
企画記事
経営はシビアで,夢は儚い。でも,アイドルたちの輝きに心を奪われた――「シャインポスト Be Your アイドル!」はじめてのプロデュース記
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小説,漫画,アニメ,音楽CD,キャストによるリアルライブなど,多角的な展開を見せてきたシャインポスト。そのメインコンテンツのひとつであるゲームは当初モバイル向けに構想されていたが,Switch2という新たな舞台を得て,2025年6月5日にローンチタイトルのひとつとしてリリースされた。
……といった開発経緯やコンセプトの背景などについては,ぜひ別途掲載しているインタビューを読んでいただくとして,発売から1か月が経ち,すでにその評判を耳にしたという人もいるだろう。
あらかじめ言っておくと,本作はゲームの難度もシナリオもけっこう“シビア”だ。それでもなお,強くおすすめしたいだけの手応えと魅力がある。
「アイドルに興味はないし,自分には関係ないゲームかな」と思った人にも,本作が持つ育成と経営を軸としたシミュレーションとしての手応えに加え,ジャンルを問わず楽しめるような普遍的なテーマやドラマが丁寧に描かれていることを知ってほしい。Switch2を手に入れたという人にはぜひ手に取ってほしいという熱量を感じる作品なのだ。
そんな「シャインポスト Be Your アイドル!」の魅力を,筆者の初回プレイを振り返りながら紹介していこう。
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「シャインポスト Be Your アイドル!」公式サイト
「シャインポスト Be Your アイドル!」は,アイドルの“夢と現実”をどうリアルに描き出したのか――キーパーソンが語る情熱と葛藤のゲーム開発

KONAMIのSwitch 2用新作「シャインポスト Be Your アイドル!」は,光と影のどちらにも目を向けながらアイドルという存在のリアルを描く,情熱にあふれた作品だ。長い開発のなかで積み重ねた思考と試行錯誤,そして“信じて待ってくれた人たち”への感謝の思いをキーパーソンたちに話してもらった。
“武道館公演”という憧れを追って事務所を運営。その道のりは非常に厳しい!
妾(わらわ)は紗院はさみ。アイドル事務所「サバンナの覇者」の社長であり,同時に所属アイドルたちのマネージャーも務めている。
さっそくだが,今の時点で皆さんの頭に浮かんだであろう疑問にお答えしよう。
なぜ筆者の一人称が“妾”なのか? それは,プレイ開始直後に一人称の設定を求められるからだ。妾(プレイヤー)の名前も事務所名も自由に設定できる。
そして,なぜ社長とマネージャーを兼任しているのかというと……それは,妾自身の手でアイドルたちを育て上げたいという強い思いと,そもそも人を雇う資金の余裕が我が事務所にはないからである。ここまでの流れで,だいたい察していただけたであろうか。
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妾の使命は,1年ごとに5人のアイドルを事務所に迎えて1組のユニット結成し,計3ユニット / 15人のアイドルを武道館公演へと導き,それを成功させること。ユニットは3年契約,事務所としての目標達成期限は5年である。
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経営のノウハウなどまったくない,素人同然の妾だが,初めてだからといって何もしないわけにはいかぬ。まずは1年目のメンバー選び。書類選考を通過した10人の中から,5人を選抜することになる。翌年以降も新たな10人から5人を選ぶので,今回の5人が記念すべき一期生というわけだ。
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どの候補者も魅力的 |
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直感でこの5人に決定。小夢さんの評価は「歌もダンスもバランスが良さそう」。グループ名は「子リスさんチーム」。神は妾にネーミングセンスを与えなかった |
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うんうん。さまざまな個性が集まり,面白いグループになりそうだぞ? |
こうして5人のアイドルを迎えた我が事務所「サバンナの覇者」は,武道館を目指して本格的に走り出すことになる。
成功のために必要なのは,事務所の経営,資金調達,アイドルたちとのコミュニケーション,設備の拡充,楽曲や衣装の手配,ライブのブッキング,当日のセットリストや衣装選び――そのすべてだ。
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期間は5年,ターン数にして120……少なくないだろうか?
この短い時間で,果たして本当に事務所のアイドルグループを武道館へ導けるのだろうか。正直,少し不安になってきた。
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経営力から政治力まで,6項目ある事務所のパラメータはまだ最低ランクだ。子リスさんチームのメンバーたちも,ヨワヨワで頼りない事務所では不安になってしまうだろう。
頼れる事務所で安心して活動してほしいから,まずは事務所運営に力を入れていこう。
ずっと公園で練習させるのは不憫だし,資金調達をして練習スタジオも作ってあげなきゃ。忙しいなあ!
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青葉さんがメンバーのレッスンを引っ張ってくれているみたい。ありがたいことだ |
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事務所のため,アイドルのため! 妾も頑張るぞ |
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衣装や楽曲を発注して,忙しいなかでもメンバーとのコミュニケーションを欠かさず,妾は完璧に業務をこなしているのだと,このときまでは自負していた。しかし,それは間違いだったらしい。
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事務所の増強に明け暮れるようにあちこち走り回っているうちに,メンバーは「一向にライブの予定がない。私たちはこんなことで大丈夫だろうか」と不安になってしまったようなのだ。
うんうん,そうだよね。調子のいいコミュニケーションと資金調達の仕事ばかりでライブの予定が入ってこなければ,放っておかれているんじゃないかって不安になるよね。
しかも,ひとりの不安はほかのメンバーにも伝染する。妾が同じ立場でもそうなるだろう。本当にすまなかった……急いでブッキングしましょう!
彼女たちのデビューは,タワーレコード新宿店にて行われることになった。予算も低く,初ライブという子リスさんチームの実力にも見合った会場だ。お客さんとの距離も近いし,親しみをもってもらえるかな。「肩の力を抜いて,楽しんで」と送り出したものの,まだまだ粗削りなグループだ。正直言うと,妾も緊張している。
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しかし,会場で目にした彼女たちの初々しさとポジティブなパワーに,そんな心配はすっかり吹き飛ばされてしまった。
ステージをよく見れば,ミスをして顔がこわばったり,歌声が不安定になったりと,正直まだまだ未完成なパフォーマンスではある。けれど,それは言い換えれば,伸びしろしかないということ。そして何より,そんな不完全さすらも魅力に変えてしまうきらめきを,彼女たちはすでに放っていたのだ。
ステージが始まると,プロデューサーとしてできることは,大事なアイドルたちを見守ることだけだ。
そんなわけで,スクリーンショット撮影に勤しむ妾。カメラを切り替えて特定のアイドルを追ったり,UIの有無も選べたりするので,自由に撮影を堪能できる。
今回のライブ会場であるタワーレコード新宿店をはじめ,日比谷野外音楽堂や武道館など,実在のホールが使われていることも,アイドルの存在感,現実感を引きたてる要素となっている。
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子リスさんチームの初ライブは見事成功した。アイドル達はやる気と手ごたえを得たようだ。
いっぽう,事務所の社長である妾が得たのは,ライブ公演収支表という現実である。観覧券付きのCD,グッズなどの売り上げを合わせても普通に赤字。はあ,リアル……。だがこれは,先々のことを考えての投資でもあるのだ。
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ここで,本作のライブについて説明しておきたい。
なんとか成功に導けたファーストライブだが,同じメンバー,同じセットリストでライブを行っても,その内容は毎回少しずつ異なる。お客さんが求めているものや盛り上がるポイント,メンバーがミスをするタイミングなどで変化するのに加え,AI歌唱システムの導入によって歌声そのものにも細かな“成長”が反映されるのだ。
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今回のように,アイドルにとって初めてのライブであれば,技術面もメンタル面もまだ磨ききれていない状態だ。緊張から声が弱くなったり,音程が不安定になったりと,「可能性は感じるけれど,どこか素人っぽさが残る」という印象を受ける場面もある。
難度の高い曲をうまく歌いこなせなかったり,当日のコンディションによって実力を出し切れなかったりと,いつも完璧なパフォーマンスができるとは限らない。だが,経験を重ねることで技術は磨かれ,自信や手ごたえが歌声にもにじむようになる。だからこそ,成長を経て完成度の高いパフォーマンスが決まったときの感動は,ひときわ大きい。
生身の人間のような揺らぎを持った表現や,毎回どんなパフォーマンスになるか分からないライブ展開。そういった“人間らしさ”がAI歌唱だからこそ実現できているというのは不思議な感覚だが,非常に意欲的な取り組みだと感じる。しかも,クオリティが高いのが驚きだ。
なお,本作のライブシーンにおける歌唱は,キャストの生歌は一切使われておらず,すべてAIによって生成されているという。歌唱AIについては,公式サイトに技術紹介ページも用意されているので,興味のある方はぜひチェックしてみてほしい。
「シャインポスト Be Your アイドル!」公式サイトの技術解説コーナー
さて,初ライブをなんとか成功させた子リスさんチームの5人。ここからのアイドル道も順風満帆かなあ,と思いたかったが,そんなに世の中は甘くない。
「しっかりメンバーとコミュニケーションをとるべきだ」と反省し,1年目の終盤は進んでアイドルたちの話を聞くようにした。すると,それぞれのメンバーに違った事情,抱えた思いがあることに気付く。
アイドルのプロデュースとは,若い彼女らの人生を半分背負いながら,一緒に走っていくということなのだ。遊びじゃない。妾も気合いを入れ直さないと。
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しかし,今度は交流ばかりに力を入れすぎて,事務所の運営が滞り,その結果ライブの開催頻度が落ちるという本末転倒な事態に。またまた不安になるメンバーを励まし,なんとか軌道修正……なんてことをしているうちに1年目は終わり,2年目へ突入した。5人の新しいアイドルを迎え入れ,グループを作る。
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ここからは,ふたつのグループを率いていかねばならない。残された期間は4年,ターンにして96。しかも1期生の子リスさんチームは残り2年しかない。事務所の運営状況も,「この1年,いったい何をしてたの?」と脳内小夢さんに罵られそうなくらいに育っていない。すべてが中途半端である。困ったぞ。
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2年目の運営状況を伝えようとすると,それは半分懺悔のような内容になる。
事務所の体勢が整っておらず,アイドルたちにも着実なレベルアップをさせてあげられないままにふたつめのグループを抱え,すべての対応が後手に回る状態となった我が事務所。「サバンナの覇者」なんてふるった命名をしてしまったことが,今さら恥ずかしくなってくる。
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アイドルたちは頑張っている。レッスン,ライブ,資金調達のための仕事。忙しい彼女たちだが,仕事では笑顔を絶やさず,夢に向かって走り続けている。また,グループメンバー同士の交流も生まれ,良い刺激になっているようだ。それでも,やはり運営体制がふがいないことには,皆が薄々気づいているようで……ごめんよう。
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事務所設立から3年目,ついに我が事務所に3つ目のグループ「くまさんチーム」が誕生した。
ただでさえ,1グループを満足に育てきれないまま2グループ体制となった2年目を経て,目に見える成果も残せないままの状態。そんななかで迎える3年目は,3グループを同時に管理しなければならないというますます厳しい状況に突入するのだった。
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当然,さらにアイドルたちへのサポートは手薄となっていく。1期生である子リスさんチームは事務所を引っ張る存在になってはいるが,彼女たちのメンタルは常に良くない状態。すこしフォローしたくらいではどうにもならなかった。そして,ついに武道館への道は,閉ざされてしまった。子リスさんチームは今年で解散となる……。
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ああ,恐れていたことが |
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解散,そしてラストライブのことを告げると,陽本日夏は目に涙を溜めながらも笑顔を作る。胸が痛む |
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ささやかに行われた打ち上げパーティーのあと,最後に残った陽本日夏と話をした。寂し気な笑顔を残して,北海道に帰った日夏。ほかのメンバーも,失意のままに去って行った。その小さな背中を,茫然と見送る妾。
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その後の「サバンナの覇者」はどうなったかというと,所属していた15人のアイドルはけっきょく誰も武道館に行くことは叶わず,夢破れて事務所を去って行った。5年間ずっと事務所と妾を支えてくれた小春さんも。
人生は,何をしていたって続いていく。アイドルになれなかったからって,アイドルたちを武道館に導けなかったからって人生の終わりではない。しかし,誰も武道館に送り出せなかったという結果と関係なく,この結末は私にとってははっきりバッドエンドだと言えるものとなった。
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“夢のない人生なんて,退屈でしょう?”
「育成と経営に追われて,失敗すれば悲しい結末が待っている。それって面白いの?」
本稿をとおして,もしかしたらそのように思った方もいるかもしれない。正直言って,今回紹介した初回プレイの間は常に不安で,とても「わーい,面白いなあ!」と思えなかったことは確かだ。アイドル事務所の経営は泥臭いものだし,彼女たちの人生を背負って導くことには,大きいプレッシャーが付きまとう。
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ただ,この苦しさこそが味わう価値のある体験だということは,プレイをしてみてよく分かった。
夢と現実,育成と経営のバランスをうまくとりながら彼女たちを見事羽ばたかせることができたら――それによってとても大きい喜びが得られ,今までに辛酸を舐めまくった日々も報われるのだろうと。
だから,すぐにまた新しくプレイを始め,再び武道館を目指してしまう。やっぱり,それはこのヒリつくような事務所運営が面白いからだ。苦しいけど面白い。なんだこの感覚は。
周回プレイをするうち,我々プレイヤーには確実に経営のノウハウが蓄積され,武道館への道のりは近くなっていくことだろう。エンディングまで120ターンというのも,アイドルを武道館に送り出すための期間と考えると短いが,繰り返しのプレイすることを考えるとバランス的にちょうどいい。
初回プレイは4時間程度かかったが,スキップを利用すると1時間もかからずクリアできる。きっと経営に慣れたころには,初回に感じていた苦しさは感じなくなっているはずだ。
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シビアな展開が容赦なく描かれる一方で,苦しむアイドルの姿を見せもののように消費するような内容では決してない。そう言える大きな理由のひとつが,彼女たちの描き方に“人間らしさ”があるからだと思う。
いわゆるキャラとしてではなく,その人自身として感情や揺らぎを持って描かれている。だからこそ自然と寄り添いたくなるし,悲しませてしまったときにはこちらの胸にも何かが残るのだ。
そしてそれは,人間の描き方だけが理由ではない。シミュレーションゲームとしての手応えや経営の重み,成長の実感など,いくつもの要素が合わさることで「見守りたい」「支えたい」と思わせてくる作品になっているのだ。
AI歌唱などの意欲的な機能を取り入れつつ,シナリオは誠実な姿勢で描かれており,しっかりとした土台の上で物語が進んでいく。基本のゲーム進行は各ターンでの選択と実行という分かりやすく遊びやすい作りながら,アイドルのポジションや選曲,衣装選びといった要素には戦略性もあり,思わず突き詰めたくなる奥深さがある。
そして何より,登場するアイドルたちの魅力に触れ,ステージに立つ彼女たちを一番近くで支えていけることに,純粋な喜びを感じるはずだ。夢と現実の間で揺れながら,彼女たちと共に走り抜ける――そんなプレイ体験をぜひ味わってみてほしい。
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キーワード
- Nintendo Switch 2:シャインポスト Be Your アイドル!
- Nintendo Switch 2
- シミュレーション
- CERO B:12歳以上対象
- KONAMI
- プレイ人数:1人
- 育成
- 経営
- :シャインポスト Be Your アイドル!
- :シャインポスト Be Your アイドル!
- 企画記事
- レビュー
- ライター:内藤ハサミ

(C)Konami Digital Entertainment,Straight Edge Inc. Konami Digital Entertainment
©Konami Digital Entertainment,Straight Edge Inc./シャインポスト製作委員会
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