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障がいを持つ人だけでなく,ゲームに触れたことのない人の遊びのきっかけに。「ゲームを遊びたい人が遊べる環境を考える」レポート[CEDEC 2025]
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本公演は,小林氏と小野氏,そして筋ジストロフィーという病気で入院中の中村氏が,障がいを持つ人のプレイ環境の実態や,ゲームを経験したことのないお年寄りや子供などが,ゲームに触れやすくなる解決策の例を紹介するものだ。
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もともと中村氏は,ゲームを活用した治療を行っていたが,その中でゲームを遊ぶだけでなく,制作してみたいと感じたという。それを知った小野氏が,小林氏を誘いつつ中村氏の支援を行った。現在は中村氏だけでなく,同じ症状を持つほかの患者の人も一緒にゲーム制作を行っているそうだ。
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まず中村氏は,自身の環境では,ゲームを遊びたくても遊べないという訴えを述べた。というのも,中村氏は現在,指先以外を自由に動かせない状態であり,既存のコントローラでは握ることすらできないからだ。
一応,特殊なコントローラを使用すれば遊べなくもないが,それらの機器は高額で簡単には入手できない。事前に触れる機会もないため,たとえ入手しても実際に使えるかどうかが分からない。
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そんな状況を知った小林氏が,Nintendo SwitchのJoy-Conに搭載されたジャイロ,加速度,IRそれぞれのセンサーをボタン入力に変換したり,1ボタンだけでさまざまな操作を行えたりする,新しい操作方法を開発してくれたという。
講演では,1ボタン操作が例として紹介された。短かく押すと下へ,中くらいの長さで上へ,長押しで決定,といった1ボタンでのメニュー操作や,1ボタンで遊べるように開発されたという,上下移動が自動化され,撃つ楽しさに焦点を当てたシューティングゲームのサンプルなども登場した。
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この操作システムにより,障がいを持つ人が,特殊な機器を使用しなくてもゲームをプレイできるだけでなく,ゲームに触れたことがない人,苦手な人のハードルを下げ,遊びのきっかけを作れるようになったとのことだ。
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最後に中村氏は,こうした操作方法の開発や,どうやったら楽しくなるか,面白くなるかを一緒に考えてくれた小林氏に謝辞を述べるとともに,この活動が自身だけでなく,誰かの遊べるきっかけにつながっていくはずだとし,講演を締めくくった。
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講演後は,小林氏,小野氏から,中村氏とともにこれまで行ってきたゲーム制作での体験が語られた。小野氏はその中で,中村氏とのゲーム開発は,普段大学で学生とともに行う開発と比べても遜色なく行えていると笑顔を見せていた。
また小林氏は,今回開発した操作システムを実際に作ってみて,考えることが多く,開発者冥利に尽きる楽しい時間になっていると,やりごたえを語った。
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中村氏や小野氏の生徒などが制作したゲームは,中村氏自身が運営する「みんなのゲームラボ」というサイトで公開されている。ブラウザ上で遊べるゲームが多数公開されているので,今回紹介された活動でどんなゲームたちが生まれたのか,ぜひ遊んでみてほしい。
「みんなのゲームラボ」
CEDEC 公式サイト
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