
インタビュー
[インタビュー]「BIOHAZARD Survival Unit」は,いかにして「バイオらしさ」を戦略ゲームに再解釈したのか。キーパーソン3人に話を聞いた
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「バイオ」をスマホ向けストラテジーにした「BIOHAZARD Survival Unit」,探索パートでシリーズ初期の雰囲気も味わう[TGS2025]
![「バイオ」をスマホ向けストラテジーにした「BIOHAZARD Survival Unit」,探索パートでシリーズ初期の雰囲気も味わう[TGS2025]](/games/926/G092667/20250925107/TN/013.jpg)
「東京ゲームショウ2025」のカプコンブースに,アニプレックスとJOYCITYが共同開発中のスマホ向け新作ストラテジーゲーム「BIOHAZARD Survival Unit」がプレイアブル出展されている。探索パートとストラテジーパートを体験できたので,その内容をお届けしよう。
スマートフォンに特化した戦略ゲームとして,どのようなコンセプトで開発が進んでいるのだろうか。
本作を手がけるJOYCITYから,ディレクターのゲ・ドンギュン氏,事業開発理事のキム・チャンヒョン氏,戦略事業本部長のパク・ジュンスン氏に,「バイオハザードらしさ」をいかにして戦略ゲームに再解釈したのか,話を聞いた。
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4Gamer:
東京ゲームショウはJOYCITYにとって何回目の出展でしょうか。
キム氏:
過去に,「3on3 FreeStyle」の発売時に,SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)と協力してブースを立てたことがあるので,久々の出展です。
パンデミック以降,ゲーム業界のイベントも元気がなくなっていたのですが,だんだん人が増えていき,「完全復活したな」という嬉しい空気も感じています。
4Gamer:
プレイした来場者の反応や,出展してみての感想はいかがでしょうか。
ゲ氏:
この前のgamescomでは,B2Bエリア(エンターテイメント・エリア)にて,さまざまなメディアにお見せしたのですが,一般向けには,今回が初のお披露目となりました。
バイオハザードIPをお預かりしていることへの緊張もありましたが,多くの人が最後までプレイしてくれて嬉しかったです。
4Gamer:
私もブースで試遊させていただいたのですが,初期の「バイオハザード」のような雰囲気のパートもあれば,タワーディフェンスのような戦略パートもあり,いろいろな要素を詰め込んだように感じました。
本作のコンセプトを教えてください。
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もともとは自分たちが作ってきたミリタリー戦略ゲームを「どのように発展させていけるのか」と考えていく中で,ゾンビパンデミックも面白いな,というアイデアが生まれました。
そんなときに,橋本さん※から話をいただき,「バイオハザード」を戦略ゲームとして再解釈してみるという話が進んだのです。
※アニプレックス:橋本真司氏。本作のエグゼクティブプロデューサーを務めている(関連記事)
ただ,あまりにも原作シリーズと異なるジャンルとなるので,戦略ゲームに「バイオハザード」のスキンを被せただけのものにならないよう,「バイオハザード」の世界を楽しめるように多くの工夫をしました。
ゲームプレイでも,原作シリーズに近いものから,戦略ゲームへと段階的に世界が広がっていくようにし,馴染みのある「バイオハザード」でありながら,まったく新しいゲームとしての体験ができるよう心掛けました。
4Gamer:
橋本氏からのお声かけは,実際どういうきっかけだったのでしょうか。
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以前,Disneyと一緒に「パイレーツ・オブ・カリビアン」のIPを使用した戦略ゲーム「パイレーツ・オブ・カリビアン 大海の覇者」を作ったことがありました。
Disneyは,IPの管理とディレクションに関して,世界で一番厳しい会社でしたが,そこで,IPを使用したゲームの作り方を学びました。
その後,私たちはSIEと「3on3 FreeStyle」の開発を始めたのですが,当時,韓国ではコンシューマゲームを作る会社がほとんどなく,開発キットのやり取りをはじめとして,さまざまな問題をSIEと一緒に乗り越えていきました。
2022年に,橋本さんがSME(ソニー・ミュージックエンタテインメント)に合流したタイミングで,私たちの会社を知っていただく機会があったようで。
Disneyと一緒に仕事をしていて,IPを使った経験も多いことから,橋本さんに興味をもってもらい,意気投合しました。
ちょうど,橋本さんが「バイオハザード」とコラボレーションした企画を考えられており,戦略ゲーム化のアイデアをいただきました。驚きはしたものの,開発と事業部で真剣に話し合い,ぜひ,ということで話が進みました。
4Gamer:
「バイオハザード」を題材に,戦略ゲームを作るにあたって,難しいと感じたことや,橋本氏からのアドバイスはありましたか。
ゲ氏:
IPを扱うときは,そのIPの世界観やテーマをどう生かすのか,ということを考えます。パイレーツ・オブ・カリビアンのときは,ワイワイしている海賊をイメージしましたが,バイオハザードは一転してホラーです。
歴史あるシリーズの,洗練された恐ろしさをいかにスマホで再現するかを悩みました。
とくに,スマホゲームは音を消してプレイする人も多いので,ジャンプスケアなどの恐怖演出をどのように実現するのかが,もっとも難しかったです。
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ただ,橋本さんはすでにその点に気づいていて,カプコンさんとも話を進めていたのです。「バイオハザード」の恐怖を再解釈して,「バイオハザード」の世界観を活かした新しい恐怖を作り出してみようとなりました。
音に頼らずに恐怖を演出するうえで,テーマとなったのが「生き残る」ということです。世界が危機的な状況にあって,いかに立ち向かっていくのか,そういった危機感を演出しました。
4Gamer:
今回,アクションや拠点の防衛などさまざまな要素がありますが,それぞれでホラーの演出方法はどう工夫されていますか。
ゲ氏:
まず,「バイオハザード」と戦略ゲームでは,スケール感が大きく異なります。「バイオハザード」は,狭い空間で1人が恐怖と立ち向かいながら,脱出するのがメインのゲームです。
一方で,戦略ゲームは,カメラをもっと引いた広い空間で,多人数対多人数というスケール感です。
「バイオハザード」らしさを演出するために,アクションパートでは,パズル要素と狭い空間からの脱出を再現し,防衛では複数のキャラクターとクリーチャーとの戦闘にフォーカスし,ワールドマップではより大きな視点で全体を描きます。
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「バイオハザード」は,シングルプレイがメインのゲームです。数十人以上の多人数のプレイヤーがリアルタイムで同時に協力できる「バイオハザード」は,今回が初めてだと思います。
世界中のプレイヤーが協力し,恐怖へ打ち勝つという新しい体験を味わってほしいです。
4Gamer:
それぞれのパートの割合や,メインとなるパートはどれでしょう。
ゲ氏:
コンテンツ的な視点では,ゲームを始めてから自分の本拠地を築くまでは,アクションパートの割合が高いです。だんだん本拠地を発展させる育成パートが半分以上を占めるようになり,何か月もプレイした人は,ワールドマップの戦略パートがメインになります。
ただ,アップデートでは,アクションパートも追加されるので,サービス中は,各パートの割合がサイクル的に入れ替わっていくようになります。
裏話にはなりますが,開発では,アクションパートに60%以上の開発リソースを割いています。
私たちは戦略ゲームのノウハウはありますが,アクションゲーム,それもカプコンさんが作っているレベルのものをとなると,難しさは段違いです。
ファンの皆さんに納得してもらえるクオリティを出すために,細心の注意を払いながら開発をしています。
4Gamer:
「バイオハザード」の世界観を再現するにあたり,どのタイトルをベースにしましたか。
ゲ氏:
キャラクターやクリーチャーは,全シリーズから登場させる予定ですが,現段階では意図的に「RE:2」「RE:3」の比重を高めています。
「バイオハザード」といえば,ラクーンシティだと考え,その周辺から物語をスタートするのがもっとも魅力的だと考えました。
プレイヤーには,そこからパンデミックが世界的に広がっていく瞬間を一緒に体験してほしいのです。
ゲーム体験としてはオリジナル版を意識しつつ,UIなどは洗練されたRE版を採用しました。
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4Gamer:
そこから,ストーリーはどのように展開していくのでしょうか。
ゲ氏:
とにかくプレイヤーには,パンデミックが発生した中心に立ってほしかったのです。
ラクーンシティ周辺から脱出したあとは,キャラクターたちとともに未知の恐怖へと立ち向かう物語が続いていきます。
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4Gamer:
今回登場するオリジナル主人公(プレイヤー)は,どのようなキャラクターでしょうか。
ゲ氏:
戦略ゲームなので,プレイヤーの分身となるキャラクターが必要でした。「バイオハザード」のキャラクターたちは,とても頼もしい仲間ですが,主人公はただの一般人です。
銃は上手く扱えず,撃ってもほとんど当てられません。戦闘に向いていないキャラクターですが,頭はいいです。
原作シリーズのキャラクターたちと協力して拠点を作り,リーダーとして成長していく過程を楽しめます。
4Gamer:
アンブレラに何やら実験されていたようですが,本当にただの一般人でしょうか。
ゲ氏:
ふふふ,ストーリーを進めていく中で,もしかしたら,何かが判明していくのかもしれませんね。
もちろんカプコンさんに監修していただいているので,偶然そこに居合わせただけではなく,面白い仕掛けを用意してあります。
4Gamer:
楽しみですね。ラクーンシティ脱出後は,どこに向かうのでしょうか。
ゲ氏:
主人公はエイダのことを知りませんが,彼女から無線でセーフハウスの場所を教えてもらいます。ラクーンシティ郊外という設定ですが,明確には特定していません。
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初代「バイオハザード」の要素も入れたくて,似たような洋館を作りました。
この洋館は,「バイオハザード」のセーブポイントのような,安全で心が落ち着く場所として設計してあります。
オンラインゲームはオートセーブのため,タイプライターはありませんが,プレイヤーがセーブポイントで抱くあの安心感を再現できたかなと思います。
パク氏:
「バイオハザード」らしさを直接感じられるアクションパートと,ラクーンシティ以外のアメリカの様子を見られる戦略パートを行き来できるので,地続きで世界が広がっているんだな,というのを実感できると思います。
4Gamer:
「バイオハザード」の象徴的な要素には,謎解きもあります。制作するうえで苦労したことはありますか。
ゲ氏:
なぜこんなパズルがあるんだ,とは思いつつ,楽しくて,のめり込んでしまうのが「バイオハザード」の謎解きですね。
ゲームの序盤では,プレイヤーが原作シリーズで体験した謎解きをほぼ同じように入れました。懐かしさと親しみやすさを感じてほしいです。
そこからは,私たちのオリジナルパズルも入れていきますが,いざ作ってみると,本当に難しくて。カプコンさんが,本当にすごいことをやってのけているのを実感しました。
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4Gamer:
パズルについて,カプコンからはどのようなフィードバックがありましたか。
ゲ氏:
カプコンさんのノウハウに関わる部分なので,詳細は避けますが,パズルだけが謎解きではない,ということです。
そこに至るまでの導線や,配置など,パズルの要素1つひとつにしっかりと狙いが込められており,そのメカニズムを学びながら,開発を進めました。
4Gamer:
テストプレイも実施されていると思いますが,どのようなフィードバックが多かったですか。
ゲ氏:
やはり,パズルに関するフィードバックが本当に多くて,調整が大変です。「どうやったら解けるんだ」という指摘もあれば,「バイオハザードファンからしたら簡単すぎる」という意見もありました。
開発チームでも,かなり意見をぶつけ合いました。
4Gamer:
天野喜孝氏がデザインするオリジナルクリーチャーもアナウンスされていますが,どのようなクリーチャーになるのでしょうか。
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ゲ氏:
橋本さんのコネクションのおかげで,天野さんから素晴らしいオリジナルクリーチャー「モルテム」の原画を描いていただけました。
アーティストチームは,イラストをもらって泣いて喜び,3D化する難度が高すぎて,さらに泣きました(笑)。
原作シリーズに登場するクリーチャーの数はとても多く,すべてを登場させるのも難しいくらいです。
なるべく多くのクリーチャーを登場させることにフォーカスしていますが,「これからこのゲームの世界を拡張していくんだ」という意思表示も含めて,オリジナルクリーチャーを導入しました。
4Gamer:
今回,アニプレックスからの提案を受け入れた理由を教えてください。
キム氏:
「バイオハザード」のような強力なIPを使ったオリジナルゲームのプロジェクトは,非常に開発難度が高いです。
そこで,多くのIPを保有している企業との連携が必須だと考えました。
また,橋本さんは,「キングダム ハーツ」シリーズでスクウェア・エニックスさんとDisneyキャラクターを融合させる伝説的な経験をもっており,一緒に仕事をするしかないと思いました。
4Gamer:
アニプレックスは,開発にどのように関わっているのでしょうか。
ゲ氏:
アニプレックスとは,毎週会議を実施しており,開発の初期から一緒に関わってくれています。
韓国のデベロッパが,カプコンさんという日本の巨大企業と仕事をするのは,文化やマーケットなどのさまざまな違いから,決して容易なことではありません。
そこで,アニプレックスは,文化的な通訳を果たしてくれている部分が大きく,JOYCITYの知見が足りない部分をうまく補ってくれています。
4Gamer:
課金などのマネタイズはどのようになっていますか。
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戦略ゲームなので,キャラクター収集要素はあるのですが,基本的には時間短縮のためのアイテムがメインのビジネスモデルです。
今回は,あまり課金しなくてもプレイに支障がでないように心がけています。
開発チームでテストプレイしたところ,課金しなくても,ほかのプレイヤーとグループを作って連携するなど工夫すれば問題なく楽しめる作りになっています。
ゲ氏:
実際,課金なしでほぼすべてのコンテンツにアクセス可能です。ただ,一部キャラクターを早い段階で入手するには,課金が必要です。
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4Gamer:
ガチャでしょうか。
ゲ氏:
いえ,直接購入する方式を採用しています。ガチャ自体は無課金のものがありますが,特定のキャラクターはピックアップ対象として直接購入もしていただけます。
4Gamer:
PvPや協力要素について教えてください。
パク氏:
私たちのこれまでのゲームとは異なり,直接ほかのプレイヤーと戦うといったことはあまりありません。
「バイオハザード」には,アンブレラという強大な共通のヴィランがいますので,みんなで協力してそれを倒そうというのがコンセプトになっています。
一応,直接PvPできるアリーナも用意していますが,あくまで模擬戦闘訓練という設定で,アンブレラと戦うための準備と位置付けています。
プレイヤー同士が競う要素としては,誰が先にアンブレラの隠れ基地を攻略していけるのかというイメージですね。
4Gamer:
開発の進捗はいかがでしょうか。
ゲ氏:
開発は順調で,スケジュール通りに進行しています。年内にグローバルリリースする予定なので,あと3か月以内のリリースを見込んでいます。
また,リリースして終わりではないので,今後も開発を続けて,アップデートを重ねていきます。
4Gamer:
最後に,「バイオハザード」ファンに向けて,伝えたいメッセージをお願いします。
ゲ氏:
私たちは,「バイオハザード」シリーズをプレイして育った人間で,「バイオハザード」をきっかけにゲーム業界を志した世代でもあります。
今でも大人気のシリーズですし,ファンの皆さんには,これまでと違った世界で,「バイオハザード」を楽しんでいただけたら幸いです。
とくに「バイオハザード」はコンシューマゲームとしてじっくり遊んでもらう側面が大きいので,その世界観をスマホでカジュアルに体験してほしいです。
シリーズファンに喜んでもらえる要素もいろいろ詰め込んだので,ぜひ発見してみてください。
パク氏:
たくさんの人々が同時にリアルタイムで,いつでもどこでも気軽に楽しめる作品に仕上がっています。IPをお借りする立場として,「バイオハザード」の名に恥じない新しい体験を提供したいです。
ファンに納得してもらえる内容を目指し,引き続き尽力します。
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4Gamer:
本日はありがとうございました。
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