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【山本一郎】お前らとSwitch2の転売ヤーを巡る業界の話
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印刷2025/06/17 07:30

業界動向

【山本一郎】お前らとSwitch2の転売ヤーを巡る業界の話

 ある程度想像はしていたものの,なかなか大変なことになっていた(いる)Switch2。世界で販売台数が350万台突破ですってよ奥さん。すげーな。

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「Nintendo Switch 2」発売後4日間で350万台販売。任天堂のゲーム専用機の発売後4日間の世界販売台数として過去最高

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 任天堂は本日(2025年6月11日),「Nintendo Switch 2」について,発売日の6月5日から6月8日までの全世界累計販売台数が350万台を突破したと発表した。これは,任天堂のゲーム専用機の発売後4日間の世界販売台数として,過去最高だという。

[2025/06/11 11:52]

 でも,ワイも欲しいのにちっとも当たらないんですよね。お前らも抽選申し込んで無事外れてますか?
 みんなが欲しいから仕方ないよなとは思うわけですが,抽選に当たった弊社社員たちが喜びの声をSNSで書いたら「転売しませんか」とかいう買取DMがたくさん舞い込むようになりました。そっちに売るぐらいならワイに寄越せ。
 まぁそういう心の声はともかく,いまのゲーム業界のセールス事情と転売ヤー問題について,事業面と法務面をお前らでも分かりやすいように整理して並べてみたから,正座して読め。


混乱の発売初日と転売市場の実態


 事の発端は2025年6月5日,任天堂の新型ゲーム機Nintendo Switch 2が発売され,大人気になっていることそのものです。
 世界累計1億5000万台を誇る前作の後継機として注目を集めたSwitch2ですからまあ当然ちゃあ当然ですが,発売と同時にさっそく転売問題が表面化することになったわけです。

6月13日にメルカリを見たところ,まだまだ多くの「Nintendo Switch 2」が出回っている。
画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / 【山本一郎】お前らとSwitch2の転売ヤーを巡る業界の話
 任天堂による,かなり力の入った事前の転売対策にもかかわらず,メルカリなどのフリマアプリでは,定価4万9980円のSwitch2が,6〜7万円という高値で大量出品される事態となってしまったのであります。
 しかしここで興味深いのは,発売前には10万円を超える価格設定も見られたが,実際の発売日には7〜8万円程度への「値崩れ」が発生したことです。
 まあ,あまりに高値の転売については,メルカリやその他事業者も“この転売野郎どもめ”としてせっせと削除していたようですが,転売業者の予想を上回るフリマでの出品量と,どうしてもSwitch2欲しい勢も,さすがに泥棒市みたいなところで人気商品を手に入れることへのリスクが広まってきたことを示しているとも言えます。良かったね。
 SNS上では「転売ヤーざまあ」といった声が多く聞かれ,転売行為への社会的な反感が改めて浮き彫りとなりました。めでたしめでたし。


エスカレートする転売手法と問題行為


 ……とは収まらないのが,転売ヤーを巡るネット商取引の修羅の現場でありまして,Switch2の転売を巡っては,従来の単純な高額転売を超えた悪質な手法も散見されております。
 まず,先にも書きましたようにすでに抽選で当たったとネットで書いている人に直接コンタクトを取り,野良業者が「売ってくれ」というDMを山のように送る事態が発生しています。
 基本的にSwitch2購入の抽選に当たったことをSNSに書かなければ何事も起きないわけですから無風な人は無風ですが,喜びの声を挙げた人へ手あたり次第に送っているのか,同じ業者から何度もメッセージが来る人もいるようです。

 よく知られているように,任天堂は抽選販売の応募条件として,Switchソフトのプレイ時間が50時間以上やNintendo Switch Onlineへの累積1年以上の加入を設定しているわけですが,そういうアカウントにさえも「当たってたら売ってくれ」と連絡をする人がいると聞こえてきています。転売ヤー,仕事熱心過ぎるやろ。

プレイ時間が50時間未満の場合はこうして断られ,マイニンテンドーストアからは応募不可となっていた
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Nintendo Switch 2,抽選販売の応募にはプレイ時間50時間以上などの条件クリアが必要に。詳細は4月4日以降発表

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 任天堂は本日(2025年4月2日),6月5日に発売を予定している「Nintendo Switch 2」の抽選販売を,マイニンテンドーストアにて行うと発表した。応募には「2025年2月28日時点で,Nintendo Switchソフトのプレイ時間が50時間以上であること」などの条件達成が必要だ。

[2025/04/02 23:32]

 しかし深刻なのは,実際に抽選に当選したユーザーに対して直接DMを送って買取を持ちかける行為は実質的に,抽選に当たった人が転売ヤーに個人情報を開示したり,転売ヤーとの物品のやり取りや金銭の授受が起きてしまっているわけで,犯罪に巻き込まれる恐れがあることです。
 これは,当選者の個人情報を何らかの方法で入手し,組織的にアプローチしている可能性があり,プライバシー侵害の観点からも問題が大きいわけです。

 常識で考えてほしいのですが,Switch2抽選で当たった喜びの声を挙げている人の声をSNSで見て買取のDMを送る人なんて「そのYOUの仕入れ代金はどこから?」という話になるわけで,そもそも組織的な転売をやる人たちというのはまともな連中ではない,というのは頭に入れておいてよいと思うんですよ。

という話を聞くと,4Gamerが掲載している「開封の儀」の記事写真にも,ウォーターマークを入れたほうがよいのかも?と考えてしまう
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 最近見た最も悪質なケースとしては,精巧に作られたSwitch2の段ボール箱を使用し,あたかも実物の商品があるかのように見せかけて高値で出品し,実際には後から市中で購入した商品を発送するという詐欺まがいの手法も報告されている点です。
 「ない商品」をあると偽って売ってカネを取るのは,たとえ後日に本物を送ったとしても違法と言えます。で,それなりの割合でカネだけ取ってアカウントごとバックレる事件に遭遇することになります。

 当初は,段ボールとか作ってる会社や流通に関わる会社が横流ししたんじゃないかと言われていましたが,調べていくとどうも任天堂公式のように見えるそれっぽい偽物の段ボールを作ってサムネイルにする手口のようです。これは明らかに詐欺ですね。

 メルカリなどのフリマアプリ側も監視しているようですが,こんなの真贋なんて分かりっこないのでおとなしくSwitch2関係は出品させないというビジネス判断をしてくれれば良かったんじゃないかと思うんですよ。備蓄米の件みたいに。
 まさかメルカリも,詐欺の片棒を担ぎたいだなんて思ってないでしょうし,ええ。


転売行為の法的・倫理的位置づけ


 で,よく知られていることですが,基本的に転売行為そのものは直接的に違法であるとは言えません。転売ヤー自体は,ほとんどの商品の売買では合法なんですよ。
 憲法で認められた営業の自由の範疇であるし,協力するのも自らの財産権を行使しているだけだと言われれば,まあそうかなと思います。
 しかし,その手法や社会への影響を考慮すると,問題行為として広く認識されているのも事実で,後述のように既存法でも対策が進み,いずれ対策法が策定される可能性はそれなりに高いんじゃないかと思っています。

 これは単純な話で,「誰もが水を買える状況で安く仕入れて高く売る」ことは商才だが,「川の上流で水を堰き止めて水が手に入りづらい状況を作り出してから水を高く売る」のは適切な商売とは言えないということです。
 いわば,テクノロジー全盛のこのご時世に,江戸元禄時代の材木問屋の談合2.0みたいなことをやってるのは,さすがに問題だろうと思うわけです。

6月5日,東京駅の某量販店の開店前。すべてが予約販売のためか,閑散とした雰囲気
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 Switch2の転売問題は,人為的な品薄状態を利用して正規流通価格よりも高い値段で売りさばくことで利益を得ようとする行為と言えます。
 なので前述の通り,SNSで当たった人に買取DMの仕入れをやったり,偽造の箱のサムネイルを掲げて出品してカラ在庫販売を行ったり,そしてこのあと一般店舗でも広く売られ始めたら需要がある限りバイトに行列させて普通の購入希望の罪なきプレイヤーを押しのけて仕入れようとすることでしょう。
 家電量販店の新春特売や福袋の大量購入で,外国人や闇バイト大集結みたいなものはいい加減排除しましょうよというのが本丸と言えましょうか。

 他方で,購入したSwitch2は所有者の財産権の範疇にあり,入手した人がどのように処分しても構わないという側面も存在するんですが,これは単にハード単体の所有権(財産権)のことを言ってるわけで,微妙なんですよ。この矛盾が転売問題の複雑さを物語っているんですよね。


ハードよりソフトが重要なビジネスモデル


任天堂ゲーム専用機販売実績(株主・投資家向け情報から)
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 Switch2の転売問題を理解するには,任天堂に限らずコンテンツとプラットフォーム事業のビジネスモデルを把握する必要があります。
 これが理解できないといろいろ厳しいので,まぁ我慢して読め。

 まず,ゲーム機は,ハード単体で大きな利益を上げることよりも,多くのユーザーにゲームを遊んでもらうことを重視する「レーザーブレード型」(編注:その名のとおり「カミソリと刃」の意味です)のビジネスモデルを採用しています。
 当たり前ですが,ハードだけあってゲームソフトがないと遊べないんですから,大原則としてゲーム機を「手に取りやすい価格」で「多くの人に行き渡らせる」必要があります。
 今回,任天堂は出だしから350万台以上を世界で売っているわけですから,その点では大成功と言えます。ただ,ハードで凄い利益を出したいのではなく,そのハードが立ち上げから多く稼働してくれることの方が大事だ,という話になるのです。

 iPhoneのようなスマホだと,それ単体で利益を出す必要があるので高い性能のものは高く売る前提でして,日本では俺たちの総務省が電話会社による改選契約との抱き合わせを実質禁止したので,スマホの最新機種は(以前に比べて)泣くほど高価なものになってしまいました。

 「ハードでは利益を出す必要がない」という仕組み自体は古くからあるビジネスモデルで,オフィスのファックスと感熱紙,コピー機とコピー用紙やトナー,プリンターとインクの関係……などと同様です。
 本体は,利益を抑えてでもとにかく広く普及させ,継続的に購入される消耗品やソフトウェア,サービスなどで収益を確保する構造です。デファクトスタンダードが取れなければ,どんなに高性能でもβはVHSに負けるのです(死語)。
 そのため,任天堂にとってSwitch2は,できるだけ多くのユーザーに適切な価格で行き渡らせたい商品である,と言えるのです。


子どもファーストの思想と転売問題


任天堂から保護者のみなさまへ」より
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 そんなわけで最新のiPhoneとSwitch2の大きな違いは,Switch2が本質的には「玩具」であるという点にあります。
 主たるユーザーは子どもであり,任天堂としては,子どもの手に安価で適切な手段でゲーム機が行き渡ることを望んでいるわけですよ。兄弟がいたら,一個ずつ買ってWi-Fiでつないで遊んでね,って。
 で,年収2000万円の人が10万円近くを出してSwitch2を買うよりも,毎月のお小遣い2000円の子どもが,勉強とかお手伝いとか色々頑張ってSwitch2を手に入れて,何か月も溜めたお小遣いでソフトを買って,思春期や人生を通じてゲームを遊んでくれることを求めているわけです。

 もし「払える人にはもっと払ってもらえるように」と考えるのであれば,いまスポーツ観戦などで行われているダイナミック・プライシングという疑似入札のような時価販売も,やろうと思えばできるのです。ディズニーランドのプライオリティパスとかさ。

 でも,俺たちの任天堂はそれをしない。なぜかと言えば,大人にとっての4万円ははした金かもしれないが,子どもにとっての4万円は非常に非常に貴重なものだからです。
 そして,いい歳したジジイがゲーム機を手に入れて新たな体験を得たところで,そのジジイはプレイヤーとしてせいぜい15年ぐらいで,ハード一台当たりのゲーム装着率も年2本台で終わるのに対し,子どもたちがゲームをする場合は文化そのものを愛し,50年以上ゲームと共に暮らす人生を送ってくれる。そう,任天堂とね。
 ここには,「ハードを通じて体験を売る」というビジネス哲学が存在しているわけで,任天堂は首尾一貫して子どもが遊ぶ「玩具」を売り,ゲームによる体験を提供している事業領域だという話になります。


エンターテインメント業界のダイナミックプライシングの弊害


 ライブチケットやスポーツ観戦で「ダイナミックプライシング」が一般化しているのは,いまいるお客様から一円でも多く取ろうという話にほかなりません。
 特に野球や格闘技などプロスポーツでは,需要に応じて価格を変動させ,支払える人には高値でチケットを販売し,一般層には配信などで安価にコンテンツを提供するという仕組みが一般化しています。
 しかしながらこのやり方は,所得の低い人や働いていない小中学生は,市場から排除されてしまいます。
 高い金を払える人だけがライブに来て良い体験をするわけですが,10年後にはその世代と共にサービスが高齢化し,若い人が寄り付かない「オワコン」となるリスクが大いにあります。

※昨年末に話題になっていた日経エンターテイメント!の「推し活マップ」から,支援層の年齢が見える

 実際,ライブに来てもらってグッズで回収するスタイルで伸びてきた音楽業界において,最近急に下落に転じる有力アーティストが続発し始めたのは,一気にチケット代金を引き上げてファンから資金を吸い上げ過ぎた結果,同じ値段で次に行く意欲のなくなったファンを量産してしまって,そのお客様が生涯に渡って支払うおカネ(LTV)が干上がる現象を起こしているからです。
 少ない可処分所得の多くを娯楽・文化に支出する中学生・高校生から支持を得られないアーティストは,そう遠くない将来,そのジャンルを好む勤労者や中高年ごと歳を取っていき,飽きられや結婚・就職・出産などのライフイベントごとに客が減ってオワコンになっていくのであります。

 任天堂がSwitch2で採用している抽選販売は,「なるだけちゃんとゲームを遊んでいるプレイヤーに,若年層も手が届くように売りたい」という意味であると思われ,このようなダイナミックプライシングの弊害をよく理解しているのでしょう。


デジタル権利管理とゲーム業界の変遷


 そしてゲームソフトは,著作権で保護されたコンテンツの筆頭です。かつての中古ゲーム騒動のように,遊び終わったゲームがパッケージごと中古市場に流れると,ゲーム会社には一つのパッケージ販売で複数のプレイヤーが遊ぶことになり,海賊版と同様の問題が生じることになってしまいます。
 中古ゲームの流通は本来的に正規版のコンテンツを買わない消費者にゲーム体験を与えるという点で,海賊版と同義の問題と言えます。

※「合法」という判断がなされた中古ゲーム訴訟は,売り切りパッケージ販売の頃の話であって,アップデートやオンラインプレイ権が確立している現在となっては,同一性保持の観点から原則違法と判断されている。

 そのため,DRM(デジタル権利管理)とオンライン配信の発展とともに,ハードウェアと切り離してプレイヤーに対してゲームの利用権を販売(または貸与)する方向へとシフトしてきました。
 オンラインゲームやソーシャルゲームなどは,サービス運営中の期間だけアイテムやID,キャラクターを貸与し,サ終になってもユーザーに財産権を行使させない前提で運営しているのが典型です。
 ただ,携帯型ゲーム機でそれをそのまま援用することはできませんので,DRMなどでコンテンツの複製防止だけでなく販売(または貸与)したユーザーそのものを管理することにより,中古販売による収益の流出を防ぎ,より安定したビジネスモデルを構築できるようになったわけです。

 任天堂に限らず,携帯ゲーム機というハード(編注:Switchは「持ち運べる据え置き機」ですが)の売買は財産権の行使だから,中古で出回ることはあっても,そこで遊ぶゲームは「元の所有者との契約で,そのハードで遊ぶことを前提にゲームを遊ぶ権利を貸与しているに過ぎない」ことになる場合も多いわけです。
 そうなると,ハードがあってもそこに入っているソフトウェアやゲームを遊ぶことはできない仕組みになります。ゲームを遊びたいのであれば,きちんと個人と会社の間でライセンスを得てダウンロードして遊んでくださいとなるわけで,ここでも転売ヤーは「いないほうが良い存在」として扱われることになります。

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 他方,電子書籍業界では運営会社の倒産とともにサービスが終了し,消費者が購入したはずの電子書籍が消滅する問題も発生しています。
 あらかじめサ終という“世界の終わり”が分かっててプレイするソーシャルゲームと異なり,電子書籍なんてものは紙の本がデジタルになったぐらいにしか思っていないユーザーも多いのですから,本来は大きな消費者問題となるべきですが,運営会社が倒産してしまえば補償の手段もありません。
 コンテンツのデジタル化には利便性と同時に,このようなリスクも存在していることは指摘されるべきだと思うんですよ,マジで。

 したがって,コンテンツ業界とDRMは非常に重要な関係を結んでおり,それは利用者個人に紐づけられるようになります。
 ただし,アメリカではCOPPA(児童オンラインプライバシー保護法)で13歳未満の子供のオンライン情報保護が義務付けられています。
 欧州でも16歳以下の子どもに関する情報の取り扱いは制限されており,オーストラリアにいたっては16歳以下の子どもはSNSの利用が禁じられる状況になっています。
 なので,おそらくはアカウントの稼働状況で抽選資格を決めてるんじゃないかと思うんですよね。


海賊版対策とユーザー管理の重要性


 そして,前代のSwitchも世界的な海賊版の脅威に晒され続けています。
 任天堂に限らず,各ゲーム会社やSteamを運営するValve社などプラットフォーム各社も,みんな鉢巻締めていたちごっこのような対策を続けていますが,結局はユーザーIDを適切に管理し,誰に何を販売したかを把握して,買っていただいた指定したハードでのみ起動できるようにビジネスを転換する以外に根本的な解決策は見当たらないんです。

 繰り返しになりますが,売っているのはハードでもゲームパッケージでもなく,ゲーム体験ですから,ちゃんとお金を払ってくれた人その人にプレイしてもらいたいわけです。

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 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は,改造した「Nintendo Switch」を販売していた,茨城県龍ケ崎市の運送業男性(58歳)を,高知警察(生活安全企画課,サイバー犯罪対策課,高知東署)が2025年1月15日に商標法違反の疑いで逮捕したことを報告した。

[2025/01/16 15:25]

 このような市場環境の中でSwitch2は,玩具としてのゲームを,いかに安心して適切な価格で子どもに届けるかを考慮して設計されているし,随所に,そうしたいという思想を見ることができます。
 それもあって,過渡期的な状況でも商品を作り出し,流通を統制し,コンテンツを安全に使えるかを考えて転売対策も行っているのです。


転売問題の本質と今後の対策


 今回のSwitch2転売問題で改めて浮き彫りになったのは,転売業者が人気商品にあやかって不当な利益を得ようとする存在に過ぎないということです。

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 これは健全な資本主義でも市場経済でもなく,単なる無法地帯であって,転売を支持する人は「それは業界側の都合に過ぎない」とか「違法ではない」と言うかもしれませんが,転売を統制すること自体もなんら違法ではなくお願いベースに過ぎません。
 それでも悪質ならライブチケットのように法律を作って国内は処理するし,海外では,同じく地続きで著作権法上の問題である海賊版サイトやイメージを配布するサイトの運営者ごと摘発するという段取りになっていきます。

 品薄状態でのハードの転売による問題も海賊版対策も,ゲーム業界とテクノロジーとインターネットの関係でビジネス全体をどう守っていくか,将来をどう構想するかという多くの問いと答えが詰まっているのだと言えましょう。
 偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)を締結している国なら,即座に槍持って伺いますし,域外適用のある国に支社を作って批准していない国にも突撃する蛮族もいるので注意が必要です。

外務省:偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)


 しかし,製薬会社と大手薬局チェーンの価格統制を巡る論争のように,流通の統制は公正取引・独禁行政の観点から慎重に扱われる必要があります。あくまで対策したいのは詐欺まがいの転売なのであって,不正競争で誰かをいきなり排除したいというわけではないんですよ。
 それもあって,よほどの実経済への弊害がない限り,転売行為を積極的に摘発することは困難で,営業の自由の範疇で温存せざるを得ないのが現状ではあります。


知的財産保護の新たな枠組みの必要性


 今後,ゲームなど知的財産に関するものについては,ライブチケット販売で転売サイトやダフ屋が摘発されたように,別途法律を制定して転売業者を排除する仕組みを構築することが望ましいかもしれません。

 最近では変な売買をしているフレンズがいたら片っ端から見つけてくるサーベイランス専用のAIなども各社開発しているようですし,ある程度ちゃんとやりたいとなったら,業界横断で仕組みを共有化しつつ,適切にコンテンツ取引ができる市場環境を作るほかないのでしょう。
 Switch2が開いたゲームハードのビジネスが抱える次なる課題・ハードルは,この辺になっていくんじゃないのかなあと思う次第です。

 言いたいことは他にもいっぱいありますが,今日はこの辺にしておいてやる。

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[2025/06/06 12:00]

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