
インタビュー
[インタビュー]どこへでも行ける,何にでも登れる。自由を極めた「Dying Light: The Beast」で長年の謎,クレインの「その後」を描く
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パルクールや近接武器はもちろん,車両での移動や,銃の作り込み,夜の探索など,そのすべてがシリーズ10周年の集大成にふさわしい,過去最高の完成度を目指して開発されている。
7月11日に上海で開催された日中韓メディア向けのオフライン試遊イベントで本作の序盤を体験し,その興奮のまま気になったことをDying LightのシリーズディレクターであるTymon Smektala氏にぶつけてきた。
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また,インタビューと合わせてプレイレポートも掲載している。新しく登場したビーストモードや,新たな強敵「キメラ」,そのほか過去作から進化した数々の要素については,ぜひ,プレイレポートでチェックしてほしい。
[プレイレポ]「Dying Light: The Beast」,ゾンビを素手で引きちぎるビーストモードを体験。制限なしのパルクールと使い捨ての車で最高の自由を楽しめる
![[プレイレポ]「Dying Light: The Beast」,ゾンビを素手で引きちぎるビーストモードを体験。制限なしのパルクールと使い捨ての車で最高の自由を楽しめる](/games/830/G083053/20250715002/TN/001.jpg)
ポーランドのデベロッパ・Techlandが手がけるオープンワールドサバイバル「Dying Light」の3作目「Dying Light: The Beast」のハンズオンイベントが2025年7月11日に開催された。シリーズの良いところを融合させながら,10周年の集大成として,さらに進化させた仕上がりとなっている。
※本作はリリースに向けた最終調整中であり,試遊版と製品版では内容が異なる可能性があります
Dying Lightで常に大切にしているのは「自由」
4Gamer:
まずは改めて本作について,簡単に紹介をお願いします。
Tymon Smektala氏(以下,Smektala氏):
Dying Light: The Beastは,Dying Lightシリーズの3作目にあたります。私たちが10年間このシリーズに取り組んできた経験のすべてを注ぎ込んだ作品です。
1人称視点のパルクール,鋭い近接武器による戦闘,昼夜で変化するゲームプレイやビジュアル。そういったDying Lightの象徴的な要素すべてが,シリーズ史上最高のレベルに達しています。
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4Gamer:
パルクールと車両での移動がとてもバランスよく楽しめる印象を受けました。今回は,その2つの移動手段を両立させたマップデザインを目指したのでしょうか。
試遊では,道路の近くに車が点在していた。初代Dying LightのDLC「The Following」では,1台のバギーをパーツを付け替えながら愛車のように育てていったが,本作ではどんどん乗り捨てて大丈夫で,駐車場所も気にする必要はない印象だった。
Smektala氏:
Dying Lightシリーズの中心にあるのは,いつだって「自由」です。どこへでも行ける,何にでも登れる。そんな制限のない動きこそが,このゲームの魂なんです。
パルクールはその1つの手段に過ぎず,常に新しいプレイスタイルを模索しています。そこで,もう1つの移動手段としての車を導入しました。
パルクールも,運転も,どちらもプレイヤーが「常に主体的に操作している」ことが重要です。ただスティックを倒すだけで進むのではなく,登ったり,方向転換したり,といったアクションが求められる。
車両はプレイヤーに自由を与える別の方法でありながら,操作感を出せるということで,自然に組み込めていると考えています。
4Gamer:
今回登場する車は,1種類でしょうか。ほかにも乗り物があるのでしょうか。
Smektala氏:
本作では,オフロードに対応したピックアップトラックという特定の乗り物だけを採用しました。
ゲームには,道路や農地,沼地,山岳など,さまざまなロケーションが登場しますし,川を渡る必要もあります。これらをカバーする車両は限られているので,ピックアップトラックを採用したんです。
人間とビースト,2面性のあるスキルデザイン
4Gamer:
Dying Light 2では,パルクールにスタミナが導入されましたが,本作では無制限に戻りました。これは,主人公が再びカイル・クレインだからでしょうか。
Smektala氏:
これについては,Dying Light: The Beastが10年間の経験の集大成であることが現れている例の1つですね。
Dying Light 2で導入したスタミナゲージは,結果的に私たちがもっとも大切にしている「自由」を制限してしまいました。
プレイヤーやコミュニティからのフィードバックを受け止めながら,慎重に検討を重ねた結果,初代Dying Lightのスタミナ制限のないシステムに戻すことにしました。
4Gamer:
スキルの成長については,Dying Light 2でのインヒビター(強化アイテム)を収集していくものから,新しいシステムに刷新されました。スキルも,人間側のスキルと,ビースト側のスキルの大きな2つに分かれましたが,コンセプトを教えてください。
Smektala氏:
Dying Light 2の進行システムはインヒビターによる強化がメインでしたが,本作では,サバイバーとビーストの2つに明確に分けました。主人公カイルは,人間であり,同時にビーストでもある。そんな彼の2面性をゲームプレイに落とし込んだシステムです。
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人間の状態でプレイしているとサバイバー側の経験値が溜まり,クラフトやドロップキック,射撃といったサバイバースキルを習得できます。
一方で,ビーストスキルは,「キメラ」と呼ばれるボスモンスターを倒すことで,彼らの体から物質を抽出し,それを自分の体に注射することでスキルポイントとして使用できます。
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完全に別々に分かれていて,ビーストスキルを上げることによって,体力やスタミナも強化される仕組みです。
4Gamer:
前作では,夜間の探索は,ダークゾーンに潜ってインヒビターを集めることが動機付けの1つにあったと思いますが,本作では,そういったエリアを探索するメリットはどう変化しましたか。
Dying Lightに登場する感染者(ゾンビ)は,紫外線(UV)を苦手とする。そのため,日中は太陽光の当たらない荒廃した店や隔離施設などのダークゾーンに群がっている。ダークゾーンを探索するときは,ゾンビたちが外に出て活動をする夜が適しているのだが,たどり着くまでの道のりはもちろん危険になる。
Smektala氏:
今回,インヒビターは存在しませんが,Dying Light 2と同様に,より価値のある物資が得られます。
危険な夜間の探索に挑むことで,銃の弾薬を集めたり,良いクラフト素材を手に入れて,強い武器を作ったりもできます。ダークゾーンでなければ,得られないような物資もたくさんあります。
銃は後付けじゃない。本格的なシューターに並ぶ「本気の銃」
4Gamer:
序盤から銃を入手できましたが,弾薬は限られている印象でした。やはり補給には苦労するようになっているのでしょうか。
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Smektala氏:
はい,まさにその通りです。ゲーム内には弾薬を入手できる場所はありますが,そのどれもが危険な場所になっています。ダークゾーンや,バロンの支配する地域,大量のゾンビがいるエリアに行かないと見つからない設計です。
ただし,これはリスクとバランスの問題です。リスクを取ることで,次の危険なエリアの攻略は楽になるかもしれません。より多くの弾薬を手に入れて,銃を使って攻略できますから。
4Gamer:
その銃ですが,撃ったときや弾が尽きたときの手ごたえが非常にリアルで,細部にものすごいこだわりを感じました。銃の設計思想や開発について,詳しく教えていただけますか。
Smektala氏:
今回は,本当に銃を正しく,高品質なものにしたかったのです。初代Dying Lightの開発では,長い間ゲームに銃が一切なく,リリース前の遅い段階に追加を決定しました。
Dying Light 2では,ゲームに銃が登場しない形でリリースしたのですが,プレイヤーからの銃が欲しいという声は多く,アップデートで追加することになりました。
あとから何かを追加したとしても,最初からあるものでなければ,ゲームのほかの部分とつながり,融合するということはありません。
だからこそ,Dying Light: The Beastでは,最初から銃を組み込みたかったんです。今ある本格的なシューティングゲームと比べても遜色のない,むしろ負けないクオリティを目指しました。
4Gamer:
銃のこだわりポイントを教えてください。
Smektala氏:
撃ったときの感触が良くなるように,アニメーションやオーディオデザインに多くの時間を費やしました。プレイヤーが銃を使うときの操作感,リロードや狙ったときの動き,射撃音のリアルさなど細部にまでこだわっています。
屋内で撃ったときと,屋外で撃ったときで音が違いますし,撃たれた敵の反応もリアルです。銃の感触をよくすることは,私たちの開発プロセスで本当に大きな部分でした。
4Gamer:
近接武器が主役のDying Lightで,銃をどう位置付けましたか。
Smektala氏:
適切にバランスを取ることが重要です。銃を強すぎるものにはしたくありませんでした。もちろん,大概の武器よりは強力ですが,デメリットもあります。
音が出るので,撃つとゾンビが集まってしまいますし,弾薬は本当に限られています。気まぐれに撃ちまくっていれば,あっという間に弾切れになるはずです。銃を使うときには,慎重になる必要があります。
銃を高品質に表現し,本当の意味でゲームの一部分にすることに努めました。プレイヤーが窮地に直面したときに使える,もう1つの生き残る手段が,銃なのです。
4Gamer:
話は変わりますが,車でゾンビをなぎ倒していた時,バックパックを背負った妙に目立つゾンビを見つけました。気になって車を降りて調べてみると,大量のアイテムを入手できて思わず嬉しくなりましたね。ゾンビのバリエーションや,探索を楽しくするための要素も増えていますか。
Smektala氏:
はい。危険な敵や,希少な敵を倒すことで,レアリティの高いアイテムが手に入ります。さまざまなレアリティのアイテムを多数用意しているので,いろいろ倒して,探索してみてほしいです。
また,敵の種類は,Dying Lightシリーズでおなじみの感染者たちをすべて登場させ,さらにキメラと呼ばれる大型ボスモンスターなども追加しています。過去作から登場する敵も,本作の世界観に合わせてビジュアルを一新しました。
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たとえば,突進攻撃をしてくる「チャージャー」は,本作では新しいビジュアルで登場します。シリーズでもっとも象徴的な強敵「ヴォラタイル」もテクスチャやモデルのディテールを向上させ,過去のどのタイトルよりも恐ろしい姿で登場します。
ストーリー分岐なし。カイル・クレインの「正史」を公式としてアンサー
4Gamer:
ストーリーについてお聞かせください。本作では,Dying Light 2のように会話中にインタラクティブな選択肢が表示されました。プレイヤーの選択によって,ストーリーは分岐しますか。
Smektala氏:
いいえ,Dying Light: The Beastのストーリーは,AからBへと進む1本道の構成になっています。すべてのプレイヤーが同じ物語を体験するのです。
一部の会話では選択肢がありますが,それは世界観や周囲で起きていることに興味があるプレイヤーが,より多くのことをNPCに尋ねるためのものです。
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それはなぜか。「あのあと,クレインはどうなったんだ?」と,私たちは何年にもわたってプレイヤーから問われ続けてきました。長年の疑問に,ようやく公式として答える時が来たというわけです。
Dying Light: The Beast,これこそがカイル・クレインの「正史」です。
4Gamer:
本作でカイル・クレインの「正史」が描かれるということは,彼の物語にもひとつの区切りがつく,そんな印象も受けました。それは,クレインの物語の完結を意味するのでしょうか。Dying Lightシリーズの今後も教えてください。
Smektala氏:
まず断言しますが,Dying Lightは絶対に終わりません。Dying Lightシリーズが成長し続けることを,本当に,心から望んでいます。
プレイヤー人口は,5000万人を突破し,世界トップクラスのゾンビゲームと言える大成功を収めています。
Dying Lightには,まだまだ多くの可能性があり,将来的により多くの作品をリリースしていきたいと考えています。実際に,今後はおそらく3年ごと,もしかしたら2年ごとにゲームをリリースできるかもしれません。
そして,Dying Lightというゲームで,多くの異なることに挑戦してみたいと考えています。プレイヤーが気に入ってくれることを願っていますし,今後10年間でさらに多くのDying Lightに出会ってほしいです。
また,カイル・クレインについても,本作でThe Following後の「正史」を描きますが,彼の物語もこれで完全に終わることはない。そう考えています。
4Gamer:
最後に,カイル・クレインに日本語吹き替えも導入され,本作をきっかけに彼の物語に触れる日本人プレイヤーも多くいると思います。日本のDying Lightシリーズファンや,新規プレイヤーに向けて,何かメッセージはありますか。
Smektala氏:
もちろんです。日本のプレイヤーのみなさんが私たちのゲームに興味を持ってくださることに,とても感謝しています。
言語的にも,文化的にも,私たちは地球の離れた場所にある完全に異なる国に住んでいます。だから,ポーランドで私たちが創造したものが,日本のプレイヤーにも響くというのは,本当に素晴らしいことです。
私たちは,日本のプレイヤーと長年にわたり特別なつながりがあると感じています。私たちのゲームは,Dying Lightシリーズの以前から日本のプレイヤーに非常によく愛してもらえました。だからこそ,敬意と情熱,そして愛を届けたい。これからもっと強く,確かな関係を築いていきたいのです。
4Gamer:
本日はありがとうございました!
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今年10周年を迎えたDying Lightシリーズ最新作Dying Light: The Beastは,8月22日に発売される。過去作におけるプレイヤーの声を真摯に受け止め,パルクールと車両による自由な移動や,シューティングゲームとしての銃の作りこみ,美しい自然と恐ろしいゾンビのビジュアル,そのすべてがパワーアップされている。
シリーズはこれで一区切りではない。初代主人公カイル・クレインの物語の答え合わせを経て,Dying Lightは次の10年へと歩みだす。
――収録日:2025年7月11日
「Dying Light: The Beast」公式サイト
- 関連タイトル:
Dying Light: The Beast
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ダイイングライト:ザ・ビースト
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- 編集部:或鷹

DYING LIGHT: THE BEAST (C)Techland S.A. Published and developed by Techland S.A. All other trademarks, copyrights and logos are property of their respective owners. All rights reserved.
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