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花屋になって人生を見つめ直す――タイのインディースタジオが贈る心温まる花屋シミュレータ「Puni the Florist」
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印刷2025/10/20 13:42

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花屋になって人生を見つめ直す――タイのインディースタジオが贈る心温まる花屋シミュレータ「Puni the Florist」

 「gamescom asia × Thailand Game Show 2025」に出展された「Puni the Florist」は,花屋の店員となって顧客の要望に応じたフラワーアレンジメントを作り上げていくシミュレーションゲームだ。一見するとシンプルなコンセプトに思えるが,その奥には深いカスタマイズ性と心温まるストーリーが隠されている。

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 本作はSteamでデモ版が公開されており,すでに3万6000件ものウィッシュリストを獲得するなど,期待を集めている状況だ。今回,開発元のEarthquake Gamesでゲームディレクターを務めるNopadol Shaoquan氏に話を聞く機会を得たので,ゲームの概要を紹介しよう。

 「Puni the Florist」の最大の特徴は,花のアレンジメントにおける圧倒的な自由度にある。プレイヤーは花屋の店員として,来店する顧客一人ひとりの要望に応じたブーケや花束を作り上げていく。ただし,このゲームにおける「アレンジ」は,既存のパターンから選択するような単純なものではない。

 花の茎を自在に曲げられ,思い描いた形状を実現できる。葉が邪魔だと感じたら切り落とすことも可能だ。リボンを追加したり,花の配置を細かく調整したりと,プレイヤーの創造性次第でさまざまなデザインが生まれる仕組みになっている。Shaoquan氏は「本当に自由にカスタマイズできる」と強調しており,プレイヤーごとに異なる表現が可能な点が本作最大のポイントだ。

 この自由度の高さは,単なるゲーム性の追求だけではなく,作品のテーマとも深く結びついている。後述するストーリーとも関連するが,プレイヤーが自分なりの表現を見つけていく過程こそが,本作の真髄といえるだろう。

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 本作を特別なものにしているもう一つの要素が,顧客との交流だ。来店する客はそれぞれ異なる「ギミック」を持っており,要望の伝え方も多種多様である。

 たとえば,子供の客は言葉ではなく絵を描いて希望するアレンジメントを伝えてくるという。大人の客とは異なるコミュニケーション方法を用いることで,プレイヤーは相手の意図を汲み取りながら花を選び,配置していく必要がある。この「読み解く」プロセスが,単なる作業ゲームではない深みを生み出している。

 さらに注目すべきは,顧客がプレイヤーの工夫に対してきちんと反応してくれる点だ。ブーケにリボンを追加すれば「リボンをつけてくれたんだ,とてもかわいい」といった反応が返ってくる。同じ花束を作ったとしても,細部のデザインによって顧客の反応が変化するため,プレイヤーは自分の選択が意味を持っていることを実感できる。

 この仕組みは,プレイヤーの創作意欲を刺激する巧妙な設計だ。ただ要望通りに作るだけではなく,「どうすれば喜んでもらえるか」を考えながらアレンジメントを仕上げていく過程に,本作ならではの楽しさがある。

 華やかな花々とは対照的に,本作のストーリーは現代社会を生きる多くの人々が抱える悩みをテーマにしている。主人公のプーニーは,最近大学を卒業したばかりの若者だ。彼女はこれまでの人生でさまざまなことに挑戦してきた。漫画を描いてみたり,アニメーション制作に手を出してみたり,YouTuberになろうとしたこともある。しかし,どれも長続きせず,結局は何も身につかなかった。

 卒業後も,専攻した分野で働く気にはなれない。そんな迷いを抱えたまま,プーニーはある日,不思議な花屋に迷い込む。そこで出会ったのが,見た目は愛らしい妖精だった。この妖精はプーニーのメンターとなり,彼女の成長を見守っていく存在だ。

 花屋で働き始めることになったプーニーは,自分自身に問いかける。「また新しいことに挑戦しようとしているのか。これまで何度も失敗してきたのに」。そんな彼女に対し,妖精が優しく語りかける。「これまでたくさんのことを試してきたのなら,もう一度だけ挑戦してみてもいいんじゃない?」と。

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 Shaoquan氏は「小さなチームで小さなゲームを作りたいと考えているため,ストーリーは非常にシンプルなものにしている」と説明する。確かに,壮大な世界観や複雑な設定があるわけではない。しかし,このシンプルさこそが,多くのプレイヤーの心に響く理由なのかもしれない。自分探しに悩む若者の姿は,他人事ではないからだ。

Nopadol Shaoquan氏
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 本作を開発しているEarthquack Gamesは,わずか6人という小規模なチームだ。しかもそのうち5人は,フルタイムの仕事を持ちながら,仕事後の時間を使ってゲーム制作に取り組んでいるという。つまり,彼らにとって本作は文字通り「情熱のプロジェクト」だ。

 Shaoquan氏自身も,2か月前まではフルタイムの仕事を持っていた。しかし,本作に専念するため退職を決意し,現在はゲームディレクターとして開発をリードしている。「これが私たちの最初の商業プロジェクトであり,販売する最初のゲームです。だからこそ,本当に素晴らしいゲームを作りたいんです」と語る彼の言葉には,強い覚悟が感じられた。

 限られたリソースの中で,ここまでクオリティの高い作品を生み出している点は称賛に値する。3万6000件というウィッシュリスト数は,小規模インディースタジオにとって驚異的な数字だ。

 取材の中で,日本語版の展開について尋ねたところ,Shaoquan氏は「絶対に実現したい」と即答した。「日本のプレイヤーはこのゲームを気に入ってくれると思います」と語る彼は,日本語版を望む声があれば,DiscordやSteamフォーラム,各種SNSで伝えてほしいと呼びかけている。

 確かに,花をテーマにした繊細な表現や,心温まるストーリー,そしてフラワーアレンジメント自体が日本でも人気の高い趣味であることを考えれば,本作が日本でも受け入れられる可能性は十分にある。

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 「Puni the Florist」は,シミュレーションゲームというジャンルに新しい視点をもたらす作品だ。農業シミュレータや経営シミュレータは数多く存在するが,フラワーアレンジメントという題材を選び,そこに自由度の高いカスタマイズ要素と心温まるストーリーを組み合わせた例は珍しい。

 本作の魅力は,プレイヤー自身の創造性を存分に発揮できる点にある。正解のないアレンジメント作りは,同じ題材でも無限の可能性を秘めている。そして,その創作活動を通じて,人生に迷う主人公の成長を見守ることができる。ゲームプレイとストーリーが有機的に結びついた設計は注目に値する。

 わずか6人のチームが,情熱を注いで作っている「Puni the Florist」。彼らの最初の商業プロジェクトが,どのような形で完成するのか,正式リリースを,そして日本語化を心待ちにしたい。


「Puni the Florist」公式サイト

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