「伏見ガクエスト 〜伝説の調理器具（ピース）を求めて〜」レポート。個性豊かなゲストと挑む冒険譚，アクターとの一体感に包まれた一夜

　2025年6月21日，愛知県芸術劇場 大ホールにて，VTuber / バーチャルライバーグループ「にじさんじ」に所属する伏見ガクさんのソロイベント「伏見ガクエスト 〜伝説の調理器具（ピース）を求めて〜」が開催された。本稿では，歌唱や演出で観客を魅了し，大盛況のうちに幕を閉じたイベントの様子をレポートする。

　なお，本イベントの配信視聴チケットは7月7日23：59まで購入可能だ。視聴期間は7月8日23：59までとなっている。以下，イベント内容のネタバレを含むため，これから視聴予定の人は注意してほしい。

「伏見ガクエスト 〜伝説の調理器具（ピース）を求めて〜」公式サイト

　2018年3月にデビューした伏見さんは，デビュー当初より定期的な朝配信を行っていたり，パチンコが趣味だったりと，個性的な一面でも知られているライバーだ。リアルイベントへの出演経験もある彼の初となるソロイベントがどのような内容になるのか，筆者も前々から楽しみにしていた。

　なお，本イベントの前日譚となる動画が「にじさんじ」公式YouTubeで公開されているので，まだ観ていない人はぜひチェックしてほしい。ジサンジ国の宮廷料理人「伏見ガク」が“伝説の調理器具（ピース）”を手に入れる冒険へ出るために，仲間を探す過程が描かれている。


　開演時間になると，スクリーンにゲーム画面が投影され，ついに冒険がスタート！　まずはRPGでおなじみの「名前入力」画面が表示され，「ガク」と打ち込まれると，ステージにはマント姿の伏見さんや仲間たちが登壇した。

　スクリーンには，ゲーム風にデザインされた仲間たちのアバターが王様の前に整列する場面も映し出され，現実と映像がリンクした演出に，観客の期待も高まっていく。

　「それじゃあ皆，旅に出発しようぜ！」と伏見さんが声をかけると，客席からも「おぉ〜！」という歓声が上がり，序盤から会場は大きな一体感に包まれていた。

左から宇佐美リトさん，社 築さん，伏見ガクさん，剣持刀也さん，ましろ爻さん

　そんな彼が最初に披露したのは，「V.I.P」（シドカバー）。エンタメWebマガジン「ANYCOLOR MAGAZINE」のインタビュー（リンク）でも“冒険に対する思いを込めて歌う”と語っていた楽曲であり，そのワクワク感や期待が，アクター（ファンの名称）にも存分に伝わったのではないだろうか。


　5人が広原へ出ると，北見遊征さん（ナレーション出演）による序章動画のおさらいが行われた。本イベントは，冒険をしながら敵を倒したり，ときにはパーティメンバーと歌ったりする活劇ファンタジーだが，突如出現したモンスターによって，5人は別々の場所へと飛ばされてしまう。

　劇中では「爆発オチなんてサイテー！」といった，とあるゲーム作品のバッドエンド救済コーナーを彷彿とさせるフレーズも飛び出し，コミカルな一面も垣間見える展開が印象的だった。

　伏見さんは，喋るお玉「レードル4世」とともに仲間を探しながら，お宝ゲットのカギとなる「グルメの石」を5つ集めることに。たどり着いた港町には，グルメの石の1つ「イタリアンの石」があるそうだが，こちらは町にいるマフィアが持っているらしい。

　「僕に任せな！」と物怖じせずに立ち向かう伏見さんの前に現れたのは，剣士の剣持刀也さん。無事に合流した2人は，マフィアのアジトへと向かっていった。


　マフィアを倒すには，用意された試練（ゲーム）をクリアすることが条件となっている。挑戦するのは「以心伝心！シンクロクイズ！」で，出題される問題の回答が2人で一致すれば成功というルールだ。“咎人”としてコラボ配信を重ねてきた，長年の付き合いがある2人だけに，筆者もクリアへの期待は自然と高まった。


　最初の質問「名古屋に来たら，やっぱりこれ！というものは何？」では，ともに「味噌カツ」と回答し，序盤から絆の強さを見せつけた2人。続く「ゲームをプレイするうえで欠かせないものは何？」では，「プレイ時間」（伏見さん）「充電」（剣持さん）と答え，伏見さんの配信者らしい一面も垣間見えた。

　その後も，「今日食べたごはん，何がいちばんおいしかった？」「伏見ガクの好きなところはどこ？」といった質問が続き，見事チャレンジをクリア。マフィアの討伐にも成功していた。

　イタリアンの石を手に入れた2人は，気合の入る楽曲「桃源郷エイリアン」（serial TV dramaカバー）を披露。これまでに「大不正解」「DAY×DAY」と，同一作品の主題歌をカバーしてきた2人の好みも感じられるステージとなっていた。


　続いて山岳地帯へやってきた2人は，武闘家の宇佐美リトさんとともに，頂上にいるドラゴンの討伐に挑む。ドラゴン討伐のための試練「仲間を信じろ！パワーダービー」では，挑戦者1名の記録を残り2名が予想し，その予想よりも良い数値を出せばクリアというルールが設定されていた。

　今回は，剣持さんが四足歩行ダッシュ，伏見さんが握力測定，宇佐美さんが重りスクワットに挑戦する。なかでも伏見さんは，予想50に対し「54」という高記録を叩き出し，客席からも驚きの声が上がっていた。


　試練を乗り越えてドラゴンを倒した3人は，「中華の石」を無事に入手する。「世界を救えるようなアツい曲，歌わないっすか？」という言葉をきっかけに，伏見さん＆宇佐美さんが披露したのは「UNION」（OxTカバー）。宇佐美さんにとっては3Dでの初デュエットとなるこの曲は，聴いているだけで勇気が湧いてくるような熱いパフォーマンスとなっていた。


　いつの間にか合流していた魔法使いの社 築さんを加えた4人がやってきたのは，空の上に浮かぶ巨大遺跡。そこでは，神様のペットである虹色の鳥が「アジアンの石」を守っていた。

　どうにか鳥から石を譲ってもらおうと試みるも，ひょんなことから神様の機嫌を損ねてしまう。神様と打ち解けるため，4人が挑戦したのは，4種類のカレーを試食し，価格が高い順に並べる「舌で見破れ！利きカレーの試練」だ。カレー好きを公言している社さんの活躍が期待される内容となっていた。

　伏見さんが定期的に行っている朝配信「おはガク！」にちなみ，4人は両手を合わせて「いただきます」とあいさつし，各自が異なるカレーを試食。「マッシュルームが入っているから高そう」「具があまり入っていない気がする」「これ，食べたことあるかも」といった感想が次々に飛び出す。

　具材や風味などをヒントに価格順を予想した4人は見事に正解し，客席からは大きな拍手が送られた。ちなみに最も高価なカレーは2000円，最も安価なカレーは200円と発表され，その価格差に驚く様子も見られた。


　無事にアジアンの石を入手したところで，伏見さん＆社さんは「Reckless fire」（井出泰彰カバー）を熱唱。懐かしさを感じさせる楽曲を，カッコよく歌い上げた。


　虹色の鳥に乗って，毒の沼地に立つ不気味な屋敷へと辿り着いた伏見さんたち。ここでは最後のパーティメンバーとなる呪術師のましろ爻さんが登場し，「ここすごいね〜！」と屋敷に興味津々な様子を見せていた。

　屋敷の人形に悪霊が取り憑いて呪物化したという噂を聞きつけた一行は，中に入り散策を開始する。呪いの力で巨大化した人形を鎮めるため，彼らは「幽霊を見破れ！ジェスチャー人狼」に挑むことに。この試練は，テーマに沿ったジェスチャーを順に行い，異なるジェスチャーをしている1人を見抜くというルールだ。


　最初のテーマは「ピース」。しかし，1人だけ「カニ」のような身振りを見せた宇佐美さんを見事に当て，順調な滑り出しとなった。続く2回目では，多くのメンバーが恐竜のような動きを見せるなか，剣持さんの謎めいたジェスチャーに一同が動揺する場面も。テーマは「ティラノサウルス」だったが，剣持さんだけが「ミーアキャット」とされており，それを見破って成功となった。

　3回目のテーマは「ヒーロー」。この回では，「ボディビルダー」の動きをしていた宇佐美さんが見事にメンバーを欺くことに成功し，ステージと客席の両方から「えぇっ！？」という驚きの声が上がっていた。

　3回中2回のクリアで人形の討伐に成功し，伏見さんたちは「フレンチの石」を入手。屋敷の不気味な雰囲気にぴったりな選曲として，「ゴーストルール」（DECO*27カバー）を伏見さん＆ましろさんが披露した。ましろさんの低音パートや可愛らしい振り付けが印象的なパフォーマンスとなっていた。


　グルメの石も残り1つとなり，RPGらしくセーブを実行する伏見さん。裏の世界に足を踏み入れた5人は，作戦を「ガンガンいく感じで」に変更し，いよいよ魔王との最終決戦に挑む。ところが，驚くべきことに魔王の正体はなんと王様だった。さらに，王様の強力な攻撃によってパーティは全滅してしまう。

　スクリーンには「GAME OVER」の文字が投影されるが，観客からの「コンティニュー！」という声援を受け，5人は再び立ち上がる。直前にセーブしていた地点から再開し，旅を振り返りながらも，あらためて魔王へのリベンジに挑むこととなった。


　強大な力をもつ魔王に対し，パーティメンバーたちは客席からのコールを力に変えて応戦する。見事，魔王の討伐に成功した伏見さんは，伝説のフライパンを手に入れ，仲間たちに「けんちん汁」を振る舞った。こうして物語は，大団円を迎えた。

　大冒険のラストを飾った楽曲は，数多くのにじさんじライバーがカバーしていることでも知られる「神のまにまに」（れるりりカバー）。幸せへの感謝や前向きな想いが込められたこの曲は，ストーリーのエンディングにぴったりの一曲だ。


　場面が転換し，長い眠りから目覚めた5人。これまでの冒険は夢だったことが観客にも明かされ，まさかの結末に筆者も思わず驚かされた。「ゲームは1日1時間っすよ！」という伏見さんのひと言とともに，物語はエンディングを迎えた。


　最後には出演者5名が再び登壇し，伏見さんが各ゲストを招いた理由などが語られた。ソロイベントが決まった際，最初に思い浮かんだという剣持さん，趣味が合う社さん，本イベントを通じて最も仲良くなったというましろさんなど，ここでしか聞けないトークが繰り広げられた。

　また，告知コーナーでは伏見さんが手に入れた伝説のフライパン（のレプリカ）を含む追加グッズの販売（該当ポスト）や，オリジナル楽曲のデジタル配信（該当ポスト）も発表された。

　イベントの終わりには，開催に協力してくれた関係者やアクターへの感謝が述べられ，ラストを飾ったのはオリジナル楽曲「モーニングアクター2024」。ステージからは銀テープも放たれ，イベントは無事に幕を閉じた。

「伏見ガクエスト 〜伝説の調理器具（ピース）を求めて〜」公式サイト