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「愛よさらば」プレイレポート&インタビュー。自分が描いた絵をAIが評価する,ユニークな仕組みを持った意欲作[BitSummit]
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印刷2025/07/20 14:40

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「愛よさらば」プレイレポート&インタビュー。自分が描いた絵をAIが評価する,ユニークな仕組みを持った意欲作[BitSummit]

 2025年7月18日〜7月20日まで,京都市勧業館みやこめっせで開催しているインディーゲームイベント「BitSummit the 13th Summer of Yokai」に,プレイヤーが描いた絵をAIが評価する「愛よさらば」がプレイアブル出展されている。絵を描くというアナログな行為とAIを結び付けた本作について,チームUZZの代表取締役/ゲームデザイナーの池田トム氏に話を聞いた。

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「BitSummit the 13th Summer of Yokai」,チームUZZブース
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 「AI×お絵描き×ノベルゲーム」を謳う「愛よさらば」の舞台は,AIの政府が絵を禁止した100年後の未来となる。ここにはAIに反逆しようとする絵師たちがいて,プレイヤーはゲームをとおして彼らの人生を体験していくのである。

画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / 「愛よさらば」プレイレポート&インタビュー。自分が描いた絵をAIが評価する,ユニークな仕組みを持った意欲作[BitSummit]

 今回プレイした絵師は,未来の工場でお皿に絵を描き続けるロボットだ。「アヒルの絵を描け」という命令を受け,画面にペンでアヒルを描くと,AIが「絵ゴコロ」という謎の採点基準で評価する。ここで描くアヒルはどんな画風でもよく,筆者のように輪郭だけを描くだけでもOKだ。しかもAIは的確に絵を見てくれる。輪郭だけのアヒルの場合は,「形はよく捉えられているが,もう少し細部を描き込むといいだろう」という評価をくれたのだから恐れ入る。


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ロボットは工場長から虐待されつつ,お皿に絵を描く仕事を続ける
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工場長から「アヒルの絵を描け」と命令され,実際に画面に絵を描く(上写真)。AIは絵の特徴をしっかり捉え,的確な評価をしてくれる(下写真)

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画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / 「愛よさらば」プレイレポート&インタビュー。自分が描いた絵をAIが評価する,ユニークな仕組みを持った意欲作[BitSummit]
写真ではタブレットにタッチペンで絵を描いているが,スマートフォンと指を使ってもプレイ可能だ


 ロボットは次々とアヒルを描くように命ぜられるが,調子が悪いせいか制限時間がどんどん短くなり,アヒルどころかまともに線も引けないような状況に陥ってしまう。悩んだロボットは「自由」をテーマに絵を描くことを思いついた。抽象的なテーマだけにどう扱うかは難しいうえ,消しゴムがないため画面はどんどんカオスになっていく。「もう上手に描くなんて考えるのはやめよう」と思いきることができた瞬間,絵を描くことがとても楽しく感じられた。

お題「自由」。山の向こうから太陽が昇り,開放を喜ぶ人々が走っていく図である。こんな絵ともいえない絵でも,AIは絵として認識してくれる。消しゴムがないためやり直しが効かず,画面はいい意味でカオスになるのだ
画像ギャラリー No.010のサムネイル画像 / 「愛よさらば」プレイレポート&インタビュー。自分が描いた絵をAIが評価する,ユニークな仕組みを持った意欲作[BitSummit]


 アナログな行為の極北であるお絵描きに,デジタルのAIを組みあわせることにより,どんな絵を描いても恥ずかしく感じずに楽しめるという印象だ。お題に沿ってさえいればどんな画風で描いてもいい自由なキャンバスでありつつも,「絵ゴコロ」という評価を高めるように描く必要もあるというゲーム性をあわせ持っているのも面白く,非常に個性的な作品であると感じられた。
 そんな本作を手掛けたチームUZZの代表取締役/ゲームデザイナーの池田トム氏に気になるところを聞いてみた。

チームUZZの代表取締役/ゲームデザイナーの池田トム氏
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4Gamer:
 よろしくお願いします。BitSummitに出展されての反応はいかがですか。

池田トム氏(以下,池田氏):
 プレイヤーさんの描いた絵をAIが「絵ゴコロ」で判定するところや,AIと絵師といったテーマが時代性にもマッチしており,意欲作として評価していただいているようです。

4Gamer:
 「愛よさらば」制作のきっかけについて教えてください。

池田氏:
 ゲームクリエイターとして次の一歩を踏み出すべく,「先進技術と独創性を絡める」ことをテーマとしたチームUZZという会社を作りました。いろいろな技術に臆することなく飛び込んで技術者を捕まえ,僕らの世界観とアートを使ってコラボしていこうというのが「愛よさらば」となります。

4Gamer:
 AIと絵をゲームでつなげようと考えた理由は何でしょうか。

池田氏:
 我々がゲームクリエイターであるからです。ゲームクリエイターであり,絵を描く者としては,AIの影響なのか,近年,仕事が減ってきているという肌感があります。そして,このまま未来になったときにどうなるのか……と想像したことが,AIと絵を結び付けたきっかけとなります。
 「愛よさらば」はAI×お絵描き×ノベルゲームで,主人公たちは全員が絵師です。彼らは逆境の中で絵を描きますが,それはAIが進化する中で1枚1枚絵を描く我々と似ているし,革命的でカッコいいと思えたのです。

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4Gamer:
 なるほど。AIが進化している時代性から生まれたゲームというわけですね。

池田氏:
 「愛よさらば」を作った理由はもう一つあり,それは娘が絵を見せてくれなくなったことです。娘はお絵描きが大好きなんですが,あるときから「恥ずかしい」っていって絵を見せてくれなくなりました。子どもなんだから「絵がどう評価されるか」なんてことを考えずに伸び伸びと描けばいいのにと,ショックであると同時に,今どきっぽい感性だな,と納得もしました。
 どこで何をしても誰かと比べられて委縮してしまう風潮があることは,けっこう危険なことだと思います。お絵描きという分野に絞っても,みんなが描きにくくなって絵が減っていくわけですから。でも,描いた絵を人間ではなくAIが見て対話してくれるのであれば,絵を描くということをもっとエンタメ的に面白くできると思うんです。

4Gamer:
 人間ではなくAIが相手なら恥ずかしくなることなく絵を見せられ,それを評価されれば,もっと描いてみようとやる気が出るというわけですね。
 ゲーム的な仕組みとしては「プレイヤーがお題に沿った絵を描くと,AIがさまざまな基準で判断してくれる」という理解で良いでしょうか。

池田氏:
 そのとおりです。

4Gamer:
 AIに絵を評価させるのは,結構難しいのではないでしょうか? ゲームで絵を扱うとなると,お手本のシルエットを示して,これをなぞるようなものになりがちです。しかし,本作はお題を指定されるだけで自由に描いてもいい。時間制限があるだけで,画風も問わないのですから。

池田氏:
 それだけに,AIに絵を評価させるまでには大変な苦労がありました。企業秘密の側面も大きいんですが,我々はAIに自分たち自身や,子どもたちの絵を学ばせています。いわゆる「上手い絵」ではなく,我々が心を込めた絵であると言い換えてもいいかも知れません。写実的な絵でもないですし,ペン1本で描けるドローイング的な絵なので,描き込んだものでもありません。こうした絵を学習させ,さらにチューニングを施すことにより,AIはプレイヤーが描いた絵を評価し,「絵ゴコロ」という数値にできるようになりました。

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4Gamer:
 AIには何枚くらいの絵を学習させたのでしょうか。

池田氏:
 具体的な枚数はご勘弁いただきたいですが,相当な量になります。

4Gamer:
 AIをチューニングする中で,手応えを感じた瞬間はありますか?

池田氏:
 AIをチューニングするうえで,「娘が描いてくれた,いかにも子供が描きそうな可愛い犬の絵」と「僕が描いたちょっとリアルな犬の絵」「AIが描いたすごく緻密な犬の絵」という,画風やデフォルメの度合いが異なる3種の犬の絵を使いました。
 僕としては,子供が描くような犬の絵を高く評価してくれるAIを育てたくていろいろ苦心していたんですが,ついにそのとおりになってくれたとき,確かな手応えを感じました。AIが幽霊というお題を出したとき,「ドラゴンクエスト」に出てくるようなデフォルメされた幽霊を評価してくれるんですよ。

4Gamer:
 AIなのにAIらしからぬ感じで絵を見てくれるわけですね。

池田氏:
 このAIを使うと,いろいろな可能性があることが分かりました。「リンゴにペンを足すと何ができる? さあ,描いてみよう」というような「絵のなぞなぞ」,そしてリンゴの絵が出てきたあとにゴリラやゴーストを描く「絵のしりとり」といった遊びが作れるんです。

4Gamer:
 それは面白そうですね。絵の表現力を問われそうです。

池田氏:
 「愛よさらば」を遊ぶときは,AIがどういう絵を評価するかを探りつつ絵を描いて欲しいですね。時間制限付き,かつお題付きで絵を描いてくれなんていわれることはそうそうありません。こうした条件下で出てくる絵には,自分自身でも見たことがないような一面が現れているんです。

4Gamer:
 本作には複数の主人公たちがいますが,どういった違いがあるのでしょう。

池田氏:
 物語が違うのはもちろんのこと,お題になる絵の難度も変わってきます。また,絵師たちには「愛よさらば」ならではのキャラクター付けをしてあります。例えば,病気の絵師ならせき込んで線が途切れますし,和の絵師なら筆のような線を引き,初めて絵を描く女の子なら画面上でも絵筆をフォークのように握るんです。

4Gamer:
 なるほど。個性=パラメータの数字と考えがちですが,プレイヤーが実際に絵を描くゲームだからこその表現があるわけですね。

池田氏:
 また,獄中で意外なものを使って絵を描くなど,状況がどんどん過酷になっていく絵師もいるので,楽しみにしていてください。

4Gamer:
 今後「愛よさらば」にどんな機能を付けていきたいですか。

池田氏:
 キッザニアの職業体験のように,絵師として絵を描くことを疑似体験できるモードを実装する予定です。例えば,似顔絵描きになり,老若男女のお客さんから「自分の若いころを描いてくれ」「カッコいい感じにしてくれ」といった,いろいろな注文を聞きながら絵を描いていくんです。

4Gamer:
 実際に絵を描くゲームならではですね。

池田氏:
 また,多言語に対応してワールドワイドに展開し,世界中の人に「今日食べたものを描いてください」といったお題を出してみたいですね。日本ならば,お茶碗に盛られたご飯が描かれるでしょうけど,ほかの国の人からはいろいろな食べ物が出てくるでしょう。お互いに「こういうものを食べているんだな」といったことが伝われば,それは文化交流でもあると思うんです。
 また,「ロボットを描いてください」というお題もやってみたいですね。文化圏によってどんなロボット像が出てくるかも見てみたい。

4Gamer:
 なるほど。絵なら言語に頼らないし,いろいろなお題で和やかな交流を楽しめそうですね。ゲームのサービス形態はどのようになるのでしょうか。

池田氏:
 本体は基本無料の広告付きで,絵師たちの物語をそれぞれDLCのような買い切りで出すような方法を考えています。

4Gamer:
 プレイするのに特殊な周辺機器は必要になりますか?

池田氏:
 必要ありません。iPhoneで指を使っても問題なく遊べます。Apple Pencilにも対応していますし,お絵描きに使っているタブレットでプレイできますよ。

4Gamer:
 まずは基本無料で試してみるのもよさそうですね。では,読者に向けてメッセージをお願いします。

池田氏:
 「AIとの未来はどういうものになるだろう」というのは永遠のテーマで,皆さんいろいろなことを考えていると思います。ただ確かなのは,この発展はもう止められないということです。これからどうなるか分からないゾーンに皆で突撃していくという,この状況が非常に興味深いものであることは確かです。
 こうした中で作られた「愛よさらば」ですから,ものすごく面白いものになるのは確定しているので,クラウドファンディングでお力添えいただければと思います。子供から大人まで,そして絵を描くのが好きだけれどいつの間にか描かなくなってしまった……というような人に遊んでもらいたいです。

4Gamer:
 確かに,子供の頃はみんな絵を描いていたのに,いつの間にか描くのを止めてしまったという人は多いと思います。

池田氏:
 そうした人には,「愛よさらば」で,ぜひ絵を描いて欲しいですね。

4Gamer:
 そうですね。絵を描く楽しさを再確認できるようなゲームだったので,伸び伸びと遊んでみようと思います。ありがとうございました。

 「愛よさらば」はCAMPFIREでクラウドファンディングのキャンペーンを展開中だ。興味のある人はサイトをチェックしてみよう。

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CAMPFIREの「愛よさらば」プロジェクトページ


「BitSummit the 13th」公式サイト


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