2025年5月17日と18日に開催されたアナログゲームイベント
「ゲームマーケット2025春」から,
マーダーミステリー関連ブースのレポートをお届けする。
国内では2019年頃から流行の兆しを見せ始め,今や一大ジャンルへと成長したマーダーミステリー。しかし今なお進化を続けており,よりエモーショナルな物語体験を重視したものや,殺人事件が起こらないストーリープレイングなど,数多くの派生ジャンルを生み出してきている。
ゲームマーケットの会場には,今回も数多くのマーダーミステリー関連ブースが軒を連ねており,多くの来場者の興味を引いていた。本稿ではその一部を紹介していこう。
Studio OZON「マーダーミステリーブース」
ゲームマーケットでマーダーミステリーを手に入れようとするなら,まず訪れるべきはStudio OZONの
「マーダーミステリーブース」だ。今回も,多数の新作を含む,30タイトル以上がここに終結しており,展示の仕方もプレイ人数ごとに分けられるなど,工夫が凝らされていた。
マーダーミステリーブースでは,プレイ人数ごとに分けて展示が行われていた
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Studio OZON代表の久保よしや氏の話では,今年はオフラインプレイ用のパッケージ製品に再び注目が集まっており,またプレイ人数が多めのものが人気とのこと。さらに“殺人”が起こらないマーダーミステリー,いわゆるストーリープレイング作品も続々と登場しており,とくに演劇的な側面を強調した
“読み合わせ”重視(台本の台詞を順に読んでいくような)のタイトルが増えているという。
タイトルの多さに目移りする来場者のために用意された,オススメ作品が分かるマーダーミステリー診断
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マーダーミステリージャンルの人気はまだまだ衰えないようで,多くの作品をまとめ買いできる同ブースでは,2日間で1200万円以上の売り上げを達成。初日で完売してしまうタイトルも多く,税込11万5000円の
「マーダーミステリーブース 新作全部詰め合わせセット」も,事前の予約で10セットが販売されたとのことである。
この日に発売されたタイトルは数多いが,中でも注目はStudio OZON自身が手がけた小冊子
「このマダミスが面白い! 2025年版」だ。謎解き要素が中心となるマーダーミステリーはネタバレが厳禁なため,レビューなどで紹介するのが難しいジャンルといえる。同誌では人気投票によるランキング形式でこれを克服し,さらにマーダーミステリー制作者のコラムなど,充実した読み物も掲載されている。初心者からベテランまで,満足度の高い一冊となっていた。
「このマダミスが面白い!2025年版」。ゲームマーケット販売分は,初日で完売となってしまった
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Studio OZONの新作「鴨乃橋ロンの禁断推理 アルファベット連続殺人事件」。アニメ化もされたミステリーコミックを題材としたタイトルだ
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ADICEの「デビルマン アーマゲドン序章」と「ひねもす落ちる栗の花」。前者はタイトルどおり,漫画「デビルマン」を原作としている(関連記事)
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これからミステリーによるMystery Cube Boxシリーズの第1弾「名探偵は殺せない」。パカっと開く,真四角なパッケージが面白い
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新作続々,視線はアジアへ。グループSNEブース
黎明期からマーダーミステリージャンルを牽引してきたグループSNEブースでは,新作3タイトルの先行発売が行われた。
グループSNE代表の安田 均氏
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そのうちの1本,「MYSTERY PARTY IN THE BOX」シリーズ最新作の
「裏切りの輪舞曲(ロンド)」は人気クリエーター,
yasu氏がデザインを手がけた一作だ。とあるデスゲームもの映画の完成記念パーティーで巻き起こった殺人事件を背景に,曲者揃いの招待客たちの思惑が交錯する。
一方,「Murder Mystery Mini」シリーズの新作である
「棺呪-ヒツギノロイ-」は,謎の風習を持つ村を舞台にした5人用のマーダーミステリーだ。横溝正史的な世界観をベースにした,おどろおどろしい和製ホラーの雰囲気が楽しめる。
最後の
「パール教授と47の謎」は,
安田 均氏自らがデザインした卓上探偵団シリーズの新作だ。戦後復興期の地方都市を舞台に,安楽椅子探偵パール教授がさまざまな謎を解き明かしていく。文字や絵に隠されたメッセージを読み解く,いわゆる“判じ物”としての楽しみもあるとのことだった。
人気クリエーター・yasu氏の手になる「裏切りの輪舞曲(ロンド)」。映画監督や女優,アイドルなど,映画の完成記念パーティという舞台ならではの登場人物による推理と駆け引きが楽しめる
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「棺呪-ヒツギノロイ-」は,少人数かつ短時間で楽しめるマダミスを目指したMurder Mystery Miniの最新作。一方,「パール教授と47の謎」の卓上探偵団シリーズは,プレイヤーの中に犯人がいない,協力プレイ型のデザインを旨としている
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グループSNEでは,来たる7月と9月,11月にも新作のリリースを予定しており,その中にはベテランである清末みゆき氏の新作も含まれるとのこと。また有名推理作家の参戦も予定されているという。ほかマーダーミステリーコンテスト入賞作品である
綾部ヒサト氏の
「ペンタグラムの境域」も,7月のリリースに向けて制作が進行しているとのことだった。
さらにアジア各国のマーダーミステリーを紹介するシリーズ
「Asian Murder Mystery」もスタートしており,こちらは第1弾の
「Horror Story 01:30」が発売済だ。同作は中国で人気を博したタイトルの日本語版にあたり,分類としてはストーリープレイングではあるものの,物語の真相に迫っていくゾクゾク感が楽しめる一作となっている。
すでに続刊も決定しており,第2弾の
「你好―記憶の欠片―」は7月26日にリリース予定とのこと。こちらも第1弾と同じく中国発の作品だが,今後はそれ以外のアジア各国の作品も扱っていくとのことだった。
「Asian Murder Mystery」シリーズの第1弾「HORROR STORY 01:30」。なお第2弾の「你好―記憶の欠片―」は,いわゆるエモに振り切ったタイトルになるという
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「HORROR STORY 01:30」はプレイ人数が“6人+GM1人”となっていて,ゲームマスターが必須となっている。中村 誠氏のブースでは,同作で初めてゲームマスターをやってみようという人に向けた解説本「HORROR STORY 01:30 GMノススメ」も頒布されていた
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現在BS12で実写ドラマが放映中の「八月のタイムマシン」。ちなみにドラマ版のタイトルは「六月のタイムマシン」となっている
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グループSNEからは,実はこんなタイトルも登場していた。人気シリーズ「テストプレイなんてしてないよ」の最新作「マダミスなんてしてないよ」は,5分で楽しめる推理ゲームだ
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マダミスブームを支える新作タイトルの数々
今回のゲームマーケットでは,このほかにも60以上のマーダーミステリー関連ブースが出展されており,多種多様なタイトルが会場を賑わしていた。初心者向けのものから重厚な本格派,情感あふれるストーリープレイングまでその振れ幅は広く,こうした裾野の広さこそが,国内のマダミスブームを下支えしているのは間違いない。
残念ながら,そのすべてを本稿で紹介することはできないが,ここではそのいくつかを,筆者の見かけた範囲で紹介していこう。
KADOKAWAのアナログゲームブランド・カドアナでは,内山靖二郎氏による新作「ミュージアムの呼び声」を発売していた。クトゥルフ神話×博物館をテーマにした“嘘をつかなくていい”ミステリーゲームだという
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謎解きメーカー・タンブルウィードの新作は,禁断のジュヴナイルミステリー「REDRUM05 目覚めゆくフローライト」。スマートフォンを使った支援システムが特徴とのこと
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ようがくじ「不二の会」の新作はストーリープレイング「涅槃に入る」。現職のお坊さんが制作を手がけている
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こちらは,とらいあんぐる.sysの「ゆーけんクエスト フローレのお花畑」。4人用のミニシナリオとのこと
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B-CAFE GAMESの「原稿用紙は知っている」は,参加者全員が漫画家のマーダーミステリー。各登場人物が持つ漫画原稿用紙が解決のカギを握る
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あひるのソワレの「有限探偵ミネルバ -夜と死の画家-」は,2人用の協力型推理ゲーム。探偵と助手,それぞれの視点から書かれた小説を読みながらゲームを進めていく
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ミスボドゲームズの「ザクロは夜に咲く」は,マップを使用した探索が特徴の4人用マーダーミステリー。館の中を歩き回って情報収集を行っていく
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newmerousの「應仁」は,戦国時代の幕開けとなった室町後期の京都の戦い,応仁の乱を舞台にした時代ものマーダーミステリー。それぞれ4人用の「西軍版」と「東軍版」があり,それぞれ別のシナリオが用意されている。また合わせて8人用としてプレイすることも可能だとか
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EGGミステリー倶楽部の「6人の少年と旧国道7号の決闘」は,ヤンキーもののマダーミステリーだ。プレイ人数が2〜6人と幅広いのが特徴となっている
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カレーうどん部の「断頭×リグレット」。椅子に拘束された状態から始まる5人用のマーダーミステリーで,デスゲーム風の駆け引きが楽しめる
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ペンタススタジオの新作は,4人用のマダミス風ミステリーゲーム「スケープゴート」。遺体を片付ける“静掃員”たちが,処理した死体が別人だったと気付くところから物語がスタートする
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ふわふわ氷原亭の「ダスクロアマーケット」は,秘密オークションをテーマにした7人用マーダーミステリー。同ブースでは,うららどんぐり製作所の「リヴィングハンドアウターズ」も販売されていた
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ストーリープレイングの新作「閣議」が発売されていたクリエイティブAHCのブース。同作では突然知らされた法務大臣の死をめぐり,閣議という名の犯人捜しが展開される。既刊のマーダーミステリー「居酒屋同葬会」も発売中
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江五心の新作は,4人用のマーダーミステリー「警部補 新田免四嬢」。有名ドラマのパロディだが,その実なかなかの本格派だとか
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クラリウムの「ノノノノのノノノの」は,ゾンビが跋扈する終末の世界を舞台にした2人用マーダーミステリー。自らが人かどうかを問いかける内容となっている
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“ボドゲ制作部「大分から来ました。」”の「御伽草死」は,マーダーミステリーアプリ「ウズ」で公開された作品をパッケージ化したもの。第1弾の桃太郎は,5人用となっている
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