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アイマス20周年にアケマス初体験! 初代「THE IDOLM@STER」を学マスPが遊び,時代を越えて“アイ”される,原点を知る
20周年っっ!!
2025年7月26日,「アイドルマスター」(以下,アイマス)がシリーズ20周年を迎えた。20年前……2005年といえば,ニンテンドーDSやPSPが全盛だった携帯ゲーム機時代だ。たぶん「まだ生まれてなかった」という読者すらいるだろう(こういう話をすると,すこし頭痛がする)。
そんな遠い昔に生まれたアイドルゲームが,数多くのシリーズ展開を紡ぎ続けて,今もなおゲーム業界の最先端にあり続けている。
よく考えなくても分かる,とんでもないことである。
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アイマスシリーズの始まりは,2005年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が送りだした,アーケード向けアイドルプロデュースゲーム「THE IDOLM@STER」(以下,アケマス)だ。
プレイヤーは芸能事務所「765プロダクション」(以下,765プロ)の新人プロデューサーとなり,アイドル候補生と共にレッスンやオーディションに励む(語弊ではない。本当に“共に”だ)。
目指すは夢のトップアイドル。アイドルマスターの頂きだ。
……と,知ったふうに話しているが,私がアイマスにのめり込んだのはほんの1年前のこと。アイマスについては昔から知っていたし,育成ゲームも好きだったが,リズムゲームが不得意だったため,(リズムゲーではない作品があるのも知っていたが)ちゃんとは遊ばなかった。
しかし,2024年5月16日リリースの「学園アイドルマスター」(以下,学マス)が,アイマスと私を引き合わせた。加齢によってかアクションやMOBAに疲労を覚えるようになり,育成ゲームやローグライクを好むようになったところに,アイドル育成ゲーム×デッキ構築ローグライクの組み合わせが,鋭利なガラスのように深く突き刺さった。
そのうえ,アイマスのエッセンスである「魅力的なアイドルたち」と「ライブ」までもがグサグサズバシャァ! とぶっ刺さり,心はとらわれ,今ではたくさんの担当を持つ新米プロデューサーだ。
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であるからにして,私は過去のアイマス作品を未経験だ。学生時代もPCオンラインゲームにどっぷりズブズブで,ゲームセンターで遊ぶという文化にも明るくないタイプであった。
だが,心から愛する学マスが生まれた“源流”を知っておきたい。その思いから,この20周年の節目に,始祖たるアケマスに興味を持った。アケマスをプレイせずしてアイマスを語るのは無礼,なんてことはいっさいないわけだが,ともかく歴史に触れたくてしょうがなかった。
というわけで今回は,「新米の学マスPが,今になってアケマスを初プレイしたら?」という趣旨の体験談をお届けしていくぞ!
なお,ゲームの事前情報はまったく調べなかった。担当編集からのオーダーだ。「アケマスは1と2を教えてくれるけど,3から10はまるで教えてくれないから,地獄をみてね♥️」と言われていた。
※現場には,アケマスで焦げきったプロデューサーである担当編集が同行した。プレイしている最中,後ろでニヤニヤしながら「レレオオオレオオオで〜」「アイエル(IL)が重要で〜」「レッスンはパフェ前提で〜」「ボナレ0は即14週リタマラで〜」などと,人語とは思えない理解不能な言葉を話すばかりだったので,かなり無視した
アイマスなのに,ブラウン管……???
さっそくアケマスのあるゲーセン,タイトー系列の「秋葉原Hey」にやってきたぞ! 都内ではまだいくつかの店舗で稼働中らしい。
■編注
アケマスの聖地と言えば,ブランド的にも「プラボ中野店」(現:namco中野店)だが,今回はHeyを選んだ。現地ではHeyのスタッフから「なんでnamco中野店さんじゃなく,うちで?」と質問された。答えは単純だ。私の行きつけだったからだ。
ただ,本来の拠点はアケマス聖地の1つ,ナムコ プレイシティキャロット巣鴨店だった(現:namco巣鴨店。三浦あずさ役,たかはし智秋さんのサイン台を保有)。筐体は,今はない。
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とある日の開店直後,店舗4階に上がると,2025年3月に稼働を開始したばかりの「アイドルマスター TOURS」が大量に並ぶ,きらびやかな空間に出た。その脇のほう,壁際に2台だけ,ノスタルジーを感じさせつつもしっかりと手入れされたアケマスがいた。
正直なところ,初見ではビビった。そこにあったのは見慣れた液晶ディスプレイではない。そう,「ブラウン管」だったからだ。
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画面の色のにじみ,焼き付き,歪み。ひと目で分かる年季だ。同行したカメラマンが撮影しても,写真に謎の線が映り込んでしまうトラブルが多発するくらい,歴史を感じさせるシロモノだった。
昔のアーケードゲームの多くがブラウン管を採用していたのは知っている。だが,私はプロデューサー2年目の新米。アイマスの最先端の部分しか知らない人間にとって,ブラウン管のアイマスというのは衝撃だった。これだけでも,20年という年月を感じずにはいられない。
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ただ,グラフィックスについては20年前とは思えない出来栄えだ。時代は感じるものの,当時であれば“3Dモデルのアイドルたちがなめらかに動き,指で触れられる”光景に,多くの人たちが頭をぶん殴られたであろうことが想像にたやすい。ゲーム業界の描画力の進化は突きつけられるが,ここは古さで語るより,愛嬌として語るべきだろう。
私にしても,アイドルにタッチする操作はスマートフォンで慣れているが,これだけ巨大な画面での操作は未知だった。普段は気にならないスマホ操作だが,これだけサイズ比があると体感の質が違うというか,女の子と直接向き合ってる感が,より強烈に迫ってくる。
実際,プレイ中は幸福感か羞恥心か,思わずニヤニヤしてしまっていたことを,ニヤニヤし続けていた担当編集に指摘された。もちろん,あらゆる仕様でツアマスの画面のほうがデカくてキレイなわけだが,それはそれ,これはこれ。どちらも特有の魅力を備えているみたいだ。
■編注
見た目については,10周年だった10年前のときから感想は変わらない。時間が経つにつれ,アケマスは視覚では魅力が伝わりづらくなっていくが,指先で触れたときに分かることがある。
さっそくプレイする……がっ!
プレイ料金は,初回がプロデューサー登録込みで500円3プレイ。以降は100円1プレイが基本料金となっていた。プレイ目標は,アイドル活動でファンを増やし,期限までにアイドルランクを上げることだ。
1プレイはゲーム内時間の1単位「1週間」のことで,1週などと呼ぶ。学マスで例えると,プロデュース中の1週ごとに100円を払い,最終オーディションに向かうといったゲームサイクルである。
なお,アケマスのことになると早口が止まらない担当編集によると,料金設定はゲーセンによって異なっていたという。とりあえず今回は,ひと区切りがあるという“10週までプレイ”してみることに。
■編注
稼働初期は200円1プレイ。500円3プレイが基本設定だった。稼働後期は100円1プレイ,300円5プレイの設定が増えた。
1ゲームのゴールは約「61週」だ(アイドルランク次第。低ランクだと10週〜30週程度で終了)。1週のプレイ時間は約5分〜10分。今どき基準で考えるとお金も時間もなかなか。
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初回プレイの3週は,チュートリアルにあたる簡単なレクチャーの時間だった。私は765プロの新人プロデューサーとなり,事務所について社長(※)から説明を受けたあと,担当アイドルを決めていく。
※765プロの初代名物社長,高木順一朗。CVは徳丸 完さん
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担当アイドルの選択画面に移ると,計9名(編注:双海姉妹を数えれば10名)の見慣れた伝説的アイドルたちのお顔が。
私がアイマスに触れたのは学マスだったとはいえ,元祖765プロのアイドルたちの名くらいはもちろん知っているのだ。
ただ……あれ? 信号機(※)の黄色担当,星井美希がいない。なんとなく「あとでプロデュースできるようになるのかな?」と思ったが,そんなことはなかった。美希はアイマス人気を爆発的に加速させたXbox 360版「アイドルマスター」の追加アイドルだったらしい。
※アイマスシリーズにおいて,顔役となる3人1組のアイドルのこと。イメージカラーが「赤」「青」「黄」のため,信号機の愛称で親しまれる
となると初代の信号機は,赤と青しかない歩行者信号だったのか。
■編注
星井美希の登場以前の3人目ポジションは萩原雪歩。メディア展開によっては高槻やよいのパターンが多かった。なお,美希のイメージカラーはフレッシュグリーンである。
それはそうとして,私のお目当てのアイドルは決まっていた。学マスでは蒼の系譜(※)である「月村手毬」の担当Pなので,リスペクトも兼ねて初代“蒼”を担当しようと心に決めていた。
そう,「如月千早」だ。
※信号機の青に当たるアイドルのこと。イメージカラーが青系統で,属性としてはクールビューティーであり,高い歌唱力を持つ傾向にある
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さすがに,あんなにハチャメチャな手毬よりは扱いやすい子だと思うんだよな,と思っていたのだが。担当編集はニヤニヤしていた。結果的に,蒼の系譜をなめていたことにあとで気付かされた。
私が765プロで出会ったのは,クセの強すぎる女の子でした。
千早との遭遇
765プロの真っ暗な一室に踏み入れたときのことだ。室内からクラシック音楽と,あやしげな独り言が聞こえてきた。事務所のひと部屋を占有して,暗闇で音楽に耳を預けていたのは,千早であった。
彼女は開口一番,「アイドルに興味はありません」とか言い出した。どういうことだ? だったらなぜこの事務所にいるんだ? まったく分からない。初っぱなでうまくやっていけるのか不安にさせられた。
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興味深かったのは,アイドルの選択後に「芸名(活動ユニット名)」を決められることだった。アケマスではアイドル自身の本名ではなく,自由に付けた芸名で活動させられるらしい。
ただ,そんなことはまったく知らなかったため,時間いっぱい使ってもアイデアが思い浮かばず,今回は「千早」のままにした。
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千早との顔合わせ後は,この世界の掟を教えてもらいつつ,アイドルの実力を伸ばす「レッスン」のお時間に。学マスでは慣れたもんだ。
レッスンには「ボイス」「ポーズ」「歌詞」「ダンス」「表現力」の5種類があり,それぞれの専用ミニゲームをプレイし,その成果に応じて【ボーカル】【ダンス】【ビジュアル】のパラメータを伸ばす。
私が最初に選んだのはボイスレッスンだ。これは画面スクロールしてくるバーがノーツと重なったとき,対応する色のボタンを押すというもの。一般的な音ゲーとは“逆の動き”だと思ってほしい。
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レッスン回数は計5回で,次に進むたびにだんだん難しくなっていく。しかも,ミニゲームは1回1回の成果で成長具合が変わるというから,最後だけ帳尻を合わせればいいとはならず,毎秒気が抜けない。
アイドル育成ゲームとは言うが,プロデューサー側も相当“試される”感じだ。このあたりですでに「アイドルと共に成長する」という,アイマスの芯にあるテーマをひしひしと感じさせられた。
なんというか,当時興味を持った人が「アイドル!? カワイイ!! 萌え萌えぇ!!」と飛びついても,初手でアーケードゲームの洗礼で引っぱたいてくるような姿勢だ。まったくといってぬるさを感じない。
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レッスンで精神がクタクタになると,続いて「コミュニケーション」(コミュ)に移った。この2つは1セットで体験するらしい。
コミュは一覧から好きなものを選び,アイドルと他愛のない会話をしながら,画面上に提示される選択肢をタッチしていく。特筆すべきは,これがただのイチャイチャお楽しみエッセンスではなく,回答とその反応に応じて,プレイに影響する「テンション」が上下することだ。
しかも,この選択肢がとても厄介。入力可能時間がめちゃくちゃ短いうえに,どう答えればいいのかまったく分からない。
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というのも,こうしたゲームでは「なんとなく好感度が上がりそうな優しい選択肢を選ぶ」のがお約束だと思っていた。
だが,それっぽい言葉で返すと千早はだいたい怪訝な顔になる。ならばと厳しくしたらキレるし,悩んでいると時間切れになってしまう。どう転んでもノーマルコミュニケーションにしかならない(ほぼ失敗)。
これ,千早だけ? それともどのアイドルもこんなもの? アイドル心がまったくもって理解できない。混乱する私に担当編集は「千早は無理だよ」「テンションは大事だよ」と何度も言ってくる。
よく分からんが,こちらとしても千早のテンションを下げたいわけではないので,ネチネチ言うのは勘弁してほしい。
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テンションが下がると,(限定的な利もあるが)オーディション時のスコア補正や入力判定が悪化したり,アイドルが事務所に来ない「ドタキャン」が発生したりと(100円1プレイが1分で終わる。現代基準ではお気持ち爆撃案件),プロデュース計画をいともたやすく頓挫させる致命傷となり得る。
朝晩のあいさつなどはすべて,片思いのお相手との初デートでの振る舞いのごとし一発入魂の心境で挑もう。オーディション直前の声かけに失敗すると,状況次第で頭を抱える。とくに千早は昨晩が絶好調でも,翌朝に不機嫌になったりする。
なお,コミュの難度はアイドルごとに大差がある。天海春香や高槻やよいなどは「分かりやすくそれっぽい選択肢」を選べば,過半数がパーフェクト前提のプレイができる(はず)。
一方で,千早で楽々パーフェクトを取れる人は,良くも悪くも感性の波長に揺らぎがある天才肌と言わざるを得ない。それくらいギャルゲー的な定型のお約束が通じない。
当時,私の千早の初プロデュースは,パーフェクト2回,グッド6回,ノーマル14回,バッド2回の燦々たる結末で終えたことを今でも記憶している。コミュは暗記やメモで完封も可能だが,これをするたびに味は失われる。
次ページ「オーディションが難しすぎる」
- 関連タイトル:
THE IDOLM@STER
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キーワード
- ARCADE:THE IDOLM@STER
- ARCADE
- シミュレーション
- リズム/ダンス
- サバイバル
- ナムコ
- プレイ人数:1人
- 対戦プレイ
- 企画記事
- プレイレポート
- ライター:つきひ
- カメラマン:永山 亘

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