
プレイレポート
用意された選択肢はない。AIとロールプレイを楽しめる「キャラぷ」で貴族同士の権力争いを体験した
体験型AIチャットサービス「キャラぷ」,6月10日にリリース。自分の理想のキャラクターを文章入力によって簡単に作成できる

リートンテクノロジーズジャパンは本日,体験型AIチャットサービス「キャラぷ」を6月10日にリリースすると発表した。本サービスでは,自分の理想のキャラクターを文章入力によって簡単に作成できるそうだ。性格や話し方も細かくカスタマイズ可能で,多様なキャラクターや,高度な対話能力などを特徴としている。
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- 編集部:Akasaka
そんななか,人間のゲームマスターが担っていた役割をAIに任せることで,誰でも1人で自由なロールプレイが楽しめるコンテンツを多数用意しているのが,リートンテクノロジージャパンが2025年6月10日に提供を開始した「キャラぷ」というサービスだ。
「キャラぷ」は,あらかじめ用意されたキャラクターや,プレイヤーが作成したAIキャラクターと,チャット形式で会話やゲームを楽しめる,エンターテインメント用途に特化したAIサービスとなっている。
ChatGPTのようなツールでもキャラクターとの対話は可能だが,キャラぷはキャラクターごとの細かなカスタマイズ機能と,直感的に操作できるインタフェースを備えているのが特徴である。
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実際のプレイ体験――「闘争の覇者」で感じた没入感
それでは,実際に「キャラぷ」で筆者がプレイしたゲーム「闘争の覇者」を例に,どんなゲームプレイができるか紹介していこう。
「闘争の覇者」は,貴族同士の権力争いを描くシミュレーションゲームだ。プレイヤーを含めた5人の貴族による権力闘争が楽しめる。プレイヤーは,AIのゲームマスターの進行に合わせ,必要に応じてチャットで指示や行動を示していく。
本作では,AIがゲームマスターだけでなく,筆者以外の4人の貴族キャラクターの思考と行動もシミュレートする。そのため,実際のTRPGさながらに緊張感ある駆け引きが繰り広げられる。
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ゲーム開始時,筆者は権力,財力,軍事力のすべてのパラメータでほかの貴族に劣る状況からスタートした。まずは経済政策で基盤を固めようと試みたが,軍事力不足の隙を突かれ,「ヴァルデマー」という貴族から攻め込まれてしまった。
このような経済政策や軍備増強といった定型的な選択肢は,多くのシミュレーションゲームで用意されているし,その結果に応じてほかの参加者から攻撃を受けるのは従来のゲームでも定番の体験だ。
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しかし,ここからがキャラぷの真骨頂である。筆者は「降伏しつつ,虎視眈々と反撃の機会を探ります」と入力した。すると,こんな返答が返ってきた。
「あなたは内心で復讐の炎を燃やしています。今は耐え忍び,力を蓄えるときだと自分に言い聞かせます。ヴァルデマーの横暴を見過ごすことはできません。必ずやこの屈辱を晴らす機会は訪れるでしょう」
実に柔軟な進行ではないだろうか。プレイヤーの入力に合わせたこれほど創造的な応答は,これまでのコンピュータゲームでは実現困難な表現だったはずだ。
この創造的な応答はこのあとも続く。筆者は反撃を狙うため,単に「軍備増強をする」ではなく「ゲリラ戦を仕掛けるために軍事力の強化をします」と,より具体的な戦術を入力してみた。
「あなたは再び密かに兵を集め,山間部などに潜伏させて訓練を開始します。ヴァルデマーの兵の目を欺くため,少人数での分散訓練や夜間訓練を行います。限られた資金で武器や食料を調達し,ゲリラ戦に備えます。
……数週間が経ちました。
あなたのゲリラ部隊は少しずつ力をつけました。ヴァルデマーの正規軍には遠く及びませんが,小規模な奇襲や撹乱には対応できる程度の軍事力が整いました。しかし,いつヴァルデマーに気づかれるか,常に危険と隣り合わせです」
プレイヤーのイメージしたアクションに対し,詳細な状況描写と共に応答が返ってくる。
さらに複雑な戦術も試してみた。「ヴァルデマーの補給線が切れたことを民衆に伝え民兵の蜂起を煽り,レオノール(筆者の同盟プレイヤーの名前)の兵士の士気を上げ,正規軍と協力して一点突破でヴァルデマーの軍隊に攻撃します」という長い指示を入力してみる。
「あなたのゲリラ部隊,立ち上がった民兵,そしてレオノールの援軍が,ヴァルデマー軍の一点に集中攻撃を仕掛ける準備が整いました。
鬨の声が響き渡ります! ゲリラ部隊が森から飛び出し,民兵が農具を手に突撃し,レオノールの兵が槍を構えて進軍します。奇襲と数の暴力,そして何よりもヴァルデマー軍の兵站の乱れが味方しました」
このように自由なアクションと,それにあわせた丁寧な状況描写が返ってきた。筆者の頭の中には,この状況がビジュアルで自然と浮かび上がってくる。
もちろん,さらに自由な選択も可能だ。例えば,このゲームには貴族同士の会議というフェーズもあるのだが,議題に対して賛成や反対を選ぶ以外にも,発案者に殴りかかるような突拍子もない行動も選択できる。
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当然,人間がゲームマスターを務めるTRPGなら,そういった行動も可能だっただろう。これをAIにやらせる,それがこの新しい遊びの面白さだ。
映像も音も,キャラクターボイスもないが,それでも没入感は驚くほど深い。プレイヤーの自由な選択に応じてAIが描く情景は,小説やTRPG,ゲームブックのように丁寧かつ想像力を刺激してくれるからだ。あらかじめ決められた映像ではない,自分の頭に浮かぶ“物語”はゾクゾクするものがある。
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課金体系の課題と将来性
一方で,気になるのは課金体系だ。キャラぷでは1チャットごとにゴールドが消費される。より高性能なモデルを使った「スーパーチャット」は1会話8ゴールド,コストと性能を抑えたモデルを使った「パワーチャット」は1会話3ゴールドだ。
基本的に1ゴールド=1円相当なので,1度のやりとりで8円または3円のコストが発生することになる。
今回プレイした「闘争の覇者」ではパワーチャットを利用し,ゲームプレイからクリアまで29回のやりとりが発生した。つまり1プレイが約90円という計算だ。この価格自体は決して高くないが,当然,ゲームが長引くとその金額は膨らんでいく。
特定の条件を達成するとゴールドが獲得できる仕組みもあるが,それなりにゲームをプレイするためにはゴールドを購入することが必須となる。
やはり,買い切りゲームと比較すると従量課金は抵抗感があるし,基本プレイ無料のモデルのゲームと比較しても,ゴールドがないとゲームを遊べないというのは少なからずハードルになるだろう。
これは,AIを利用するための原価が発生するためだが,技術進歩によりAIモデルが改善されれば,もっと安く,プレイしやすく,さらに創造的な遊び方ができるのではないだろうか。
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本サービスの魅力はテキスト+AIだからこそ実現できる自由な描写や選択肢にある。これは従来のコンピュータゲームとは一線を画す,想像力と創造性に満ちた体験をプレイヤーに提供してくれる。
それはゲームというエンタメにおける新ジャンルの登場といえるかもしれない。このゲームが特別なのは,“勝つこと”ではなく,“AIと共に物語を紡ぐこと”にあるからだ。このようにAIを使った新しい遊びが,次世代のエンターテインメントの形として定着する日もそう遠くない未来かもしれない。
「キャラぷ」公式サイト
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