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「ショベルナイト」開発チームの新作「Mina the Hollower」は,レトロな見た目に反して超骨太。高評価の理由を,探索と戦闘の手触りから探る
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印刷2026/06/13 10:00

レビュー

「ショベルナイト」開発チームの新作「Mina the Hollower」は,レトロな見た目に反して超骨太。高評価の理由を,探索と戦闘の手触りから探る

 2026年5月29日に発売された新作「Mina the Hollower」は,ゲームボーイカラー時代の作品を思わせるビジュアルをまとった,見下ろし型のアクションアドベンチャーだ。

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 本作を手掛けるYacht Club Gamesは,レトロゲームへの敬意を現代的なプレイフィールに落とし込んだ「ショベルナイト」で知られるデベロッパだ。本作もまた,一見すると懐かしさを前面に出した作品に見えるが,実際に遊んでみると,その評価点は単なるノスタルジーには収まらない。

 Steamでは早速レビューが集まり,現時点では“非常に好評”となっているが,ではなぜ本作がこれほどまでに話題を集めているのか。本稿では,実際にプレイして感じた探索設計や戦闘システムの作り込みを中心に,その魅力を紹介していく。なお,今回はストーリーに関するネタバレは避けているので,その点は安心してほしい。



レトロな見た目の奥に濃密な探索空間が広がる


 スクリーンショットや映像を見ればハッキリ分かるが,本作はレトロ表現にかなり力が入っている。アートスタイルはゲームボーイカラー時代の作品に近く,方向性としては「ゼルダの伝説 夢をみる島DX」が一番イメージしやすいだろう。

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この世界には,大地の力を用いる「ホロワー」と呼ばれる者たちがいる。主人公のミナもその1人で,地面を掘り進む力を持つ発明家にして戦士だ
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ミナは,革命的なエネルギーである“スパーク”を発生させる装置を作り上げた腕利きのホロワーだ。彼女は呪われたテナブラス島へと赴き,自らが組み上げたスパーク発生装置の修復を目指す

 アクション面での特徴は,地面に潜るアクションだ。潜行中は高速移動が可能で,一部の攻撃やギミックをやり過ごせる。ダッシュや回避にあたるアクションがないので,戦闘では潜るアクションをうまく活用して戦うことになる。

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 ゲームを開始すると,昔懐かしいマップチップを思わせる背景,気分を上げてくれるチップチューンBGMがプレイヤーを出迎えてくれる。パッと見では“懐古”を楽しませてくれる雰囲気がバリバリ感じられるが,体験の軸はそこにはない。本作の真髄は,そうした制約を逆手にとったゲーム設計にこそある。

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 舞台となるテナブラス島は,中心街を軸にして複数の地域に分かれており,各地域は画面単位で区切られたマップを敷き詰める形で構成されている。マップの境界から出れば,隣接地へ移動できる仕組みだ。

 そして,本作はマップの緻密さにおいて圧倒的な作り込みを誇っている。物量はもちろん,驚くべきはマップ個々の奥深さだ。あらゆる場所で敵の配置に悩まされたり,特殊なギミックを用いたパズルがあったりと,無駄な空間がほとんどない。

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 この作り込みには“マップ同士の接続”も含まれている。ある場所で見かけた不自然な地形がショートカットとして繋がったり,新しい操作を覚えると同時に道がひらけたり……。探索体験の密度が高く,常に「あれはどうやって進むんだろう」「あの先には何があるのだろう」という期待と疑問を抱きながらゲームを進められる。

 これは,マップ自体に“区切り”があるからこそ出ている深みといえる。画面単位で区切らず,シームレスなフィールドとして表現することも可能だったはずだが,本作はあえてそうしていない。これは,レトロ表現であると同時に,探索体験を深めるいち要素でもあるのだ。

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 また,アクションを習得する流れの作り方も非常にうまい。本作には攻略目標となるエリアが大まかに6か所あり,基本的にはどんな順番で攻略しても問題はない仕組みになっている。

 ただし,高難度エリアへ進むには適切なテクニックや謎解きが必要で,そもそも侵入しにくい。当然,出現する敵も強い。普通にプレイすれば“規定のルート”を通るようにできているが,望むプレイヤーは茨の道を自ら発見して進んでもよいというわけだ。

 本作は多くを語らないが,しっかりとプレイヤーを導く力がある。たとえば,地面から“飛び出す”際のジャンプは,通常よりも少しだけ遠くに飛べる。この仕様は一切説明されないが,序盤で「潜った直後に飛ばざるを得ない穴」を飛び越させることで,やり方をプレイヤーに教えてくれる。

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 そうした情報を汲み取り,自分で運用していく感覚は非常に心地よいものだ。場合によってはメッセージをうまく受け取れず,そこらじゅうを迷い歩くハメになることも少なくないが,それはそれで楽しい体験ではある。

 ちょっと乱暴なたとえになるが,初代「DARK SOULS」でいきなり巨人墓地に迷い込んでしまい,それを楽しく感じられた人であれば,間違いなくこの体験を気に入るだろう。ハードルが高いのは間違いないが,それを乗り越えられる人には十分な喜びを提示してくれる作品だ。

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 ただし,こうした設計とレトロ表現が噛み合っていない部分もある。見下ろし×マップチップ風の背景は,画面の高低差を把握するのがやや難しい。地面に潜って下をくぐるアクションが攻略に組み込まれているので,これはややストレスに感じられた。

 もちろん,情報を読み取るための工夫は随所にある。乗り越えられる壁,降りられる縁,登れる壁などには一定の共通デザインが用いられているので,把握すればスムーズに事が進む。

 ただ,例によってそれらも自分で探っていく必要がある。そういった部分も探索要素として受け入れられるか否かは,本作の評価を分ける部分になりそうだ。

プレイヤーが進むべきルートについては,新聞という形で提示してくれる。このように,誘導がまったくないわけではない
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戦闘と成長にも貫かれる“気付き”の設計思想


 プレイヤー自身が情報を読み解き,攻略方法を組み立てる仕組みは戦闘システムにも反映されている。

 まず,ゲーム開始時に選択できるメインウェポンは「ナイトスター(鞭)」「ウィスパー&ヴェスパー(双刀)」「ブラストストライク・モール(槌)」の3種類で,入手以降はしばらく選んだ武器1本で戦うことになる。

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 さらに,ステージ上で拾得して使う「サブウェポン」も存在する。サブウェポンは「悪魔城ドラキュラ」シリーズに近い形式が採用されており,まずはサブウェポン自体を入手し,回復アイテムを拾って使用回数を回復していく仕組みになっている。

 メインウェポンとサブウェポンは,いずれも個々の性能がまったく異なるので,組み合わせ次第で適切な立ち回りも変わってくる。プレイヤーによって遭遇する課題が異なり,明確な正解がない中から自分なりの答えを探る必要があるわけだ。

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 体力回復システム「バイアル」についても,ひと工夫がある。バイアルは休憩と同時に“本数”が回復するが,それぞれのバイアルには中身が充填されていないのだ。

 敵を攻撃するとバイアルが充填され,回復量が増えていく。単に逃げ回っているだけではバイアルが貯まらないので,ある程度はリスクを負って攻撃を当てにいかなければならない。観察と読み解きに報いる本作の設計と,よく噛み合った戦闘システムといえるだろう。

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 ここまでの説明だけを見ると,難しいゲームに思えるかもしれない。実際,序盤はかなりの高難度で,道中のザコ敵を倒すのにも苦労するだろう。

 しかし,ずっと難しい場面が続くわけではない。本作には明確な成長システムがあり,マップ上に散らばる「ボーン」を収集することでミナのレベルを上げられる。レベルアップ時にステータスが向上するので,だんだん遊びやすくなっていく。

2連続で死亡するとボーンをロストしてしまうが,死亡した際に即座にボーンを失うわけではない。消費する猶予が残されているので,いわゆるソウルライク系の作品ほど厳しい仕様ではない
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 さらに重要なのは,パッシブ能力を得られる「トリンケット」の存在だ。トリンケットはかなり強力なものが揃っていて,ゲーム中盤になると基礎ステータスの向上と合わせてゴリ押しが利くようになってくる。

 序盤は敵の動きや地形を読み,少ない手札で慎重に立ち回るゲームだが,中盤以降は装備と成長によって,その厳しさを少しずつ崩せるようになる。ここに快感を覚えるか,プレイフィールの変化が大きいと感じるかは,好みが分かれるところだろう。

序盤のトリンケット装備枠は1つしかないが,ゲームが進むと少しずつ増えていく。効果も大きいので,どんどん戦いやすくなっていく
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 このように本作は,「気付く」「試す」「使いこなす」という体験をゲーム全体を通して与えてくれる。それはマップ探索だけでなく,武器選択,回復システム,成長システムにまで一貫した設計思想だ。

 ただ,すべてが快適というわけではない。全体マップやショートカット移動といった便利機能の解禁自体も“探索の報酬”として用意されているので,下手をすればずっと不便な状態でプレイし続けることになる。

 こうした不便さは意図的に残されているように思う。画面をよく見て,地形を疑い,敵の動きを覚え,装備の組み合わせを試す。そうした積み重ねによって,テナブラス島という大きな空間が少しずつ自分のものになっていくわけだ。

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 万人向けの設計ではないが,自分の手で世界を理解していく感覚を楽しく感じられるならば,本作の冒険はかなり濃いものになるはずだ。レトロな見た目に惹かれた人はもちろん,探索型アクションの“気付き”や“突破”の面白さを味わいたい人にこそ,ぜひ触れてほしい作品である。

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