
インタビュー
若き日のジェームズ・ボンドを描く「007 First Light」――開発陣が語る“ボンドらしさ”と新しい挑戦[TGS2025]
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今回4Gamerは,東京ゲームショウ2025の開催に合わせて来日したNarrative and Chinematic DirectorのMartin Emborg氏とSenior Licensing ProducerのTheuns Smit氏にインタビューを実施。「ボンドらしさ」をどうゲームとして表現したのか,新しい世代に向けてどんな挑戦を行ったのかを語ってもらった。
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4Gamer:
はじめまして。私は子どものころから007が好きだったので,今日お会いして「007 First Light」の話ができるのをとても楽しみにしていました。
最初の質問ですが,長く続く007シリーズをゲーム化するにあたって,絶対に外せない要素は何だったでしょうか。
Martin Emborg氏:
これは言うまでもなく,やはりボンド本人こそがすべての中心であり,彼を正しく描くことが最も重要だということですね。
ボンドのゲームを作るうえで避けて通れないのは“ボンドらしさ”です。ロケーションやガジェットなど,ファンが期待する要素はしっかり盛り込みましたが,最も大切なのはやはりボンドという人物そのものを正しく描くことでした。
そこで私たちは「若き日のジェームズ・ボンド」を主人公に選び,彼の核となる資質――心,魅力,そして機転――をどう描くかに力を注ぎました。年齢を重ねたボンドは冷徹さを増していきますが,「First Light」では闇の世界へ初めて足を踏み入れる若者の姿を描いています。
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Theuns Smit氏:
少し俯瞰してゲームプレイの観点から加えると,やはり「ボンドらしいファンタジー」を思い切り体験できるようにしたかったという考えがありますね。
エキゾチックなロケーション,世界を股にかけるミッションの数々。それが物語に多様性を与えると同時に,ゲームプレイの幅を広げます。プレイヤーはボンドを操作して地上での行動を進めるだけでなく,車両に乗って移動したり,カーチェイスをしたり,もちろんQの研究所のガジェットを扱ったりすることもあります。
ボンド以外にも悪役や魅力的なキャラクターも当然出てきますし,これらはすべてボンド作品に期待されるもので,私たちは一切妥協したくなかったんです。
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4Gamer:
では,シナリオの面についてですが,新しい世代に向けて「新しいボンド像」を描くことを意識しましたか。
Martin Emborg氏:
もちろんです。映画のボンドは憧れの存在で,すべてを経験してきたような人物です。しかし,このゲームで出会うボンドは,まだ若くて,より共感しやすい存在なんです。
観客はボンドがどういう人物になるのか知っています。彼が何を飲み,何を着て,何に乗るのか。でもゲーム内の若いボンド自身は,まだその運命を知りません。
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つまりプレイヤーは,ボンドがこの世界を初めて体験する瞬間に立ち会えるんです。そしてプレイヤー自身も彼の視点を通して,それを体験できます。ゲームプレイ的にも「007」という番号を得るまでの試練を経ることは理にかなっています。プレイヤーがボンドになるための過程を一緒に歩むわけです。
Theuns Smit氏:
そこには「成長の物語」もあります。ボンドと彼の上官であり指導者のグリーンウェイとは師弟のような関係ですが,少し摩擦が起きることもある。そういう人間的な描写も見どころです。
トレイラーでも一部描いていますが,ボンドが人としてどう成長し,そしてエージェントになっていくか。その過程をプレイヤーも一緒に味わえるのが面白いんです。だからこそ「若き日のボンド」という再構築は良い機会だったんです。
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Martin Emborg氏:
さらに言えば,逆のダイナミクスもあります。ボンドのイメージにタキシード姿がありますが,若いボンドはそういう場面でもラフな格好で現れたりします。それがまた楽しいんですよ。
4Gamer:
小説は70年前のもので,映画も数年ごとの公開なので007をあまり知らない人も多いと思います。そうした層に向けて,どのようにゲームをデザインしましたか。
Martin Emborg氏:
そこが「オリジンストーリー」を描く利点であり理由になっています。まったくボンドを知らない人でも入っていけるようにという点ですね。
一方で,本や映画,ゲーム好きのファンにとっても楽しめるよう,細かいディテールをたくさん盛り込んでいます。
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Theuns Smit氏:
私たちが目指したのは「真のゲーム大作」で,これは新しい世代にボンドを届ける機会でもあります。
アクションアドベンチャーやストーリー重視のゲームを遊んでいる人なら,それを入り口に初めてボンドを体験することになるでしょう。逆に長年のファンにとっても,ボンドの世界により深く没入できるチャンスです。Qやマネーペニー,Mといったおなじみのキャラクターとも出会えます。
こうした豊かな群像劇も体験できるんです。
Martin Emborg氏:
新規の人にとっては,現代的でスリリングなアクションアドベンチャーとして楽しめますし,そこにはロマンスや世界観の広がりもありますね。
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4Gamer:
長い歴史を持つブランドとして,新しい世代に届けるうえで一番難しかった点は何ですか。
Martin Emborg氏:
難しい質問ですね(笑)。結局のところ,心を込めて取り組めばそこに「真実」が宿ると思って作りましたし,それがチームにとっても挑戦だったと思います。
Theuns Smit氏:
ゲームプレイの観点から言うと,私たちは25年間「エージェントファンタジー」を作ってきました。でもボンドは「カオスエージェント」ではなくMI6のエージェント。つまりルールがあるんです。
だから敵にどう接触するか,どうアプローチするかはこれまでのゲームと変わるので,その選択肢をうまくゲーム化する必要がありました。
分かりやすい例だと,「発砲されたら初めて撃ち返す」というライセンス・トゥ・キル的な仕組みを作り,ステルスやガジェット,魅力で切り抜けることも可能にしました。状況がエスカレートしたら「ライセンス・トゥ・キル」が発動する,そんなバランスをとりました。
4Gamer:
ライセンス・トゥ・キルのように,長年のファンが「これぞボンドだ」と感じられる要素は,どんなふうに盛り込まれていますか。
Martin Emborg氏:
作品の至るところにそれはありますね。私自身も7歳くらいから映画を観て育ったファンですし,チーム全体がボンドへの愛を作品に注ぎ込んでいます。
分かりやすい例で言えば,原作小説にある頬の傷をゲームで再現したところでしょうか。新規プレイヤーは気づないかもしれませんが,ファンには分かるディテール,細かいこだわりを盛り込んでいます。
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Theuns Smit氏:
旅の中でさりげないオマージュや小ネタを入れています。例えば帽子を置くシーンで,映画の有名な“帽子投げ”を思い起こさせる演出を入れました。そうした小さな遊び心を随所に散りばめています。
Martin Emborg氏:
ボンド役のパトリック・ギブソンとは「若いボンドはどう動くのか」を議論し,所作や立ち居振る舞いにもこだわりました。若いながらも洗練された動きを表現し,それがゲーム全体に反映されています。
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4Gamer:
ゲーム制作をするためにボンドと向き合い,あらためてボンドの魅力やファンが惹かれる理由に気づいたことはありますか。
Martin Emborg氏:
キャラクターを掘り下げる中で,本当に「ボンドらしさ」とは何かを学びました。その中の一つが,彼は「アンチヒーロー」でありながら「英雄」だというところですね。それが大事な点だとあらためて知りました。
Theuns Smit氏:
私はゲームプレイの観点で「ブラフ」という要素に注目しました。
ボンドは魅力的で,危機を切り抜ける機転を持っています。プレイ中,敵に怪しまれる状況でうまく言い逃れができた瞬間があって,「これぞボンド!」と感じました(笑)。そうした隠れた魅力をゲームに取り入れられたと思います。
4Gamer:
最後に,日本のゲームファンへメッセージと,プレイヤーに一番感じ取ってほしいことをお願いします。
Martin Emborg氏:
一番大事なのは「プレイヤー自身がコントロールしている」ことです。環境やガジェット,魅力や機転を使って状況を切り抜ける――そういう体験は今までのボンドゲームにはありませんでした。
プレイヤーは常にマネーペニーと連絡を取り合いながら,ボンドを生きる楽しさを味わえます。
Theuns Smit氏:
私は2つのポイントが特にどのような反響があるか楽しみです。ひとつはキャストです。パフォーマンスキャプチャや音声に多くの愛情を注ぎ,キャラクターたちを生き生きと描きました。
もうひとつは「ボンドの世界そのもの」を体験できることです。映画では断片的にしか見られなかったQの研究所などを実際に歩き回れる。プレイヤー自身の選択で没入できるんです。
Martin Emborg氏:
そして,サンドボックス的な謎解きやソーシャル要素もありつつ,本格的なアクションやカーチェイスも楽しめます。まさに「スケールの大きなボンド体験」となっているので,それを皆さんに届けたいと思います。
4Gamer:
いちゲーマーとして,いち007ファンとしても,さらに期待が高まりました。2026年3月27日の発売を楽しみにしています。
本日はありがとうございました。
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