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印刷2025/08/04 17:30

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ユーザーレビューをゲームの魅力や品質向上につなげるためには。レビュー実施のタイミングや各フェーズごとの注意点を,300件以上の実績を通じて解説[CEDEC 2025]

 2025年7月22日,ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2025」にて,AIQVE ONEの杉山博康氏による講演「過去300件以上の評価実績を通じて分かった,ゲームの魅力的品質向上のためのユーザーレビューの重要性とポイントを解説(初級編)」が行われた。

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 本講演は,ゲームのユーザーレビューを実施する際の,目的に応じた実施時期と手法の紹介や,定量調査を誰に実施するべきか,アンケート設問で特に注意すべきことなどを解説するものだ。これにより,レビューを実施(発注)する際に,調査の成果を高めるための知見を得られるという。

 杉山氏は昨年のCEDEC 2024にて,ゲームユーザーレビューの重要さを広く浅く解説する内容で,同じく「過去300件以上の評価実績を通じて分かった,ゲームの魅力的品質向上のためのユーザーレビューの重要性とポイントを解説」と題した講演を実施していた。今回は,もう少し踏み込んだ内容となり,具体的な事例の抜粋とともに解説が行われた。

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 まずは前回のおさらいとして,ユーザーレビューの重要性が改めて語られた。それによると,ユーザー視点からゲームの魅力や不満点を知ることができるユーザーレビューは,「面白いゲーム」の制作に役立ち,ゲームの魅力を高める重要な役割を持っているという。

 しかし,もしゲームのシステム部分が不評の原因だとすると,β版時点のユーザーレビューでは手遅れになっている可能性が高い。では,いったいどのタイミングでレビューを実施するのが最適なのだろうか。

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 ここからは,ゲームを開発,運営していくうえで,ユーザーレビューを実施する主なタイミングと,そこから得られるデータ,レビューを実施する際の注意点などが紹介された。

 先述の通り,β版時点でレビューを実施しても,そこからゲームシステムの変更は不可能に近い。ユーザーが求めるゲームを制作するためには,まずシステムを決定する企画以前の段階で「市場調査」を行うのが望ましい。

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 プロジェクトの準備段階で市場調査を行えば,今の流行や競合,ゲームの市場規模などが分かるだけでなく,IP作品の場合はその作品の人気や年齢層なども分かり,そもそもゲーム化自体がリスクになる可能性すらも判断できるかもしれない。

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 次に,ある程度ゲームがプレイ可能になったタイミングでの「ファーストプレイアブル調査」だ。この調査は,ゲームの根幹的な面白さを確かめる目的で行われ,アクションゲームなど,ゲーム性とゲームの魅力が直結しやすいタイトルほど重要になる。ただし,ユーザーからレビューを収集する際に,面白さの言語化や数値化が難しいことも多いため,インタビューやアンケート以外にも,遊んでいるユーザーを観察し,その反応を見るのも非常に有効とのことだ。

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 続いては,ゲームがほぼ完成形に近づいたβ版での「バランス調査」だ。これはゲームバランスを調整する際のデータを集めるもので,誰からのレビューを取り入れるかが重要となる。例えば,ゲームが苦手な人たちのレビューには,当然ながら「難しい」という意見が多い。ゲームの想定ターゲットをしっかり定めて,アンケートから得意ゲームなどの情報も得つつ,ターゲット層に合致した人からのレビューを重視することが必要だ。

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 最後に,ゲームがリリースされ,運営フェイズで行う「リリース後調査」だ。これは,市場評価の要因や,ユーザーの離脱要因を知るためのものとなる。なお,ゲームのレビューには,いわゆる「声が大きい人」と「声の小さい人」の意見があるが,声の大きい人の意見は見つけやすく,また,ゲームを継続してプレイしているユーザーもデータを集めやすい。そのため「声が小さく,離脱したユーザー」の意見を集める際に,ユーザーレビューが役立つそうだ。

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 この調査を行う際に気を付けたいのは「現状に満足している人」や「大多数の無課金層」の意見を聞きすぎたり,聞き続けたりしないことだ。何を目的に調査を行うのか,どの層の意見を収集するのかを明確にし,意見を鵜呑みにしないよう気を付けたい。

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 続いて,より正確なデータを得るために行う,定量調査に必要なコストや人数,調査人員確保の際に注意すべき点などが語られた。

 定量調査では,ある程度の人数からデータを収集する必要があり,その適正数は(その時々によるとしつつ)最低100人(1人=1%)ほどになるという。この人数のデータをとろうとすると,Webアンケートならば数十万円程度で済む場合もあるが,実際にプレイさせようとすると,数百万円から1千万円以上となる場合もあったそうだ。

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 そこで杉山氏は,定量調査に定性的な手法を取り入れ,コストを抑えることを提案している。例えば,調査自体はアンケートのみで行うが,設問にそれぞれ解答の理由を記入してもらうことで,より細かいデータが得られる,といった具合だ。

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 こうして得たデータでユーザーのグループ分けを行うことで,定量調査におけるペルソナ(重視するユーザー)設定も行える。例えば「重課金かつIPのコアなファン」や「微課金かつIPは認知している程度」といった具合に分ければ,ターゲットとの相対関係を明確にできたり,あえてターゲット外を調査対象にしたりすることも可能だ。
 この際,条件が曖昧だと間違ったペルソナに配分されてしまうため,それを防ぐために解答の基準を明確化したり,中間層を省いたりすることが有効となる。

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 続いて,これらを踏まえたうえで,実際にどう設問を作成していけば良いのかが解説された。例えば,単一選択式の設問では「選択肢の内容の重複」「回答がいずれにも当てはまらない選択肢」「複数の評価軸の混在」「回答者の基準で選択がブレる内容」を避けなければならない。前者3つは設問の作成時に注意を怠らず,4つ目は「リッカート尺度」を活用することで,ある程度対応可能だ。
 また,単一選択では回答の誘導が可能になってしまうため,意図せずそうならないように注意が必要だ。

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 最後に,言語化や数値で表しにくいデータをグループディスカッションなどで収集する,「定性調査」について触れられた。定性調査は,作業時間に対するコスパや,少人数でも行える点,具体的な改善提案も可能というメリットがある一方,レビュアーにある程度の知見が求められる,数値的裏付けが得られないなどのデメリットもある。

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 さらに,インタビューによりうまく言語化できない人の意見を聞き出せたり,他者の意見を聞いてさらなる意見を引き出したり,想定質問以外にも深堀りができたりと,さまざまなメリットもある。しかし,定性調査はレビュアーやモデレータの力量に大きく左右され,この場で詳しく説明するのは難しいとし,簡単な解説までとなった。

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 ゲーム開発者にとってユーザーの声は,開発の方針やモチベーションを左右する,重要なデータである。今回の講演では,それをどういった手法で,正しく収集するためのきっかけとなる知見が得られた。杉山氏は昨年もユーザーレビューの重要性について講演を行っている。もし昨年の講演も気になるという人は,4Gamerでレポートを掲載しているので,そちらもチェックしてみてほしい。

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[2024/08/22 18:48]

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