
インタビュー
[インタビュー]「世界一の対戦ゲーム=GENDAxスゴロックス」 GENDAが世界一のエンタメ企業になるときに,1つの大きな武器となる“対戦ゲーム”を目指していく
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……というプレスリリースが流れたのは,2025年6月12日のこと。
スゴロックスの西山氏といえば,「三国志大戦」や「CODE OF JOKER」「Wonderland Wars」「Answer×Answer」など,アーケードでの“対戦ゲーム”を軸にしたヒットタイトルを手掛けていた人で,GENDAといえば,言うまでもなくゲーム業界的には「GiGO」が有名で,カラオケBanBanなども合わせて,リアル世界での「総合エンタメカンパニー」の印象が強い。
その両社(両者)がくっついて一緒に何かやるということは,もしかしてGENDAがオリジナルのアーケードゲーム作ったりするのかなと思ったら,どうもプレスリリースを読む限りはそういうシンプルな話ではなさそうだ。
第一弾タイトルとして、2026年春にユニークな対戦型ゴルフゲームのリリースを予定しております。
目指すのは、世界で戦える”対戦ゲーム”を日本発で創り出すこと
プラットフォームは分からないものの,本当の意味で「世界で戦える対戦ゲーム」を作るのであれば,PCを外すわけにはいかないはずで,なんとなくだけど「アーケード」の感じがしない。ということは,プラットフォームビジネスメインであるGENDAが,もしかして「いわゆるPC/コンソールゲーム」に進出するということ……?
何をしたいのかよく分からないからちょっとだけ(西山氏に)話を聞かせてもらおうと思ったら,なぜかGENDAの片岡CEOまで呼ばれてインタビューということになってしまった。
本題からどんどん逸れていって危険な話しかしない西山氏の話を引き戻すのが大変で(なので削除している箇所が結構ある),ただの雑談みたいになってしまった感もあるが,この2人がやりたいことはなんとなく理解できた。
GENDAというエンタメ総合カンパニーが,業界の名物プロデューサーと組んで一体何をしたいのか,その意図を探ってみよう。
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4Gamer:
本日はありがとうございます……なんですが,このちょっと変わった組み合わせがなんとも言えない雰囲気ですね。
(一同笑)
4Gamer:
そもそもお二人ってどこで知り合っているんですか。共通項っていうと,セガ関係とか?
片岡氏:
いや共通の友人がおりまして。
西山氏:
ちょうど1年半ぐらい前ですよね。
4Gamer:
あれ,割と新しい。
西山氏:
そうですね。スゴロックスが立ち上がる前のタイミングでご縁をいただいて,お話させていただきました。
4Gamer:
でもGENDAさんって,基本的にはプラットフォームビジネスだと思うんです。
片岡氏:
はい。
4Gamer:
なので「あぁこっち側にも来るんだな」というのがちょっと意外でした。
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私たちは,2040年までに「世界一のエンターテイメント企業を作る」ことを本気で目指しているんです。いま事業として展開しているのは,アミューズメント,カラオケ,ツーリズム,フード&ビバレッジ,キャラクターMD……それとコンテンツ&プロモーションですが,今後もそれに限らず,エンタメ領域であれば幅が広がっていくかもしれません。
人々の「楽しい」を増やしていくことが私たちの本当の目的ですから。西山さんとは「何かワクワクすることを一緒にやりたいよね」と常々話してたんですよ。
4Gamer:
なるほど。でも,よりにもよってこの人で。
片岡氏&西山氏:
ワハハハ。
西山氏:
GENDAさんとスゴロックスが組むというのは,業界的にはまさに“掛け算”になると思ってるんです。GENDAはリアルの場を創り出す天才で,私たちはデジタルの熱狂を設計する立場で。この両者が融合することで,これまでにない体験が絶対に生まれますよ!
片岡氏:
結構仲いいんですよ。月イチで一緒にご飯食べたりして。
4Gamer:
いや変な意味ではなくて,結構西山さんって「濃い」じゃないですか。
片岡氏:
ふふふ。
西山氏:
なるべく誰にでも分かるように簡潔なお話をできてるな,っていつも思ってるんですが……。
4Gamer:
なんていうか,コアな開発者である西山さんと話が合うんだというのが,ちょっと意外なんです。
片岡氏:
話めっちゃ合うんですよ(笑)。
西山氏:
そりゃもう。片岡さん,こう見えて割とコアですよ。
4Gamer:
あれ,そうなんですか? ゲーム歴どんな感じなんですか。
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ゲーム歴……は,結構子供のころから。それこそ,Wizardryの第一作※とか。
4Gamer:
すごいのが出てきた……。
片岡氏:
あと「ウルティマ II」※とか。そんな頃からずっとゲームをしてたんですよ。
※ウルティマ II: エンチャントレスの復讐
4Gamer:
実は世代が僕とほぼ同じですよね。
片岡氏:
僕,72年生まれです。
4Gamer:
はい。ほぼ同じ世代なので分かるんですが,あのころ「Wizardry」とか「Ultima」とか言ってる人って,相当なんていうか,アレですよ。
片岡氏:
そうですよねえ。まぁそれくらい昔からゲームが好きなんです実は。
西山氏:
僕よりもコアですよきっと。
4Gamer:
なにせWizardryですからね。初代をリアルタイムでやってる人,ゲーム業界にだってもうあんまりいない気がする。
片岡氏:
マップとかたぶんいまだに覚えてますよ。それくらいはやりこみました。
4Gamer:
目をつぶっても地下9階に行けるわけですね。
片岡氏:
はい,まさに(笑)。
4Gamer:
ちょっと意外でした。そんな雰囲気があまり感じられないので。
西山氏:
あともう一個付け足すと,僕の得意分野って対戦ゲームであって,それって駆け引きとかそういうのじゃないですか。そっちについても,僕以上に強いんですよ。切った張ったが(笑)。
片岡氏:
アハハハハハ!
2030年ぐらいに一回「世界一の対戦ゲーム」を作って勝負をかけてみたい
4Gamer:
今回こうやって,ゲラッパという会社を作って,最初に出すものはゴルフゲームだとそこまでは発表されています。これってたぶんSteamですよね?
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そうですね。
僕は別のご縁があった案件とかで,スマホとかブロックチェーンとかやってますけど,「Steamでグローバル」みたいなところを,ちゃんとやってみたいなと思ってまして。
4Gamer:
普通のゲーム開発会社的な?
西山氏:
二人で相談してるときに,戦略的にはまず足が速いものとかそういうのがいいなと。5年かけて大作を作りましょうとかそういうのではなくて,オリジナルでささっと勝負したい。
まずやっぱり作品を出していかないと“作り癖”ができないし,マーケットを把握する癖もつかないんですよね。
4Gamer:
とりあえず打席に立たないと始まりませんしね。
西山氏:
そうです。
そういう意味では,みんながびっくりするような超大型の作品がどうだこうだと言うよりも,なんか片岡さんたちと一緒に組んだからできるような,ちゃんとしたメッセージ性があるような遊びを,なるべく速いスピード感で出したいですね。本当に1年とかで出すぞくらいの感覚で。
4Gamer:
思ってたより全然速い。
西山氏:
もうあれですよ。追い立てられるように作る。
4Gamer:
得意そうです。
(一同笑)
西山氏:
追い立てられるように作るのは得意です,はい(笑)。でも,それはあくまでもスタート地点に過ぎないんですよね。
もともと……ちょっと不思議な流れなんです。スゴロックスを立ち上げたときは,「セガから独立したんだから,自分の足でバッターボックスに立って,新しいゲームを作っていこう!」と意気込んでいたんです。ところが今,ありがたいことにセガさん関連のお仕事をたくさんお手伝いさせてもらっていて。セガ時代に立ち上げた案件や,セガさんが進めていたプロジェクトに関わらせていただいています。
[インタビュー]「三国志大戦」の西山泰弘氏が,セガを辞めて新天地で目指すものは何か―――ゲームのプロデュース集団として,業界に広く深く貢献したい
![[インタビュー]「三国志大戦」の西山泰弘氏が,セガを辞めて新天地で目指すものは何か―――ゲームのプロデュース集団として,業界に広く深く貢献したい](/games/999/G999905/20240701020/TN/011.jpg)
三国志大戦の名物(?)プロデューサー「西P」がセガを去って数か月。自分の会社を立ち上げたということで,オフィスにお邪魔してみた。あんまり景気のよくないこんな時期に会社を辞めて,一体何をするつもりなんだろう?
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4Gamer:
でもそれは予想済だったのでは?
西山氏:
予想は,してないです。独立すると決めたあとに出てきたやつとかもありますし。
4Gamer:
なるほど。
西山氏:
僕はもともとオリジナルが作りたかったのに,セガ系のコンテンツを結構やらせていただくことになって。もちろんそれはバッターボックスに立てるということなのでとてもありがたいんですが,でもやっぱりちゃんとオリジナルを作りたいなあと思ってて。
で,今出すんだったら,こういう作り方かなぁ,と。
4Gamer:
世界一を目指す者同士?
片岡氏:
はいもう,世界一のエンタメ企業を。
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GENDAの片岡CEOが語る「世界一のエンタメ企業」への道筋――M&Aで年間60%成長,7年で売上1000億円を達成した戦略とは

京都みやこめっせで開催されているIVS2025で,GENDAの片岡 尚氏を迎えてのセッションが行われた。元大和証券の丸尾浩一氏がモデレーターを務めた本講演では,創業わずか7年で売上高1000億円という,日本のスタートアップ史上最速記録を樹立したGENDAの戦略が明かされた。
西山氏:
で僕は,世界一の対戦ゲームを作りたいわけです。キーワードがお互い「世界一」なわけで,でも得意領域は違うから,何かできるかな? と。
オリジナルを作ろうと思ったときに,それをどういう座組で作ろうかなと僕は動き始めるんですが,いやまず片岡さんに相談しようと。
4Gamer:
しかしなぜ急にそこで片岡さんが。
西山氏:
一緒になんかやろうってもともと言ってたし,GENDAさんのほかの取り組みとかもいろいろご相談いただいたりもしてたので。それで片岡さんのとこにご相談に行って,これから僕たぶん資金を集めたり体制を作ったりするんですけど,よく考えたら,そもそも片岡さんと一緒に作ったほうがよくないですか? っていう話を。
片岡氏:
ふふふ,そうでしたそうでした(笑)。
4Gamer:
割と乱暴だ(笑)。
西山氏:
そしたら片岡さん,驚くほど速いんですよ。
片岡氏:
ハハハ。
西山氏:
驚く速さで判断をしていただいて。
じゃあ組んでやるのは決まった……けど,あれなんかやばいぞ。思ったより早くて,なんか自分しかいないぞ? みたいになってしまって。
4Gamer:
そう,そこ気になってます。だって元々スゴロックスって「開発会社」ではないですよね。
西山氏:
そう,スゴロックスはね,プロデュースカンパニーなんですよ。
なのでまあメンバーを集めたり,こういう人達とやりますって片岡さんにご報告に行ったり,そういうことを今やってる感じです。
4Gamer:
リリース見たときに,GENDAとスゴロックスってあんまりカルチャー合わなそうだなって思ったんですが,聞いてるとそういうわけでもなさそうですね。
西山氏:
目指してるものは同じですし。
僕が片岡さんを口説くときにトリガーにしたのは「世界一」のキーワードですが,これ片岡さん的には2040年だからまだ15年あるんですけど,僕的には,2030年ぐらいに一回「世界一の対戦ゲーム」を作って勝負したいと思ってるんですよね。
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[インタビュー]「魁 三国志大戦」がオートバトルの新時代を切り拓く。プロデューサーの西山泰弘氏が語る対戦ゲームへのこだわり
![[インタビュー]「魁 三国志大戦」がオートバトルの新時代を切り拓く。プロデューサーの西山泰弘氏が語る対戦ゲームへのこだわり](/games/718/G071846/20250313025/TN/013.jpg)
double jump.tokyoは,軍勢カードバトルゲーム「魁 三国志大戦 -Battle of Three Kingdoms-」を2025年4月30日に「先駆け!リリース」する。本稿では,プロデューサーの西山泰弘氏と開発統括の坂本康朗氏に,本作のゲームデザインや,対戦ゲームへのこだわり,先駆けリリースの意図などを語ってもらった。
4Gamer:
意外と早いですね。
西山氏:
早いですよ。(片岡氏へ向かって)早いほうがいいでしょう?
片岡氏:
ふふふ。
4Gamer:
微笑んでますよ(笑)。
西山氏:
まぁ早い方がいいでしょう,きっと(笑)。
で,片岡さんが言う世界一のエンタメって,僕の中では規模の想像がつかない。対戦ゲームの場合は,相手が明確じゃないですか。例えばRiot Gamesとか。
でも片岡さんの対戦相手って,なんかディズニーとかそういう話でしょう?
片岡氏:
そうなんですよ。ウォルトディズニーとネットフリックスを超えないといけないです(笑)。
西山氏:
ですよね。なのでその「世界一」というキーワードで,お互い急いでるはずだという感覚はあるんです。
それで僕は「デジタル」の人なんですよ。で,片岡さんは「リアル」が得意じゃないですか。ゲーセンとかカラオケとか。僕の個人的な考えでは,デジタルだけだと世界一を取れる気がしないんですよね。
4Gamer:
なんか面白そうな話になってきました。
西山氏:
さっきのネットフリックスの話で言うなら,IPはたくさん日本にあるんだから,じゃあそれらをうまく集めてどうだこうだ……とかやったところで,ネットフリックスに勝てる気がまったくしないんですよね。
4Gamer:
同じことをあとから始める時点で,すでにだいぶ分が悪いですしね。
西山氏:
そう。アメリカと中国に対してデジタルオンリーで勝負をするのは,事実上ちょっと無理じゃないかなと思ってて。
僕が得意なのは,熱狂させて,コミュニティを作って,そこに人が集まって……そういうものが多いです。そういうのが繋がって,そこにさらに何かを打ち込んで。
4Gamer:
そうですね。
西山氏:
どうやって,より強い絆を作るかと言ったら,ライブを利用しないとダメだと思うんです。要は「地べた」を利用して,出会う場とかを利用しないと。で,そこで気付いたんですよ。そういえば片岡さんって地べたの天才じゃない?と。
4Gamer:
地べたの天才って(笑)。
片岡氏:
初めて言われました(笑)。
西山氏:
地べたというか,そこで体験を作る天才なわけですよ。
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4Gamer:
まぁでも確かに,いわゆる「コンピュータゲーム」の業界にはあんまりいないですよね,そういう人。
西山氏:
そうなんです。僕は集まるための「機会」は作れるかもしれないけど,その機会をうまく使って人を体験させていくというのは,やはりオペレーションが得意な方達がいらっしゃったおかげなんです。
で,リアルとデジタルが掛け合わされば,中国やアメリカのコンテンツにも勝てるんじゃないかな……? というのが,僕の中で一個の解として考えてたんですよね。
4Gamer:
最近は一周回ってまたリアルが重視されてる感覚はありますが,それでもまだ全体感としてそちらに向いているわけではなさそうですしね。
西山氏:
そうでしょう? だから片岡さんにも「僕はデジタルで走ります」と。グローバルで売れる機会を頑張って作りますけど,それが世界一になるには,その出会う場や接点というものが必要で,それを片岡さんたちと一緒にやることで全部設計できたら,もしかしたら世界一のチャンスがあるかも,と。
リアルとネットの融合という文脈で,遊びとして大成功しているものは,まだ世の中にないはず
4Gamer:
……という話だったんですか?
西山氏:
雑な振り(笑)。
片岡氏:
はい(笑)。まったくその通りです。
でも,リアルとネットの融合みたいなものにはいろんな文脈があると思うんですが,遊びとしてそれがすごくうまく統合されて,確信を持って大成功しているものって,まだ世の中にないんじゃないかなと思ってまして。
4Gamer:
いまあるものではまだ甘いですか。
片岡氏:
もちろんいろんなチャレンジがあるのは存じてますが,同じようなことを,もしこのタッグでできたらこれは素敵だなと思いまして。そんな話をしながらお酒飲んでました,よく。
4Gamer:
さっき西山さんが“地べたの天才”と評したときに思い出したんですけど,セガのゲーセン事業をM&Aしたときに,多くの人が「あそこからどうするんだろう」って思ったと思うんですよね。
片岡氏:
ふふふ。
4Gamer:
とか言ってたら,1年で黒字に。
片岡氏:
ハハハ。いやでも,もともとセガ エンタテインメントはすごくいい会社で,コロナの前の年とかもしっかり利益が出てた会社です。コロナで非常にダメージを受けて,その期間はもちろん赤字だったんですけど,我々のグループに入っていただいて,もともとあるべき姿であった「いい会社」に戻したというだけです。
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4Gamer:
しかし一般論として,ゲーム業界的には「アーケードは終わった」という感じが蔓延しています。そんなに新製品も出ませんし,発表会とか展示会も以前ほどの盛り上がりではないな,と正直に感じます。
片岡氏:
はい。
4Gamer:
でも確かに,何か新しい血を入れることによって,大きく変わる可能性はありますよね。
西山氏:
スタートはこのコンビじゃないと,僕らが言っている時間軸で世界一を取るプロセスは進めないと思ってます。
4Gamer:
ちなみにゲームのほうは私でもどうにか「世界一」を理解できるんですが,「世界一のエンターテイメント企業」はさっぱり想像が付きません。手は届きそうなんですか?
片岡氏:
それも必ず届くんじゃないでしょうかね。2040年に。
4Gamer:
おお……数字ベースの話だと,今どういった感じなんですか。
片岡氏:
いま売上高と……いやその前にですね。その「世界一」に僕らがなった/まだなってない,の定義は,売上高と償却前の営業利益(EBITDA)と,あと時価総額です。
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4Gamer:
はい,分かりやすいです。
片岡氏:
この3つすべてで世界一を超えるというのが,僕らがそれを達成できたかどうかのラインです。
4Gamer:
すべて?
片岡氏:
すべて。
4Gamer:
どこか1つじゃダメですかね。
片岡氏:
ダメですね。時価総額でいうとたぶん70兆円とか,そういうレベルだと思うんですけど(笑)。
4Gamer:
70兆かぁ……。
片岡氏:
それをしっかりと2040年の時点で超えるということですね。
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4Gamer:
これは純粋な,ただの興味なんですけど……うーん言い方が難しいな。僕個人は,世間一般で言うところのいわゆる「向上心」があまりない人なんです。変な意味ではなくて。例えば……ちょっとベタですが,もっと上を目指そうとか,No.1になりたいとか,出世したいとか,お金もちになりたいとか,そういうことを僕自身はほとんど思わない人なんです。
だから純粋な興味で聞くんですけど,なぜそんな途方もない道を目指すんですか。僕も経営者の端くれとして,40兆円という数字は茨の道とかそういうレベルの数字ですらない気がします。
片岡氏:
なるほど。これはなんかちょっと,逆説的に聞こえるかもしれないんですけど……。
4Gamer:
はい。
片岡氏:
その高い目標を掲げてそれに向かっていくという話なんですが,その目標は,目的ではなくて手段なんです。
4Gamer:
あぁ……なるほど。
片岡氏:
じゃあ目的は何かというと,その目標を達成するために,どうやってそれをやろうかと毎日真剣に考えて,この冒険を進めていくことです。
この過程が,楽しいんですよ。これが目的なんです。
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4Gamer:
ドラゴンを倒すことが目的ではない,と。過程が楽しいのだと。
片岡氏:
そうです,そうです。まさにそうです。RPGと一緒です。
4Gamer:
急に合点がいきました。
片岡氏:
よかったです(笑)。
4Gamer:
確かに僕はドラゴンを倒そうとは思いませんが,途中のルートはすごく楽しそうですね。
しかしその三つで抜いたら,名実ともに文句なしの世界一ですね。
片岡氏:
必ず実現するので,ぜひ応援してください。
4Gamer:
西山さん責任重大じゃないですか。
西山氏:
もうね,全然ブレないんですよ,この方。ただの一回も。1年半くらい前にお会いしましたけど,もうそういう話をしてましたし。
僕なんかぼーっとセガに入って,まあまあうまくいっちゃって。
4Gamer:
言い方アレですが,うん分かります(笑)。
西山氏:
でも,なんかちょっとダメだな,物足りないな……って思って,生涯現役だー!とか言って,独立しちゃって。
4Gamer:
はい。
西山氏:
絶対生涯作り続けるというだけの前提で独立したんですけど,片岡さんはさすがにもっとちゃんとしてて,いつまでにどこまでいかなきゃいけない,みたいなことをしっかりやってあるんですよ。
4Gamer:
いつごろからそういうマイルストーンを引いてるんですか。
片岡氏:
えええ……マイルストーンと言われると,そこまで明確には(笑)。
でも常に,ここから先の20年でどこまでいくかみたいなのは,それこそ新卒の頃から考えてましたね。
4Gamer:
自分が新人のころを思い返すと悲しくなってきます……。
西山氏:
僕は作りたいものは明確だけど,この「ゲラッパ」という会社になって,経営的なマイルストーンとかKPIとか,そういうのは片岡さんとその周りがそもそもプロだし。
4Gamer:
そうですね。
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なので片岡さんのGENDAが世界一になるとき,そのときに「ゲラッパ」が1つの大きな武器になってないと,意味がないわけです。スゴロックスから見ても,ゲラッパで世界一のタイトルを作れないと意味がないんですよ。
いま片岡さんの戦略で,経営的な部分とか含めてどんどんマイルストーンを引かれてるから,僕は今R&Dと,あとマーケ関係が重要な仕事です。
このタイミングまでに100万人規模のサーバーを運営できるチームアップとか,サーバーを最適化できるような仕組みを作ったりとか,R&Dのマイルストーンをそうやって切らないといけない。
4Gamer:
マーケは?
西山氏:
マーケであれば,例えばアジアの地域で,こことここのリージョンではオフラインのイベントをやって,こういうメンバーに声かければ,これくらいの規模のこういうターゲットが集まるというのを,マーケチームにマイルストーンで持たせなきゃいけないとか。
それらがいずれ,株式なのか,売り上げなのか,利益なのか,そういったものになるんだと思いますが,元々僕はそっち方面そんなに好きじゃないですし,よく分かんないし。「おーなんか売れてるな」みたいな感じでやってるんで。
片岡氏:
いや,かっこいいですよ。
(一同笑)
アジア圏の人たちの熱狂をきっかけにして欧米も流行る,というのが正しいと思っています
4Gamer:
かっこいいかどうかはさておき,とても「作る人」ですよねどこまでいっても。
西山氏:
どこよりも面白いものを,どこよりも早く作って,それが新しい体験になったら,大体売れます。
4Gamer:
ところでスゴロックスってプロデュースカンパニーじゃないですか。
西山氏:
プロデュースカンパニーですね。
4Gamer:
ゲラッパは?
西山氏:
こっちはパブリッシャーです。ゲームパブリッシュカンパニーです。
4Gamer:
開発者なんかはどこからどのように。
西山氏:
開発は,基本的にキーマンがスゴロックスから送り込まれて,あとは外注とかですかね。
4Gamer:
開発のラインは無事作れそうなんですか?
西山氏:
無事作れそうですよ。
本当にね,今とてもチャンスですね。いい人がいっぱいいます。
4Gamer:
あぁ……そうですね。それはちょくちょく聞きます。
西山氏:
貴重な方たちが,結構いるんですよね在野に。
○○○が○○○だっていうのに,ポジションだけ持ってるような○○○に嫌気が差して辞めた優秀なクリエイターは,結構まだマーケットにいるんですよ。
4Gamer:
これどこまで書いていいやつですか?
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ダメです! 全部ダメです。
韓国や中国のゲーム会社に負け,時価総額とかでアメリカに負け,そんな中でも○○○みたいなのしか作らなくて,それがダメだったので次は○○○に逃げて,結局グローバルでの競争力が完全になくなって。
4Gamer:
○○○の話ですか?
西山氏:
もう1回強く言いますけど,全部書いちゃダメですからね。
4Gamer:
ちゃんと分からないように書きます。
西山氏:
しかしそういう意味では,今回タイの会社さんとか,台湾のデベロッパーさんとか,そういう人達ともいろいろご相談させてもらってるんですけど,アジアのデベロッパーさんたちの開発力も上がってますよね,体感として。
○○○とかだと,何かこう○○○もないのに○○○ばっか言う人達が増えてるんですよね。これも書いたらダメか……。
片岡氏:
いや相当ダメでしょう。ここまでで一番ダメ(笑)。
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4Gamer:
まぁでも仕方のないことなのかもしれませんが,ポジショントークとか,そのへんのビジネス書で読んだかのようなキレイごとばかり言う人が増えたような気はしますね。それはまぁ実はメディア界隈でもちょっと感じるんですが。
西山氏:
そうですよね。
いいのか悪いのかはさておき,いま僕らが組んでる人達は,約束したことが終わるまで寝ないに決まってるみたいな会社ばっかりなんですよね。アジアの会社とかはもう本当に気合入ってて,夜中でも確認したがったり。
4Gamer:
日本だと昨今はうるさそうですね。でもその場合のアジアはどのへんを指してます? さっき触れたタイとか台湾とか?
西山氏:
です。韓国とか中国の会社さんとかだと,ちょっといろいろ難しくて,ご縁を作るのはまだ慎重になってるんですが,ちょうどその1ライン下くらいの人達ですよね。
4Gamer:
maimaiなんかは中国でかなりのヒットを飛ばしてますが,西山さん的にはアジアってどういうポジションなんですか?
西山氏:
僕はもともとアジアを全部取りたいんですよ。アジアを取り切って,すごく熱狂させて。
するとアジア圏の人たちの熱狂がきっかけで欧米も流行る,というのが正しいと思ってるんですよ,僕。これはアプローチの考え方ですけど。
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4Gamer:
でも改めて聞くと,その路線はありなのかもしれませんね。
西山氏:
欧米を目指して! とかそういうやり方をするよりは,単純に僕らは相互に仲がいいし感性もそれなりに近いし,僕が作る熱狂を広げていきたいんです。
もしかしたら国によって,課金が大変少ないとかそういうところもあると思うんですけど,そういうところはそのぶんアカウント数が多いわけです。アカウント数が多ければ,繋がりがたくさん作れるわけで。
4Gamer:
うん,そうですね。違うところでまかなえるかもしれませんね。
西山氏:
まかなえるっていうのを,そこは普通に考えながらやるみたいな感じですね。
4Gamer:
なるほど。まぁ話思い切り戻りますが「開発者ってそんなにいたっけ?」というのが疑問だったんです。
西山氏:
スゴロックスを見てると確かにそうですね(笑)。
しかし一口に開発者と言っても,かつて対戦モノを作ったメンバーもいれば,チェンクロ(チェインクロニクル)みたいなの作ったメンバーもいれば,音ゲー作ったメンバーもいて,全員それぞれ違うんですよね。
彼らのパワーをどうやって活かせるかということを重視しますんで,いま新しく付き合っているメンバーのいいところを,ストーカーのように観察して,その強みをうまく使って。
世界一の対戦ゲームを作ってそれが長く続いて,プレイヤーを支え続ける仕組みまで作るというのが僕のミッションです
4Gamer:
そのみんなの「強み」を使った一発目が,なんでゴルフなんですか?
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これ実はですね……いや,違う。ええと,とにかく楽しみにしててください。
片岡氏:
危ない(笑)。言っちゃいそうになってたでしょ今。
西山氏:
そういうことかましてくるんですよこの人。つい流れで言っちゃう。
4Gamer:
何か仕込んでるんですね,やっぱり。ただのゴルフゲームだったらびっくりですけど,逆に。
西山氏:
ちゃんとあります(笑)。
まぁあと言い方難しいんですが,オリジナルを作るといっても,完全オリジナルではないです。すごく暴論ですが,ゲームって全部なんかの派生ですしね。
4Gamer:
それこそコンピュータRPGは全部WizardryとUltimaの子孫でしかない,という話ですか。
西山氏:
そう。だから新しい体験のエンジンで,ご縁がいただけそうなIPとか,そういうので動きたいですね。あとはまぁ「お,このテーマを扱うんだ」みたいなものとかを着々と増やすべく,個別に交渉に入ったりしてます。
4Gamer:
IPを作ったりする方向は?
片岡氏:
結果的に,そういうことにもなってきますよね。今のはIPをお借りしてそれを使わせていただくという話でしたが,自分たちでスタートで……ということもありえますよね。
4Gamer:
片岡さんのビジネスにオリジナルIP加わったら,かなり強力ですね。
片岡氏:
おっしゃる通りで,それはどこかで必ずやっていきたいと思いますし,それがゲラッパから出るというのも,十分あり得ると思います。はい。
4Gamer:
できそうですか。
西山氏:
そうですね。なんだろう……何かラインを引いていただければ,それを因数分解して,1本で足りないかなとか,2本あればいけるかなとか,まぁそういうのは調べれば出るんですよ。
例えば任天堂がいま時価総額は15兆くらいだよねとか,Activisionが8兆でMicrosoftに買われたねとか,そういうのを調べていけば,どのぐらいのポートフォリオで一位がとれそうって分かるじゃないですか。
4Gamer:
まぁそうですね。
西山氏:
でも片岡さんの「70兆」っていうのはさすがに。僕たぶん,やれて1兆か2兆だと思うんです。でもそれが4兆とか5兆とかっていう話になるんだとしたら,こういうラインが必要でこれくらいのボリュームですけど,どうしますか? みたいな話になるんですよね。
4Gamer:
その規模の数字になるならやはりIPなくして語れないのでは?
西山氏:
そう,少なくともIPは作りたいよね。
IPを作るには,直近だとこういうゲームがこういうIP化してた……例えば「妖怪ウォッチ」だったらこういうやり方をしてたよね,とか。それはこうやるとこれくらい続いて,このやり方をするとこれくらい……とかっていうのも,まぁ言うのは出来ますが,でもそれってもはやAIでも答えてくれるような内容ばかりですよね。
4Gamer:
まぁそうかもしれません。
西山氏:
まぁAIが出してくるような会話でもベースは作れるし,あとはそこに,GENDAと一緒にやらせていただくんだったら,こういうことをしたほうがお客様にとっていいだろう,みたいなのはアイデアを出す話です。
それはたぶん僕,まあまあ得意だから。なんとかします。
4Gamer:
なるほど。片岡さん的には,ここ以外でIPを起こす算段ってしてるんですか?
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例えばグループで言うとギャガ(GAGA)は,自分たちでオリジナルのものを作るチャレンジしたりしてますし,いくつかそういうチャレンジも始まってはいます。※でもゲームを通じてというのは,もちろん初めての取り組みです。
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4Gamer:
別なところでIPができたら,逆にそれをこっちに持ってこれたりしますし,そういう一気通貫型も楽しそうだなという気はします。ゲーセンが独自にIPを持ってるみたいな。
そういえば出資比率何%でしたっか。
片岡氏:
これ公開してたっけ……してるか。14.9%です。
4Gamer:
思ったより小さかったです。
片岡氏:
ちょっといろいろあるんです(笑)。
4Gamer:
ほかのところは結構マジョリティ……っていうか100%が多いですよね。なぜここだけ15なんでしょう?
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やはりすごく特化した専門分野であるということは大きいですね。なのでいろんな議論をする中で,このぐらいのパーセンテージが一番,当初は心地いいんじゃないかなと。
でも未来永劫このままかというのは,やりながら一緒に考えていこうと。
4Gamer:
なるほど心地良さ。出資される側としては結構重要ですよねそれ。
西山氏:
心地良さっていうとアレなんですが。
これ,世界一になるというのがベンチマークの中に置かれている状況で,得意なものが違うからこういう話になったんだと思います。得意なものがめちゃ近いと,たぶんそんなに仲良くなれないと思います。
片岡氏:
ですね(笑)。
西山氏:
得意分野はやっぱり違うので,本当に2人が中に入ってあれこれ始めると,当たり前ですが片岡さんの許可を得ながら仕事をすることになるじゃないですか。すると“片岡さんのスピード”になるんですよ。
4Gamer:
あぁ……ありますね,そういうの。
西山氏:
いずれはそうなってもいいんですよ。だって片岡さんの方が器がでかいんだから。
片岡氏:
変なところで褒めないでください(笑)。
西山氏:
いずれそうなっていいとしても,今は少なくとも,僕もいろんな動きが高速にできるということで。それを片岡さんの方でご理解いただいて,今回の比率に至りました。
4Gamer:
なるほど。
西山氏:
結局,ある意味それなりの責任を負わせていただいてるわけで,逆に片岡さんの持ってるものじゃないものを僕が持ってこれないと,たぶんぜんぜん面白くないと思います。
4Gamer:
なるほど。確かにそこが100%になると,そういう動きにはならないですよね。
西山氏:
そうですね。100%だと,やはり親会社の戦略ありきの判断になっちゃうんで。もしかしたら今は,そこの「目指すところ」が違うのかなっていう風には思います。
4Gamer:
なるほど。
西山氏:
まぁそうは言っても全然ロール(役割)が違うから,いずれフュージョンしてもいいですよね。そして僕は,世界一の対戦ゲームを,僕が僕の力だけで僕の会社でやりたいなんて言ってないんですよ。
4Gamer:
そういえばそうかも? わざわざ聞いたことはないですが。
西山氏:
わざわざ言ってないですしね(笑)。まぁどうでもいいんですよ,そんなの。どこでやろうが,僕がプロデューサーで世界一の対戦ゲームを作れればいいんです。
4Gamer:
「作る人」ですねえ。
西山氏:
世界一の対戦ゲームを作って,オリンピックのメイン種目になれるかもしれない。そしてそのタイトルが10年とか15年とかずっと続くようなものになってて,そこを支えてくれるプレイヤーを支え続けられるような仕組みまで作るというのが僕のミッションなんで,それはやりきりたいですね。
4Gamer:
そうなると,「影響はあるけど,影響下には置かれない」といういい感じの数字ですね,14.9%。
片岡氏:
実はほかにも少額出資をしている会社あるんですよ。
4Gamer:
あれ,あるんですね。知らなかったです。表に出てないので見えないだけですか。
片岡氏:
はい,一覧のところに並べてないだけで。
4Gamer:
GENDAってびっくりするくらいプレスリリースが大量に来るんですよね。「あれさっき見なかったっけ?」と思ったら全然違うネタでよく驚かされます。
片岡氏:
そう言ってもらえるのは嬉しいですね(笑)。
(横にいた広報担当氏も頷いている)
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ゲーセンでしかできない遊び方を提案してきたけど,その「ここでしかできない」をやりすぎてしまったという反省があります
4Gamer:
しかし,おかげさまで何となく全体像が見えました。
組み合わせだけ見るとちょっと違和感あるんですよね。なんでGENDAが開発会社を持つんだろう? という。広い枠で見ないと,全然ダメですね。
西山氏:
もしかしてちょっと忘れてるのかもしれないけど,結構,ゲーセンタイトル作ってたからね?
4Gamer:
さすがに忘れてませんよ(笑)。
西山氏:
そういうこともあったんだよ! 本当だよ!
4Gamer:
いや,だから「ゲーセンのゲーム作るのかな」って思っちゃうわけですよ。西山さんといえばアーケードの人でしょう? 僕だけかな。
西山氏:
あー。
4Gamer:
いまからゲーセンのゲームを作るためにわざわざ開発会社に投資するの? とか,ゲーセンのゲームじゃないんだとしたら,言い方がアレですが片岡さんとしては別に誰でもいいだろうし,いまゲームの開発者は結構フリーの人が多いので,なんでわざわざスゴロックスと……というか西山さんと組んだのかな,とか。
西山氏:
うーん,なるほど。
僕は……前ゲームセンター向けにゲームを作っているときに,「ゲームセンターでしかできない体験」をどうやって作ろうかと考えてちょっとやりすぎたんですよ。
4Gamer:
やりすぎた,とは?
西山氏:
あのときの発想や思想は間違っていなかったと思います。僕の作るゲームは,ゲーセンでしかできない遊び方を,ずっと提案してきてユーザーさんも付いてきてくれたんだけど,その「ここでしかできない」というのをやりすぎたんです。外に対してのアピールがあんまりなかったんですよ。
4Gamer:
正直それはちょっと感じます。アーケードゲームって,ゲーム業界の中でもとくに「閉じたところ」にいる気がします。我々でもちょっとアクセスしづらいと言いますか。
西山氏:
それで結局,僕の中ではゲームセンターのビジネスモデルがシュリンクしていく方に持っていっちゃったような感じが自分ではちょっとしてて。もしかしたら自意識過剰かもだけど。
だからユーザーは幅広く,グローバルにコンシューマやモバイルや,Steam使ってやりましょう,とか。ゲームセンターは人と人が出会える場だから,特別な体験ができますとか。そこにおける「場」を提供できるのが片岡さんなので,僕はまず「グローバルで売れる機会」を作らないといけないんですよ。
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4Gamer:
アーケード……いわゆるゲーセンという話だと,アジア圏のほかの国ってどんな感じなんでしょう。
片岡氏:
結構日本と同じような流れがあるんですよね。
いわゆるビデオゲームは少しシュリンクしていきながら,プライズゲームがすごく伸びています。ゲームセンターという括りで言うならば「すごく勢いがある」というのが,日本の状況だとご理解していると思うんですが,まさにこれと同じことが起こっています。
4Gamer:
アジア諸国で言うと,どこが一番ブレイクしてます?
片岡氏:
プライズゲームという意味だと,中国とかはもうとんでもなく伸びてますよね。本当に「とんでもなく」というのが一番いい表現だと思います。
4Gamer:
みんなあんなにmaimai大好きなのに……。ではさっき話してたタイあたりはどうでしょう。
片岡氏:
僕,前職であるイオングループのイオンファンタジーで,中国,マレーシア,タイ,ベトナム,インドネシア,フィリピン,カンボジアにお店を作っていってまして。
4Gamer:
はい。
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それぞれの国でどうなっていたかをずっと見ていたんですけど,そこで1つ気付いたことがあるんです。
それぞれの国の,文化の違いとか経済的な違いとかそういうものはあるけれど,遊びに対する「何を面白いと思うか」というのはそんな変わらないんですよね。日本人が面白いと思うものは,アジアのみんなも面白いと思うんです。これ割と共通してましたね。
4Gamer:
それ意外と忘れがちなんですよね。
まぁ忘れがちな理由も分かります。じゃあインドネシアの子と日本の子が,面白いと思うものが本当に同じなのかと問われても,おそらくみんなピンと来ない。
片岡氏:
ふふふ。
西山氏:
制作側として一番きついのは,思ったよりハードのスペックが違うということで,これは本当にきついです。
4Gamer:
あぁスマホとかそうですね。
西山氏:
やっぱり日本に比べてスペックが低いとか,回線がちょっと不安定だとか,どうしてもあるわけですよ。
4Gamer:
まぁそれはそうですよね。
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あと“課金圧”の問題は無視できないと思いますよ。課金に対する許容度というか,そういうものって国によって全然違うんですよね。圧が強すぎるとアンチ化して,それがもう半端ない数になることもありますし。
4Gamer:
アンチになるんですね。
西山氏:
台湾とか日本は比較的「まぁビジネスでもあるしね」っていう感覚を持ってもらえますけど,ほかのアジア圏だと「このタイミングでもうお金を取るの?」って反応になってしまったり。
4Gamer:
ほー。
西山氏:
「9割くらい遊ばせてくれたらお金払う」みたいなこと言ってくれるんですが,いやいやそれさすがに(笑)。
4Gamer:
それはなかなかすごい(笑)。課金っていうかお布施に近そうですね。
しかしそうやって日本から出しているものが,向こうでみんなが面白いと思ってくれて,評価してもらえる,遊んでもらえるということは,逆も真なりなんですかね。向こうのものを,僕らも面白いと思うのかどうか。
だとしたら,もしかしたら向こうのものを持ってきてゲラッパでパブリッシングするとかも可能でしょうし,一方通行じゃなくなるのは,それはそれで楽しそうだなと。
片岡氏:
おっしゃる通りですよね。世界中で面白いものを見つけてきて,それをほかの地域に持っていくというのも,やれたら面白そうです。
西山氏:
ゲラッパはスタートアップで少数精鋭だから,リスクも抑えつつ,地域ごとの基準や文化に合わせてフットワーク軽く動けるのが強みだと思ってるんです。なのでまぁそういう柔軟性があるから,逆輸入的な展開も十分可能だと思いますよ。
4Gamer:
いいですよね。どうしてもやっぱり,外へ出そう出そうって思っちゃうんですけど。
そういえばさっきちょっと話してた1作目のゴルフ以降,いまある予定では何作ぐらいあるんですか。
西山氏:
4作。
4Gamer:
(片岡氏へ向かって)2,3,4作目の内容は聞いてらっしゃいます?
西山氏:
もちろん。
片岡氏:
前,いくつか聞かせていただいたけど,その順番がどう入れ替わってるのかなど,たぶん日々考えてらっしゃると思うんですけど。
西山氏:
……もしかして4作目について言ってないかもしれないと,いまちょっと後ろめたい気持ちになってます。
片岡氏:
3つで聞いてますね。
(一同笑)
4Gamer:
教えてないじゃないですか(笑)。
西山氏:
あとで必ず……。
4Gamer:
その3作を聞いたときに,いけそうって思いました?
片岡氏:
「面白いですねえ」というのはすごく思いました。
4Gamer:
その「面白い」はきっとゲームメカニズム的な話じゃないですよね。視点的なものとか構造とか,そのあたりどこで面白そうだと思ったんでしょう。
片岡氏:
そういう意味で言うと……2作目,3作目の案も,何かと何かの掛け合わせなんですけど,その掛け合わせが面白いなという。
そのIPをここに持ってくるんだ? みたいな。例えばの話ですけど,そういうことですね。
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4Gamer:
リリースではまだ出せなかったんですねきっと。
西山氏:
いろんな制約がありすぎまして……。
4Gamer:
しかしお互いの理解もありそうですし,この先もいい感じで回りそうですね。
西山氏:
いわゆるコンソールゲームとかSteamとは違いますが,GENDAは日々エンタメの現場でゲームそのものを直接扱っている会社なんですよね。
だからこそ,僕とのシンクロ率は圧倒的に高いと思っていて,ここ以上に感覚が合う会社はなかなかないんじゃないかと感じています。
4Gamer:
シンクロ率なるほど。 あとまぁ「色」がないのがいいですよね。
西山氏:
そうですね。たとえば大手ゲーム会社だと「その会社しかできないこと」や「その会社の都合」で物事が決まってしまうことも多いですが,GENDAはそういう縛りがなくて、発想の幅がとても広い。
その柔軟さも含めて,僕らの考え方をちゃんと理解してくれているのがありがたいです。
4Gamer:
そのやりやすい環境で最初のゴルフを出すのはいつですか?
西山氏:
目標は1年以内,ですね。なんとなくですけど,1年以内とかで出せれば「あぁちゃんと動いてるな」と思っていただける気がしてまして。
4Gamer:
まぁメディア的にもそうかもしれません(笑)。しかし速度がインディーですね。
西山氏:
僕早いですよ。本当にバーッて一直線に作りますから。
4Gamer:
まあでもこのご時世に3,4年かけてもちょっとツラいですしね。
西山氏:
マーケットの変化が速すぎてね。
あと時間かけると,競合がどんどん太くなっていくんですよ。
4Gamer:
競合。
西山氏:
対戦ゲームで言うとSupercellとかRiotとか,3,4年でどんどん太くなっていくんです。
最初50億で作ったとしても,その後売れちゃって,売れに売れて,もう150億のパワーになってたりするわけです。それかなりきついんですよ。10年後だったら「世界一取る」って冗談でも言えないかもしれない,と思うぐらい。
4Gamer:
でも今なら言える?
西山氏:
今なら言えますね。全然いけると思ってます。
4Gamer:
対戦ゲームで天下を取れるって言える人はなかなかすごいのでは。
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MMOで取れるとは絶対言わないですけどね(笑)。分からなさすぎて。
対戦ゲームだったら取れると思うと思います。対戦ゲームは元々のゲームセンター文化も含めて,人間と対面で戦って100円玉積むみたいな,元々日本のものですしね。
4Gamer:
そうですね。
西山氏:
アジア各国のプレイヤー達は,まだ信じられないくらい盛り上がってますしね。
だからそこに,それこそ20年前30年前の基準のゲームをただ出すだけでもいいくらいなのでは,と思ってます。熱量が段違いなので。マネタイズが続かないとか運営が持たないとか,それはどこかにラインを引くだけですし。
4Gamer:
しかも今回は「場所」がありますよ。
西山氏:
そういうのを取りにいくつもりです!
4Gamer:
ではまずは1作目に期待しながら,その後の展開も。たぶん普通のゲームパブリッシャーにとどまるつもりはないんでしょうし。
片岡氏:
そこはそうですね。
4Gamer:
GENDA含めた取り組みとして大きくなっていくことを期待しております。
ありがとうございました。
――2025年6月27日収録
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