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エンタメ領域のM&Aについて,MIXIやバンダイナムコの投資担当者たちが語る。買収後にキーマンに辞められないためには
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登壇したのは,ParadeAllのCEOである鈴木貴歩氏,MIXIの上級執行役員である奥山 翔氏,Coalisのジェネラルパートナーである原田明典氏。モデレーターは,バンダイナムコエンターテインメントのプリンシパルである松田愛里氏が務めた。
松田氏は自己紹介で,バンダイナムコエンターテインメントがエンタメ特化型CVCとして国内外に出資していることを説明。ウタイテやPlott,Million Productionなどコンテンツ・IP関連の出資実績があり,今期からM&Aを強化する方針だという。
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奥山氏は,MIXIで投資事業とスポーツベッティング事業を担当している。同社は2019年からM&Aを積極的に進め,FC東京や千葉ジェッツふなばし,競輪サービス「チャリロト」,競馬メディア「netkeiba.com」などの運営会社をグループに迎え入れてきた。
内製では難しいプロスポーツチームの運営や,長い歴史を持つ競馬メディアの強みを獲得するためにM&Aを選択したそうだ。
こうした動きがボトムアップなのか,トップダウンなのか松田氏が尋ねると,奥山氏は「代表の木村が『スポーツをやりたい』と意向を示し,それに対してボトムアップで複数のシナリオを提案した」と説明した。
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松田氏が東証の新基準による「100億円問題」について話を振ると,原田氏はスタートアップ市場の変化について言及した。巣ごもり需要の終結で市場が衰退するなか,追い打ちをかけるように,上場という逃げ場が塞がり,各社は上場ではない成長の道を模索するようになったという。
グローバルのM&Aトレンドがテーマになると,鈴木氏はBTSの所属事務所であるHYBEが,ミーゴスを擁するQC Media Holdingsや,スクーター・ブラウン氏が経営するIthaca Holdingsを買収し,グローバル展開を加速させた事例を紹介した。
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鈴木氏はこれに同意し,M&A後の統合プロセスは,キーマンをリスペクトしなくてはならないとした。
奥山氏は,それぞれに人生プランがあるので,話し合いの結果としてキーマンが抜ける場合は,抜ける前提で戦略を考えるそうだ。また,キーマンのように見える人でも,よく仕事ぶりを見てみると,その人ではなく,その人を支える部下が優秀だったというパターンもあるとした。
原田氏は,上場の問題と同じで,出口を作らずに成長を目指すことが重要だと語る。契約をゴールにして交渉するのではなく,地道なすり合わせを繰り返し,キーマンの行き詰まりを解消するしかないという。
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原田氏は,新世代の経営者が旧来のエンタメ産業を買収してアップデートする流れが加速すると予測する。インターネットで完結するものは規模が小さいので,数千億円規模のイノベーションを作るには,デジタルにセンターピンを置きつつ,旧来の産業とつなげなければならないという。
鈴木氏は,クロスボーダーM&Aの活発化に期待を寄せ,ソニーによるCrunchyroll買収を「日本のアニメカルチャーが世界に出るうえで大きな貢献」と高く評価した。
セッション終盤では,M&Aに取り組む事業会社へのアドバイスが語られた。鈴木氏は,世界中を回ったことで,世界中に起業家がいることを実感したという。インドやアフリカのように,自力で進出するのは難しいところに金脈が眠っていると考えるなら,M&Aは有効な選択肢だとした。
奥山氏は,原田氏の「イグジットにしない(出口を作らない)」という発言が印象に残ったとセッションを振り返る。ベストパートナーを探すことが重要だとし,最初は起業家が不満を言ってきても,1か月くらい経つとカルチャーに馴染み,角が取れることもあるという。
原田氏は最後に,「預金を貯めたままの企業と,今こそチャンスと思える企業に二極化していく」と指摘。失敗を恐れずに行動すれば,10年後の業界地図を大きく変えられるだろうと,事業会社に向けてエールを送った。
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