リソースを「時間」に集約した絶妙なコントロール体験。ローグライクアクション「Time Snatcher Handy」は，怪盗ネコが時間停止を駆使し弾幕をかわす［BIC2025］

　韓国・釜山で開催されたインディーゲームイベント「BIC2025」の会場で，ほぼすべてのリソースが「時間」に集約されたローグライクアクション「Time Snatcher Handy」を体験した。


　本作の主人公である怪盗ネコ「ヘンディ」は，ある日，時計の針を盗むため，時間博物館を訪れる。時計の針自体は入手できたものの，博物館の警備はとても厳重で，大量の敵に襲われてしまう。
　プレイヤーはヘンディとなり，時間停止能力を使いながら，敵の弾幕攻撃をかいくぐり，博物館からの脱出を目指すといった作品である。

怪盗ネコのヘンディ

　画面右下には時計のアイコンがある。これこそが本作の要となるリソース「時間」だ。


　この時間は，ヘンディが敵からダメージを受けると一定量減り，時間停止を使用している間は，リアルタイムで秒数がどんどんと減っていく。
　敵の激しい弾幕攻撃を避けるために時間停止を使いたいのだが，この時間が0になるとヘンディが倒れてしまいゲームオーバーになる。だから，安全に移動しようと時間停止を使っているつもりが，いつのまにか自分を瀕死に追い詰めていた，ということが当たり前に起こる。

　絶妙なバランスで時間リソースをコントロールできるか，これこそが本作のすべてといってもいいくらいだ。


　理想の動きは，何となく分かっている。弾幕を引きつけて，避ける瞬間だけちょこっと時間を止めて，すぐに解除すればいい。頭ではもちろん分かっているのだが，敵の攻撃を止めて素早く移動しなきゃと考えるとめっちゃ焦る。


　時間停止を使って，弾幕停止しているはずなのに，そこに何度も思いっきり突っ込んでしまった。ボス戦であと少しというところで焦って自爆したときは，後ろで見ていた開発者も「あーーっ」と悲鳴を上げていた。

　時間停止はマウス右クリックをホールドして発動。攻撃はマウス左クリックで繰り出せる。ヘンディの攻撃は射程が短く，弾幕攻撃してくる相手に近づかなければならない。これがけっこう大変で，戦闘に緊張感を生んでいる。
　攻撃は，時間とは別のリソースが用意されていて，時間経過で回復する。最大3スタックで，攻撃1回につき1つ消費。3回連続攻撃したら，リソースが回復するまで回避に専念するようなヒット＆アウェーだ。


　ステージは，小さなフロアを繰り返し攻略していく，クラシックなダンジョンゲーム風の構造になっている。フロアを攻略しながら，ボスを探していく。
　ショップも用意されているのだが，購入資金となるのも時間だ。気軽にあれこれ買ってしまうと，文字通り身を削ることになる。


　敵を倒すと時間リソースを回復できるアイテムが落ちる。ザコを倒して回復したいのだが，やはり近づかないといけないので，油断できない。とくに残り時間が少ないときは，時間停止で安全に移動するか，多少の被弾を覚悟して時間を温存するのか，悩ましい。

　敵に倒されると，ステージの最初に戻される。ローグライク要素を取り入れており，出現する敵やアイテムなどは毎回ランダムだ。
　シンプルな操作感で，時間停止と解除したときの緩急による疾走感や，リソースの配分のジレンマをかなり楽しめた。
　開発チームClockworkCatsのPD・キム・ミンスン氏に本作について話を聞くと，どうやら大学のゲーム制作サークルで開発しているそうだ。

開発チームClockworkCatsの2人
（左）PD：キム・ミンスン氏
（右）広報・PR：ソン・ユンジュン氏

　ClockworkCatsの人数は計8人くらい。キム氏は，現在大学3年生で，1年生の終わりごろから開発を始めているそうだ。

　キム氏は中学生のころからゲーム開発をしており，週末のゲームジャムに参加したり，簡単なゲームを作って公開したりしていたらしく，歴はかなり長い。
　少し前から時間停止を使ったゲームを作りたいと考えていたところ，大学1年生のころに参加したゲームジャムで本作のアイデアが生まれ，そこから開発を続けているそうだ。

　ゲーム性は「東方Project」のような弾幕ゲーム，時間停止については「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドなどがインスピレーション元で，通訳を通さなかったがDIOだよねって顔はしていた。

　時間停止というコンセプトを広げて，リソースを時間に集約したことについては，昨今のローグライクゲームは管理しないといけないリソースが複雑に分かれているから，いっそ1つにまとめてシンプルかつコンパクトにしよう，ということらしい。

　リソースを1つに絞っているため，バランス調整には苦労しているようで，プレイした人からは，ショップで買った直後に死んでしまったというフィードバックが多くあったという。私は死にかけた（死んではない）1人なのでなるほど，と思った。
　それでも，開発の最初に立てたゲームの軸というのを意識して固めていて，その軸だけはぶらさずに，不便な部分を解消していると，と力強く教えてくれた。

　改善については，時間リソースを回復するアイテムを拾いやすくするものや，時間停止で消費する時間リソース量を軽減するものなど，初心者向けの生存アイテムを多く用意したところ，ゲームの魅力に気づいてくれる人を増やすことができたようだ。

　ゲームボリュームとしては，真のエンディングにたどり着くまで約5時間，コンプリートを目指すなら10時間から20時間程度を予定。1周は20分から30分で，だいたい5，6周プレイすれば，最後までたどり着けるくらいの難度だそうで，けっこうカジュアルに楽しめそう。

　ステージは合計12ステージ。3チャプターに分かれており，1チャプター4ステージという構成だ。各チャプターには2種類のボスが用意されていて，どちらが出てくるかはランダムである。キャラクターたちは全員動物モチーフになっていてかわいいし，ほかのボスたちにも早く会いたいものだ。
　ゲームは，3チャプターのボスを1周で倒しきれば，クリアとなる。


　現在Steamでは，日本語に対応した体験版を公開中だ。日本語訳はAI翻訳を使用しているそうで，試遊でプレイした印象では，かなりキャラクター性を保ったままの違和感ない日本語になっていた。
　話を聞いた最後に，キム氏は，「ぜひ日本のみなさんにも，かわいいネコのヘンディと一緒に時間停止を思いっきり楽しんでほしいです」とコメントしてくれた。

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