり応えと爽快さのあるアクションゲームだが,btfらしいバックストーリーがあるようだ。
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- 編集部:Junpoco
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そしてもうひとつが「南極計画」。iGi(indie Game incubator)の一期生である日本のゲーム開発チーム・RexLaboが手掛けるサバイバルアドベンチャーだ。
ウイルスの蔓延や異常気象で荒廃した世界を背景に,人類最後の望みを託された子どもが南極点を目指す物語が描かれる。
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ということで,どの作品もプレイヤーに切実な物語を突きつけてくる,人間の内的なテーマに真正面から向き合うかのような強いナラティブ性を感じさせるタイトルばかりだ。
「クリエイターイズムから生み出され,ユーザーの心を動かす『物語』を感じられる作品」というPARCO GAMESのテーマに,どれもぴたりと重なっていると感じる。
さまざまなカルチャーの文脈を背負うパルコだからこそ選べるゲームたち,そして“物語”を届けようとする姿勢に自然と信頼を感じる。これからどんな展開を見せてくれるのか,とても楽しみだ。
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「PARCO GAMES(パルコゲームズ)」公式サイト
- 関連タイトル:
The Berlin Apartment
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The Berlin Apartment is developed by btf Games. Copyright(C)2022-2024 btf GmbH.
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