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Redditで偶然出会ったチームが作る「Trailblazers: Into the March」は,荒野を旅する小さな家族の物語を描く[gamescom]
現在開発が進められているインディーゲーム「Trailblazers: Into the March」(以下,Trailblazers)は,宮崎 駿監督作品に影響を受けた世界観が特徴的な,PC向けローグライトゲームだ。
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本作を手がけるのは,Strangersという小規模な開発チームで,その成り立ちが興味深い。共同設立者の1人がRedditに投稿した「一緒にゲームを作ろう」という呼びかけから,文字どおり見知らぬ人々が集まって結成された集団なのだという。
そんな本作について,ドイツのゲームショウ「gamescom 2025」で,ゲームディレクターを務めるGattlen Arnaud氏に話を聞く機会を得た。今回はゲーム概要とあわせて紹介していく。
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本作の核となるコンセプトは明確である。「ハウルの動く城」のような生活感のある移動要塞を舞台に,乗組員同士の絆を育みながら,危険な荒野を旅するゲームだ。チームのアーティストも宮崎 駿監督作品の大ファンで,その影響は作品の随所に表れている。
ランドシップの中央には「ハート」と呼ばれる生命体が鎮座する。これは「ハウルの動く城」のカルシファーに着想を得た存在であり,船全体を動かすバイタルコンポーネントとして機能している。
ソフィー,マルクル,魔法使いのヒンといったキャラクターたちが織りなす温かな家族のような雰囲気,それこそが,Strangersが本作で再現したかった世界観なのだという。
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ゲームの舞台となるザ・マーチは,「風の谷のナウシカ」の腐海から着想を得ている。毒に侵された危険な荒野という設定は,プレイヤーに常に緊張感を与え,旅の過酷さを演出する重要な要素だ。
本作は当初,「FTL: Faster Than Lightに海賊要素を加えたゲーム」として構想されたという。確かに,ランドシップ同士の戦闘にはFTLの影響が色濃く見える。リアルタイムアクションとタクティカルポーズを組み合わせた戦闘では,瞬時の判断と戦略的思考が要求されるようだ。
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戦闘開始時,敵船の内部構造は謎に包まれている。プレイヤーはスキャナーを使って敵の配置やバイタルコンポーネント,武器ステーションを特定していく。機関銃や爆弾といった通常兵器に加え,シールドを無視できる特殊兵器も存在する。
以前は敵乗組員を全員倒すという勝利条件も存在したが,あまりにも残酷だという理由で,gamescom出展前に削除された。
また,キャラクターが連鎖的に仲間を蘇生しようとするシステムも「陰鬱すぎる」として実装が見送られたという。こうした判断からも,開発チームが目指す世界観の方向性が見えてくる。
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本作のもう1つの柱は,乗組員の管理システムだ。各キャラクターは自動生成され,操舵手,砲手,料理人といった役割のほか,独自の能力や特性を持っている。楽観主義者は常に士気にプラス補正をもたらし,逆に悲観的な性格の持ち主は周囲の士気を下げることもある。
乗組員たちは独自のAIにより,プレイヤーの指示がなくても自動的に船の修理や清掃を行う。しかし,彼らは単なる働き手ではない。時間の経過とともに互いの関係性が発展し,友情を育んだり,時には対立したりもする。プレイヤーはその様子を見守りながら,必要に応じて介入する。
士気管理のシステムは「Darkest Dungeon」から影響を受けており,士気が一定以下に低下すると「危機」に陥ることもある。戦闘で負傷したキャラクターは治療ステーションで回復させ,適切なギアを装備させることで能力を向上させることも可能だ。
デモでは難度調整のため,これらの要素は控えめに設定されていたが,製品版ではより深いマネジメントが要求されるらしい。
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ランドシップの内部は自由にカスタマイズできる。スキャナー,コマンドポスト,戦闘室,シールド,武器ステーション,フィットネスルームなど,さまざまなモジュールを建設し,限られたスペースを最大限に活用する思考が求められる。
同時に,資源管理も重要な要素だ。スクラップから建材を精錬したり,クレートなどのアイテムを効率的に配置したりと,細かな最適化がゲームプレイに大きく影響する。技術ツリーも用意されており,新たな建物や機能も順次アンロックしていく。
面白いのは,これらの要素がすべて「生活感」につながっている点だ。単なる戦闘マシンではなく,乗組員たちが暮らす家としてのランドシップ。その両面性が,本作独特の魅力を生み出している。
将来的には,恋愛関係を育んだり,仲間とバンドを組んで音楽を奏でたり,といった要素も実装されるという。
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探索パートでは,スキャナーを使って周囲の状況を把握しながら進路を決定していく。しかし,スキャンを多用すると「ブルーム」と呼ばれる現象が発生しやすくなるジレンマがある。ブルームは船を侵食し,資源を消費し,乗組員を中毒状態に陥らせる危険な存在だ。
また,道中では予測不能なイベントが待ち受けている。珍しい食料(カブトムシの肉なんてものも)を発見したり,ほかの生存者と遭遇したり,商人と取引したりすることもある。「リーフ」と呼ばれる寄生生物が船に取り付くこともあり,その場合は乗組員を派遣して排除していく。
なお,デモ版の基本的なストーリーラインは「敵に奪われたコアナビゲーター(ビーコン)を取り戻す」というものだった。ビーコンを失ったランドシップは航行不能となり,プレイヤーは資源を集め,仲間を迎え入れ,ブルームの脅威をくぐり抜けながらビーコンを取り返す旅へと出る。
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Arnaud氏は,このゲームでは目的地だけでなく,旅そのものが重要だと強調した。確かに,移動中に起こるさまざまな出来事や選択が,プレイヤーの物語を形作っていく。損傷が激しくなれば拠点に戻る必要があるが,死は終わりではない。遠征ごとに進捗が保たれ,新たな挑戦へとつながっていくローグライト的な要素も取り入れられている。
戦闘が終わっても,冒険は続く。開発チームが「ポスト・ルート・ポスト・コンバット・エクスペリエンス」と呼ぶシステムでは,戦闘後の混乱の中でさらなる選択が迫られる。
例えば,炎上する貯蔵室で食料の匂いがする箱を発見した場合,危険を冒して運び出すかどうかを決断しなければならない。キャラクターの俊敏性が不足していれば,ダメージを受ける可能性もある。
こうした選択の積み重ねが,各プレイスルーを独自のものにしていく。同じ状況でも,乗組員の構成や能力,プレイヤーの判断によって結果は大きく変わる。それこそが本作の醍醐味であり,繰り返しプレイする動機にもなっているわけだ。
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現在,本作はSteamでプレイテストへの参加リクエストを受け付けている。対応言語も豊富で,日本語を含む多言語でのローカライズが予定されている点がうれしい。
Redditの投稿から始まった開発チームが,宮崎 駿監督作品への愛を原動力に,独自の世界観を構築していく。
その過程自体が,まさに本作のテーマである「見知らぬ者同士が,家族のような絆で結ばれていく物語」と重なるだろう。
大手スタジオでは生まれにくい,インディーならではの情熱と独創性,それが「Trailblazers」には確かにある。荒野を旅するランドシップの中で,プレイヤーもまた自分だけの物語を紡いでいくわけだ。
ローグライクやコロニーシムを愛するゲーマー,そして何より新しい体験を求める人に注目してもらいたい一作である。
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Trailblazers: Into the March
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