インタビュー
[インタビュー]TwitchのCEOに聞く,ストリーマーの利便性を追求する新機能
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Twitchを知らないゲーマーはいないであろうが,元々はジャスティン・カン(Justin Kan)氏やエメット・シア(Emmett Shear)氏らが,カン氏の生活を24時間配信するストリーミング技術「Justin.tv」を2007年に開発したことに始まる。“ライフキャスティング”と呼ばれたそのストリーミングは8か月にわたって続けられたが,それが一般公開されてからは,ライフスタイルやスポーツ,ニュースなどさまざまなカテゴリーで利用されることに。
その後,ゲームプレイの配信が大きな人気になったことで2011年に分離されたのが「Twitch」であり,2014年にはAmazonに買収されて現在に至る。TwitchConが初めて開催されたのは,その翌年の2015年だ(関連記事)。
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現CEOのダン・クランシー(Dan Clancy)氏は,もともとはNASAでロボティクスや健康管理の研究者をしており,GoogleにおいてはGoogle Book Searchのエンジニアとして手腕を振るいつつ,訴訟が起こると矢面に立って対応した人物だ。Twitch Interactiveに招聘されたのは2019年のことで,当初はシア氏の元でクリエイター&コミュニティ体験担当の副社長として入社。2023年からはシア氏に代わってTwitch InteractiveのCEOに就任した。
“プロダクト・フォーカス”を謳うクランシー氏だけに,TwitchCon 2025ではTwitchプラットフォームを改善する数々の新しいフィーチャーがアナウンスされている。その詳細はイベントレポートで紹介しているとおりだが,縦型と横型の両方のフォーマットで同時にライブ配信を可能にする「デュアルフォーマット配信」,AIを利用して配信済みの動画の見せ場をショート動画にする「自動クリップ」,複数人によるストリーミングの際に視聴者数を共有できる「Coストリーミング」など,ストリーマーの利便性を重視した機能が導入されていく見通しだ。
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4Gamerでは,TGS2025で来日していたコミュニティ責任者のメリー・キッシュ(Mary Kish)氏と,APACコンテンツディレクターのルイス・ミッチェル(Lewis Mitchell)氏にインタビューを行い,日本市場における最近の動向について聞いている。そのため,今回のTwitchCon 2025においては,ダン・クランシー氏に今回のイベントで発表された新機能や,その展望をうかがった。
「TwitchCon 2025」開催。10周年を迎えた記念イベントで「デュアルフォーマット配信」や「オートクリップ機能」などをアナウンス
ライブストリーミング配信プラットフォーム「Twitch」のコミュニティイベントとして今年で10周年を迎えた「TwitchCon」が,カリフォルニア州サンディエゴにて開催された。2万3000人が参加し,熱狂を帯びる中,「デュアルフォーマット配信」や「オートクリップ機能」といった新たなフィーチャーが発表された。
コミュニティの力で日本のカルチャーを世界へ――SHAKAさん,ストグラ,VTubingなどの話題が飛び出た,Twitch幹部が語る日本市場と今後の展望[TGS2025]
今年も盛況のうちに閉幕を迎えたTGS 2025の2日目,ビジネスデイの2025年9月26日に,ストリーミングサイト「Twitch」の幹部2名にインタビューする機会が得られたので,その模様をお届けする。応えてくれたのはコミュニティ責任者のMary Kish氏と,APACコンテンツディレクターのLewis Mitchell氏だ。
TwitchのCEO,ダン・クランシー氏インタビュー
4Gamer:
まず「デュアルフォーマット配信」についてお聞きします。こちらはどういった意図で追加されるものなのでしょうか。
クランシー氏:
デュアルフォーマット配信は,実際にはモバイル体験を高めるために開発されたものです。今の時代,人々はスマートフォンを片時も話さず使っていて,縦方向で見るのに慣れてしまっているじゃないですか。デュアルフォーマット配信に対応すると,わざわざ横方向に持ち替える必要がありませんから,これまで以上にスマートフォンの視聴者数が上昇していくでしょうし,視聴者にとって縦型フォーマットによるコンテンツに触れる機会が上がることで,クリエイターたちのディスカバラビリティ(コンテンツの見つけやすさ)も向上することになると思います。
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4Gamer:
デュアルフォーマット配信に対応することによる,クリエイターへの負担はどの程度でしょう?
クランシー氏:
パソコンの横に固定したスマートフォンを使って配信できるので,新しいセットアップを作り直すというような負担はありません。もちろん,制作作業は少し増えることになるわけですが,対応するのが難しいということはないでしょう。
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4Gamer:
Twitch Interactiveは,先ほどのディスカバラビリティといった点で,どのようにAIを活用されてきましたか?
クランシー氏:
AIはTwitchではかなり古くから利用しており,おすすめコンテンツをピックアップするアルゴリズムだとか,ホームページ(最初に見るページ)の構築やフィードに大きく関わっていますし,コンテンツの安全性チェックといった部分でも利用し,日々向上させています。
今回のイベントでアナウンスした「自動クリップ」も生成AIを活用したものであり,視聴者がライブストリーミングで見逃してしまったかもしれないクリエイターの劇的な瞬間を自動的にクリッピングし,それを後日のコンテンツで視聴できるようになるわけです。
4Gamer:
つまり自動クリップは,最近は大人気になっているショート動画に対する答えということでしょうか。
クランシー氏:
いえ,我々が能動的にショート動画のコンテンツ掲載の場を設けていくというよりも,あくまで編集作業担当者がいないような中小のクリエイターたちにとって,コンテンツを制作しやすくなるよう意図したものです。
クリッピングは古くからストリーマーたちの作業の1つであり,彼らはそれをTikTokなりYouTubeに掲載してきたわけです。Twitchの主戦場はライブストリーミングであり,異なるプラットフォームを利用してもらったほうがクリエイターたちのビジビリティ(可視化)が上がり,そこからTwitchのライブストリーミングを視聴する時間が増えたり,サブスクリプションしようとする人が増えたりすることになりますからね。
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4Gamer:
ほかの動画配信では,アバターや映像そのもののAI利用も増えていますがTwitchではどうでしょう?
クランシー氏:
少なくてもTwitchにおいて,AIがクリエイターたち自身にとって代わるとは,今のところ私は考えておりません。確かにTwitchCon会場を見渡していただきますと,日本で大流行しているVTubingがこちらでもバズっているのを感じます。モーションキャプチャを使った完全3Dのキャラクターがさらに向上していくのも,そう先のことではないようです。
もちろん,それも素晴らしいことではありますが,ライブストリーミングというのは視聴者がコンテンツクリエイターとのつながりを求めてやってくるサービスで,書き込みへのやり取りだとか,事前に決まっていないハプニングだとか瞬間的な楽しみ方ができる数少ないメディアなのです。
おそらく視聴者は,オーセンティシティ(真正性)を求めているのであって,日本で古くからのライブ配信サービス(ニコニコ動画)があることで,Twitchが入り込みにくい状態なのも,そうした要求がすでに満たされているということはあるでしょう。
かねてより私が話していることですが,多くのSNSはソーシャルサービスという名の“アンチソーシャル”(非社会的)なもので,人々を表層的にしかつなげてくれません。だから,近年ではゲーマーやライフスタイルだけでなく,異なる分野の人たちがTwitchに注目してくれているのだと思います。
4Gamer:
その意味では,ストリーム内ショッピング機能の追加というアナウンス(外部リンク)は興味深いですね。
クランシー氏:
今回のイベントのビッグストーリーの1つでありますね。Amazon Adsを活用したTwitchとの革新的なパートナーシップで,Twitchチャンネルでのコスメアイテム関連のストリーミングライブ中に,ネイティブでショッピングを利用できるようになるという機能です。
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4Gamer:
今は企業とのタイアップですが,今後は個人経営の店などに広まっていく可能性はありますか?
クランシー氏:
現時点では,その方向性を見極めているところですが,Twitchやストリーマーの皆さんのスポンサーには非常に魅力的なサービスになると考えています。例えばゲーム用キーボードのような視聴者もすでにそれなりのものを持っていたり,衝動買いをするには高過ぎるようなアイテムには不向きだったりするかもしれません。一方で,コスメティックスやファッションといったトレンド性のある消費物には効果的なものではないでしょうか。
4Gamer:
TwitchConでもよく見られるような,ゲーム関連グッズや,個人アーティストの絵なども需要はありそうですね。
クランシー氏:
そうですね。このショッピング機能がどれだけの広がりを見せるか分かりませんが,可能性はいろいろあると思います。有名なストリーマーのカイ・セナット(Kai Cenat)さんがチャリティーイベントのMafiathonを行っているように,Twitch上で独自のプロモーション企画を行いやすい土壌を整備していますし,マネタイゼーションのオプションを増やしていくのは我々にとっての大きな目標です。
彼のようなメジャーなストリーマーたちであれば,プロモーション中のライブ視聴者数が平時の250%に達したりしているのです。ストリーム内ショッピング機能についても,ストリーマーの皆さんが利用し,どういう効果的な手法を編み出してくるのかというのは,私たちにとっても気になるところです。
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4Gamer:
これからのTwitchについての予想をお聞かせください。
クランシー氏:
難しい質問ですね。カイさんにしてもそうですが,現在のトップ10ストリーマーたちのほとんどは5年前には活動していなかった人たちです。Twitchがコンテンツに口出ししない以上,どのような傾向で進化していくのかは予測できません。
ただ,ほかにさまざまなSNSがあるのに,多くのクリエイターと視聴者がTwitchに注目してくれているのは,Twitchというサービスがインターネットカルチャーの震源地の1つになっていると認識してくれているからだと思います。
4Gamer:
なるほど。本日はありがとうございました。
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