紹介記事
“再編集”がもたらす再発見。10年目に紡ぎ直された「アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編 前編」が映す“はじまり”の原点
「アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編 前編」が,2025年10月3日より全国の映画館で上映中だ。2015年にリリースされたアプリ「アイドリッシュセブン」(iOS / Android)を原作とする本作は,シリーズ10周年を記念して制作された“はじまりの物語”。TVアニメ1期を再構成し,アイドルたちの心情や関係性の変化を新たな角度から描いている。
※以下,ストーリーのネタバレを含むため,未視聴の人はご注意ください
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物語は,「小鳥遊事務所」に集められた7人が「IDOLiSH7」として芸能界への第一歩を踏み出すところから始まる。
未知の可能性を秘めながら,寮での共同生活とアイドル活動をスタートする彼らだったが,それぞれの夢や目的の違いから,少しずつ綻びが生まれていく。
活動初期の彼らは,自ら街に出てフライヤーを配り,観客9人の前で歌う初ライブなど,原点を象徴する場面が丁寧に描かれている。路上ライブに挑む姿もあり,デビュー前の彼らの姿はどこか初々しく,「こんなときもあったな」と思わず微笑んでしまう。
![]() 和泉一織(CV:増田俊樹) |
![]() 二階堂大和(CV:白井悠介) |
![]() 和泉三月(CV:代永 翼) |
![]() 四葉 環(CV:KENN) |
![]() 逢坂壮五(CV:阿部 敦) |
![]() 六弥ナギ(CV:江口拓也) |
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意見がぶつかりながらも互いを理解し合い,不器用ながらもまっすぐに向き合う姿からは,ひとつのチームとして形を成していく過程が感じられた。
また,「八乙女事務所」の3人組アイドルグループ「TRIGGER」のステージを目にしたことで刺激を受けた彼らは,それぞれの胸の内に,小さな変化を抱きはじめる。
![]() 八乙女 楽(CV:羽多野 渉) |
![]() 九条 天(CV:斉藤壮馬) |
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9人の観客から始まった彼らが,3000人の前でライブを成功させるまでの道のりには,努力と信頼の積み重ねが息づいており,胸が熱くなった。
そんななか,テレビ中継で注目を集めた環と壮五の2人にデビューの話が持ち上がるが,彼らはあくまで「IDOLiSH7」としてステージに立ちたいと願っていた。しかし,まだ知名度の低い彼らには,7人全員でのメジャーデビューの許可は下りない。
それでも,全員で前を向きたいという想いは揺らぐことなく,音楽番組への挑戦を決意する。思うようにいかず挫折を味わう場面もあったが,支え合いながら再び立ち上がる姿に,確かな成長の兆しが感じられた。
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本作は,そんな彼らの原点を物語の再構成をしたことによって,初ライブや仲間との衝突,「TRIGGER」との出会いなどが新たな印象で提示されている。
あのころの彼らを見つめ直すことで,初心を貫く強さやまっすぐな想いをあらためて感じた。小さなステージに響く拍手や,夢へ向かう姿が胸に残り,原点を振り返る一作として穏やかな余韻を残してくれた。
また,観客が「IDOLiSH7」の“始まり”に立ち会えるような距離感も,本作の魅力のひとつだ。彼らが不安や迷いを抱えながらも,夢に向かって進んでいく姿が丁寧に描かれており,スクリーンを通してその想いがまっすぐに伝わってくる。
ライブシーンでは迫力ある映像と繊細な演出が際立ち,彼らの成長と情熱がよりリアルに感じられた。さらに,エンドロールには新規カットも追加されているので,ぜひチェックを。
「アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編 後編」は12月5日に公開予定だ。
【前編】ではまだ物語の始まりが中心だったが,【後編】では「IDOLiSH7」がメジャーデビューを果たし,彼らが直面する現実や,それぞれの選択がどんな形で描かれるのか注目したい。
再構成ならではの視点で,彼らの関係がどう変化していくのか,期待が高まる。
一方で,ライバルグループ「TRIGGER」も,完璧なステージの裏で,事務所の方針と自分たちの信念のあいだで揺れ動いていた。
彼らとの対比をとおして,成功の裏にある迷いや信念がより鮮明に浮かび上がる。再構成された映像だからこそ伝わる“心の揺れ”が印象的だった。
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「アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編 前編」は,10年続くシリーズの“原点”をあらためて見つめ直す作品だ。
これまで何度も見たシーンでも,新しい構成や演出によって,新たな気持ちで物語を味わえた。静かで温かな余韻を残す総集編であり,作品とアイドルたちへの深い愛情が感じられる。
TVシリーズを観ていた人はもちろん,初めて触れる人にもおすすめしたい一作だ。
「アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編」公式サイト
(C)BNEI/アイナナ製作委員会