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インタビュー

[インタビュー]大切なのは“思い出”と“新たなときめき”。「学プリ」「ドキサバ」リマスター制作の舞台裏を石原明広氏に聞いた

 2025年9月にリマスター制作プロジェクトが発表された,「テニスの王子様」を題材とした恋愛アドベンチャーゲーム「学園祭の王子様」(以下,学プリ)と「ドキドキサバイバル」(以下,ドキサバ)。同作をフィーチャーしたブースが,11月に開催されたアニメイトガールズフェスティバル2025(AGF2025)に出展された。

 今回,そのブースにて「学プリ」「ドキサバ」リマスター制作プロジェクトを手がけるコナミデジタルエンタテインメントのプロデューサー石原明広氏にインタビューを実施。リマスター企画のきっかけから制作のこだわり,ファンへの想いまで,貴重な話をうかがうことができたので,ぜひ最後までチェックしてほしい。

「学園祭の王子様」の世界観を再現したカフェ風ブースでは,ビジュアル展示やノベルティ配布も行われ,会場内でも来場者の熱い視線を集めていた
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 なお,リマスター版の正式タイトルは,「テニスの王子様 も〜っと 学園祭の王子様 ♡-40 and more...」Nintendo Switch 2 / Nintendo Switch / PC)および「テニスの王子様 ぎゅ〜っと! ドキドキサバイバル Tie break ♡ game」Nintendo Switch 2 / Nintendo Switch / PC)。

 これらは,2005年に発売された「学園祭の王子様」と,2006年・2007年にPlayStation 2向けに発売された「ドキドキサバイバル」シリーズをもとにした作品で,キャラクターたちとの恋愛が楽しめる内容もあり,長年にわたって多くのファンに愛されてきた人気タイトルだ。


AGF2025メイン会場の「学プリ」「ドキサバ」ブースで,まず目に飛び込んできたのは額縁に飾られた王子様たち。来場者はもちろん,同行していた編集担当も興味津々の様子だった
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DS版「学プリ」「ドキサバ」のメインビジュアルも設置されており,当時ゲームを遊んでいたファンの心をくすぐるものとなっていた
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会場で配布された「オリジナルショッパー」
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ショッパーの側面にもかわいい王子様たち
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「テニプリフェスタ2025 応援(エール)」で配布された「号外」も!



リマスター制作プロデューサーにインタビュー
「ファンの声は社内にも届いていた」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まず,プロデューサーとしてどのような業務に携わっているのか教えてください。

石原明広氏(以下,石原氏):
 基本的には制作管理を担当していますが,企画立案や宣伝活動なども含め,ほぼすべてに関わっています。簡単に言えば“何でも屋さん”ですね。

4Gamer:
 もともと「テニプリ」には馴染みがあったのでしょうか。

石原氏:
 もちろんです。もともと「週刊少年ジャンプ(集英社)」作品が大好きで,連載初回から毎週読んでいましたし,単行本もすべて持っています。なので当時は「『テニプリ』の恋愛ゲームってどういうこと!?」と驚きましたね(笑)。

4Gamer:
 「学プリ」「ドキサバ」は,過去にPlayStation 2版やDS版が発売されていますが,当時から制作に携わっていたのでしょうか。

石原氏:
 以前は関わっていなかったんですが,PS2版「学プリ」「ドキサバ」を制作していたころには,僕もすでに会社にいて,別のタイトルでディレクターを務めていました。なので,当時は「面白いことをやっているな」と思って見ていました。

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4Gamer:
 そうだったんですね。リマスターの計画は,どのように動き出したのでしょうか。

石原氏:
 “タイミング”によるものなのですが,オリジナル版の移植を希望する方が多いのは知っていましたし,今年が「学プリ」発売からちょうど20周年だということもありまして,今回の企画が動くことになりました。

 当時,制作に関わっていたメンバーに企画が始動したことを伝えると,すごく喜んでくれて,「やれることがあれば何でも協力するよ」といった言葉ももらいましたね。

4Gamer:
 今回の制作メンバーのなかには,世代的に,当時ゲームをプレイしていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

石原氏:
 そうですね。制作チームを立ち上げる際,何人かに声をかけたのですが,最後まで話す前に「やります!」と即答してくれた人や,「待ってました!」と喜んでくれた人もいました。

 現在,社内では「テニプリ」関連のゲームを制作していなかったこともあって,「本当ですか!?」「またやるんですか? 嬉しいです!」といった驚きの声が多かったですね。なので,今回制作に携わっているメンバーは,「テニプリ」好きの人が多いと思います。

4Gamer:
 リマスター制作プロジェクトを発足して,最初に進めたことを教えてください。

石原氏:
 すでに発売されていたタイトルのリマスター版ということで,一番大切なのは“当時プレイしていた方の体験や思い出”だと僕は思っていて,リマスター制作ではそこに重点を置いています。

 例えば,当時のイラスト素材はサイズが非常に小さいんですよ。特にDS版は,ゲームの仕様上,2画面の状態でデータが残っていて。この場合,すべて描き直すのがもっとも楽ではあるのですが,そうすると当時のユーザーが違和感を覚える可能性がありますし,元のキャラクターデザインは残さなければいけない。
 ですので,皆さんが気づかないくらいの微調整にとどめています。

 とはいえ,今回は初めてプレイする方にも楽しんでいただきたいと思っていましたし,当時プレイしていた方も違った目線で楽しめるように,描き下ろしのスチルもかなり描きましたね。

4Gamer:
 リマスター制作を進めるにあたり,一番大変だったことは何ですか。

石原氏:
 先ほどお話しした「デザインの手直し」や「新規スチルの作成」ですね。実は以前,攻略キャラが3人いる恋愛ゲームのディレクターをしていたのですが,今回は攻略キャラが40人を超えているんですよ。

 とにかく,大人数分のスチルをNintendo Switch上で見ても問題ないクオリティに仕上げるのが大変でした。

 そのほかの部分については,先輩たちが作ってくれた資産があるので,あまり手を加えずに残すようにしています。基本的には,今プレイしても違和感がないよう,細かい調整を重ねています。

「学園祭の王子様」より
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「ドキドキサバイバル」より
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4Gamer:
 確かに「学プリ」「ドキサバ」は攻略対象者が多いですよね。そのほかにはどういった点があるのでしょうか。

石原氏:
 先ほども少し触れましたが,「データがとにかく多い」点ですね。音声データの量も本当に膨大で,当時を知る制作陣に収録期間についてうかがったところ,「想像以上に長い期間,収録していた」と話していたので,当時は相当大変だったんだろうなと想像しつつ,その音声をありがたく使わせていただいています。


4Gamer:
 音声(ボイス)といえば,DS版で追加された「名前を呼んでくれる機能(EVS)」も印象的でした。

石原氏:
 9月の「テニフェス」でも話題に出ていましたが,あれはかなり大変だったようですね。私も別作品で,約5000個の名前呼び収録に立ち会ったことがあるのですが,すべて同じテンションで呼び続けなければならないため,EVSのデータを聴いたときには,キャストの皆さんのすごさと大変さを実感しました。

4Gamer:
 今回のリマスター版では,新バージョンのスチル実装についても発表されました。こちらの機能を追加した理由についてもお聞かせください。

石原氏:
 実は「新規スチル」を入れるかどうかは,僕らの中でも少し悩みました。
 当時の「学プリ」や「ドキサバ」で,ストーリーとスチルの内容が合っていない箇所って,ところどころありませんでしたか?

4Gamer:
 ゲームをプレイしたのがかなり前のことですし,当時は熱中していたので,あまり違和感は覚えなかった気がします……。

石原氏:
 たとえば,不二(周助)くんがヒロインに「だ〜れだ?」というシーンがあるんですけど,スチルではすでに目の前に立ってニコっと笑っているんですよ。あとは,跡部(景吾)様とダンスを踊るシーンで,まったく踊っていなかったりとか。

 もちろん,それは当時なりの工夫だったんですが,そういった場面については「これは描き直そう!」ということで新スチルを追加し,旧スチルと切り替えられるようにしました。
 新スチルはかなり気合いを入れて描いたので,皆さんにたくさん見ていただきたいのですが,発売まではなるべく公開せず,お楽しみに取っておく形にしています。

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4Gamer:
 それを聞いたら,当時のスチルを見返したくなりますね!

石原氏:
 プレイ中はその世界に入り込んでいるので,なかなか気付きにくいんですよ(笑)。かなり良いスチルになっているので,ぜひ楽しみにしていてください。

4Gamer:
 「学プリ」「ドキサバ」リマスター制作プロジェクトは,9月に開催された「テニプリフェスタ2025 応援(エール)」で発表されました。ファンからの反響はいかがでしたか。

石原氏:
 私も会場で発表の瞬間を見ていたのですが,あんなに大きな歓声を聞いたのは生まれて初めてで(笑)。

 その後,会場出口で号外(学プリ新聞,ドキサバ新聞)を配らせていただいたのですが,ほとんどの方が受け取ってくださいましたし,その際に「KONAMIさんありがとう」「作ってくれて嬉しい」といった声をたくさんいただきました。本当に嬉しかったですね。

 その声を受けて「頑張ろう」とあらためて思いましたし,皆さんが「学プリ」「ドキサバ」を本当に大切にしてくれていたんだなと実感しました。

4Gamer:
 発売から今年で20周年を迎えた「学プリ」「ドキサバ」ですが,長くファンに親しまれている理由は何だと思いますか。

石原氏:
 やはり魅力的な王子様たちがたくさんいて,そのキャラクターたちと「特別なシチュエーションや面白い展開のなかで恋愛ができる」というのが唯一無二のコンセプトだと思うんですよ。

 ファンの皆さんにとっても,それが大きな魅力なんだろうなと感じていますし,それが長く愛されている理由なのではないでしょうか。僕自身もプレイしていて,どの王子様にもときめくシーンがあるくらいなので。

4Gamer:
 確かに,今プレイすると見方や好みが変わっていそうな気がします。

石原氏:
 そうですね。20年の間にキャラクターたちもより深掘りされていて,当時とは少し印象が違うところもあるんですよね。良くも悪くも“今の”彼らとは違う。だからこそ,その点はどうするか悩んだのですが,当時のプレイヤーの思い出として大切にしている部分だとも思い,あえて当時のまま残すことにしました。

4Gamer:
 今回は貴重なお話をありがとうございました。最後に,今後の新情報を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。

石原氏:
 直近では,12月に開催される「ジャンプフェスタ2026」で,皆さんに実際に遊んでいただける機会を設けました。ぜひ会場に足を運んでいただき,まずは手に取っていただけると嬉しいです。
 皆さんの思い出を第一に,引き続き良いものを作っていきますので,今後とも応援よろしくお願いいたします。

――2025年11月8日収録


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