
イベント
タイの民話とマッサージが融合した異色作「Siamassagi」。タイの伝承を世界に届けるIGNITE GAME STUDIOの挑戦
![]() |
ユニークなアイデアだけが先行しているように思えるが,話を聞いてみると,そこにはタイの文化を世界に発信したいという強い想いと,綿密に練られたゲームシステムが存在していた。
「Siamassagi」の基本構造は,マッサージ店の経営パートと冒険パートの2つに分かれている。経営パートでは,来店する顧客の疲労箇所を分析し,適切なマッサージを選択してマッサージルームへ案内する。マッサージ師である個性豊かなキャラクターたちが顧客を「攻撃」……もとい,マッサージを施すわけだ。
![]() |
![]() |
プレイヤーはスキルやアイテムを駆使してマッサージの質を向上できるほか,タイ料理やデザート,飲み物を提供して顧客の満足度を高めることも可能だ。目標はシンプルで,できる限り多くの収益を上げること。質の高いマッサージを提供すれば,それに見合った報酬が得られる仕組みになっている。
マッサージ師はそれぞれ異なる専門分野を持つ。ハードなマッサージを得意とする者もいれば,繊細な技術で顧客を癒す者もいるという。これらのキャラクターは冒険を通じてアンロックし,自分の店に招き入れることができる。
![]() |
![]() |
冒険パートは経営シミュレーションから一転,シューティングアドベンチャーへと姿を変える。舞台となるのは地獄,天国,魔法の森といった,タイの民話からインスピレーションを受けた幻想的な世界だ。プレイヤーはマッサージ師の一人をコンパニオンとして連れて行き,さまざまな種類の銃を駆使してモンスターを倒していく。
このコンパニオンシステムこそが,本作のリプレイ性を大きく左右する要素となっている。例えば,トラのキャラクターは一対一の戦闘に秀でており,別のキャラクターは回復やシールドを提供するサポート役として機能するといった具合だ。同じステージでも,どのキャラクターを選ぶかによってゲームプレイが大きく変化する設計になっている。
戦闘中には「Blue Gase」と呼ばれる武器ゲージが蓄積され,満タンになるとマッサージ師の力を借りた強力な攻撃が発動できる。バブルを撃つ者,トラの爪で攻撃する者,翼を広げて戦う者など,各キャラクターが固有の究極の武器を持っているのも魅力的だ。
![]() |
![]() |
物語の軸となるのは,タイの民話に登場する異なる世界が融合/衝突しているという設定だろう。この融合によって世界は崩壊の危機に瀕しており,人々は霊的な面で深刻な疲弊に苦しんでいる。その解決策として選ばれたのが,伝説のマッサージいうわけだ。
プレイヤーの目標は,世界がなぜ融合しているのかを突き止めること,そして新しいマッサージ師をアンロックして物語をさらに深く知ることにある。現在,全13人のキャラクターが登場予定で,一部はゲーム開始時から使用できるが,残りはボスを倒すことでアンロックできる仕組みになっている。
ゲームの基本的な流れは,冒険で素材を集め,店でお金を稼ぎ,武器を強化し,新たなボスやキャラクターをアンロックするというサイクルだ。経営と冒険が有機的に結びついた設計は,プレイヤーを飽きさせない工夫が随所に見られる。
![]() |
![]() |
IGNITE GAME STUDIOは現在7人のメンバーで構成されており,そのうち5人はまもなく卒業予定の学生だという。残る2人は現役のアーティストだ。このゲームは元々,チームメンバーの一人が描いた漫画から着想を得たものだそうで,それを本格的なゲームとして発展させたいという想いから開発がスタートした。
開発は2025年1月からパートタイムで進められており,現在はデモ版の制作段階にある。試作品を会場に出展できるまでに仕上げたものの,本格的な完成までにはさらに時間を要する見込みだ。リリース予定は2027年とされている。
![]() |
![]() |
タイ国内のゲームコミュニティからは非常に好意的なフィードバックを得ているとのことで,Palahan氏は「タイ文化を愛する日本や世界の人々からのサポートも期待しています」と語った。
同社が特に重視しているのが,キャラクターIPの確立だ。日本の「ウマ娘」のように,タイの民話やキャラクターデザインに基づいた独自のコンテンツを作り上げ,ファンダムを形成したいという構想を持っている。こうした市場性のあるキャラクター開発は日本のゲームでは一般的だが,タイのゲーム市場ではまだ少ないと同氏は分析する。
![]() |
さらに,音楽面でもタイの文化を前面に押し出す計画だ。タイの伝統楽器を使った音楽やタイ語のボイスオーバーを取り入れることで,作品に独自の色彩を与えようとしている。Palahan氏は「日本の文化,中国の文化,西洋の文化が世界的に知られている中で,東南アジアやタイの伝承や文化を世界の舞台に押し出す必要がある」と力強く語った。
IGNITE GAME STUDIOはゲームを実現するためにパブリッシャまたは投資家からの開発資金を求めている。マーケティングやPRのサポートも必要としているとのことだ。
学生を中心とした小さなチームが,自国の文化を世界に届けたいという純粋な情熱で作り上げようとしているこの作品が,どのような形で完成するのか。2027年のリリースが今から楽しみだ。
![]() |
「gamescom asia」公式サイト
4Gamerの「gamescom asia x Thailand Game Show 2025」記事一覧
- 関連タイトル:
Siamassagi
- この記事のURL: