
プレイレポート
[プレイレポ]重いのに軽い? 話題の宇宙旅行ボドゲ「ギャラクティック・クルーズ」は,互恵的なメカニクスが目を惹くワカプレ作品だった
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本作は完全新作でありながら,クラウドファンディングキャンペーンで8000人以上のバッカー(支援者)を集め,80万7918ドルもの支援が寄せられたワーカープレイスメントだ。リリース後の評価も高く,コミュニティサイトのBoardGameGeekのレーティングでは8.4(10段階評価)のスコアを獲得している話題作でもある。
となれば,ゲームの内容が気になるところ。今回はCMON Japanの協力で英語版を遊ぶ機会を得られたので,それを元にしたプレイレポートをお届けしていく。
「ギャラクティック・クルーズ」公式サイト
1つのコマが複数の役割をこなす。独特なメカニクスを備えたワーカープレイスメント
ギャラクティック・クルーズは,宇宙旅行の運営会社を運営するボードゲームだ。
プレイヤーは「ギャラクティック・クルーズ株式会社」の次期社長候補となり,宇宙船の製造,旅行プランの設定,業務の改善などを経て,最終的に得た勝利点を競うことになる。
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ジャンルとしては,自身の部下(労働者)をアクションスペースに配置して効果を発揮していくワーカープレイスメントにあたる。各プレイヤーは2つの部下コマを持った状態でゲームを開始し,それをメインボードのアクションスペースに置いて効果を発揮していく。
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基本システムの注目ポイントは,部下を用いたアクション選択に関する独特なメカニクスだ。
本作におけるアクションスペースは「区画」と呼ばれ,各区画には2種類のアクションが設定されている。そして手番が来たプレイヤーは,区画を1つ選んで部下コマを配置し,そこに書かれたアクションを2回まで連続して実行できる。
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通常であれば,配置した区画のアクションを2種類(または同じアクションを2回)実行して終わるところだが,実際はもっと選択肢がある。
各区画は経路によって結ばれており,そこに「開発トークン」を置くことで,区画同士を接続できるのだ。開発トークンによって接続された区画同士は,それぞれが持つアクションを共有した状態になり――つまり,隣接する別区画のアクションが実行可能になるのである。
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部下コマが持つアクション回数は自由に割り振れるので,例えば「1つは配置した区画のアクション,もう1つは接続した隣の区画のアクション」といった具合に調整もできる。この仕掛けのおかげで,本作のアクションは見かけ以上に選択肢が多く,かなり悩ましいものとなっている。
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区画が埋まっている(誰かの部下に占有されている)場合の処理も,実によく練られている。ワーカープレイスメントでは「他人に占有されているアクションスペースは使えない」というルールが一般的だが,本作では他プレイヤーの部下を追い出してアクションを実行できる。
ただし,追い出された部下は持ち主の手元に即座に戻る(再使用が可能になる)ほか,部下が戻ってきたプレイヤーは「先見ボーナス」を獲得できる。相手にフリーの部下を1つ与えてしまううえに,追加のリソースまで提供してしまうので,それと追い出して得られるものが見合うかは考えどころだ。
基本的にはできるだけ追い出しを行わずに動きたいが,区画自体が6つしか存在しないので,空いている区画だけを使うというのも強い行動とは言い難い。区画に含まれるアクションの組み合わせが絶妙で,ちょくちょく追い出すのが最適になる場面もあり,直線的でない読み合いを楽しめるように作られている。
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区画とアクション | ||
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左上区画 | 製図 | 宇宙船の設計図を2枚まで獲得 |
購入 | お金で物資か広告トークンを購入 | |
中央上区画 | 開発 | コストを支払って開発トークン1つをメインボードに置く |
雇用 | コストを支払って専門家を1つ獲得 | |
右上区画 | 計画 | 計画カードを2枚まで獲得 |
計画補充 | 計画カードをメインボードに補充 | |
左下区画 | 宇宙船 | 宇宙船のコックピットとエンジンを獲得 |
建造 | 所持している設計図を建設し,宇宙船に組み込む | |
中央下区画 | 立案 | クルーズの旅程タイルを確保する |
宣伝 | クルーズに乗客コマを配置 | |
右下区画 | 物資 | 共有の倉庫から指定の物資を最大3つ得る |
物資補充 | 指定の物資を倉庫いっぱいまで補充 |
ゲームを一気に加速させる宇宙クルーズと,それを中心としたポジティブなゲーム進行
各区画のアクションは,最終的には宇宙船を組み上げることを目的に作られている。自身の宇宙船に施設を組み込んで,それに合ったクルーズ計画を選び,それを好みそうな乗客コマを呼び込んだら,いよいよクルーズのスタートだ。
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クルーズの期間や内容は,事前に取得する「旅程タイル」によって決定され,自身の手番開始直後に自動で1マスずつ進んでいく。その道中で観光地の惑星に到達したり,宇宙船内に対応する施設を建造していたりすれば勝利点を獲得できる。
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さらに,到達した惑星に応じたアップグレードも実行可能だ。アップグレードの内容は「評判を得るたびに追加の1評判を得る」や「宇宙船の建造上限を3から4に変更する」など,いずれも永続的かつ強力なものばかり。早めに済ませれば,ゲーム中ずっと役立ってくれるだろう。
そして,クルーズから帰還した宇宙船は何度でも使い回せる。勝利点を大量に持ち帰ってくれるだけでなく,プレイヤーの能力も拡張されるので,ひとたび打ち上げが可能になると,ゲームが一気に加速していくのだ。
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いいことづくめクルーズだが,もちろん制限もある。クルーズ中は部下コマ1つがパイロットとしてつきっきりになるので,期間中はアクションの効率が悪くなってしまうのだ。
基本的に「乗客の趣向」「行き先の惑星」「宇宙船に組み込んだ施設」が一致していれば,より多くの勝利点を得られる。それらが不一致でもコスト効率が低下する程度だが,長期の旅程タイルを使っていた場合はバカにできない差になる。
また,少人数の部下で仕事を回すのはなかなか大変だ。コストを支払えば「専門家」と呼ばれる強力な部下コマを雇えるので,長期クルーズに出る前には用意しておきたいところ。どの段階で,どの程度の長さのクルーズに出るのが効率が良いかを考えるのは,本作一番の悩みどころであり,同時に一番楽しいところでもある。
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ひととおり遊んでみて感じたのは,ルール量に対する手触りの軽さだ。すべての要素が悩ましいのは間違いないが,本作ではプレイヤーの挙動を直接的に制限する要素が少なく,ほとんどの要素が互恵的に作用するため,重たい印象を受けるシーンがなかった。
突然計画が狂わされるような場面こそ少ないが,インタラクション(相互作用)が薄いわけではない。むしろ,資源や手数が突然増加して,より強い行動を取れるなど,ポジティブな計画変更が必要になる場面が多く,なんだかんだで相手の盤面を見るのも大事になる。
こうした設計のおかげで,一定のインタラクションを持ちながらも,攻撃的な空気感が抑えられているように感じられた。たとえ相対的には負けていたとしても,妨害によって行動が阻害される場面がないので,しっかりと「自分もゲームに参加している」という感覚を得られるのだ。
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とはいえルール自体はかなり多いので,最初は情報量に圧倒されてしまうかもしれない。しかし,遊びやすさは重量級ゲームの中でもピカイチなので,普段,中量級を中心に遊んでいるコミュニティが,最初に挑戦する重量級ゲームとしても丁度いい作品かもしれない。
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今回のクラウドファンディングでは,基本セット(キャンペーン価格:税込1万6500円)に加えて,3種類の拡張セットも対象となっている。拡張セット1「技術革命」は3つの追加要素,拡張セット2「快適空間」は設計図や初期ブースト,拡張セット3「業績達成」は,いわゆるレガシー系のコンテンツが含まれる予定だ。
また「ギャラクティック・クルーズ:全ゲーム」(キャンペーン価格:税込2万4200円)には,基本セットと拡張セット3種が入っているので,すべて遊びたい人はそちらがオススメだ。「ギャラクティック・クルーズ:オールイン」(キャンペーン価格:税込3万3000円)には各種アップグレードも付属しているので,入手したいものに合わせて選択しよう。
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「ギャラクティック・クルーズ」公式サイト
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