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MMORPGの大きな魅力は集団戦での活躍だ。「活躍すれば味方に認められ,敵に存在感を示せる。成長とはステータスを上げることだけでなく,集団戦で“認められる”過程」とイ氏は語る。
活躍するには相手より強くなる必要があり,スペック競争と成長欲が高まる。これを最も煽るのが無限成長システムだ。上限も速度制限もなければ競争は終わらず,没入を持続させる強力な仕組みになる。だが勝者はより良い報酬(コンテンツ・狩り場・成長資源)を得,消費効率も上がるため,強者がさらに報酬を得て成長格差は時間とともに広がる。序盤の小さな差が,やがて戦局を変えるほどの差になる。
高スペックプレイヤー自体は問題ではない(集中砲火に耐え,敵陣を崩し,戦況を変える“ハイライト”を作る)。問題は格差が過度に大きくなったときだ。本来リスクを伴うはずの「突っ込み」が最適解として固定化し,高スペックが躊躇なく敵陣に突っ込み,低スペックは止められず,前線が消える。集団全体にとって最も重要なのは「突っ込む前に皆が躊躇すること」だ。
格差はあってよいが,強者も突撃を二度考え,弱者にも意味があり,前線が保たれて睨み合いになり,誰もが突っ込むコストを天秤にかける――それが集団戦を持続させる。
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既存の対策は大きく3つあったが,いずれも限界があった。(1)火力ブースト(攻撃を伸ばしやすく防御を伸ばしにくくして戦場の火力を上げる)→ TTKが短くなりすぎて反応できない。(2)成長ブースト(下位層の成長を速め格差を縮める)→ 時間が経つと再び格差が開く。(3)高スペックの力の分散(報酬を複数同時に与え力を分散)→ 集団の共有理想を損ない,格差が大きすぎると意味を失う。「そこで,格差を縮めようとするのではなく,格差があっても戦場が安定するようにする,と発想を転換した」。
採ったのは「献身したとき・多数のとき・危機のときに強くなる」という3アプローチだ。実現には新スキルの追加と既存スキルの強化が必要で,季節成長構造である「継承(Succession)システム」を導入。これで提供する集団戦装備スキル(ユーティリティスキル)は取得障壁が非常に低く,全プレイヤーが手軽に使える設計にした。
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第1のアプローチは献身したときに強くなること。献身は「クラス自体が防御・サポート役のとき」と「スキルレベルでの献身(使用中に移動や行動を制限するスキル)」の2種だ。鍵は「攻撃機会を捨てたら明確に報われること」。
Wars of Prasiaでは各クラスが3スタンス(戦闘中に3つのクラスを切り替えるイメージ)で構成される。防御・サポートのスタンスに強力な生存力を与え,割合ダメージ減少(相手の攻撃力が高いほど価値が増す――10%減少の場合,攻撃力100なら減少量10,1000なら100)やダメージ抵抗ステータスを採用。さらに最小ダメージや不死効果といった生存ツールで,本当に危険なときに確実に生き残れるようにした。「集団戦では少し長く生き残るだけで味方の支援を受けられ,戦況を変え得る」。
献身スキル自体の追加報酬も用意した。新クラス「ソーラーテンプラー」では,攻撃スキルではなく防御・サポートスキルを選んだプレイヤーにパッシブ効果を付与。行動を制限するスキルにはさらに強い報酬を与えた(左のスキルは他スキルを使えない代わりに強力なダメージ減を付与。右のスキルは範囲内の多数に不死効果を与え,移動制限と組み合わせることで前線形成の要となる)。
ただし「効果が強すぎるとそのクラスの選択割合が増える。攻撃的な“殺戮”スタンスに切り替えられるため高スペックも切り替えてしまう」ので慎重に調整したという。
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第2は多数(数の力)のときに強くなること。「5人と戦っても50人と戦っても結果が同じなら前線は保てない」。そこで人が集まるほど強くなる仕組みを設計し,高スペックが大集団に突っ込んだとき,次の3つのいずれかが起きるようにした。
(1)殺戮の失敗=サポートスキル強化で全クラス共通のバフを付与,スタックで強化され一定数を超えると生存力が大きく上がる→人が多いほど生存力が高まり,戦闘が想定より長引き,殺戮の成否が不確実に。
(2)生存の不確実性=固定ダメージ(成長に影響されず,個々は小さいが多数で無視できない圧力=数が脅威に)と,新クラス「サン・クルセイダー」の状態異常“威圧”(参加人数に依存し,付与後に被弾回数でダメージが決まる→多数で攻撃するほど強力)。
(3)予期せぬ変数=幻影剣士「バックブレード」の余波(状態異常が失敗しても対象の段階抵抗を下げる→多数が試せばいずれ成功)や,移動阻害スキル(逃走を防ぐ)。
ただし「入場自体を阻むのが目的ではない」ため,必ずカウンターを用意した。スタックするバフ・デバフ効果は「その場に留まるときだけ」働き,対象を移動させたり状態異常を当てれば解除される。「数の脅威を残しつつ反撃の余地も残す。これで前線を保ちながら戦場をよりダイナミックにする」。
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第3は危機のときに強くなること。1対1のPvPも重要で,スペックが等しければ進行段階にかかわらず同じTTKを保つべきだ(各クラス・スタンスの1対1メカニクスのため)。
だが1対1のTTK維持のため防御を攻撃に比例させると,集団戦では低スペックの攻撃が高スペックの防御を貫けなくなる。そこで集団戦向けには「防御(特に最大HP)は大きく増やさない」と決め,通常は従来どおりの成長だが,本当に危険なときだけ生存力が増す柔軟な仕組みを作った。
危機時にHPを回復するパッシブスキルを追加。攻撃スタンスは「被弾で回復が発動」(HPが最小付近で大ダメージを受けたとき作動し,軽微なダメージでは発動しない)。危機の定義も重要で,「短時間でHPが急減した状況」を危機とし,たとえばHP70%未満でAバフ,30%未満でBバフ,Bが発動したときAがまだ有効なら「短時間に大ダメージ」と判定し即座にHPを回復する。
最後にダメージ無効化スキル――従来の防御スキルはステータスが高いほど強いが,無効化は逆で,集中砲火を浴びる高スペックには数発防いでも意味が薄く,低スペックには数発長く生き残れることが大きい。「強者を強くするのではなく,弱者が戦闘に参加できるよう助けるスキル」だ。
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結論はこう要約された。「どれだけステータス差があっても,肝心な瞬間に一度は持ちこたえ,相手に存在感を示せる」。多数が陣を保てば高スペックが突撃を躊躇し,前線が形成される。実際の指標として,ワールドウォーコンテンツ「タイムリフト」の毎月第1土曜のキル数(大規模衝突が継続的に起きている証)と,秩序(Order)単位のサーバー移籍が絶えず起きていること(集団戦が続いている指標)が示された。「ステータスだけでなく参加そのものが重要になり,その参加が秩序や連合への帰属感を強めた」とした。
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