インタビュー
[インタビュー]「リネージュ2」の海外企画チームリーダーに聞く,グローバルプロジェクト「SAMURAI CROW」に込められた思いとは?
現在のところリネージュ2は,日本,韓国,台湾,ロシア,ヨーロッパ,北米,南米の7つのエリアでサービスされている。従来のアップデートは,まず韓国で実装されたあと,各サービスエリア向けのローカライズが行われ順次実装するという流れだが,今回の大型アップデート「SAMURAI CROW」は全サービスエリアに,同一のアップデートが同時に実施されるというリネージュ2初の試みとなる。
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SAMURAI CROWは,サムライをモチーフにした新クラス「クロウ」や,新サーバー「クロウ」など見どころの多いアップデートだが,そもそもなぜそのような施策を取るに至っただろうか。
リネージュ2プレイヤーなら誰もが気になるところだろうが,先日開催された「リネージュ2 大感謝祭 -新たな伝説の始まり-」に参加していた,Lineage2 海外企画チームリーダーのキム・クンヨン氏に,イベントの開始前の短い時間ではあるが話を聞けたので,そのインタビューをお届けしよう。
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※収録は10月28日に実施されたオフラインイベントの直前となる。そのため,イベントで発表された内容も質問に入っている
4Gamer:
本日は,よろしくお願いします。さっそくですが,「グローバルプロジェクト」は,どういった経緯で企画されたのでしょうか。
キム氏:
リネージュ2が22周年,そして日本を含むグローバル地域でのサービスが21周年を迎えるにあたり,世界中のリネージュ2プレイヤーの皆さまに感動を届けられるようなサービスを提供したいと考えました。
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従来の「リネージュ2らしさ」を大切にしつつ,より多様な価値観を持つ,グローバルなお客様の共感を得るため,新しいコンセプトを取り入れました。その新しさがリネージュ2の世界に自然に溶け込むことを示したかったのです。
長年積み重ねてきた重厚な存在感,そして変化に挑むときの風のような柔軟さ,それが今回の挑戦を象徴する存在「クロウ」になります。
4Gamer:
挑戦とのことですが,グローバルプロジェクトや「クロウ」の開発には,大変な苦労を伴われたのでしょうか。
キム氏:
これまでの基本的なアップデートプロセスは,韓国で実装したものが3,4か月後に,ほかのサービス地域に実装されるものです。その間に,ローカライズや翻訳,そしてテストが実施されるのですが,今回はそれを,全地域同時にアップデートを行うということで,22年分の経験があまり生かせない部分もありました。
もちろん,あらかじめ対策もしっかりと考えていたのですが,それでもいろいろと大変でした。
なお,今回の同時アップデートの対象地域は,北米と南米,日本,台湾,ロシア,ヨーロッパとなり,国ごとにローカライズした部分はありますし,それぞれの国に合わせたプロセスがあります。それに対処しつつ,同時アップデートのための調整も行ったため,いままでの準備とは違う大変さがありました。
現在のモバイルサービスなどは,企画段階からグローバルサービスを想定して開発されているのですが,リネージュ2は歴史があるので,最初にそういった企画意図がありませんでした。いまのモバイルサービスなどと同じように同時アップデートするために,既存のプロセスを完全に新しくするための努力がありました。
4Gamer:
いつもより苦労があることは容易に察せられますね。
キム氏:
みんな大変で,今日も(韓国ではスタッフが)出社していまして。11月5日までがんばります(苦笑)。
4Gamer:
サーバーの「クロウ」は,今後も世界で同時にアップデートが行われるのでしょうか。
キム氏:
具体的な時期はちょっと言えませんが,しばらくは同時アップデートを目指して,韓国とほぼ同じタイミングでコンテンツが入ります。
11月のアップデート時点から,サービス地域別にランキングを競うイベントが実装されます。ゲーム内の仕様に差があると不公平さが出てしまうので,コンテンツアップデートの時期を合わせる必要があるんです。
それがひと段落したら,ゲーム内の状況や皆さんからのフィードバックを確認して,サービス地域ごとに一番合うサービスを提供したいと思います。
4Gamer:
クロウをイメージさせる日本風のエリアはリネージュ2にはありませんが,そういった新エリアが追加実装される予定はあるのでしょうか。
キム氏:
クロウの村や狩り場が新たに追加される予定です。
サムライというコンセプトは,一見するとリネージュ2の世界に異質なものに見えるかもしれません。しかしクロウの実装に踏み切ったのは,サムライの特徴を可能な限り忠実に再現し,それをリネージュ2の世界に自然に溶け込ませる自信があったからです。
また,日本の文化には世界中の人々が共感できる普遍的な魅力があると確信しています。そのため,クロウの村や城,桜などの風景も過度な再解釈はせず,できる限り日本らしい美しさを表現するよう努めました。
プレイヤーの皆さまにとって,目にも心にも残る情景として感じていただけたら幸いです。
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4Gamer:
「日本の文化には,世界中の人々が共感できる普遍的な魅力がある」とのことですが,それがグローバルプロジェクトでサムライをモチーフにしたクロウを開発した理由なのでしょうか。
キム氏:
今年の目標が,グローバルで同時実装,同時オープンを行って,皆さんに新しいリネージュ2を見せたいというのがありました。
そんな思いのなかで,海外に向けた新しさを考えることになり,日本のサムライというIPなら,どこの国や地域でも興味を持ってくれるのではないか,と企画しました。
アメリカやヨーロッパ,ロシアの担当者に話してみると良い反応が返ってきたので,サムライをモチーフに開発を進めることになりました。
4Gamer:
もしかして,忍者も候補に?
キム氏:
ええ,忍者も候補にありました。忍者とサムライのどちらがいいだろうかと開発内部で検討した結果,やっぱりサムライのほうが,よりかっこよく見せられるのではないか,ということになったんです。
開発メンバーには40代が多く,年代的に「SAMURAI SHODOWN(SAMURAI SPIRITS)」などのプレイ体験から,サムライに対していい思い出を持っていて,またプレイヤーさんも同年代が多いので,親しみがあって楽しめると思い,サムライを選択しました。
忍者については,すでにリネージュ2にはアサシンというクラスがあり,そちらと被ることもあったので見送ったという面もあります。
4Gamer:
開発スタッフから見たクロウのアピールポイントはどこでしょう。
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キム氏:
西洋風の世界観のリネージュ2に,サムライを違和感なく溶け込ませるため,また元となるサムライの文化を歪曲しないよう,リファレンスチェックも厳密に行っています。例えば,剣の振り方も専門家を招いてゲーム上のモーションに反映させ,本物のサムライっぽく仕上げました。
そのスタイリッシュさやスキルのかっこよさがアピールポイントかなと思います。
あと,韓国基準にはなるのですが,リネージュ2は大型アップデートが年に2,3回実施され,秋ごろの大型アップデートで実装されるキャラクターはオーバーパワーなキャラクターになると予想されています。
クロウは,その予想にたがわない性能とモーションを備えたクラスに仕上がっているので,ご期待ください。
4Gamer:
グローバルアップデートでは,新サーバー「クロウ」も同時に実装されます。このサーバーのコンセプトは何でしょうか。
また,現在サービス中のサーバーと共存,例えば日本ですとライブ,クラシック,アデン,エヴァの4つのサービスに,それぞれサーバーがありますが,そこにクロウサーバーが追加されるという形になるのでしょうか。
キム氏:
クロウサーバーは,基本的にはエヴァサーバーをベースとしています。しかし,独自の特徴を備えており,既存サービスとは一線を画す新たなサーバーとして展開されます。
ライブ,クラシック,アデン,エヴァといったさまざまなサーバーには,それぞれ独自の特徴があり,同時に私たち開発チームの試行錯誤と想いが込められた“遺産”でもあります。今回のクロウサーバーでは,プレイヤーのライフスタイルに合わせてプレイを調整しやすい環境を整備しました。
穏やかさと熱狂が共存する新サーバー「クロウ」で,プレイヤーの皆さまがより深くリネージュ2の魅力に没頭していただければ嬉しく思います。
そして,このサーバーが新たな「遺産」として記憶に残ることを願っています。日常の中で「早く仕事を終えて,リネージュ2にログインしたい」と思っていただけたなら,これ以上の喜びはありません。
4Gamer:
クロウサーバーは,新しいリネージュ2の形,もしくは今後のリネージュ2のひな型となるサーバーなのでしょうか。
キム氏:
韓国では,新クラスを実装するたびに新しいサーバーを追加しており,それもあってサーバーごとの仕様が少しずつ違います。そういった形で毎回新しいことを試みています。
今回(クロウサーバー)は,NON-PVPと集中タイムというコンセプトで,リネージュ2の新しい面をお見せしたいということもありますが,これが今後のリネージュ2の方向性という考えではありません。
例えばエヴァサービスは,日本ではNON-PVPですが,ほかのサービス地域ではNON-PVPではありません。結果的に日本の皆さんがエヴァサービスでのプレイを楽しんでいただけて,その判断は成功だったと考えています。
その実績をもとに,クロウサーバーはエヴァサービスをベースに,NON-PVPと集中タイムを加えた設計になっているんです。
4Gamer:
では,日本以外のサービス地域のクロウサーバーは,NON-PVPではないのでしょうか。
キム氏:
今回のクロウサーバーは,どのサービスエリアでもNON-PVPサーバーとなっています。
4Gamer:
エヴァサービス開始時に新井さん(リネージュ2 日本統括プロデューサー)にも聞いたのですが,世界的にNON-PVPの流れがあるのでしょうか。
キム氏:
開発チームは全地域のデータを見ているのですが,やはり国ごとにサーバー状況は違います。
PvPがしたいときもあれば,おとなしく狩りをしたいときもあるじゃないですか。そのときの気分によってプレイスタイルを,スイッチできるような環境を提供したいんです。
自動狩りが狩りのベースになってから,意図せずPvPが起きることもありますが,そういったストレスがなく,狩りなら狩り,PvPならPvPと自分やりたいことがちゃんとできる環境を作りたいと考えています。
4Gamer:
個人的に「フィールドでのPKも許容する,自由な冒険と殺伐が同居した世界」がリネージュ2の本質のように思っていました。一方,“リネージュ2の本質を体現する”サーバーだというクロウサーバーはNON-PVPでした。改めて,開発が考える“リネージュ2の本質”とは何でしょうか。
キム氏:
私たちは,リネージュ2の本質を「プレイヤー同士の関係が生み出す多様な物語」だと考えています。自由なPvPや激しい競争の物語も,平和や協力の物語も,すべてがプレイヤーの皆さまによって紡がれる大切なストーリーです。
クロウサーバーはご存じのとおり,全域をNON-PVPを基本としていますが,集中プレイタイムにはPvP設定が解除され,よりダイナミックな展開が生まれることもあります。今回はどのような物語が生まれるのか,私たち自身も楽しみにしています。
4Gamer:
ところで,“グローバルプロジェクト”を初めて聞いたときに「全サービス地域のプレイヤーが一堂に集まって遊べるようになるのか!」と勘違いしていたのですが,実際にそういうサービスやサーバーを実装する予定はありますか。
キム氏:
どこまでお答えしていいのか困るところですが……同じような反応があったことも聞いています。内部でもそれに対して検討はしているのですが,技術的なものなど,けっこう大きな壁を乗り越えないと難しいという結論です。なので,現在のところ予定はありません。
4Gamer:
分かりました。
キム氏:
でも,私たちのなかにも,やりたい気持ちはありますよ。
4Gamer:
もう1つ,グローバルプロジェクトについてですが,今回のプロジェクトはSAMURAI CROW単独のプロジェクトなのでしょうか。それともグローバルプロジェクトの第1弾という位置づけなのでしょうか。
キム氏:
SAMURAI CROWは初めての挑戦で,さまざまなプロセスの変更や,それに伴う準備などがたくさんありました。今回の試みが新しい楽しみを提供できるという確信はありますが,まだ実装前なので皆さんが「SAMURAI CROW」にどう反応するか分かりません。
いま懸念しているリスクをちゃんと回避でき,そして皆さんが「SAMURAI CROW」を楽しんで,そして喜んでもらえたのならば,第2弾,第3弾へと続く……かもしれません。まだ具体的な計画はないんですけどね。
4Gamer:
では,ほかのサービス地域をモチーフにした新クラスや新エリアの実装はまだまだ分からない,といった感じですか。
キム氏:
正直,サムライは皆さんのなかに共通のイメージがあると思うのですけど,この次に何をモチーフにすればいのかイメージが湧きません。
今回,日本以外の地域のスタッフからもクロウを楽しみにしているという言葉をいただけたのは,サムライという共通のイメージを持っていたから,つまりサムライというIPの素晴らしさ,強さだと思うんです。
それと同レベルで世界共通イメージを持つIPがあるかというと,いまのところ思い浮かばないというのが正直なところですね。
4Gamer:
今後のグローバルプロジェクトを含め,リネージュ2に期待している日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
キム氏:
グローバルプロジェクト「SAMURAI CROW」を通して,新たな挑戦に踏み出すことができました。その結果をもとに,今後はより多彩な方向性を模索していくことになると思います。これからもクロウのように,プレイヤーの皆さまのそばで確かな存在感を放ち,クロウのように柔軟に,新しい楽しみ方を探していきたいと思っています。今後ともリネージュ2をどうぞよろしくお願いいたします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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