
インタビュー
[インタビュー]「リアルバウト餓狼伝説2」のPC版がリリース。SNKの小田氏とロラン氏にその狙いや,当時の思い出話を聞いた
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「リアルバウト餓狼伝説2」は,1998年3月にアーケードで稼働開始した対戦格闘ゲームで,「リアルバウト餓狼伝説」シリーズの最終作にあたる作品だ。洗練された対戦バランスや対戦間のテンポの良さが評価され,いまでも根強いファンがいるタイトルでもある。
今回,発表前にエグゼクティブプロデューサーの小田泰之氏とレトロ部 マネージャーのロラン氏に話を聞く機会を得た。移植に対する思いや,当時を知る小田氏の思い出話など,いろいろと聞いてきたので,ぜひ読み進めてほしい。
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4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。TGS 2025で「リアルバウト餓狼伝説2」(以下,RB2)のPC移植が発表されるとのことですが,このタイトルに決まった理由を聞かせてください。
ロラン氏:
「リアルバウト餓狼伝説」シリーズはいくつかの作品が出ていますが,RB2はシリーズの最新作であり,完成度や試合のテンポの早さも高く評価されており,それらの理由から今回の移植が決まりました。
4Gamer:
RB2の試合のテンポの早さといえば,当時アーケードの回転率を重視したのでは? という話も聞いたことがあるのですが,それは正しい情報だったのでしょうか。
小田氏:
はっきりとそうですと言えるわけではないのですが,当時同じ格闘ゲームでバーチャファイターシリーズも流行していて,回転率が高かったんですよ。ほかにもゲームセンターだとUFOキャッチャーも同じく高かった。そんな環境だったこともあり,多少は意識していた部分があったといったところです。
あとRB2ってものすごく開発期間が短かったんですよ。半年くらいだった記憶があります。
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4Gamer:
新作格闘ゲームを半年でというのはなかなか大変そうな。
小田氏:
そういう事情もあり,あまり変化を与えられないということもあって,それであればプレイヤーがテンポよく遊べる,対戦というメインディッシュを延々と食べ続けられる仕様に傾倒していったんだと思います。
4Gamer:
格闘ゲームって試合間のテンポとかもすごく大事ですよね。負けた側はすぐに連戦したくなるといいますか。
小田氏:
実際,テンポをよくしたことで当時のロケテストは,すさまじいインカムを叩き出したんですよ。ロケテストって長蛇の列ができるのがふつうですが,そんなに待たなくても遊べましたし。
KOFとはガラッと違う感じでしたね。KOFシリーズは1試合が比較的長くなるタイプの格闘ゲームなので。
4Gamer:
KOFは1プレイで3人使って遊べるというのも魅力でしたし,ほかの格闘ゲームよりも長く遊べる印象もありました。
小田氏:
KOFは駄菓子屋などに設置された屋外筐体で遊んでいる人が多くいましたよね。実際プレイヤーの年齢層も想定より低かったんですよ。小学生くらいの子どもがたくさん遊んでくれて。そんな子たちが集まって,持ちキャラを1人ずつ使って遊ぶみたいなこともしてくれていました。
4Gamer:
「リアルバウト餓狼伝説」シリーズですが,初代(以下,RB1)も人気の高い作品ですよね。RB1のPC移植は予定にないのでしょうか。
ロラン氏:
そうですね。今回の移植からプレイヤーからそういう声が多く聞こえてきたら検討すると思います。現状はそういう話がまだ我々のところまで届いていないので,期待するファンの方はぜひ声を上げていただきたいと考えています。
4Gamer:
昨年には「SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS」がPCに移植されて,そして今回がRB2と往年の名作の移植が進められています。その狙いを聞かせてください。
ロラン氏:
SNKは過去にさまざまな名作と呼ばれる格闘ゲームを世に出してきました。それらの作品を最新のプラットフォーム向けにリリースすることで,より多くの人に遊んでもらいたい。そんな思いがあります。
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4Gamer:
過去の名作を復刻という話ですと,例えば他社さんがやっているコレクションタイトルにまとめて,といったような形での販売は検討していないのでしょうか。
ロラン氏:
個人的な意見になってしまうのですが,私としては提供したいタイトルにより時間を掛けて,プレイヤーが喜んでくれるような要素を追加して提供したいと考えています。どちらが正解というわけでもないと思うのですが。
4Gamer:
追加要素の話が出ましたが,RB2での新要素の話を聞かせてください。
ロラン氏:
まずプレイヤーがもっとも重視するであろうネット対戦周りで,ロールバックネットコードによるオンライン対戦を実現しています。そしてプレイヤーが集まって遊びやすい大会モードも用意しています。こちらはシングルイリミ(勝ち抜き方式),ダブルイリミ(敗者復活方式),あとはリーグ戦のものもあります。
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4Gamer:
とくに海外で対戦するならロールバックネットコードでないと難しいとはよく聞きます。
ロラン氏:
ええ。ほかにも作品のファンが喜ぶものとして,楽曲を楽しめるジュークボックスやイラストなどの資料を楽しめるギャラリーも用意しています。
あとはプラクティスモードも強化していて,ヒットボックスの表示機能や,ダミーキャラクターに特定の技を繰り出させる設定を追加しました。プレイヤーがより良い練習をできるモードになっています。
4Gamer:
もともとCPU専用の隠しボスだったアルフレッドも登場するんですよね。
ロラン氏:
はい。ただ,ライン移動のモーションがなくてですね,ライン移動しても戻るときに何もできないんですよ。通常技と必殺技は強く作られているので,ちょっと違う遊び方を楽しめるキャラクターと捉えてもらえればと思います。
4Gamer:
もともとプレイアブルとして作る予定はなかったということなんですね。話がちょっと変わりますが,当時を知る小田さんの思い出や面白エピソードなどはありますでしょうか。
小田氏:
RB2って1998年発売とかでしたよね。まだ当時は私も周りのスタッフも若かったです。だからみんなで会社に泊まり込んで作ったことを覚えています(笑)。開発期間が半年もなかったくらいなので,それこそ会社に泊まれば3倍働けるなって。
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4Gamer:
当時の格闘ゲームってけっこう延期をするタイトルも多かったですが,RB2のときはそんな話は出なかったのでしょうか。
小田氏:
RB2は期間から逆算して内容を絞ったので延期の話はなかったですね。キャラクターの追加も2人だけでしたし。
それでもステージはすべて全部新規で用意して,けっこうがんばりましたね。これは小ネタなんですが,ステージって上部のほうまでいくと描画されていなくてですね。特定のステージで上部にカメラが移動する技を当てると見切れる場所があった覚えがあります。製品版リリース後に気が付いて,直せなかったんですよね。
4Gamer:
探してみるのも面白そうです。先ほど若い頃は会社に泊まり込むくらい働いていたという話がありましたが,SNKといえばいろいろなタイトルを同時に作っていましたよね。小田さんは同時にいくつかのラインに関わっていたとかそういうことはありましたか。
小田氏:
いえ,並行で違うプロジェクトに関わる人はほとんどいませんでした。もちろん,担当するプロジェクトが終わったら別のところに手伝いにいくなんてことはありましたが。
4Gamer:
ところで,RB2の開発期間が半年と短かったという話ですが,これはなにか理由があったのでしょうか。
小田氏:
そう聞かれるとちょっと覚えていませんね。ただRB1も短くてですね。これはすごく明確で,その前の「餓狼伝説3」がビジネス的な観点では失敗に終わってしまったんですよ。なので急いで取り戻さないと,ということでRB1の開発が短期間で行われたのです。
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4Gamer:
そんな事情があったんですね。
小田氏:
あとはアルフレッドについて,「リアルバウト餓狼伝説スペシャル ドミネイテッドマインド」の主人公としてプレイアブルになるんですが,実はドミネイテッドマインドのほうが先に完成していて,発売はあとになることが分かっていたんですね。
4Gamer:
ドミネイテッドマインドが6月発売で,RB2が3月に稼働しています。
小田氏:
そうなんですよ。だからRB2で先に顔見せしようということになって,急遽出すことが決まったんですよ。ライン移動については,ドミネイテッドマインドにライン移動がないのでできないというわけです。
4Gamer:
ライン移動を追加しようという話にはならなかったんですね。
小田氏:
ええ。あまりにも時間がなくてですね。それでもプレイアブルじゃなければなんとでもなるかということで実装されたんです。
4Gamer:
いろいろとお話を聞かせてもらいありがとうございます。それでは最後にシリーズのファンや読者にメッセージをいただけますでしょうか。
ロラン氏:
今回RB2を完全版といえる形でリリースしまして,多くの方にぜひ遊んでほしいと思っています。私も昔からこのタイトルをプレイヤーとして遊んでいまして,間違いなく名作だと感じています。オンライン周りやプラクティスの改良など,プレイヤーができるだけ長い時間遊べるよう調整を加えていますので,ぜひ長く楽しんでください。
小田氏:
RB2は古い作品ではありますが,今でも楽しめる内容になっています。今回オンライン対戦が遊びやすくなっていますので,SNKとしてもこのタイトルを使った大会なども開きたいと考えています。ぜひ一度遊んでみてください。
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- 関連タイトル:
リアルバウト餓狼伝説2 〜THE NEWCOMERS〜
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