
インタビュー
[インタビュー]「NINJA GAIDEN 4」開発陣に聞く。逆境,残虐,変化――シリーズのコアな魅力をいかに2025年のゲームとして昇華させたのか
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本稿では,「ステージおよびゲームを進めていく手触りの基礎を作る」レベルデザインとエンバイロメント(環境)のリードを担当した阿部雄大氏,ゲームを彩るアートワークをディレクションを担当した西井智子氏,そして楽曲を担う宮内雅央氏の合同取材の内容をまとめている。
「NINJA GAIDEN」シリーズが持つ,海外のエキゾチックな“ニンジャ映画”ような世界観と,日本のアクションゲームらしい文脈の融合はいかにして現代的に昇華されたのか。シリーズへの愛があふれると同時に,開発者のクリエイティビティがせめぎ合ってもいた舞台裏に迫った。
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「NINJA GAIDEN 4」公式サイト
コンセプトは「逆境」「残虐」「変化」
──さっそくですが,本作のコンセプトについて教えてください。
阿部雄大氏(以下,阿部氏):
ディレクターの中尾と最初に擦り合わせをしたのが,「逆境」「残虐」「変化」という3つのキーワードです。これらがシリーズが持つコアな面白さであるというところから,すべてがスタートしました。
世界観は「NINJA GAIDEN 2」から10年後くらいをイメージして,正当進化でありつつ,よりピーキーなものを目指しています。
──それらがサイバーで新しく,でもどこかシリーズらしさも感じる世界の基礎になったと。
阿部氏:
そうですね。プレイヤーが数多の敵に囲まれる極限の「逆境」,そこを「残虐」に打破したときの爽快な「変化」。これらを最大限に引き出すために,ステージ構成,エネミーの配置,ビジュアルはどうあるべきかを突き詰めていきました。
ステージごとに大きな変化があったほうが面白いし,ビジュアル的にも逆境感を表現するために,今にも押しつぶされそうな高層ビル街や,どこまでも落ちていく奈落のような場所を用意しました。
つまり,背景までもが逆境を表現しているんです。そこに配置される敵もまた逆境として機能するように,シチュエーションに合わせた変化をつけています。
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──そうしたレベルデザインがある程度できあがってから,アートワークや音楽が乗っていくわけですね。
阿部氏:
厳密にいえば,お互いにキャッチボールをしながら作っていったイメージです。ディレクターの中尾や私が最初にボールを投げ,それに対して西井や宮内から返ってくる。そのリアクションを受けて,さらに発展させていくというフローでした。
西井智子氏(以下,西井氏):
「どこかしらで過去作を上回らなければならない」という思いが常にありました。コンセプトが「逆境」「残虐」「変化」であるならば,アートとしても「ここをもう少し盛ったほうがいいのでは?」という提案をしています。
新主人公・ヤクモが己の血を使う「血楔忍術」(けっせつにんじゅつ)を使うこともあり,とくに血の表現にはこだわりました。ほかにも「ここはもっと風を吹かせたほうがいいのでは?」「落石が少し足りないのでは?」といった脅威のレベルを上げるための提案を,こちら側からも積極的にして濃度を上げていきました。
阿部氏:
そんな意見を受けて,私もまたボールを返して……という感じで,どんどん表現をピーキーにしていきました。
──登場する妖魔のデザインに妖怪的なものが加わったというか,過去作にはない新鮮さがあります。
西井氏:
今回のハンズオンで遊んでいただいた範囲ですが,舞台が「遊郭」へと変化するところからの発想です。背景からそこに根差す存在をイメージし,デザインを起こしたという思考の順番ですね。
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──レベルデザインの段階から,プレイヤーが実際にゲーム内で接する状態へと近づけていくわけですね。
宮内雅央氏(以下,宮内氏):
楽曲を担当する私は,ステージができあがっていくのを後ろで(リュウのように)腕組みしながら眺めつつ(笑),どんな曲を作ろうかと考え,体験の質をさらに高めていく感じでした。コンセプトである3つのキーワードを表現するために,さまざまな楽曲を書かせていただきました。
阿部氏:
彼とのやりとりもまた面白くて,こちらがお願いする前に曲を送ってくれることもあるんですよ。私のほうでも「曲の変化のタイミングに合わせて,ゲーム側でもこんな変化を起こそう」とアイデアが生まれたりして,互いに良い影響を与え合っていました。
「ニンジャガらしさ」をアップグレードする
──基本的なゲーム体験の方針はすぐ固まったのでしょうか。
阿部氏:
少し悩んだところもありましたが,全体としてはすぐに固まりました。このシリーズの面白さはアクションゲームのプリミティブな部分にあるので,奇をてらったことをするより,ストレートに作るのが正解でしたから。
どれくらい「ケレン味」を入れるか,という調整はありましたが,そこで難航することもありませんでした。
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──敵の配置などで,どうやって“殺意”を出していくのかもレベルデザインに含まれますね。
阿部氏:
まさにそうです。遊んだ人に「ニンジャガだな」というエッセンスを感じてほしい,と常に考えていました。シリーズが元から持つ,プレイヤーと敵が対等な感覚は守りつつ,敵からの殺意もアップグレードしています。 同時に,プレイヤー側にもそれに対応できる新しいメカニクスを用意しました。
ステージの地形も上下方向に空間を広げて迫力やスケール感を増してはいますが,根っこにある感覚は変えないように意識しました。
── 実際,それはゲームの手触りからも感じられました。
阿部氏:
なにせディレクターの中尾が「このゲームはNINJA GAIDENなんだ!」と強く訴えていたので(笑)。我々も過去作を何度もプレイして,日々チェックしていました。
プレイヤーの挙動から効果音に至るまで,中尾が張り付いて「こういう感じで!」とひたすら伝えていたので,表現自体は現代風にアップデートされてはいますが,その手触りを感じていただけたなら嬉しいです。
──シリーズらしさを出すのに,とくにこだわったポイントは?
阿部氏:
そうですね……とくに,となると答えるのが少し難しいかもしれません。
西井氏:
制作のどのパートでも,過去作をそれこそコマ送りレベルで研究していましたからね。リュウさんに関しては,ストイックなイメージも大切にしました。客観的に見るとちょっと変かもしれない場面でも,本人は至って大真面目というところが,個人的に大好きなポイントでもあります。
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阿部氏:
「NINJA GAIDEN」のアクションの気持ち良さのキモは,「緩急」だと捉えています。手負いの敵を滅却するモーションの「グッと溜めてから,首をはね飛ばす」メリハリだとか。
最初期は過去作の再現のつもりで制作に入ったのですが,その魅力が我々の思い出の中で誇張されていたようで,公開中の映像のようなド派手な表現になりました。さらにプラチナゲームズらしいケレン味として,「血殺」などの新しい見せ方や仕組みも加えています。
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宮内氏:
SFX(効果音)でもメリハリをつけ,派手なアクションにはより派手な音をつける,ということに力を入れました。
西井氏:
しかし,中尾のこだわりには苦労しましたよね。「こういう感じにしたいんだけど,何か違うんだよな……」が始まると長いんです。みんなで「よし,どこまでついていけるか」と面白がりながら作業していました。
(一同笑)
──敵の色が白いことも印象的でした。血しぶきが映えて美しいです。
西井氏:
整然としたものを,プレイヤーの手でめちゃくちゃにしてやるのは気持ちいいじゃないですか。そういうニュアンスで,真っ白い敵を血で汚してやるのは良い体験だろうと考えました。リュウさんやヤクモの「黒」との対比でもあって,逆境感をより際立たせるものでもあります。
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阿部氏:
もちろん,白以外の敵もたくさん登場するのでご期待ください。
──今作にも多彩な武器が出ると思いますが,そのデザインについてはどうでしょう。
阿部氏:
基本的にリュウは力強くてストレートな武器,ヤクモはテクニカルな武器という分け方でお願いしました。
西井氏:
ヤクモは,リュウさんに似合わない武器も持たせやすいんですよ。逆にリュウさんは身体能力が総合的に高いからこそ,威力が出るような武器という振り分けです。
ヤクモのほうが小柄なので,キャラクター性を引き立たせるために,武器にジェットのようなギミックをつけるといった工夫もしています。
制作にあたって禁じ手は設けませんでしたが,「ニンジャガとしての気持ち良さが削がれるからダメ」という判断はたまにありました。
最高の難しさと最高の爽快感を
──難度は4段階(ヒーロー,ノーマル,ハード,マスターニンジャ)ですが,最高難度のマスターニンジャは「本当にクリアできるのか?」と感じました。一撃死ではないにしても,体力を8割を持っていかれることもザラでした。
阿部氏:
バランスにはこだわりました。クリアはできる,だけどめちゃくちゃ難しい,と。そのぶん,プレイヤー側も操作性が向上していますし,「鵺の型」という逆転要素も加わっています。
敵はシリーズ最強ですが,プレイヤー側もまたシリーズ最強です。難度自体は上がっていますが,習熟はしやすく,すぐに上手くなれるゲームを目指しました。
──ゲーム作りにおいて,皆さんが一番大切にしていることは何ですか。
宮内氏:
私はいつも,ゲームの音は「お化粧」だと思っています。ゲームという下地の上に感情を表現するものだと。本作では,プレイヤーを飽きさせないことを意識しました。Z世代やα世代といったデジタルネイティブな世代に,「新しい,かっこいい」と伝わるような曲を揃えようと考えたんです。
それが自分の首を絞めることにもなったのですが(笑),多様な音楽を集めたカオス感が結果的に「NINJA GAIDEN」らしさにつながったのではないかと思います。
阿部氏:
レベルデザインは,料理のコースを考えるのに近いです。どの料理をどんな順番で出すと,最大の効果を発揮するのか。ステージもどの順番で見せるのが最も映えるのか,ステージ制作に関わる人間をどう配置するのかも同じことだと考えています。
そして,今回は「難しさ」がウリのゲームなので,後半に行くにしたがって脅威を大きくしていくことにも苦心しました。
西井氏:
本質的にアートワークは「翻訳」に近いものがあります。プランナーが立てたコンセプトを,いかに見た目だけで伝えるか。ただカッコいいだけでなく,「このゲームがやりたいことは何なのか」を認識し,それをどう絵としてアウトプットするかが大事だと考えています。
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──最後に,本作の完成を心待ちにしている人にメッセージをお願いします。
阿部氏:
ゲームの後半やクリア後のチャレンジミッションに関しては,しっかりと「殺し」にかかっています。中尾も私もテストプレイをしながら,何度もブチ切れていましたので(笑), クリア後も長く楽しめるかと思います。
ぜひご期待ください!
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「NINJA GAIDEN 4」公式サイト
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