プレイレポート
[プレイレポ]「LET IT DIE: INFERNO」は,プレイするたびに,心が動く。プレイヤーに“アイテムへの執着”を強く呼び起こさせる体験が楽しい
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本作は,2017年から展開する「LET IT DIE」シリーズの最新作だ。物語的には独立している。「自分を『センパイ』と呼びウザ絡みしてくる死神『アンクル・デス』」にいざなわれ,ゲームを進めていくという点は過去作と共通しているが,本作からのスタートでもまったく問題はない。
4Gamerでは,発売に先駆けて本作をプレイする機会を得たので,本稿でプレイレポートをお届けしよう。
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本作の舞台は「地獄門」と呼ばれる大穴だ。地獄門の中は現実をパッチワークのようにした奇怪な空間になっていて,脈絡のなさが幻覚のようにも感じられる。
レイダーの任務は謎の物質「スピリチウム」を規定量以上回収し,「エスケープポッド」で離脱すること。
地獄門では,あちこちでイユーズという敵が襲い掛かってくるうえ,一定時間が過ぎると地獄門が崩壊してしまい,生存不可能となってしまう。イユーズに倒されても,時間切れになってもアウトなので,ジャンル的にはいわゆるエクストラクション(脱出)ものに近い。
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「Escape from Tarkov」をはじめとしたエクストラクションものでは,銃器が扱われることが多いのに対し,本作のバトルは近接戦メインである。出てくる武器は廃材を組み合わせたような急造品ばかりで,荒々しさと良い意味でのバカバカしさが心に深く突き刺さる。
もちろん,見た目ばかりではなく性能でも個性が強く打ち出されている。「バット」はスタンダードで扱いやすく,額縁入りの絵画「封じ絵」はガードからカウンターを仕掛け,「穢れの牙」は,先端に毒ガエルが取り付けられた田舎の子供の自作玩具のような品で,火力は低いが状態異常を狙えるといった具合だ。
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これらの武器を二刀流にしての戦いが基本のスタイルだ。両手の武器を振るって敵のガードを崩す「ガードブレイク」や,ゲージを溜めての必殺技「デスブロウ」は武器種によって性能が変わるため,どう組み合わせるかが重要となる。
例えば,片手にバット,片手に封じ絵というスタイルは,冒険者というより火事場から名画を盗んできた泥棒のような見た目だ。
バットのリーチは短いが素早くスイングでき,封じ絵は敵の攻撃をカウンターできるうえにデスブロウである程度の範囲を攻撃できる……と結構相性が良い。いろいろと組み合わせを模索しよう。
これらの武器で殴るには敵に近寄る必要があり,それゆえにバトルは混沌としたものになる。ある敵と必死で戦っていたら,別の敵も襲ってきて乱戦になったり,4体ほどの敵に追われて逃げ回ったりと,ハプニングの連続である。
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ゲームをより味わい深いものとしているのが,ローグライトとエクストラクションの要素だ。プレイは毎回変わるし,手に入れたものは本気で失いたくないし,持ち帰れると楽しいのである。
地獄門のダンジョンは一定時間が過ぎると崩壊し,継続的にダメージを受けるようになる。いわゆるバトロワもので危険地帯に留まる感じ,といえば伝わりやすいだろうか。
地獄門で時間切れになるとマップ全域が危険地帯になる。こうなるとまず生存は不可能で,あっという間にやられてしまう。
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生還するには,ダンジョンのあちこちに投下されるエスケープポッドに乗るしかない。投下位置はある程度決まっているため,マップの構造を覚えるのが重要だが,それでも最初のうちはなかなか安定して脱出できないだろう。
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というのも,地獄門に突入する際,プレイヤーが選べるのは大まかな地域のみであり,どのマップに入るかはランダムであるためだ。
突入したフロアにエスケープポッドが降ってくるマップもあれば,敵を突破して次のフロアに行かないと脱出できないマップも存在する。また,地獄門崩壊までの制限時間がシビアなうえに,前述の通りバトルでもハプニングが起こりやすい。もたもたしていると,あっという間に時間切れになってしまうわけだ。
だからといって,探索に全振りして逃げ回っているわけにもいかない。エスケープポッドを使うには一定量のスピリチウムが必要で,落ちている分で足りなければ,敵を倒して回収するしかないからだ。
今にも制限時間が尽きそうだがスピリチウムは足りず,周囲には敵も見当たらずに絶望する,なんてことも当たり前に起こる。こうした中で脱出率を上げるには,トライアンドエラーを繰り返すしかない。何度も倒されつつマップを覚え,戦うだけでなく逃げることを学び……とプレイヤー自身が経験値を積んでいくわけだ。
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ダンジョンは危険だがお宝でいっぱい。電球のような宝箱「アイテムバド」が点在するのはもちろんのこと,敵であるイユーズを倒したときもアイテムが手に入ることがある。
武器や防具といった装備品には,ランダムでオプションが付与されるため,ドロップの度にワクワクさせられる。しかし,アイテムにはそれぞれ「ウェイト」(重量)があるため,レイダーが持てる量は限られている。
特に重いのが武器だ。本作はバトルの難度が高めで武器種ごとの個性が強いため,状況に合わせた予備を持ちたくなってくる。しかし,あれもこれも持っているとあっという間に重量オーバーとなる。
必要ないアイテムは捨てられるが,メニューを開いている間も時間は止まらないため,荷物をごそごそと整理していたら後ろから敵に殴られることもある。常にソート機能で整理整頓しつつ,どの品を捨て,どれを残すかの決断が重要になるわけだ。
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ローグライトである本作では,プレイが運の揺らぎに影響される。初期状態のレイダーは回復薬すら持っておらず,地獄門で現地調達しなければならない。また,強敵のガードに対抗するガードブレイクは,両手にそれぞれ武器を持っていないと使えない。
回復薬はやたらと出るものの,武器が出ないのでガードブレイクが使えない,武器は多く出るが,重量制限に引っかかるのでどれを持ち帰るか悩んでしまうといった具合に,状況はプレイごとに変化する。
加えて,前述したようにどのマップに行くかもランダムであるため,ある時はすぐやられたが,またある時は余裕で脱出できたなど,振れ幅も大きい。この辺りはジャンル名の元ネタである「Rogue」のプレイ感に近いものがある。
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本作は,プレイヤーに“アイテムへの執着”を強く感じさせる設計になっている。無事脱出すればアイテムを持ち帰れるが,倒されてしまうと失われる。良いアイテムが出たときには,自分でも驚くほどの執着が生まれるはずだ。
何とかして拠点に持ち帰りたいが,状況的にそれもかなわない,なんて時は「ああ,このアイテムを失うのはイヤだ……!」と本気の叫びが漏れてしまう。
「本気で良い装備が欲しい,本気で持ち帰りたい,本気で失いたくない」という気持ちはエクストラクションものならではのものだ。人は一度手に入れたものに執着し,損失を恐れて敏感になる。だからこそ,本作のプレイ中は,感情が大きく動くのである。
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とはいえ,本作にはいくつかの救済措置が用意されている。それが「セーフボックス」と「ボディ」が持つ初期装備だ。
たとえやられたとしても,セーフボックスに入れた品だけは拠点に持ち帰れる。容量も限られているが,慣れると死の直前に「この品だけは残さなければ……!」と素早く操作できるようになるので心配はご無用。
そして,毎回キャラクターの性能を変えられるのがボディのシステムである。地獄門で倒れてボディを失っても,再度挑戦する際には,拠点に用意されている個性的なボディの中から自由に選べる。
初期状態では回復スキルを持つ「ティモシー」,ガードを崩す「ドロップキック」を使える「パール」,所持重量が多く,壁越しに周囲の敵を探知できる「スキャン」を持つ「パトリック」の3種類が存在する。
また,「呪いの手裏剣」を放つ「サスケ」,「カンフーステップ」で前方に踏み込む「テン」は課金などで入手する通貨「デスメタル」を支払えばアンロック可能だ。
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どのボディも武器から防具まで一通りの初期装備は持っているため,すぐに地獄門に潜れる。地獄門には,初期状態のボディのみが入れ,ほかのプレイヤーとマッチングしないマップも用意されているため,ここでアイテムを集めて準備することも可能だ。つまり,最低限の立ち上げはスムーズに進められるのだ。
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しかし,喪失の怖さやこれを切り抜けた喜びはスポイルされてはいない。例えば,拠点での装備品選択だ。最高の装備があれば生存率は高まるが,エスケープポッドの到達に苦労するマップに放り込まれてしまってはせっかくの品も消えてしまいかねない。薬も持ち込みたくなるが,重量が大きいため,それだけ戦利品を拾えなくなってしまう……とジレンマも大きいのだ。
決して難度が低くはない本作だが,成長の手段がいくつか用意されている。
生還できると「ボディランク」が上昇し,能力を底上げする「コア」を得られる。コアの効果は,攻撃力を上げる,持てる重量を増やす,マップ内にあるショートカットを使えるようにするなどさまざまだ。
コアの効果は複数の候補からランダムに選ばれる形式で,装着は拒否できない。そのため,中長期的にはコアの運もプレイに影響を与えていきそうである。なお,やられるとアイテムとともにコアも失われ,ボディランクも初期状態に戻る。
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ただ,スキルツリーのようなものでボディの能力を底上げする「マスタリー」を強化するためのポイントは,死ぬまでに獲得したスピリチウムに応じて持ち帰れるため,生死に関わらず成長していける要素もある。マスタリーの進捗が元に戻されることもないため,繰り返しプレイしていけばいつかは成長していけるわけだ。
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ここにほかのプレイヤーとのPvPが加わると,濃密な面白さが生まれそうだが,一部の関係者のみが招待されたテスト期間ということで今回は体験できなかった。
近接戦メインのバトル,やられるとアイテムをロストするが基礎能力は上がるといったシステムにより,失敗にも意味がありつつ,失うことを本気で辛く感じられるのが本作だ。とにかく心が大きく動くゲームであり,PvPが本格化するであろう2025年12月4日のリリース後にどんな世界が繰り広げられるのか,楽しみに感じられた。
なお,4Gamerでは開発者インタビューも掲載している。エキセントリックプロデューサーであるアンクル・デス氏とディレクターの新 英幸氏が「おバカでクレイジーなゲーム」と「誰かに話したくなる理不尽さ」を目指すという意気込みを語っているので,興味のある人は読んでほしい。
[インタビュー]目指すのはおバカでクレイジーなゲーム。「LET IT DIE: INFERNO」には,ユーモラスな武器とバイオレンス描写,そして“思わず誰かに話したくなる理不尽さ”がある
ガンホー・オンライン・エンターテイメントのサバイバルアクション「LET IT DIE: INFERNO」が発表された。シリーズの伝統を受け継ぎつつ,ローグライトとPvEvP要素にフィーチャーしているという本作について,発表のタイミングで,謎の死神アンクル・デス氏とディレクターの新 英幸氏に話を聞いた。
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- ライター:箭本進一
(C)GungHo Online Entertainment, Inc.
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