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影絵を作り,無数のボタンを押して陣取りをする。BitSummitで見つけた,手を使って遊ぶユニークなインディーゲーム2本をレポート[BitSummit]
「Curtain Drop-落影」では,手を使って影絵を作り,「フリップ☆パニック!」は16×16=256個のボタンを押しまくり,何本もの手が入り乱れるのだ。
影絵の動物が動き出す「Curtain Drop-落影」
「Curtain Drop-落影」はクレドロ.Devが開発するPC用ゲームで,影絵がテーマになっている。「犬」「鳥」「象」といったお題に対して,お手本を参考に手で影絵を作ると,影絵の動物が動き出して敵を倒すのである。
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自分の作った影絵がそのまま動くというのは,とても不思議な感覚だ。影絵が上手な開発スタッフが,バッ!バッ!と小気味よく手を動かして影絵の動物を創り出す様子は,忍者や魔法使いが印を結んで術を使うかのようなカッコよさがある。
そして,筆者の場合は影絵のレシピなど覚えていないため,ああでもない,こうでもないと四苦八苦しつつ,お手本に形を似せていくことになる。
開発スタッフの影絵が犬や鳥などお題どおりの動物になっているのに対し,筆者の影絵は名状しがたい何かという感じだ。
影絵がうまくないと楽しめないかというと逆で,手をどうすればお手本に近づけられるのか,試行錯誤に新鮮な面白さがあった。
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影絵はカメラで認識されており,形状に応じて動きのパターンや特性といった性能が変化するという。
手やコントローラを使って魔法陣を描かせるといったゲームはこれまでにも存在していたが,本作は影絵という古来からの遊びと組み合わされており,前述のように創った動物の性能が変わるという部分にオリジナリティがある。
手を動かす入力過程よりは,お題をまねて形を作ったらどうなるかという出力結果にフォーカスしており,「影を映写する」というワンクッションも入っているため,影絵のレシピを知らないで遊ぶと,手という入力デバイス兼材料を使ってブラックボックスをいじりまわすような面白さがある。
バトル方面に振り切る,性能変化に注力するなど,さまざまな選択肢があるはずで,今後の発展が楽しみに感じられた。
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あちらこちらのボタンを押して直感的に楽しむ,光の陣取り「フリップ☆パニック!」
BitSummitの「革新的反骨心賞」を受賞(関連記事)した「フリップ☆パニック!」のフィールドは,16×16=256個のボタンがズラリと並ぶ「マトリクスイッチ」である。
最大4人のプレイヤーが「赤」「青」の陣営に分かれ,「30秒で戦うマルチプレイ陣取りゲーム機」という公称のとおり,自軍の陣地を広げ,相手の陣地よりも広い面積を確保できれば勝ちだ。
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自軍カラーで光るボタンは自分の陣地である。陣地に隣り合ったボタンを押すと,これも自軍カラーに光って陣地に加わる。陣地の隣のボタン,その隣のボタン,さらに隣のボタン……と押していき,陣地を広げていくのである。
相手側も陣地を広げているため,いつかは両者が衝突する。相手色の陣地(ボタン)であっても,自軍陣地に隣り合っているのであれば,押して自分のものにできる。
これは相手も同様なので,自軍の色に上塗りする塗り替え合戦が展開するのだ。
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本作における陣地の取り合いはスピーディーだ。こちらが取ったと思ったら,あちらに取り返され,広い面積を確保して安心していたらいつの間にか侵食され……と状況は流動する。
盤面のどこでも押せば自分の陣地にできるわけではないのもポイントだろう。
押して陣地化できるのは,あくまで自軍陣地の端に隣り合う,例えるなら「前線」のボタンである。相手陣地のただ中を押していきなり飛び地を作るようなことはできない。
前述のように,前線の位置は常に変化していき,どこが前線になるかは相手次第となる。
もちろん,誤ったボタンを押してしまうと,相手の陣地を広げることにもなる。攻めるにも守るにも,手の本数は限られており,盤面は広いため,必ずどこかに隙ができてしまう。
陣地を広げる長期的な戦略,相手の隙を見つける観察眼,どこが前線かを見極める判断力が問われるという印象だ。
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単なるスピード勝負ではなく,逆転の大技も用意されている。それが「レーザー」と「フリップボタン」だ。レーザーはフィールドの端にズラリと並べられており,押すと一列を端から端まで自軍の陣地にできる。
続けざまに発射すると強力だが,使えるのはそれぞれの列につき1回だけ。相手もレーザーを持っているため,不用意に発射しても単に塗り替えられておしまいだ。
そして,残り時間が少なくなると,盤面のどこかに黄色く光るフリップボタンが出現する。押すと赤と青のカラーを入れ替えるため,1:9で追い詰められていても9:1に逆転が可能だ。
しかし,フリップボタンはあちらこちらと動き回るため,これにかまけていると相手に隙を突かれてしまうのである。
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目まぐるしく変化する盤面に,何本もの手が入り乱れる様子は壮観だ。時には手と手がコンタクトすることもあるが,自分の手で相手の手をブロックしてもいいし,相手のレーザーボタンを押してもいいため,対面で手を使って遊ぶフィジカルな面白さも際立つ。
レーザーを使った小規模の逆転とリソース管理,終盤に出現するフリップボタンによるどんでん返しとゲーム展開の加速,陣地の面積が同じだった場合はボタンを押した回数が多い側が勝つなど,ゲームデザインもしっかり練り込まれている。
ゲームメーカーではない会社が作ったというのが信じられないほどの完成度の高さを感じられた。
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本作を制作する株式会社ソフトウェアコントロールは,生産管理や地図情報,防衛・宇宙といったシステムを手掛けるメーカーで,マトリクスイッチのような特殊デバイスを制作して,さまざまなイベントに参加している。
ハードウェアの会社ではないだけに,マトリクスイッチの制作にもいろいろな苦労があったそうだ。256個のボタンを制御するだけにノイズも深刻になってしまったが,展示を見たほか業種の人からアドバイスを受け,最終的にはケーブルをシールドすることで解決したという。
マトリクスイッチの横には赤と青に光るタワー(フリップタワー)が立っていた。BitSummitの一般公開日1日目までは装飾としての役割だったが,「革新的反骨心賞」にノミネートされたことからスタッフが奮起し,現地でプログラムを組み直してゲーム内容と連動して発光するようにしたという。
先のノイズ問題と合わせ,インディーらしい熱気といえるだろう。
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当初の仕様ではゲームの盛り上がりが持続せず,範囲塗り替えなど試行錯誤を繰り返したのち,陣地の色を入れ替えるという大胆なフリップボタンで緊張感を維持したまま試合を終えられるようになったのだという。
既に完成度の高い本作だが,個人的には商品化などさらなる展開も期待したいところだ。
「フリップ☆パニック!」公式サイト
「BitSummit the 13th」公式サイト
4Gamer「BitSummit the 13th」まとめページ
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