［プレイレポ］未知の惑星で始まるサムス・アランの新たな冒険。シリーズ新章の幕が開く「メトロイドプライム4 ビヨンド」先行プレイ

　任天堂が2025年12月4日にNintendo Switch 2 / Nintendo Switch向けに発売した「メトロイドプライム4 ビヨンド」は，ファーストパーソンアドベンチャー「メトロイドプライム」シリーズのおよそ18年ぶりとなる完全新作だ。


　サムス・アランの新たな冒険の舞台は惑星・ビューロス。突発的な出来事によってに未知の惑星へ転送されてしまったサムスは，新たな能力を獲得しながら数々の脅威に挑む。元の場所へ戻る術を得るため探索で惑星の謎に触れ，ときに同じくこの地に転送された者たちと協力し困難を乗り越えていくのだ。
　そんな本作のSwitch2版となる「メトロイドプライム4 ビヨンド Nintendo Switch 2 Edition」発売前に体験できたので，その手触りや魅力を紹介していきたい。

いままでのプライムを知らなくてもだいじょうぶ。新章が幕を開くシリーズ完全新作

　「まずはメトロイドプライムってそもそも何？」というところから簡単に説明しよう。
　「メトロイドプライム」は，2Dアクション「メトロイド」から派生した一人称視点のアドベンチャーゲームだ。パワードスーツをまとった主人公サムスが探索とパワーアップを通して行動範囲を広げていくという基本はそのままに，それを一人称視点で臨場感と没入感たっぷりに体験できる。

画像はシリーズ1作目のSwitch向けリマスター版「メトロイドプライム リマスタード」

　1作目は2003年2月（北米では2002年11月）にニンテンドー ゲームキューブ向けに登場し，2005年5月に「メトロイドプライム2 ダークエコーズ」，2008年3月に「メトロイドプライム3 コラプション」が発売され，いわゆる“プライム三部作”が確立。それらのシリーズ本編や外伝的なタイトルが，ニンテンドーDSやWiiといったさまざまな任天堂ハードで展開されてきた。

　久しぶりのシリーズ完全新作となる本作が発表されたのは，今からおよそ8年前のE3 2017。そののち開発体制の再構築を経て2024年6月に約5年ぶりの続報が公開さた。2025年4月にはSwitch2版もアナウンスされ，そしてついに待望の発売日を迎えたというわけだ。


　そんなプライムのシリーズ本編（いわゆるナンバリング）第4弾だが，「いきなり4作目からで楽しめるの」と思う人もいるはず。まずはそこから「まったく問題ありませんよ」と伝えておきたい。
　というのも，メインシリーズ（いわゆるナンバリング）はプライム三部作で一区切りがついており，本作では“新章”と呼べる新たな物語が始まるからだ。


　物語は，銀河屈指のバウンティハンター・サムスが銀河連邦の緊急要請を受ける場面から始まる。
　コスモ歴20X9年。デラソン系惑星タナマールに存在する銀河連邦UTO研究所が，銀河系の支配を企む略奪者軍団・スペースパイレーツの襲撃を受ける。
　スペースパイレーツの指揮を執るのは，バウンティハンターのサイラックス。サムスと連邦を憎むサイラックスは，対決の日のため各地の研究施設を襲い，最新技術を強奪していた。


　救援要請を受け現地へ急行したサムスは研究所内でサイラックスと対峙する。その最中，彼女はかつて脅威とされた浮遊生命体・メトロイドの存在に気づく。
　なんとサイラックスは，融合対象の意識を支配できるサイラックス・メトロイドを培養していた。それを用いてスペースパイレーツの指揮官たちの精神を乗っ取り，軍を自身の指揮下に置いていたのだ。


　激戦のさなかでサムスは予期せぬ事態に巻き込まれ，異なる空間へと転送されてしまう。転送された先は，未知の惑星ビューロス。この地にある遺跡「クロノタワー」の最上階でサムスは，かつて文明を築いたラモーン族最後の生き残り――ラスト・ラモーンの意志と邂逅する。


　こうして始まるビューロスでのサムスの新たな冒険。最大の目的は，元いた場所への帰還だ。
　プレイヤーはサムスの視点で360度に広がる景色を見渡し，原生する危険な生き物や立ちはだかる強敵と戦いながらエリアを巡り，仕掛けや謎を解きながら脱出の術を探していく。

　ファーストパーソン“アドベンチャー”を掲げる本作は，戦闘はもちろん大事だが，それ以上に“探索して道を切り拓いていく感覚”が作品の中心にある印象だ。
　 ビューロスには，植物が濃く絡み合うジャングルや地平線まで砂が続く砂漠地帯，雷雲がうごめく一帯や溶岩が流れるエリアなど，雰囲気も“危険”もまったく異なるロケーションが複数存在し，そして各地には謎めいた古代文明の施設や遺跡が眠っている。


　探索で頼りになるのが，情報を読み取る「スキャン」だ。
　未知の惑星だけあって，行き止まりに見える場所やどう進めばいいのか分からない構造の遺跡がゴロゴロしている。そこでXボタンで「スキャンバイザー」に切り替え，気になる場所をぐるっと見渡してみると，古代文字や残されたデータが解析でき，先へ進む手がかりやギミックの解き方が分かってくる。


　幅のない通路や狭い隙間を見つけたらモーフボール形態となって転がり込み，ビームで破壊できないものはミサイルで爆破する。このようにサムスが探索で入手した能力や武器で道が開けていくゲーム進行は，視点は変われどメトロイドおなじみの感覚だ。


　そして探索や謎解きの新たな要素となるのが，ラモーン族の預言書に記された“選ばれし者”としてサムスが扱えるようになる「サイキック能力」だ。


　エネルギー体を引き寄せたり，離れた装置を起動させたりできる「サイキック・グローブ」，チャージビームの軌道そのものを曲げてパズルのように仕掛けを突破する「コントロールビーム」など，こちらもそのほかの武器や能力と同様に，物語が進むと新しい力が追加される。
　これまで動かなかった仕掛けを解けるようになる場面は，達成感を得られるのはもちろんのこと，超能力を手にしたことによって古代の機構が息を吹き返す……なんて瞬間がロマンチックでとてもいい。


　もちろんシューターとしての歯応えもきちんとある。
　ビューロスには独自の生態を持つ生物が跋扈し，遺跡の奥では巨大なキーガーディアンが侵入者を静かに待ち受けている。遭遇すれば戦闘は避けられない。


　ロックオンで敵を捉え，アームキャノンのチャージビームで一気に撃ち抜く。硬い外殻を持つ相手にはミサイルで突破する，といったように敵の性質に合わせて武器を切り替えていくスタイルは，2Dでも3Dでも変わらない“メトロイド流”の戦いだ。


　戦闘でも「スキャン」と「サイキック能力」は重要になる。敵と対峙したときは，まずスキャンで特徴や弱点を把握。通常の攻撃が通らない相手には「コントロールビーム」を交えて弱点を突くなど，特に大型ボス戦では観察と能力の組み合わせが勝利の鍵になる。


　そして本作の大きな特徴のひとつが，サムスが完全な単独行動ではないこと。
　ビューロスに転送されたのは彼女だけでなく，何人かの銀河連邦の兵士たちもこの地に飛ばされ生存しており，探索の途中で合流する。メカニック，スナイパー，歴戦の兵士，サムスに憧れる若い隊員，戦闘用アンドロイド……個性的な面々にはそれぞれ役割があり，装備の改造や探索の支援を通して冒険に関わってくる。


　これまでのプライムでも銀河連邦との関係は描かれているが，ここまでしっかり“仲間”として物語に登場するのは珍しい。
　サムスは基本的に寡黙で，その表情もパワードスーツに隠れて見えない。しかし，仲間たちとの短い会話や仕草から心の機微が伝わってくる。その距離感が心地よく，静かな探索パートとの対比で物語に温度が生まれている。
　「仲間だからな」と言われ，無言で「コクリ」と頷くサムス。そのわずかな動きに悶え……心を持っていかれるファンも多いはずだ。


　「メトロイドプライム4」は，これまでプライムシリーズを知らなかった人や，一人称視点のゲームに触れてこなかった人の最初の1本にもオススメしたい一作だ。
　難度は最初に「カジュアル」と「ノーマル」があり，敵のHPと被ダメージが抑えられた「カジュアル」ならFPSに不慣れでも進めやすい。さらにスティック感度や画面揺れなど細かい設定も可能で，探索や物語を中心に楽しみたいプレイヤーも自分なりの遊び方に合わせられる。初心者にも入りやすい作りだと感じた。


　なお「ノーマル」でクリアすると，難度「ハード」が開放される。腕に覚えのあるバウンティーハンターはこちらにチャレンジしてほしい。Switch2版ではJoy-Con 2のマウス操作も対応しているので，こちらも試してみるといいだろう。

Switch2版の注目ポイントであるマウス操作。実際の操作感についてはこちらをチェックしてほしい

　最後にあらためて触れたいのは冒険と探索の楽しさだ。
　スキャンで拾える情報の濃さは攻略の補助だけに留まらず，この惑星がかつてどう生き，なぜ滅んだのかという背景まで浮かび上がらせてくれる。記録の断片がつながるほど世界の輪郭が鮮明になり，探索そのものが歴史をたどる体験へ変わっていく。

Switch2版ではさらにこの冒険世界が美しく描かれるのが特徴。映像設定は2種類あり，「クオリティモード」ではTVモードが4K / 60fps，携帯モードが1080p / 60fps，「パフォーマンスモード」ではTVモードが1080p / 120fps，携帯モードが720p / 120fpsでゲームを楽しめる。TVモード，携帯モードともにHDR対応だ

広大な砂漠が広がるソルバレイを駆るビークル・ヴァイオラ！　プレイ時間の都合上あまり長い時間は遊べなかったが，モトクロスバイクのようなアクションを決め，カーチェイスのように敵と戦いながら広大な砂漠を走り回るのがとても爽快。3rdトレイラーで見た当初は「サムスがなぜバイクに？」と困惑したが，amiiboがほしくなっている自分がいる……

　行き止まりだった遺跡が，能力を得て再訪したときに道へと変わる瞬間。その先に広がる景色と，脱出という大きな目的が確かに進んでいる実感。この積み重ねが，「メトロイドプライム4」の冒険と探索の楽しさを形づくっていると感じた。サムス・アランの新たな冒険に興味を持った人は，最初の1歩を踏み出してみてほしい。