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「ラタタン」がBitSummitに帰ってきた。坂尻一人氏に聞く,体験版で見えた課題との向き合い方と,アーリーアクセスに向けた現在[BitSummit]
本作は「パタポン」を手がけた小谷浩之氏がゲームデザインを担当するリズムローグライクアクションだ。2023年7月の「BitSummit Let's Go!!」でKickstarterキャンペーンの開始が告知され,48時間で1億円を超える支援を集め話題に。2025年6月には体験版が公開され,アーリーアクセス時期の発表を経て,今回のBitSummitで“凱旋”を果たす形となった。
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ゲーム性については,6月に開催された「Summer Game Fest 2025: Play Days」のレポートで詳しく紹介しているが(関連記事),「パタポン」譲りのビートアクションに,ローグライク要素を掛け合わせたユニークな手触りで,多くのプレイヤーの心をつかんだ。一方で,UIや視認性といった部分での分かりにくさの指摘も多く,アーリーアクセス開始を延期し,改善へと動き始めている。
そんな課題の声が寄せられたSGFから1か月。BitSummitの会場で再会したプロデューサーの坂尻一人氏に,現時点での手応えや反応,そしてこれからの展開について話を聞いた。その途中で,とある一報が……。
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4Gamer:
Summer Game Fest 2025: Play Daysの会場では,いくつかの課題についても話されていましたが,あれからどんな変化がありましたか?
坂尻氏:
ちょうどSGFのころが,たくさんの意見をいただいていた時期でした。レビューが1000件,体験版向けのフィードバックフォームには3000件以上の声が届きました。それだけ皆さんが興味を持ってプレイしてくださったという喜びはありましたが,課題をいろいろ抱えたまま出してしまっていたんだなという反省もまたありました。
今回のBitSummitに持ってきたバージョンは基本的にはSGFの体験版と同じものなんですけど,本当は新しいビルドを用意したかったという気持ちもありました。開発はバタバタでしたけど,こういう場所でゲームを見ていただいて,声を受け取ってそれに応えていきたいという思いは強いです。
4Gamer:
こういったイベントでプレイヤーからの声をもらって育てていくというのはインディーならではの流れですよね。
坂尻氏:
そうですね。全部に応えるのは難しい部分もありますが,特に多かった指摘にはしっかり向き合っていきたいと思っています。
ユーザビリティの改善は優先的に進めていますし,「どう遊べばいいか分からない」といった声も多かったので,そこをどう分かりやすくしていけるか,ずっと考えています。
4Gamer:
分かりやすさを出そうとしすぎると,逆に雰囲気を壊してしまうというジレンマもありそうですね。感じながらなんとなく感覚を掴んでいくような楽しさや雰囲気が損なわれてしまわないかと。
坂尻氏:
それは本当に難しい部分です。説明しすぎるとせっかくのリズムが大事なゲームのテンポや空気感が崩れてしまうかもしれません。なので,最初から全部を説明するのではなくて段階的に見せていく,ちょっとしたきっかけを置いてそこにアクセスしやすくするといったアプローチを大事にしています。
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4Gamer:
画面そのものが1枚のイラストみたいな雰囲気があって,スクリーンショットを残したいとなりそうですよね。だから「ここがヘルプです!」みたいな表示があると,そういう写真を残したい! みたいなときも気になってしまうかもしれません。ヘルプみたいな表示やボタンを消せるようできるといいなとちょっと思いました。
坂尻氏:
なるほど。そこまで意識できていなかったですが,確かにそういった視点もありますね。
4Gamer:
フィードバックで多かったものとして,ほかに印象的なものはありますか?
坂尻氏:
ラタタンに“必殺技”みたいなアクションがほしいという声が多かったです。これは最初のKickstarter映像にそういう要素が映っていたので,それを覚えていた人がたくさんいらっしゃいました。開発の中で一度削った要素ではあるのですが,ラタタンのいろいろな動きが見たいと。今でも覚えていてくれるのは本当にありがたいと感じます。
4Gamer:
映像を覚えていて,いまもそれを期待してくれているというのは,プレイヤー側の気持ちの強さも感じますね。
坂尻氏:
ええ。ラタタンは8種類いるので,新しい動作や絵を作るとなると大変なのですが,でもやはり見てくださっている人がそこに期待してくれているので,どうにか応えたいという気持ちはあります。
それを今すぐ全部入れるのは難しく,アーリーアクセス版には間に合わないかもしれません。でも,開始のときには「いま対応中です」と伝えられるようにして,何かしらのビジュアルも見せられたらと思っています。
4Gamer:
アーリーアクセスに向けた調整の状況としては,現在どのあたりまで進んでいますか?
坂尻氏:
まだやり足りないところもありますが,「変わったな」と思ってもらえる部分はちゃんと入ってきていると思います。アーリーアクセスの開始日も,そう遠くないうちにお知らせできると思いますし,開始自体もそれほど先ではないと思います。
アーリーアクセスが始まったあとは,半年から1年くらいの期間で正式リリースを目指しながら,大きめのアップデートを2回くらい予定しています。体験がガラッと変わるような,そんなアップデートにできたらと考えています。
4Gamer:
今回のBitSummit出展も多くの来場者が足を止めていて,まさに凱旋という印象でした。
坂尻氏:
Game Source Entertainmentから声をかけていただいての出展でしたが,4台の試遊台を出して,今日(2025年7月19日)は一般公開日の初日で30分待ちくらいの列もできていたみたいです。そこまで興味を持って並んでくださるのは,本当にありがたいなと思います。
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4Gamer:
そして,「VERMILLION GATE AWARD / 朱色賞」にもノミネートされていましたね。
坂尻氏:
はい。朱色賞はノミネートされただけでもすごくうれしいです。バッカーのみなさんが「どうなるかな?」「取れたらいいなあ」みたいにヤキモキしてくれたら,それだけで盛り上がると思うんですよね。
なんて話していて取材終了となったその矢先,まさにそのタイミングで,BitSummit運営から「VERMILLION GATE AWARD / 朱色賞」受賞とアワード参加に関する説明が始まった。偶然とはいえ,その場で坂尻氏に「おめでとうございます!」と声をかけられたのは,いちゲームファンとしてもうれしい出来事だった。「ラタタン」は,フィードバックを真摯に受け止めながら,プレイヤーとともに育っていく。その歩みの先に,どんな“音”が鳴り響くのか。今後の展開にも注目だ。
「BitSummit the 13th」アワードの大賞は「ラタタン」に決定! 4Gamer賞は,コマンド1つがフィールドの自然環境に多様な変化を生むSRPG「Never's End」[BitSummit]
![「BitSummit the 13th」アワードの大賞は「ラタタン」に決定! 4Gamer賞は,コマンド1つがフィールドの自然環境に多様な変化を生むSRPG「Never's End」[BitSummit]](/games/724/G072426/20250720003/TN/017.jpg)
日本最大のインディーゲームの祭典「BitSummit the 13th: Summer of Yokai」。2日目の7月19日には「BitSummitアワード」の授賞式が行われ,大賞にそのインディー精神が人の心を掴んだ「ラタタン(RATATAN)」が選ばれた。メディアパートナーの4Gamer.net賞受賞作は「Never's End」だ。
「BitSummit the 13th」公式サイト
4Gamer「BitSummit the 13th」まとめページ
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