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印刷2025/07/04 18:42

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「ドラゴン桜」の三田紀房氏と担当編集・佐渡島庸平氏が,宇宙スタートアップを手掛ける岡島礼奈氏と登壇。漫画とスタートアップの共通点を探る

 国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS2025」の2日目となる2025年7月3日,京都市勧業館みやこめっせ内のステージで「漫画が紡ぐ物語とスタートアップの幸せな関係 - 『ストーリーテリング』が進める新規事業の社会実装」と題したセッションが行われた。
 
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 宇宙スタートアップ会社ALEの代表取締役社長である岡島礼奈氏と,「ドラゴン桜」「インベスターZ」などで知られる漫画家の三田紀房氏が登壇し,コルクの代表取締役社長である佐渡島庸平氏がモデレーターを務めた。

 佐渡島氏は,講談社時代に「ドラゴン桜」の編集を担当し,現在はクリエイターのエージェント会社コルクを経営している。
 セッションの冒頭で同氏は,ビジネスにおいて「エモい」「かっこいい」といった感情的な価値が重要になってきていると指摘した。

 岡島氏のALEは,人工衛星から粒子を放出し,流れ星を人工的に作り出す事業を展開している。2011年の創業から14年が経過し,これまでに人工衛星を2機打ち上げたが,最終段階での誤作動により,まだ流れ星の実現には至っていないという。
 同氏は,大阪・関西万博でのインスタレーション展示や,2029年に地球に接近する小惑星アポフィスの探査計画といった取り組みも紹介した。

 三田氏は,佐渡島氏との関係について「『ドラゴン桜』の立ち上げ時,彼は東大を出たばかりの22歳の新入社員だった」と振り返る。
 その後,佐渡島氏が独立してコルクを立ち上げる際に,「何を書いているかさっぱりわからない企画書」を持ってきて,最終的には一緒に「インベスターZ」を始めたというエピソードを披露した。

岡島礼奈氏
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 岡島氏は,流れ星にこだわる理由について問われ,「根底にあるのは科学をなんとかせねばならぬという思い」だと明かした。事業仕分けで予算が削減される様子を目の当たりにし,国に頼らずに科学に貢献できる持続可能なプロジェクトを作りたかったという。

 「流れ星は,みんなが空を見上げれば見える宇宙開発なので,絶対に面白いと思って始めた」と語る岡島氏。佐渡島氏は「よくそこからスタートできたなぁ」と感心する。岡島氏は「ほどよく無知だったのが良かった。宇宙工学の専門家だったら,多分できなかったと思う」と振り返った。

 三田氏は「インベスターZ」において,投資の漫画を描こうとしたのではなく,私立学校の経営難という話から入った。
 「投資をテーマにすると,『投資家が100億儲ける』みたいな話になりがちだが,学校から始めたほうが読者が共感しやすい」と,三田氏は語る。テーマをあえて違う視点から描くことを意識しているという。

 岡島氏は,科学の重要性を訴えても一般の人には刺さらないという課題を挙げ,「クリエイターは一般の人に刺さる方法を考えている。自分にはそれが足りない」と語る。万博への参加も,より多くの人に伝える方法を模索する一環だという。

 三田氏は,岡島氏が天文学の専門家で人工衛星の専門家ではないことが強みだと指摘する。「人工衛星の専門家だと,人工衛星のことばかりに集中して周りがついていけない。天文学の立場から語った方が,違う分野の人も『この人と一緒にやれる』と感じる」と分析した。

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 漫画のストーリーテリングで大切なことを問われた三田氏は,「もうキャラ10割。読者が『こいつがどうなっていくのか見たい』と思うフックが1話目にないと100%失敗する」と,キャラクターの重要性を強調した。

 この話を受けて岡島氏は,「スタートアップも初期段階では『このキャラクターいい』と言って応援してくれる人がいる。でもシリーズBくらいになると,キャラクターはいらなくなってくる」と,起業家のキャラクターについて言及した。

 佐渡島氏はこれに対し,「個人のキャラクターから法人のキャラクターへの移行が重要」と応じる。「創業者が個人としてストーリーを作っている間はまだ法人じゃない。法人がキャラクターを持ち出したときに会社が伸び出す」との見解を示した。

 三田氏は,「世界的な企業は,ジェフ・ベゾスやスティーブ・ジョブズなど創業者がセットになっている。そこがビッグになっていく最初のファーストステップ」と,創業者のキャラクターの重要性を指摘。漫画も起業も,キャラクターが鍵を握るという共通点を示唆した。

 事業領域の広げ方について,三田氏は「漫画がヒットしたあと,追いかけてくる作品をどうブロックするかが大事」と語り,先手を打ってテリトリーを確保しておく戦略を明かした。ドラゴン桜では受験だけでなく子育てや教育全般を,インベスターZでは株式投資だけでなく保険や不動産まで扱ったという。

 岡島氏は,流れ星発生装置が小惑星探査にも使えることを例に挙げ,「根底にあるのは科学に貢献できるかと,自分たちが楽しいと感じるか」だと領域選定の基準を語った。自身のゴールドマン・サックスでのキャリアについても触れ,「楽しく遊ぶためにはちゃんと稼がないといけない」というバランス感覚の重要性を強調した。

三田紀房氏
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 セッション終盤で,三田氏は自身が関わるスタートアップビジネスとして,東京都世田谷区豪徳寺の「旧尾崎テオドラ邸」を紹介した。
 築137年の洋館を修復し,2024年3月にリニューアルオープンした施設は,1階がカフェとショップ,2階が漫画の原画を展示するギャラリーになっている。

 これは,漫画家仲間の山下和美氏らが始めたプロジェクトで,三田氏も修復費用の一部を負担。建設費の高騰を受けて,高橋留美子氏,福本伸行氏,高橋のぼる氏からも資金を募った。
 「やるからには成功したい。漫画家ネットワークを生かした原画の販売に可能性を感じている」と三田氏は意気込む。

 最後に三田氏は,旧尾崎テオドラ邸で販売中のグッズとして,漫画「愛と誠」(原作:梶原一騎,作画:ながやす巧)の名言「君のためなら死ねる」が書かれた手ぬぐいを紹介。持参した10枚を賞品として「じゃんけん大会」を開催し,会場は大いに盛り上がった。

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