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イシイジロウ氏が「Depth Loop」で描くのは,勝ち負けの向こうにある,人狼ゲームの本質。氏の新たな挑戦が語られたインタビュー[TGS2025]
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印刷2025/09/30 08:15

インタビュー

イシイジロウ氏が「Depth Loop」で描くのは,勝ち負けの向こうにある,人狼ゲームの本質。氏の新たな挑戦が語られたインタビュー[TGS2025]

 東京ゲームショウ2025のKEMCOブースに,同社の新作アドベンチャーゲーム「Depth Loop」PC / PS5 / PS4 / Nintendo Switch 2 / Nintendo Switch)「Depth Loop」がプレイアブル出展されていた。

画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / イシイジロウ氏が「Depth Loop」で描くのは,勝ち負けの向こうにある,人狼ゲームの本質。氏の新たな挑戦が語られたインタビュー[TGS2025]

 深海の特殊施設を舞台に,天才科学者たちが互いを疑う人狼ゲームが展開される本作を手がけるのは,「428〜封鎖された渋谷で〜」「タイムトラベラーズ」などを手がけたクリエイターで,凄腕の人狼プレイヤーとしても知られるイシイジロウ氏だ。

 イシイ氏は7月に開催されたCEDEC2025のセッション(関連記事)で,「Depth Loop」を,開発者にすら管理できないランダム性がある「ローグライクアドベンチャー」と表現したが,本作で見せようとしているものは何なのか。それを明らかにすべくインタビューしたので,じっくり読み進めてほしい。

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 東京ゲームショウ2025のKEMCOブースに,2026年春リリース予定のアドベンチャーゲーム「Depth Loop」がプレイアブル出展されている。人狼ゲームが題材の本作を手がけるのは,凄腕の人狼プレイヤーとしても知られるイシイジロウ氏だ。

[2025/09/28 11:28]

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。イシイさんは7月に開催されたCEDECのセッションで,「Depth Loop」について,最近新たに登場した「ローグライクアドベンチャー」に分類していましたよね。このスタイルのゲームに挑戦することになったきっかけを教えてください。

画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / イシイジロウ氏が「Depth Loop」で描くのは,勝ち負けの向こうにある,人狼ゲームの本質。氏の新たな挑戦が語られたインタビュー[TGS2025]
イシイ氏:
 ローグライクアドベンチャーは,まさに人狼ゲームを題材にした「グノーシア」の川勝さん(川勝 徹氏)が宣言して,すごくいいジャンル名が出てきたと思ったんですけど,後に続くタイトルがなかったんですよね。そこで,僕もローグライクアドベンチャーに挑戦しようということで,企画させていただきました。

4Gamer:
 「グノーシア」のどのあたりに惹かれましたか。

イシイ氏:
 ゲーム内で行われる人狼ゲームの展開や結果によってストーリーのフラグを立てていく,ランダム性のあるシステムです。一般的なアドベンチャーゲームをプレイするとき,分岐は同一の条件下で選択肢を潰していけばいいんですが,前提条件がランダムになってしまうと,潰し方がコントロールできなくなりますよね。その要素にどのような新しい物語を入れられるか? ……というところがローグライクアドベンチャーのポイントになると思うんです。「グノーシア」はその扉を開けてくれたと思いました。

4Gamer:
 その“扉”から,さらに発展させる余地があると感じているわけですね。

イシイ氏:
 そうですね。僕自身,人狼ゲームイベントの「アルティメット人狼」を企画しつつ,出演者にもなって……と,ゲームクリエイターとしてより人狼プレイヤーとしてのほうが有名になるくらい,はまり込んでいた時期があったので。人狼ゲームからどのようなドラマが生まれるのか,自分なりにもっと追求できるんじゃないかという気持ちもあります。

4Gamer:
 そもそも,イシイさんがあそこまで人狼ゲームを突き詰めることになったきっかけは何だったんでしょうか。

イシイ氏:
 それはまさに「Depth Loop」の原作となっている舞台「人狼 ザ・ライブプレイングシアター」(以下,人狼TLPT)との出会いですね。それ以前も,そのときどきに仕事をしているゲーム会社で人狼ゲームを遊ぶことはあったんですが,どちらかというと,プレイについてはあまり面白さを感じていなくて,GMを担当することが多かったんです。

4Gamer:
 意外ですが,それはなぜですか。

イシイ氏:
 「人狼ゲームがどういうものか,もう分かった」みたいな感じになっていたんです。分かっちゃっているから,プレイヤーとして参加するとしゃべりすぎて処刑されちゃって面白くない。それなら僕はGMをするから,みんな楽しんでね,みたいな感じだったんです。

4Gamer:
 そんなときに人狼TLPTと出会ったんですね。

イシイ氏:
 最初に見たのは13年前でした。ゲームクリエイターの松野泰己さんと打越鋼太郎さんが,当時のTwitterで,「人狼のアドリブ舞台が始まった。ちょっと見に行ったらとんでもない」とツイートしていたので,さっそく僕も行ったら,「人に見せる人狼ゲーム」に,それまでとまったく違う可能性を感じたんです。

4Gamer:
 「人に見せる人狼ゲーム」ですか。

イシイ氏:
 人狼ゲームって,「勝つ勝たない」だけでプレイすると,面白さが頭打ちになるんです。でも,観客の視線があることで,ここまでエンタメ化するのかと衝撃を受けました。スポーツでもそうですよね。格闘技でも野球でもサッカーでも,ただ勝つことだけを目的に,無観客でやる試合は,エンタメになりづらい。

4Gamer:
 分かります。強さと人気は必ずしも比例しませんし。

イシイ氏:
 人狼TLPTでは,それぞれの役者さんがキャラクターを演じながら人狼ゲームをして,その化学反応で物語を紡いでいきます。キャラクターたちが自分たちで伏線を張っていくんですね。殺されたら伏線は回収されないけれど,どんな伏線を張ったかを生き残った役者のみなさんが覚えていて,エンディングでどれを回収するかみたいなことをアドリブで決めていくという,とんでもない舞台なんです。当時は「こんなこと絶対デジタルゲームにはできない」と思いました。でも同時に何か可能性があるとも感じました。

4Gamer:
 観客を楽しませることが目的になっている舞台だからこその化学反応,ということですね。

イシイ氏:
 人狼と村人の「どちらが勝つのか」は重要じゃないんですよ。「どちらが勝つほうが面白いのか」かが重要なんです。人狼TLPTの人狼と村人は,もちろんゲーム的には敵対していますが,まるでダンスのように交わりながら物語を作っていく。まさに物語の生成装置だと思いました。それで,僕もお客様がいる中で人狼をしたいと,「アルティメット人狼」を立ち上げたんです。

4Gamer:
 そういう視点で人狼ゲームを見たことがなかったので,興味深いです。話を「Depth Loop」に戻しますが,登場キャラクターというか,ゲーム内で行われる人狼ゲームの参加者はプレイヤーを含めて13人ですよね。その13人が一堂に会して物語を展開していくことになると,キャラクターの描き分けは相当難しいのではないかと思うのですが,いかがですか。

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イシイ氏:
 「Depth Loop」は,原作である人狼TLPTがこれまでの13年間,850回以上の舞台で作り上げたキャラクターをお借りして作っているんです。全部で100名以上のキャラクターがいて,その中から12人をピックアップしています。すでに圧倒的に個性的なキャラクターができあがっているので,そこから12人に絞るのもまた辛くて。
 なので,もし「Depth Loop」がヒットしたら,今回選ばれなかったキャラクターたちをダウンロードコンテンツとして配信して,人狼ゲーム部分だけをいろいろなパターンで遊べるようにするのもいいと思っています。

4Gamer:
 格闘ゲームの追加キャラみたいですね。さきほどの人狼とスポーツの類似性のような話にも通じるような印象があります。

イシイ氏:
 人狼をプレイしている著名人や配信者の方々などもキャラクターとして配信するアイデアもありますし,本作を応援していただければ実現できると思うので,ぜひ。

4Gamer:
 イシイさんが「人狼ゲームにおけるベストのプレイヤー数は13人」と語っているインタビュー記事を読んだことがあるのですが,実際に「Depth Loop」では,その言葉どおり13人ですね。13人が最適な理由を教えてもらえますか。

イシイ氏:
 プレイヤー数が少ないと,ゲームの途中で“詰み”,つまり「この人たちは人狼だ」と確定してしまう局面が発生しやすくなるんですが,それを避けやすくなる最低の数が13なんです。そこが一番大きいですね。逆に人数がそれより多くなってくると,プレイ時間が長くなって思考の負担も大きくなってきます。

4Gamer:
 「Depth Loop」のキャラクターというのは,人狼ゲームを進めるうえでの判断の仕方や投票の傾向に違いがあって,プレイヤーがそれを利用することもできるのでしょうか。

イシイ氏:
 キャラクターによってそういった違いはありますが,人狼ゲームというのは,正体隠匿系,つまり情報が隠れているゲームなので,いろいろと注意が必要です。例えば将棋は相手が持っている駒が全部分かりますが,ポーカーだと相手の手札は分からない。麻雀もそうです。人狼も,把握できない情報とともに推移するゲームなので,こうだと予想してもそれが正解でないことが多々あります。

4Gamer:
 はい,運のようなものが絡んできますよね。

イシイ氏:
 ただ,人狼にも定石のようなものはあります。分かりやすいのが,「人狼は人狼に投票しない」で,1人の人狼が確定した時点で,その人狼に投票していない人から処刑していけば,芋づる式に人狼を排除できるというものです。
 アナログの人狼だと,誰が誰に投票したかを完全に覚えておくのが難しかったりするのですが,「Depth Loop」ではすべての投票履歴を確認できますし,AIキャラクターは記憶しています。

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4Gamer:
 人狼側の勝利条件は村人と同数になることですから,仲間が処刑されるような危険は犯したくないはずで,村人としてはそこを狙うわけですね。

イシイ氏:
 ですが,その定石を使われるようになった人狼側は,たまに人狼へ投票するようになります。基本的には人狼は人狼に投票しないほうが有利ですが,村人側がそこに目を付けて勝率を上げていくと,人狼側がその対抗策として人狼に投票するようになり,それに混乱した村人が人狼に投票した人すら処刑するようになって負け始める……ということです。そういった,定石の流れというか,戦術の波みたいなものができるんですよ。

4Gamer:
 ある戦術が流行すると,それに対して有利な戦術が流行し始める……というのは,スポーツにしろゲームにしろ,よく聞く話ですね。

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イシイ氏:
 投票の順番にしてもそうです。僕はある時期,狩人になったときはできるだけ早く投票するようにしていました。それは,能力者や人狼のプレイヤーは投票が遅くなるという傾向の裏をかくためだったんですが,あるとき,「イシイさんは狩人のとき,絶対最初に投票しますよね」と見抜かれて,それから最初に投票することはやめました(笑)。

4Gamer:
 (笑)。「Depth Loop」では投票のタイミングも任意ですが,そこでも駆け引きが生まれるわけですね。

イシイ氏:
 「Depth Loop」の開発では,この戦術の波をなんとか組み込もうと思っています。RPGのように人狼ゲームのスキルを数値的に上げていったり,「こうやったら勝てる」を見つけて終わりではなく,大きくうねる戦術の波の中で戦うことを体験してもらいたいです。

4Gamer:
 イシイさんがCEDECのセッションで話されたように,ランダム性があるローグライク型アドベンチャーは開発者すらコントロールできない部分が出てくるわけですが,開発にあたってやりづらいところはありませんか。

イシイ氏:
 むしろ,開発者でも新鮮にプレイできて面白いという印象が強いですね。ランダム性がないゲームは作った通りにしか動かないので,プレイしても“確認”になってしまうのですが,ローグライクは自分が思った以外の動きをしますし,うまく作れば無限に遊べます。
無限に遊べるアドベンチャーゲームというのは,やっぱりローグライクシステム抜きには実現が難しい気がしますね。

4Gamer:
 物語のエンディングはあっても,そこに至るまでの展開は無限だと。

イシイ氏:
 エンディングの数自体も多くて,実際に実装できるかはまだ分かりませんが,200ぐらいは生まれるんじゃないかと思っています。そこまでのルートになると,本当に無限なんですよね。なので,無限の可能性を持ったアドベンチャーゲームです。アドベンチャーゲームって,一度やったら終わりみたいなところがあったと思うんですけれど,それとは正反対の可能性を持っていると思います。

4Gamer:
 200ものエンディングの中に,よくアドベンチャーゲームで話題になるトゥルーエンド的な位置づけのものがあるのでしょうか。

イシイ氏:
 それはなかなか,今お答えするのは難しいタイミングではあるんですが……。「Depth Loop」では,人狼ゲームがローグライクの部分というか,ランダム性を担っていますが,僕らのテーマとしては,この人狼ゲームを解けるのか,という話になるんです。

4Gamer:
 人狼ゲームを解く,ですか。

イシイ氏:
 もし,将棋を無限にプレイし続けるゲームがあるとしたら,将棋というものの本質を解いた時に,その物語はトゥルーエンドに近づくと思うんです。謎かけみたいになっていますけど,人狼ゲームとは何なのか,どういう意味を持つのかということを,さまざまな手法や視点で語ることはできると思うんですよね。文学的にも語れるし,理系的にも確率的にも語れると思います。人狼ゲームのルールやゲームデザインにおける本質を解き明かすことが,「Depth Loop」のテーマだと思っています。

4Gamer:
 それを本作のテーマにするということは,イシイさんはすでに人狼ゲームの本質を見つけているのだと思いますが……。

イシイ氏:
 そうですね。1000試合以上経験する中で,こうじゃないかというところにたどり着いた感があります。それが何かは一切話せませんが(笑)。

4Gamer:
 ネタバレもいいところですしね(笑)。ただ,本作がほかの人狼ゲームと違う方向で開発されているのは感じられました。

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イシイ氏:
 「Depth Loop」の開発アプローチの大きな特徴は,人狼に名前があることなんです。これまでの人狼は敵,悪者でしかなく,名前はなかった。ですが「Depth Loop」の人狼は,名前もあれば過去もあるし,人格もあるし,知性もあります。家族もいます。その人狼があなたになったとき,人狼ゲームは,人間側と人狼側,2つの主観2つの正義が対決するゲームに変わるんですね。僕が知る限り,今までの人狼ゲームとか,人狼を使ったフィクション作品でこれをやったもの記憶にありません。

4Gamer:
 プレイヤーは,その2つの正義を行き来することになるんですね。

イシイ氏:
 「Depth Loop」の世界では,人類が滅亡するかもしれないパンデミックが起こっています。そのワクチンを作るための研究をしている深海特殊施設が,ゲームの舞台になっている「マグ・メル」なんですが,そこでは亜人種の人狼や人魚たちを使った実験をしているんです。それを見かねたある研究者が「狂陣」となって3匹の人狼を逃がし,その人狼は仲間を殺した人類に復讐するため,3人の人間を食い殺して成り変わる……というのが物語のスタートです。

4Gamer:
 確かにどちらが正義なのか分かりませんし,プレイにあたっての感情も変わってきそうです。

イシイ氏:
 人魚の存在もキーになっています。人狼ゲームで人間たちには「予言者」「狩人」「霊媒師」という3人の能力者がいますが,その能力は,人魚から授けられたという設定なんです。不老不死の人魚は「マグ・メル」で毎日毎日体を切り刻まれ,死にかけては復活することを繰り返しているので,自分を助けることと引き換えに,人間に能力を授けることにしたのですが,でも勝利した人間はその約束を守るんでしょうか。
 
4Gamer:
 さきほどの設定を聞いていると,簡単には逃がさないでしょうね。

イシイ氏:
 「Depth Loop」の人狼ゲームは,まさにそういうテーマと向き合うためのもので,ただ人狼を倒せばいいという話ではないんです。すべての視点に正義があります。

4Gamer:
 プレイヤーとしては,かなり葛藤しそうです。ちょっと話題を変えまして,自分も何度か人狼ゲームをプレイしたことがあるのですが,やりづらいのが初日だったんです。あまり判断材料がなくて「なんだか投票しづらいな」と思いつつ,とくに理由もないまま,なんとなく投票して,処刑された側も納得いってないという。そのあたりをうまく進める方法というのはあるんでしょうか。

イシイ氏:
 それこそお客様がいると思えばいいんですよ。自分がお客だったら,プレイヤーが何もしなくて,ヒントもなくて,うだうだしてるプレイを見たいですか?
 そこはやっぱり「僕が予言者です!」「嘘つき! 僕こそが予言者です!」「どっちが偽物だ!?」みたいに,自分以外の人たちを楽しませるように動けば,初日は楽しくなりますよ。

4Gamer:
 能力者はあまり名乗り出ないほうがいい,というセオリーもあるようですが,それも気にしなくていいと。

イシイ氏:
 そうでもないですよ。名乗らない能力者を襲撃される可能性も低くはありませんから。それより面白くするために名乗り出る。つまりその時に,誰がその日の主人公なのかを決めるんです。人狼ゲームで面白くないのって,ロジカルに,まるで駒のように「お前は今死んだほうがいい」って処刑されちゃうことなんですよね。

4Gamer:
 それは確かに味気ない。

イシイ氏:
 「今日は面白かったね」「またやろうね」ってなるのがパーティーゲームじゃないですか。勝ち負けをどう楽しむかなんですよ。勝つことを楽しむ。負けるときは大きく負けて,それも楽しむ。プロレスとか格闘技もそうですけど,こそっと勝ったり負けたりする選手はあまり人気がないですよね。負けっぷり勝ちっぷりなんです。人狼ゲームも負けっぷり勝ちっぷりですよ。

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4Gamer:
 自分が楽しむためには,周りを楽しませる必要があると。当たり前ではあるんですが,ゲームはやっぱり勝ち負けに目が行きがちで,そこを意識しにくいような気もします。

イシイ氏:
 日本は基本的に1人で楽しむデジタルゲームの先進国だったので,アナログゲームが下火になっていた時期がありました。最近はドイツのゲームなどで盛り上がっていますが,そのあたりから「ただ淡々と勝ち負けをやってるだけじゃプレイ人口も増えないし,楽しくないよね」と意識されるようになって,そこに人狼TLPTとか,マーダーミステリーとかも出てきて,その要素はさらに強くなっていると思います。ゲーム実況も,最初は「誰がプレイしても画面の中は一緒でしょ」なんて思っていたんですけど,リアクションとか,ゲームの補完とかで,まさに人に見せるゲームができていると感じます。

4Gamer:
 そういった視点で考えると,「Depth Loop」では,プレイヤーを楽しませるキャラクター作りを目指すわけですよね。

イシイ氏:
 人狼型のデジタルゲームは,AI的なものが介在しないといけないところがあります。僕が人狼を始めた10年ほど前は,まだ技術が追いついていなかったところがありました。
 生成AIとはまた違うんですが,ゲームAIも含めての進化を見ると,ある程度僕がやりたかったことに技術が追いついてきた感はありますから,そういう意味でも今作が1回目の挑戦です。これが成功するとさらにいろいろな可能性が広がると思います。

4Gamer:
 それを聞くと,新しいタイプのキャラクターが登場しそうで,楽しみです。

イシイ氏:
 人間らしさを目指すっていうところですかね。「Depth Loop」では,キャラクターやストーリーと連携して新しい展開が開けるようなことになっていますから,納得度が高いと思います。

4Gamer:
 アドベンチャーゲームだけでなく,ドラマなどでもそうですが,やっぱり登場人物のキャラクターの面白さ,人間の面白さみたいなところに惹かれることは多いです。

イシイ氏:
 そうなんですよ。だから,ただ人狼ゲームのパターンをフラグ化するのではなくて,ドラマとしての納得度を高めたい。そのために,本作では人間側だけではなく,人狼側も名前を持っていて,人狼側がどう行動するか,どう生きるかということさえもフラグのキーになってきます。そして,双方の立場に立つと,違うものが見えてくる。そこに解はあるのかと,知恵を絞って探し続けるのが,やっぱりゲームデザイナーであってゲームプレイヤーであってほしいと。

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4Gamer:
 プレイヤーには,勝ち負けを越えた大きな使命があるんですね。まだまだうかがいたいことはあるのですが,お時間のようですので,2026年春のリリースに向けての意気込みをお願いします。

イシイ氏:
 お話ししたように,本当に新しいアドベンチャーゲームの独特なプレイ感,読後感,新たな高みを目指している作品です。実験的な要素も入ってくるかもしれませんが,皆さんを驚かせるまったく新しい作品を目指して,春まで開発を頑張りますので,応援よろしくお願いします。

4Gamer:
 ありがとうございました。

人狼TLPT 13周年記念公演『#54:STEAM 機巧人形と月の記憶』

2025年9月25日(木)〜10月5日(日)
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