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2000年代の“エモ文化”をモチーフにした,いろいろと型破りな新作ADV「I Write Games Not Tragedies」プレイレポート&インタビュー[BitSummit]
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印刷2025/07/20 11:32

プレイレポート

2000年代の“エモ文化”をモチーフにした,いろいろと型破りな新作ADV「I Write Games Not Tragedies」プレイレポート&インタビュー[BitSummit]

 スウェーデンのパブリッシャであるYotsuba Interactiveによる新作タイトルI Write Games Not Tragediesが,開催中のインディーゲームイベント「BitSummit the 13th」に出展されていた。

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 新興デベロッパのStudio Wifeが手掛ける本作は,2000年代の“エモ文化”を発端とする,音楽のカタルシスを描いたというリズムアドベンチャーゲームだ。ちょっと内容が想像しにくい本作だが,実際に遊んでみると,その破天荒なビジュアルからは想像できない繊細な作品だった。

 記事の後半では,本作のアートを担当するStudio WifeのVicky Wong氏へのインタビューを掲載しているので,興味を持った人は最後まで読み進めてほしい。

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Studio Wife 公式サイト


繊細なテキストと,熱量あふれるアート
そこから繰り出される暗い青春物語


 この物語は,とあるサイトに掲載されている独白から始まる。それは,大人としての痛みを知った人間が,過去を懐かしむ文章だ。かつての痛みを「ニセモノ」と表現する言葉が並び,今の自分を苦しめている事柄が羅列されている。

 しかし,過去の自分が感じていた感情は,本当にニセモノだったのだろうか。自分の境遇から存在しない痛みを探し出していた“イタい”自分からは学ぶことがないのだろうか。そうした発想から,視点は過去へと遡っていく。

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 物語の主役は「アッシュ」を名乗る14歳の少年だ。彼はエモ系の音楽に傾倒し,周囲の学生たちと距離をとり,やや冷笑的な態度をとっていた。日本人的にいえば,中二病まっさかりといったところだろうか。

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 アッシュはヘッドホンを手に取り,音楽で現実から目をそらすことにした。窓の外に見える屋根に乗って遠くを見渡す――なんてことをすると怒られるのは目に見えているので,そんな妄想をしながら。

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 どうにか時間をつぶしたら,やっと心を解放するライブの時間がやってきた。しかし,そこで“陽キャ”グループ筆頭の姿を見つけてしまう。

 最初は「こんなやつがエモ音楽を理解してるワケがない」と疑ってかかっていたアッシュだが,会話をしてみると本当にただのファンだったことがわかる。ライブが終わり,同じ趣味を持つ友人として彼と接したアッシュは,その素直さと優しさに少しずつ心を開き始める。

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 物語の流れはスムーズで,敏感なティーンエイジャーの心情を描き出すテキストからはプレイヤーを引き込む力を感じられた。アッシュのように,かつて斜に構えて世の中を見ていた人は,この時点で心をえぐられるものがあるはずだ。

 そうした表現をより鋭く“刺さる”ものにしているのが,本作を特徴づけるアートの数々である。驚くべきことに,背景や小物どころか,キャラクターの立ち絵すらも場面ごとに違い,しかも異なるタッチで描かれているのだ。

 これらはアッシュの精神状態と連動しているようで,精神が不安定で辛い場面では激しく太い線,落ち着いた場面ではシャープな線が用いられている。規格化されていないぶん把握に時間がかかるが,それだけにキャラクターの感情はダイレクトに伝わってきた。

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 物語の合間に差し込まれるリズムゲームも実に個性的だ。システムでいえば「画面上部から降ってくるノーツに合わせてボタンを押す」というシンプルなものだが,本作ではノーツ自体が歌詞になっている。文字以外にイラストもごちゃまぜになって降ってくるので,これが意外と難しい。

 さらに,指示が飛んできたらマイクに向かって叫ばなければならない。デカい声で叫ばなければ点数にならないので,ごまかすことはできない。これもまた,キャラクターの感情を体感するための要素といえる。

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 いろいろな意味で型破りな作品だが,随所に勢いだけではない熱意を感じさせられた。人によっては受け入れられない部分があるかもしれないが,その逆にザックリと深く刺さる人もいるはず

 日本語訳のクオリティも高く,珍しい題材を描くアドベンチャーゲームとして期待できる1本だと感じられた「I Write Games Not Tragedies」。アッシュが語る“イタい過去”と向き合う覚悟ができたなら,早めにウィッシュリスト登録を済ませておこう。


Studio Wife開発チーム
Vicky Wong氏 インタビュー


Studio Wife,Vicky Wong氏
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4Gamer:
 来場者がゲームを遊んでいる様子を見て,反応はいかがでしたか?

Vicky Wong氏(以下,Vicky氏):
 正直すごく緊張していました。このゲームにはマイクに向かってScream(叫ぶ)要素があるんですが,展示の場でこれを楽しんでくれるのかなって不安だったんです。実際,みんな恥ずかしそうでしたけど,でも「叫んでみたい」という気持ちは伝わってきました。拒否感がある感じではなかったので,そこは嬉しかったです。

4Gamer:
 Vickyさんはアート担当とのことでしたが,1人でアート全般を受け持っているのですか?

Vicky氏:
 はい,アート全般を担当しています。そのほか,ソーシャルメディアでの宣伝や,ストーリーモードの一部ではプログラミングにも関わっています。

4Gamer:
 場面ごとにキャラクターのイラストが異なり,大量のアートが使われていることに驚きました。現時点で,開発期間はどの程度になっているのでしょうか。

Vicky氏:
 着手したのは2024年7月です。そこから,約3か月で基本的な場面やアートを95%は完成させました。綺麗に完璧な絵を描くのではなく,気楽に描くような感覚で進められたので,素早くたくさんのイラストを上げられたんだと思います。

4Gamer:
 キャラクターの心情に合わせてタッチを変えていることに驚きました。先にストーリーができあがり,それに合わせてアートを作らなければ成立しない手法だと思います。そういった点について,こだわりがあれば教えてください。

Vicky氏:
 気付いてくれてありがとうございます。主人公の心理状態は,この物語で非常に重要な要素なんです。それをビジュアルでも表現できるように,場面に合わせて絵自体の雰囲気をガラッと変えることを意識して描きました。

4Gamer:
 ターゲットが比較的ハッキリと見えている作品にも感じました。開発チームとして「こういう人に届けたい」といった意識はありますか?

Vicky氏:
 エモ系音楽はそもそもニッチなジャンルなんです。だから,最初は同じジャンルを知っている“同志”にだけ届けるつもりでした。でも,この会場ではジャンルを知らなさそうな人も楽しんでくれていて,もっと幅広く遊んでもらえるものなのかなと,今は思っています。

 このゲームの受け止められ方は,趣味趣向はもちろん,年齢によっても違うと思います。アッシュの物語は,14歳にとっては“今”で,30歳にとっては“過去”だけれど,それぞれに楽しみ方があるんですよね。

 扱っているものがニッチなので,誰でも楽しめるとはいえません。私の母も,私のアートは褒めてくれますが,音楽はあんまり快く思っていないみたいです(笑)。それも含めて,いろいろな見方があるのではないかなと。

4Gamer:
 最後に本作の発売を楽しみにしている日本のファンにコメントをお願いします。

Vicky氏:
 Screamの場面が来たら,恥ずかしがらずに叫んでください! ウォー!

4Gamer:
 ぜひ家でマイクに向かって叫びたいと思います。ありがとうございました!


Studio Wife 公式サイト


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「BitSummit the 13th」公式サイト

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