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「野狗子: Slitterhead」の深層に触れる――“肉体と精神”が交わるコンセプトアート展と髙橋美貴氏の個展が東京・銀座で開催中
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本イベントは,外山圭一郎氏や佐藤一信氏,大倉純也氏らが立ち上げたゲーム開発スタジオ・Bokeh Game Studioの第一作として2024年11月に発売された「野狗子: Slitterhead」のアート展示イベントだ。同作のコンセプトアーティストを務めたBokeh Game Studio所属の髙橋美貴氏による個展「肉と魂」も同時開催されている。
今回は一般公開の前日に会場を訪れる機会を得たので,展示内容の紹介とあわせて,立ち会ってくれた外山氏,髙橋氏,クリーチャーデザインを手がけた米山啓介氏のメッセージもお届けしたい。
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ヴァニラ画廊公式サイト
「野狗子: Slitterhead」公式サイト
会場のフロアは二つに分かれている。「野狗子: Slitterhead」コンセプトアート展では,髙橋美貴氏が手がけた,ひときわ妖しさを放つ宗教団体「愛鳴會(あいめいかい)」のアートや,同団体の幹部・銀月などメインキャラクターのデザインを担当した吉川達哉氏による“人物”イラスト,そして米山啓介氏による野狗子の設定画などが展示されている。
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さらに,ゲームには登場しなかった“第4のボス”「ハーレイ」の吉川氏によるキャラクターデザインと,米山氏による“完全体”のビジュアル,髙橋氏と茂木大典氏(本作のリード背景アーティスト)による,未実装となった幻の設定「人間牧場」のアイデアスケッチおよび背景コンセプトアート,そして今回のために描き下ろされたという“オニダルマオコゼ野狗子”のイラストまで,アートとしての貴重さはもちろん,資料性の高い展示がずらりと並ぶ。
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まだゲームをクリアしていない人のため詳細には触れないが(といっても「ハーレイ」の説明でお察し……な感じがあるけど),すでにプレイ済みの人にとっては,こうしたアートの貴重さに加え,ある種の“ファンサービス”とも感じられる内容にもなっていると感じる。
なお,各展示物にはそれを手がけたクリエイターのコメント(および一部作品には外山氏によるコメント)も添えられており,どれも「なるほど!」とうなずきたくなるような制作背景や開発意図が添えられていて,じっくり読みたくなる内容だ。
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「SIREN」シリーズで屍人や闇人のデザインを手がけ,「野狗子: Slitterhead」では蛹体や紐蟲(ヒモムシ)といった異形のクリーチャー,さらにはその背後に広がる世界観の構築にも深く関わっている髙橋美貴氏。同氏の個展「肉と魂」では,10年ほど前から取り組んできた個人作品──鉛筆画や日本画などのアナログ作品群──に加え,「野狗子」のコンセプトデザインもあわせて展示されている。
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また,会場内には米山啓介氏によるフィギュアの展示も。たとえば「ニセハナマオウカマキリ野狗子」といった自ら原型を手がけた立体作品が並ぶなか,なかでも注目なのが「紐蟲」のフィギュア。これは今回の展示のために,なんと米山氏が“せっかくなので”という感じで持参したものだそうで,それには髙橋氏も驚かされたそうだ。
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再び「野狗子: Slitterhead」のコンセプトアート展に戻るが,個人的にぜひ注目してほしいのが会場の一角に設けられたフォトスポットだ。
展示のメインビジュアルにもなっている,愛鳴會のイメージをもとに作られたセットで,壁一面におどろおどろしく貼られたお札がかなりのインパクトを放っている。ここでは銀月と並んで“思い出の1枚”を撮れるのだが,実はこれ,ただの記念写真コーナーではない。
というのも,この空間の色味,劣化具合,貼られたお札の風合いまでもが丁寧に設計されており,インスタレーション作品のような捉え方もできる興味深い“アート”だ。ゲーム中では見える範囲が限られていたお札も,実は複数のバリエーションが用意されていたとのことで,それらの実物も今回の展示でじっくり観察できる。
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最後に,今回の展示に関わった3人のクリエイターから寄せられたメッセージを紹介しよう。
髙橋美貴氏
「SIREN」のころからそうなのですが,私は“ダークなもの”を誰かを怖がらせようとか驚かせようというより,単純に「美しい」「好きだ」と思って描いています。説明が難しいのですが,生物の肉体そのものの存在が神秘的で,ただそれだけで「すごいな」と感じてしまうんです。
一方で,そういった“肉体”と対になるような“スピリット”のような存在にも同じように惹かれるところがあります。どちらかだけではなく,その両方をモチーフとして描きながら,それらが溶け合ったような世界を表現したいという思いで,いつも作品を作っています。
今回の展示は,ゲームのコンセプトアート展と個人作品の個展がひとつの空間で開催されるという,これまであまりなかった形だと思っていて,私自身とても面白い取り組みだと感じています。「野狗子」の制作ではデジタル中心でしたが,個人作品では鉛筆画や日本画といったアナログ表現なので,その対比も含めて楽しんでいただけたらと思います。
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米山啓介氏
個人のアート作品とゲームのコンセプトアートが並ぶ,こうした貴重な展示イベントに参加できて,とてもありがたく思っています。声をかけていただきありがとうございますという気持ちです(笑)。
今回描き下ろした「オニダルマオコゼ野狗子」は,ゲームに登場するのはほんの一瞬で,設定画としても描き込めていないところがありました。でも「ちゃんと形にしておきたい」という気持ちがあって,今回の展示のお話をいただいたときにあらためて描くことができて,本当によかったなと思っています。
今回の展示には,これまでのイベントでは披露してこなかった新しい作品も含まれています。これまでのイベントに参加してくださった方にも,また新鮮な気持ちで楽しんでもらえるはずですし,そこからいろんなことを感じ取ってもらえたら嬉しいです。
外山圭一郎氏
Bokeh Game Studioとして大事にしているのは,「こういうのを作って」と誰かが一方的に指示を出すのではなく,それぞれのクリエイターが持っている面白さや個性を自由に出してもらうことです。社内外を問わず,ある意味“コラボレーション”的な感覚を大事にしていて,それがスタジオのカラーにもなっています。
今回の展示は,まさにいろんなクリエイターたちが自分の持ち味を出し合って生まれた“コラボの場”でもあると思っています。米山さんが製作した「紐蟲」のフィギュアも,そもそもお願いしたわけではなく「こういう展示なら,こんなものを作ってみました」と自主的に持ってきてくださったものですからね(笑)。こうしたイベントならではのコラボレーションの面白さが詰まった展示になっていると思うので,ぜひじっくりと味わってみてください。
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The Concept Art of Slitterhead
−『野狗子: Slitterhead』コンセプトアートとその世界−
髙橋美貴個展「肉と魂」
展示会期:7月12日(土)〜7月27日(日)
平日 12:00〜19:00(最終入場 18:30)/土日祝 12:00〜17:00(最終入場 16:30)会期中無休
入場料:当日券 1,000円(髙橋美貴個展も同時にご覧いただけます)
開催場所:ヴァニラ画廊 〒104-0061 東京都中央区銀座 8-10-7 東成ビル地下二階
ヴァニラ画廊公式サイト
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(C)2021 Bokeh Game Studio Inc.
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