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言葉を集め,詩をつむぎ,道を開く。日本の版画のようなビジュアルが印象的な「OKU」は,ひとりの僧の内なる旅を描く趣のあるアドベンチャーゲーム[gamescom]
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まるで日本の版画絵のようなグラフィックスで描かれた世界で,旅の僧が風に乗り,スーッと動き回る。
そんな,ひと目で和の趣を感じさせるビジュアルが印象的である本作が,gamescom 2025のインディーゲームエリアに出展されていた。
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プレイヤーはひとりの僧となり,風に乗って草原をすべり,川を渡り,雲の上を進みながら旅を続けていく。
道中では「風」や「桜」,「湾」といった言葉を自然の中から見つけ出し,それらを集めて詩をつくることが大切になる。
自分の感じたままに言葉を選び並べると,俳句のような詩が生まれ,その詩が力を持って世界に働きかける。すると,閉ざされていた道が開き,新しい場所へと進めるようになる。
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移動にも独特の仕掛けがある。たとえば蓮の花の周りを回ると,白い魂のような光が道の形となって現れる。それをたどることで,歩むべき旅路も見えてくる。
水面を走ったり,雲の上を渡ったりといった幻想的なシーンも多い。そこにはアクション性がありながらも,取り逃すと進めないといった厳しさはなく,気軽に何度も挑戦できるようになっている。
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試遊では,自分が詠んだ詩をプリントアウトしてくれて,1枚は持ち帰り,もう1枚はブース内に貼ることができた。
これは,ほかのプレイヤーがつくった詩が自分の世界に現れ,判子を押すことで共有できるという,ゲームの特徴を表したもののようだ。
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まだ来日したことはないが,日本語は十分に堪能だ。ゲームは教授陣の監修を受けながら制作を進めてきたらしい。
「OKU」というタイトル名は,松尾芭蕉の「奥の細道」から着想を得たが,本作は芭蕉そのものを描くゲームではない。
あくまで俳句を知らない人にも,「俳句のような詩」をとおして日本文化や自然の美しさに触れてもらうことが目的だ。
また言語翻訳の都合上,ゲーム内では日本語の五・七・五の「拍」ではなく,海外の俳句愛好家が用いる575(音節や母音を数える代替方式)をベースにしているという。そのため,本稿でも使っているように,あえて「俳句のような詩」という表現を用いているようだ。
印象的だった僧の動きについては,ロケーション間の移動を簡素化するために,あえてスライドのようなトラバースを選んだのだとか。
実際にプレイすると,その演出は単なる簡略化以上の効果をもたらし,不思議と神秘的な雰囲気をまとって作品全体と見事に調和しているように感じられた。
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「OKU」をプレイして思い出したのは,「Ghost of Tsushima」で祠や石碑を巡り,そして和歌を詠んだ体験だった。自然と向き合い,言葉を紡ぐことそのものが旅の核心となる体験は,単なるゲームの仕掛けにとどまらず,静かな感動を与えてくれる。
日本の版画を思わせる美しいビジュアル,風に乗る僧の神秘的な移動,そして言葉によって道がひらける仕組み。いずれも独特でありながら,どこか懐かしさを覚える。
俳句や日本文化に関心がある人はもちろん,静けさとの中で自己を見つめ,探究するようなゲームを求めている人におすすめしたい1作だ。
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OKU
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