
イベント
「スター・トレック:ヴォイジャー - Across the Unknown」で描かれるのは,プレイヤーの決断が紡ぐ“もしも”の航海[gamescom]
![]() |
今回,開発チームによるプレゼンテーションに参加し,キャサリン・ジェインウェイ艦長とトゥヴォック保安部長に扮したスタッフによる実機デモを見たので,その内容をお伝えしよう。
「私はU.S.S.ヴォイジャーの指揮官,キャサリン・ジェインウェイ艦長です。ボーグを打ち負かした者として知られているかもしれませんし,トゥヴィックスを殺した者として知られているかもしれません――それはあなた次第です」
プレゼンテーションは,ジェインウェイ艦長に扮したスタッフのセリフで始まった。地球から7万光年離れたデルタ宇宙域に飛ばされたU.S.S.ヴォイジャーの帰還の旅を描く本作だが,単なる原作の追体験ではない。ゲームディレクターのDaniel Bernard氏が「グランド・ホワット・イフ・シナリオ」(壮大な“もしも”のシナリオ)と呼ぶように,プレイヤーの決断によって物語は大きく変化する。
例えば,セブン・オブ・ナインがクルーに加わらなかったら? ケスが力を使い果たしたあとも船に残ったら? セスカが生き残ってクルーに再合流したら? さらに衝撃的なのは,チャコティ副司令官がヴィディアンとの対立で命を落とすという展開だ。今回のデモでは,原作で肺を奪われたのはニーリックスだが,本作では“もしも”の展開としてチャコティが犠牲になる様子が示された。
![]() |
![]() |
「死が常に存在する環境」という設定も本作の大きな特徴だ。ミッションの失敗や戦闘での判断ミスによって,主要キャラクターでさえ永久に失われる可能性がある。従って,プレイヤーが地球に連れ帰るクルーは,出発時のクルーとはまったく異なる顔ぶれになるかもしれない。
本作の核となるのは,U.S.S.ヴォイジャーの管理とカスタマイズだ。プレイヤーは複数の甲板を自由に構成し,ブリッジ,メスホール,シックベイ,シャトルベイなど象徴的な部屋を建設/配置できる。ただし,スペースには限りがあり,各甲板にエネルギーとライフサポートを供給する必要がある。
![]() |
エネルギー管理は死活問題だ。エネルギー節約のため部屋をシャットダウンすることも可能だが,それによって失われる機能とのバランスを考えなければならない。戦闘で損傷した部屋は修理が必要で,効率向上のためのアップグレードも行える。不要になった部屋は解体すれば,材料/資源化でき,宇宙船内のスペースも空く。
![]() |
興味深いのは,艦船の専門化システムだ。プレイヤーは「科学船」「戦闘船」あるいは「バランス型」のいずれかに艦の焦点を定められる。テックツリーではハイドロポニクスベイやディスラプタービームなどの技術(※原作のフェイザー装備をゲーム的に抽象化した研究要素)を研究でき,どの技術を優先するかによって,ストーリーは変化する。例えば,あるミッションで水耕栽培技術が必要な場面で,それを研究していなければ別の解決方法を模索する必要があるという。
![]() |
デルタ宇宙域は12の巨大なセクターに分かれており,各セクターは複数のプロシージャル生成された星系で構成される。つまり,二度と同じ旅をすることはない。各星系には「ポイント・オブ・インタレスト」が存在し,資源の獲得や予期せぬイベントが待ち受けている。
![]() |
資源管理も重要な要素だ。エンジン用のデューテリウム,メンテナンスや建設に必要なデュラニウムとトリタニウム,そしてクルーを養うための食料など,さまざまな資源を管理する必要がある。これらは生存のためだけでなく,艦内の生産チェーンを維持するためにも不可欠だ。
デモでは,ガス惑星からデューテリウムを採取するミッションが実演された。リスクとリターンのバランスを考えながら採取方法を選択する必要があり,「前回は3人死んだ」という説明が,本作の容赦ない難度を物語っている。
なお,各セクターの完了には約1時間かかるとのことで,理論上は12時間で地球への帰還が可能だという。ただし,実際のプレイ時間は意思決定やイベントの結果によって変動する。
![]() |
ケイゾンとの戦闘シーンでは,本作の戦闘システムの奥深さが示された。プレイヤーは敵艦の特定のシステム(エンジン,武器システムなど)をターゲットにでき,戦術的な選択が求められる。エネルギー管理も重要で,シールドへの割り当てを増やしたり,ディスラプタールームを建設して攻撃力を高めたりと,状況に応じた判断が必要だ。
ヒーローキャラクターにはそれぞれ固有のアビリティがあり,トム・パリスの回避行動などを活用して戦闘を有利に進められる。ただし,これらのアビリティは使用回数に制限があり,適切なタイミングでの使用が求められる。
ただ,戦闘は必ずしも武力で解決する必要はない。科学に特化したビルドであれば,敵からエネルギーを吸い取ったり,外交的手段で戦闘自体を回避したりすることも可能だという。
![]() |
本作の最も印象的な要素の一つが,プレイヤーに突きつけられる道徳的選択だ。デモでは,ライリー・フレイジャー(Riley Frazier)という女性からの救難信号に応答し,神経電場発生装置(neuro-electric field generator)を回収するミッションが実演された。しかし,ミッション完了後,フレイジャーが元ボーグであることが判明し,危険なボーグ技術を彼女に渡すべきかという難しい選択を迫られる。
この場面でプレイヤーには3つの選択肢が提示された。それは,技術を彼女に渡す,自分たちで使う,あるいは破壊するかだ。デモでは「自分たちで使う」を選択し,その結果,クルーの士気は下がったものの,ほかでは入手できない独自の技術と新しい部屋の建設が可能になった。
重要なのは,これらの選択が一度きりであり,その結果が永続的に続くという点だ。もし技術を破壊したり,別の選択をしたりすれば,その技術は二度と手に入らない。こうした決断の積み重ねが,各プレイヤー独自のヴォイジャーを形作っていく。
![]() |
艦内の士気(モラル)管理も本作の重要だ。食事の選択(複製された美味しい食事か,緊急配給か),ホロデッキへのアクセスなど,一見些細に見える決定がクルーの幸福度に影響し,それが航海の成功に直結する。
アウェイミッションでは,各キャラクターの属性(外交,エンジニアリングなど)が成功率に影響する。ニーリックスのデルタ宇宙域の知識が役立つ場面もあれば,トゥヴォックの保安スキルが必要な場面もある。ミッション中にヒーローは疲労し,休息が必要となるため,クルーのローテーションも考慮しなければならない。
本作には,ケアテイカーからケイゾンとの衝突,セブン・オブ・ナインとの出会い,ヒロージェンとの対立,ボーグとの遭遇,「ホープ・アンド・フィアー」でのアーティルスと偽のスターフリート艦USS Dauntless,そして「エクイノックス」におけるジェインウェイの苛烈な決断など,主要なプロットポイントがすべて含まれている。さらに,ヴィディアンがニーリックスの肺を盗むエピソードのようなサイドミッションも多数用意されている。
一方で,「スター・トレック」に詳しくない新規プレイヤーへの配慮も忘れていない。登場人物やミッションの背景を理解できるよう十分な情報が提供され,道徳的な問題は明確に示されるため,誰もが楽しめる内容となっている。深いファンだけが理解できる言及もあるが,それを知らなくても物語を楽しむことに支障はないという。
![]() |
「スター・トレック:ヴォイジャー - Across the Unknown」は,単なるライセンスゲームの枠を越えた作品だ。プレイヤーの決断によって変化する物語,深い艦船管理システム,戦略的な戦闘,そして道徳的ジレンマの数々が,唯一無二の体験を生み出す。
果たしてプレイヤーは,12時間でヴォイジャーを地球に帰還させられるのだろうか。それとも,原作同様7年の長い旅路となるのか。その答えは,プレイヤーの決断にかかっている。
なお,本作のリリース時期は未定だが,PC版のほかコンシューマ機版も発売予定だ。
![]() |
4Gamer「gamescom 2025」記事一覧
「gamescom 2025」公式サイト
- 関連タイトル:
スター・トレック:ヴォイジャー - Across the Unknown
- この記事のURL:
キーワード
- PC:スター・トレック:ヴォイジャー - Across the Unknown
- PC
- ストラテジー
- Daedalic Entertainment
- Gamexcite
- SF
- 原作モノ
- イベント
- 副編集長:noguchi
- gamescom 2025
- gamescom

TM & (C)2025 CBS Studios Inc. (C)2025 Paramount Pictures Corp.