
プレイレポート
インディー作品30本以上が出展された「iGi」×「創風」ブースまとめ。発想と熱意あふれる注目作をピックアップして紹介[TGS2025]
パブリッシャがブースを構え,多数のインディー作品をまとめて展示するというスタイルは,近年ではかなり一般化しつつある。本稿で取り上げる「iGi indie Game incubator」と「令和6年度補正クリエイター・エンタメスタートアップ創出事業『創風』」の合同ブースも,そうしたブースの1つだ。
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今回は「iGi」第5期生による5作品,「創風」採択チームの20作品に,そのほか関連コンテンツを含む合計30作品以上が展示されている。クリエイター本人がブースに立っており,直接話を聞きつつプレイができるとのことで,かなり力の入った内容だ。本稿では,そんなブース内で遊べた作品の中から,注目作をいくつかピックアップして内容をお届けしよう。
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「iGi indie Game incubator」公式サイト
「創風」公式サイト
「リコネクト」
Studio Wink / 発売時期:2026年内![]() |
AIたちのプログラムに侵入し,コネクタをつなげて“ココロ”を治していくパズルアドベンチャーゲーム。プログラムの中には到達すべきゴールがあり,そこに至れば修復を行える。ただし,ゴールまでのあいだには多彩な障害が待ち受けているので,パズルを解いて道を拓く必要がある。
最初はオブジェクトを押したり引いたりするという,いわゆる倉庫番パズル系のギミックが中心だが,ゲームが進むとプログラミング要素が登場する。特定の動作を行わせる命令と,それを行うオブジェクトをコネクタでつなげることで,さまざまな動作を実現できる。
例えば「左右に移動する」という命令を「ブロック」に接続すれば,ブロックは自動で左右に反復移動をしてくれる。命令は対応するオブジェクトすべてに適用されるので,うまく利用すれば触れられない位置にあるオブジェクトにも干渉することも可能だ。
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また,物語が進むとアクションステージも登場し,それを乗り越えるとAIのココロを直接修復する場面が訪れる。ココロのつなぎかた次第でストーリーが変化するなど,本作のギミックを生かした展開が用意されているのもおもしろいところだ。
「リコネクト」公式サイト
ラクガキ人狼
Kintendo / 発売時期:2025年第4四半期![]() |
自分で描いたラクガキがキャラクターとしてゲーム内に出現し,オンラインで操作して殺人鬼を見つけ出す正体隠匿系ゲーム。キャラクターの姿がプレイヤーごとにまったく変わるので,それをしっかり覚えなければならない。
会話は手描きメッセージでのみ実行可能なほか,死亡したプレイヤーは「血液」を使って制限時間内にダイイングメッセージを地面に書き残せる。絵によるコミュニケーションが中心で,ほぼ会話が不要なゲーム性であるため,いわゆる“野良”でも遊びやすいのが特徴だ。
また,一般的な同ジャンル作品とは異なり,素材を集めてアイテムをクラフトする要素も用意されている。アイテムには多彩な効果があり,その中には「描いたオブジェクトを召喚する」や「描いた姿に一定時間変身する」といったものも存在するという。
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アイテムや武器まわりの仕様は設定次第で調整が可能かつ,最大で10人でプレイできるとのことで,パーティーゲームとして非常に盛り上がりやすそうな作品だ。STEAMのストアページではオープンβテストの参加者を募集しているので,興味を持った人は友達と一緒に参加してみてはいかがだろうか。
「Kintendo / 筋天堂」公式Xアカウント
不可思議メメメは寝ていたい
LabyLab / 発売時期:2026年内![]() |
ずっと寝ていたい天才ハカセ「不可思議メメメ」は,世界に眠気をふりまく可愛い羊の製造装置を発明した。それらを出荷し,ポイントを稼いで,装置を改良したり,より強力な羊を作ったりしていく拡大再生産ゲームだ。
最初は手動でボタンを連打して1匹ずつ羊を作り,手動で出荷を進めなければならないが,ゲームが進むと「羊を自動で追い立てるロボット犬」や「メメメの足を早くするトレーニング機」などが登場し,どんどん快適になっていく。
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出荷が楽になるだけでなく,羊1匹から得られるポイントも増えていくので,獲得ポイントは指数関数的に増加する。方向性としては「クッキークリッカー」に近いが,プレイヤーのアクションがどんどん快適になっていくため,プレイの爽快度はなかなか高い。
また,ちょっとした進展があるたびにメメメがしゃべってくれるほか,NPCとの会話も楽しめる。一定の目標を突破すると,世界に羊が満ちていく特別なムービーが流れるなど,かなり細かく報酬を用意してくれているので,遊んでいて暇になる時間が少ないのが嬉しいところ。
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映像面の作り込みも細やかで,かなりこだわりをもって作られていることが分かる。現場で解説を行ってくれた開発チームによると,今後はイベントや各種アイテムを増やしていくとのこと。リラックスしながら遊べそうなゲームなので,リリースされたらゆったりと楽しんでみたい。
namase氏 Xアカウント
「I Saw a Flying Saucer」
Midnight Peppermint / 発売時期:2026年内![]() |
妻の死を受け入れられない男が,存在するはずのないUFOを求めて旅をするという“インタラクティブ・フィクション”を謳うアドベンチャーゲーム。どこか色褪せたグラフィックスと,極限までシンプルな画面構成が醸し出す,特殊な世界観が特徴だ。
とにかく説明がないので,最初は何をすればいいのか迷ってしまった。とりあえずマウスを振ってカーソルを動かしてみると,画面上のいろいろな場所に反応が隠されていることに気づく。そうして車のキーを回し,アクセルを踏み込むと車が動き始めた。
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ドライブ中はハンドル操作以外にできることはないが,チューニングをすればラジオを聞ける。その中には,主人公がすがっているであろう「UFO」に関する噂など,本作における数少ない世界観を感じ取れる要素が含まれているようだ。
走り続けていると,給油所についた。ただ給油して走り出すことも可能だが,お店で買い物もできる(所持金の表示はないが,常識的な金額は持っている模様)。それが何を意味するのかは分からないが,さまざまな反応が用意されており,なにげに探索するのが楽しい。
情報量の少ない画面や,その中から情報を探り出すような手触り,そこから繰り出される人を突き放すような簡素なテキストなど,あらゆる要素が「喪失感から逃れようとする主人公」をうまく表現している。
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この物語がどう進み,どんな方向へと進化していくのかは分からないが,独特な魅力のある作品なのは間違いない。STEAMのストアページ上では対応言語に日本語が含まれていなかったが,今回プレイしたバージョンは日本語になっていたので期待したい。
Midnight Peppermint 公式サイト
RX10-40
Karakasa Limited / 発売時期:未定![]() |
制御が及ばなくなったAIとの闘いに挑むため,ロボットを操縦してステージを攻略していく3Dアクションゲーム。シンプルでリニア(一本道)なシステムが特徴で,レベル上げなどの蓄積する成長要素が存在せず,実力のみで難所に挑まなければならない。
プレイヤーが操作するロボットの持つリソースは,0になると死亡する「体力」,攻撃や回避に用いる「エネルギー」,射撃に用いる「弾薬」の3つだけ。敵を倒すと体力や弾薬を得られるが,エネルギーは時間経過でのみ回復するので,状況を見極めて対処を考える必要がある。
攻撃アクションは,スタンバトンによる近接攻撃,射撃による遠隔攻撃,必殺技にあたる「スーパーアタック」と多彩だが,いずれのアクションもかなりクセが強い。例えば近接攻撃は高威力だが“タメ”が必要で,射撃はエネルギー不要だが集弾性が悪い。
それぞれの使い道が尖っているので,考えなしに攻撃を振り回していては絶対に勝てない仕組みになっている。登場する敵の位置や,ステージの構造を把握し,戦略的に戦うことが推奨されているようだ。実際,強敵も対処次第では簡単に倒せるなど,攻略しがいのある内容となっていた。
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操作システム,手触り,世界観のいずれも尖った作品だが,それだけに刺さる人にとってはピッタリな1本になるかもしれない。STEAMのストアページでは体験版が公開されているので,遊んでみたくなった人はダウンロードしてみよう。
「RX10-40」公式サイト
「クワイエット急行909号室」
STUDIO 909 / 発売時期:未定![]() |
「ムーンレスムーン」「ナツノカナタ」などの作品で知られるクリエイターのKazuhide Oka氏が手掛ける新作タイトル。7日間で大陸を横断する列車「クワイエット急行」に乗り込み,さまざまな乗客とのコミュニケーションや,落ち着いた時間を楽しめる。
しかし乗客との会話を進めていくと“存在しないはずの909号室”のウワサが浮かび上がってくる。乗客たちはもちろんのこと,車掌ですら見たことがないらしい。本当にそのようなものが存在するのか。あったとしたら,そこになにがあるのか――といったストーリーが展開する。
注目ポイントはなんといっても,どこを見ても美しくデザインされた車内のグラフィックスだ。細かなオブジェクトのデザインや,窓から差し込む光,風で揺れるカーテンなど,ちょっとした演出が優しい世界観を表現している。
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出展バージョンはモックアップ版ということで,基本的なグラフィックスと挙動のみが実装されていた。具体的なゲーム性には触れられなかったが,それでも完成品に期待せざるをえないクオリティを発揮していた。続報が気になる人は,公式Xアカウントをフォローしておこう。
「クワイエット急行909号室」公式Xアカウント
本エリアは出展タイトルが非常に多く,すべてを遊びきることはできなかった。以下には,ここで取り上げなかったものの4Gamerで紹介済みのタイトルと,出展タイトルのまとめを掲載する。詳細な情報を知りたい人は,各タイトルのストアページなどと合わせて,ぜひ確認してほしい。
文章に“ない”を足し引きして解く論理パズルゲーム「黒くないカギで開かないドアはない」を紹介[BitSummit]
![文章に“ない”を足し引きして解く論理パズルゲーム「黒くないカギで開かないドアはない」を紹介[BitSummit]](/games/913/G091321/20250722043/TN/008.jpg)
2025年7月18日から7月20日まで開催された「BitSummit the 13th」の「iGi indie Game incubator」ブースに,パズルゲーム「黒くないカギで開かないドアはない」が出展していた。“否定を操る力”を授けられた主人公が,ルール文で構成された世界を冒険するという体験が非常に面白かったので,本稿で紹介しよう。
2つの民族が争う世界を舞台に重厚なファンタジーが展開される新作ローグライクSRPG「Indomitable Blade」試遊レポート[TGS2024]
![2つの民族が争う世界を舞台に重厚なファンタジーが展開される新作ローグライクSRPG「Indomitable Blade」試遊レポート[TGS2024]](/games/842/G084236/20240929058/TN/006.jpg)
東京ゲームショウ2024の「インディーコーナー」に,PC向けシミュレーションRPG「Indomitable Blade」がプレイアブル出展されていた。本作は,ホーン人とラウスラム人の2つの民族が争う世界で,ホーン人の国「グレウスダル王国」の戦士を率いて戦うローグライクシミュレーションRPGだ。
月面タクシーの運転手となり,個性豊かな乗客にタイムトラベルを提供しながら,大統領暗殺の謎に迫るADV「TIMEMOON」を体験[BitSummit]
![月面タクシーの運転手となり,個性豊かな乗客にタイムトラベルを提供しながら,大統領暗殺の謎に迫るADV「TIMEMOON」を体験[BitSummit]](/games/882/G088266/20250720018/TN/001.jpg)
2025年7月18日から20日まで,京都・みやこめっせで開催されたインディーゲームイベント「BitSummit the 13th」の会場に,SFビジュアルノベル「TIMEMOON」が出展されていた。思わず立ち止まってしまう美しいピクセルアート,タイムトラベルや月面タクシーなどに興味を惹かれ,試遊版を体験してみた。
●「iGi」第5期生
タイトル | 公式 | ストア |
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不可思議メメメは寝ていたい | リンク | Steam |
あなたに花束を | リンク | Steam |
リリーinドリームワールド | リンク | Steam |
黒くないカギで開かないドアはない | リンク | Steam |
リコネクト | リンク | Steam |
●「創風」採択チーム
タイトル | リンク |
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Beautiful Life Show | Steam |
Dress the Duel | Steam |
表面迷宮くるまぶ | Steam |
セイズの国 | Steam |
かみよがたり | 公式 |
Mount Lomyst ロミスト山のてっぺん | Steam |
ラクガキ人狼 | Steam |
TIMEMOON | Steam |
イミテーション | Steam |
I Saw a Flying Saucer | Steam |
MAUSOLEUM | 公式X |
クワイエット急行909号室 | 公式X |
里山のおと 春さんぽ | Steam |
Wander in Wonder | Steam |
Wild Wordopia | Steam |
Finding Polka | ポスト |
MeloMisterio -play your melody- | Steam |
モノノケの国 | Steam |
王子さまと妖精 - The Perfect Prince - | Steam |
RX10-40 | Steam |
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