
プレイレポート
“見たくないものが見えない世界”は本当に快適なのか? 新作ADV「D-topia」の舞台となるのは,現在のSNSにも似たAI管理社会[TGS2025]
日本のMarumittu Gamesが開発する本作の舞台となるのは,「最大多数の最大幸福を目指すため,人工知能に完全管理された楽園」。ユートピア計画のもと建設された,AIが管理する施設型居住区の「D-トピア」は,とても暮らしやすい一方で,悩みを抱える住人も少なからずいる。「施設整備士」として働く主人公は,その解決にあたっていく。
そんな本作の雰囲気を確認できたプレイの模様をレポートしよう。
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D-トピアはとても清潔で,しかも“至れり尽くせり”な街だ。朝起きればすでに朝食が用意されているし,外出時には健康チェックもしてくれる。仕事は午前中のみで,午後は自由時間というからうらやましい。出勤途中に住人の話を聞いてみると,この街に住むこと自体が一種のステータスになっているようだ。
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前述したように,主人公は施設整備士という仕事についているのだが,それがどんな仕事なのか,ゲーム開始直後はよく分からない。最初の出勤時には「技能習得」として,数字が書かれたブロックを所定の位置に移動させるパズルのような作業をこなすことになった。
印象的なのは,このパズルのルール説明がほとんどないことだ。さきほど「数字が書かれたブロックを所定の位置に移動させるパズル」と書いたが,そもそもゲーム内にそういった説明はない。最初の仕事では「1」と書かれたブロックと「1」と書かれたスペースが表示されるだけで,「こうすればいいのかな」と,ブロックを「1」のスペースに移動させるとクリア,という感じだ。
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ほかにも,通過させるとブロックに書かれた数字が増えるラインや,ブロックを置くと障害物が消えるスイッチのようなものが出てくるのだが,それらについても説明はなく,試行錯誤しながら自分でルールを見つけていくことになる。
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そんな初出勤が終わり,ファクトリーを出たところで,主人公はローラーブレードで走ってきた青年イービーと激突。彼が落としていった物を届けたところで,今度は目の前にあった店でトラブルが発生した。どうやら店員ロボット「ショップトロイド」が壊れてしまったらしい。
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店長は,主人公が施設整備士であることに気づき,修理を依頼してくるが,ここで施設整備士の仕事内容が明らかになる。D-topiaの人々は,AIによって視覚情報を最適化され,見たくないものを見ずに過ごしているのだが,施設管理士は,端末にあるスイッチで本当の世界(ブロックサイド)に入って問題を解決するというのだ。
いざスイッチを切り替えると,オシャレで明るく清潔感あふれる店内が,薄暗い工場のような雰囲気に。人の言葉をしゃべるネズミも出てきた。
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いろいろと驚きながらショップドロイドを確認すると,パーツの位置がずれてしまっているのが故障の原因だと分かり,さきほどのパズルのような修理作業が始まった。だが難度は明らかに高くなっている。
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なんとかパズルを解いて修理を完了すると,店主は大喜び。だが,この修理作業はD-トピアを管理するAIにとっては好ましいものではなかったようで,主人公が要注意人物としてマークされる……というところで試遊が終了した。
ブースでは,Marumittu Gamesの三橋 彰氏と椎野央子氏に本作について話を聞くこともできたので,その模様もお伝えしよう。
特徴的なグラフィックスは椎野氏の手によるものだが,これはSFでありながらも,氏がもともと好きな「かわいいもの」「まるいもの」を取り入れたものにできないか,試行錯誤した結果だという。
三橋氏によると,パズルの説明が最小限になっているのは意図的なもので,「初めて見た人でも直感的に分かる」「分からなくても試行錯誤するうちに解ける」ものを目指しているとのこと。
そして,「見たくないものが見えない世界」という設定は,SNSからインスピレーションを受けているという。現在のSNSは,評価が高いものや,お金が払われたものが優先的に流れてくる仕組みになっていて,自分が情報を選んでいるようで,実はコントロールされている部分も大きい。その構図を,D-トピアという街として再現しているそうだ。
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今回の試遊に実装されていない本作の要素に「脳内会議」があるが,これは快適なように見えるD-トピアで,生きづらさを感じている住人に対し,施設整備士である主人公が大きな選択を迫るときに行うものだという。その結果,住人がD-トピアを去ることもあるそうだ。
そんな本作は少人数で開発されており,三橋氏は「今回大きな舞台に立つことができたので,多くの人に知ってもらって,遊んでもらえたら嬉しい」と喜びを語った。
椎野氏は「よく『可愛くてほんわかしている』と言っていただけますが,実は違和感や陰があるゲームです」と,“見えていない世界”を匂わせつつ,「パズルをプレイしながら,自分や他人の幸せについて考えてもらえるような,奥深さを目指しています」と意気込みを見せた。
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