企画記事
ルームシェア中の女性オタク3人が乙女ゲームをガチ議論。「闇堕ちルート」が重厚なオトメイト最新作「OVER REQUIEMZ」の感想を語り合ってみた
2025年4月17日発売のNintendo Switch向け恋愛アドベンチャーゲーム「OVER REQUIEMZ(オーバーレクイエムズ)」。人気乙女ゲーブランド「オトメイト」の最新作で,ジャンルは公式には「真相か闇堕か選択を迫る恋愛ADV」とされています。今作では,プレイヤーは時空の狭間に飲み込まれ,4人の魔女が治める国「オズ」に迷い込んだ女の子として物語を進めていきます。物語の冒頭,主人公は異世界で死刑を宣告されてしまうのですが,興味を引くのは攻略対象が「同じく死刑囚となった『殺人鬼』たち」だという個性的な設定です。主人公たちは,この国にたびたび現れるという廃墟の異変に立ち向かうため,危険な廃墟調査へと赴くことになります。
![]() 異世界に迷い込んでしまった主人公 |
![]() 殺人鬼たちとともに,危険な廃虚調査に向かいます |
廃虚調査のパーティは主人公を含め5人。実父である国王を殺害した疑いが持たれている王子・カイゼ,故郷の村人を斬殺した研究者・クロード,旅商人を襲ったといわれている葬儀屋・モリィ,自らが率いた小隊の隊員を虐殺したという騎士・ノイル,そして廃墟調査にあたる罪人たちの監視役・ドロシーです。それぞれに,自ら他人の命を手にかけたという過去を持つキャラクターたち。そんな彼らと時間を過ごす中でわかる彼らの本当の姿,そして「真実」とは……?
物語を進めるごとに,キャラクターたち,そして物語の印象がどんどん変化していくのがこのゲームの特徴。そんな「OVER REQUIEMZ」を,ルームシェア中の女性オタク3人が一緒にプレイしてみました。
■登場人物
塗岡(ぬれおか・N):ニチアサと俳優が好きな会社員。ミュージシャンも好きで,学生時代には攻略対象10名全員ベーシストの乙女ゲーを作りたいと妄想していた。好きな属性は爽やかで優しいお兄さんタイプか,耽美なタイプの両極端。
塩豆(S):BLとプロ野球が好きな社会人。近年,世の中に黒髪短髪のキャラが少なくなっていることを嘆いている。4番サードでホームランをたくさん打ちそうな人が好み。
きんつば(K):この記事をまとめている,テーマパークと映画が好きな会社員兼ライター。最近楽しみにしているのは女性アイドルグループの現場に行くこと。眼鏡をかけている人に惹かれがち。
塗岡(ぬれおか・N):ニチアサと俳優が好きな会社員。ミュージシャンも好きで,学生時代には攻略対象10名全員ベーシストの乙女ゲーを作りたいと妄想していた。好きな属性は爽やかで優しいお兄さんタイプか,耽美なタイプの両極端。
塩豆(S):BLとプロ野球が好きな社会人。近年,世の中に黒髪短髪のキャラが少なくなっていることを嘆いている。4番サードでホームランをたくさん打ちそうな人が好み。
きんつば(K):この記事をまとめている,テーマパークと映画が好きな会社員兼ライター。最近楽しみにしているのは女性アイドルグループの現場に行くこと。眼鏡をかけている人に惹かれがち。
恋愛ゲームとしてはかなり濃いめの味付け
K:いや,思ったよりめちゃくちゃ重かったし癖強かったですよね……?
S:オトメイトの前作「My9Swallows TOPSTARS LEAGUE」とテンション全然違ったよね。あれは真っ直ぐなお仕事ものの乙女ゲーだったから。
N:我々アラサーのオタクとしては,ときめきを求める乙女ゲーとしては味付けがかなり濃かった。主人公も高校生だけど,高校生のオタクの女の子が思う過激な恋愛物語ってこういう感じ,っていうのはあるかもしれないよね。恋愛ADVというよりも,ノベルゲーとして読み応えがある物語だったと思ったな。
K:ゲームシステムとしても,好感度はなくて,選択肢もボイスの獲得にしか関係がないからね。今作の特徴は「真相ルート」「闇堕ルート」の分岐とストーリーがかなりしっかりと分かれていること。共通ルートの先の分岐によって,本当に結末がまったく異なるのが面白いです。
![]() 選択肢はかなりシンプル |
N:主人公がまったく知らない異世界に飛ばされて……というところからそうだけど,物語の作りとして全体に「謎」が散りばめられているのがいいよね。乙女ゲーらしさを求めている人は,なるべく「真相ルート」を選ぶことを目標にプレイしてほしい。
S:そもそも,登場人物がほぼ「殺人鬼」の恋愛ゲームって攻めてる感じがあるけど,「闇堕ルート」はそれを通り越してどんどん「刺さる人には刺さるんだろうなぁ」という道を進んでいった印象。
N:そう,多くの人は犯罪者との恋愛NGかと思いますし。就職でも,賞罰欄があると厳しいのが現実……。
K:でも,非日常を思いっきり楽しめる。それがゲームのいいところだね。
N:今作の物語って,束縛要素がかなり強いルートとか,一言でいうと「ちょっと前のヴィジュアル系の歌詞に出てきそうな恋愛」がいっぱい出てくるよね。とにかく,味付けが濃い。
S:かなり濃い。こってり。
異世界の「分からなさ」を巧みに描いたシナリオ
K:ゲームに通底してるテーマとしては,何らかの死を乗り越えて,それを超えて結ぶ絆,っていうことなんだけれども,人が死んだり,グロいとはいわないまでも血が出る描写があったりするので,怖い描写が苦手な人は心から楽しむのは結構厳しいかもしれませんね。
N:そうだね,しっかり怖いシーンもあった。
![]() リアルすぎないものの,血塗れのシーンも |
K:そのうえで,「殺人鬼」との恋愛をしっかり楽しみたいぜ! という人にとっては,冒頭から「とはいえ,君たち冤罪じゃないんですか?」という雰囲気がやや不安にさせるという。安心してください,ちゃんと「殺人鬼」のルート,あります!
S:主人公も,我々目線ではいわれなき罪で爆速で死刑が決まったから,殺人鬼との恋愛を求めていた人は冒頭でとても不安になるはずだけど,大丈夫。
N:景品表示法違反ではない。
K:薄々お気づきかもしれませんが,我々がすごくぼんやり話しているのは,この作品はネタバレなしでやってほしいからです! 謎を解き明かす要素が強いので!
S:異世界に飛ばされた自分がわからないこと,出会ったばかりの攻略対象の分からない素顔,そしてこうりゃ対象も分からないこの世界の謎,など,それぞれ違う「分からなさ」がうまく絡んでいるのがこのゲームのいいところなので!
K:異世界に来てしまった主人公の「分からなさ」を通した没入感が巧みなので! シナリオの力を感じます!
丁寧な物語,でも乙女ゲーとしては甘さ控えめ?
K:それにしても,とにかく,いろんな人が死んでしまうゲームだった。個人的には,心が健康なときにやってほしい。
N:異世界転生ものだけど,日常生活に疲れたOLこと我々が終業後に「転生しちゃお♪」とプレイするには重すぎる。「闇堕ルート」は特に,攻略対象が病んでいく過程を見ていくことになるので。
S:そもそもの根底を覆すことを言ってしまうけど,多くの乙女ゲーって,何かしらの暗い過去を背負った男性たちを,主人公となった我々がカウンセリングしていくことになるじゃないですか。
K:そう,福田萌子さんが男性たちの人生を解放していった,バチェロレッテのシーズン1のようにね。
S:今作はかなりその要素が強い。プレイヤーにかなりカウンセラーとしての素質が必要(笑)。乙女ゲー好きなら大丈夫かと思うけど,私は「生まれつきファビュラスな私に惚れろよ! お前が!」というメンタルなので,あまり合っていなかったかもしれない。途中で「むしろ俺をよしよししろ!(大暴れ)」となった。
K:そもそもそれは乙女ゲーをプレイするのに向いてなくはあるのだが,前作「My9Swallows TOPSTARS LEAGUE」は,恋愛げ真っ直ぐにお仕事ゲームでもあったから,そこと比べると特にそう思いがちかもね。
S:つばめ(「My9Swallows TOPSTARS LEAGUE」の主人公)はつばめで,野球の新リーグを立ち上げるという新卒社員としては重すぎる業務を担っていたけど……(笑)。
K:あと,謎が多い世界で攻略対象と信頼関係を築いていく部分はかなり丁寧に描かれていて,それが読み応えにつながっているのだけど,その分恋愛要素が削られている部分も感じた。それが塩豆ちゃんの「お前が私に惚れろよ!」という感想につながっている可能性もあるのかな。いわゆる,キュンとするような甘いときめき要素はあるルートにはあるけど,基本的には「刺さる人にはめちゃくちゃ刺さる」方向に結構振り切っている作品なので。
![]() 特に序盤には,定番のときめきシーンもあります |
N:共通ルートのシナリオから分岐後が結構長い分,キャラクターの掘り下げはかなりしっかりしているシナリオだよね。そして「謎を追う」というストーリーにおいてはテンポの良さってかなり大切だけど,そこもよかったと思う。
美しいグラフィックと読み応えある物語に没入するには
S:でも,ファンタジーものとあって,グラフィックスはめちゃくちゃ気合入ってるし,ゲーム全体のデザインも美しいよね。
K:それば本当に今作のおすすめポイント! ダークファンタジー好きな人は絶対に刺さります。あと何度も言っていますが「闇堕ルート」はヴィジュアル系バンドの世界観なので,それらが好きな人たちにもいいと思う。束縛,耽美,共依存……。
N:攻略対象も見た目はヴィジュアル系の雰囲気あるけど,みんな社会性があるのがいい。乙女ゲーって1人くらいは以上にツンツンしてたり,俺様すぎて価値観が人と離れ過ぎていたり,「本当にこの人と打ち解けられるのか……?」というキャラがいるけど,今作は王子であるカイゼでもちゃんと対話ができるから。
![]() 王族なのに俺様キャラではなく,社会人からの評価が高かったカイゼ |
K:そうだね,人それぞれいろいろな好みがあると思うけど,今作はキャラの掘り下げがキャラルート分岐後に初めてしっかり行われる構成になっているから,記号的な「この人好き!」「すごく刺さる!」を感じなかったキャラを選んでも楽しめると思う。どのキャラクターとも物語を楽しめそうな感じがするのがいいよね。
S:あとはやはり,「闇堕ちが大好き!」という人にはマストでやってほしいですね。「真相ルート」「闇堕ルート」が各キャラ2つずつの計4ルートで,闇堕ち好きに手厚い。私が良かったと思うのはカイゼの闇堕ルートの1つ(Ending N)なんだけど,物語としての仕掛けがとても面白かった。
K:私は二次元に関してはハッピーエンドであってくれ! という気持ちが強いタイプなので,クロードの真相ルートの1つ(Ending O)が好きだったな。とはいえ,今作は真相もどっちに行くかでかなり読後感が変わるよね。実際,クロードのもう片方の真相ルートでは結構ショックを受けました……。
N:クロード,優しいし好きなんだけど,最初に真相ルートをやってしまったので,後から闇堕ルートが受け入れられなくて評価が下がった(笑)。私がいいなと思ったのはノイルの真相ルートかな。恋愛関係というより,バディ感が強くて好きだった! あと,サブキャラが魅力的なのも良かった。
![]() ノイルは料理が上手なところも社会人の心を射止めていました |
S:全体に,「攻略対象とのBLがはじまる!?」というような良キャラがいっぱいいたよね。
N:褒め方にクセがある。女の子キャラも攻略したかったな〜。
K:我々はどちらかといえば,ヴィジュアル系を履修しつつも,年齢とともに健康的な男性が好ましいと思うようになったタイプですが,シナリオにかなり読み応えがあるのと,推理が必要なわけではないながら謎解き要素が多分に含まれているので,最後まで楽しめました。お気に入りのキャラじゃなくてもこっちのルートもやってみたい! と思わせる作品だった。
S:私たちはルームシェアをしているので一緒に進めたけど,できたら作品世界にどっぷりと浸るために1人でやった方がいいと思う(笑)。
K:タイトル通り,死を受け入れたり,弔ったりした先にあるものは……という作品ですからね。そこにしっかり向き合ったほうが,体験として絶対にいい。
N:ぜひ部屋を少し薄暗くして,それでいて目を悪くしないように気を使いながら(笑),夜中にやってほしい1本ですね。
「OVER REQUIEMZ」公式サイト
(C)IDEA FACTORY/KOGADO STUDIO