
インタビュー
将軍家のお家騒動から始まる,時を駆けるダークファンタジー。「仁王3」の開発陣が,その狙いと見どころを語る
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4Gamerでは,この試遊版を一足早くプレイしたインプレッション記事を掲載しているが,この取材と同日,Team NINJAのゼネラルプロデューサーである安田文彦氏と,プロデューサーの柴田剛平氏に話を聞く機会を得られた。
トレイラーで明かされた本作の物語とその狙い,またα体験版を経て行われた改修点など,気になるところを根掘り葉掘り聞いてきたので,先のインプレッションと合わせてご一読いただきたい。
「仁王3」公式サイト
のちの三代将軍・竹千代が時を越え,成長する物語
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。前回がα体験版がリリースされる前でしたので,お話をうかがうのは4か月ぶりになります。そのときは,「仁王3」の物語的な側面にはまったく触れられませんでしたが,トレイラーでいよいよその一端が明らかになりましたね。
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あの当時はまだ演出ができていなかった……というのはさておき,α体験版はゲームプレイにフォーカスを置いていましたので,物語について触れるの時期尚早だと考えていたんです。
柴田剛平氏(以下,柴田氏):
主人公の名前が竹千代なので,徳川家康だと思った人も多かったようです。実は同じ竹千代でも,三代将軍・家光だったわけです。
4Gamer:
同じ竹千代でも,竹千代違いだったわけですね。
柴田氏:
今回の物語は,竹千代が将軍になる前から始まります。竹千代と弟の国松(のちの駿河大納言 徳川忠長)の間に,将軍の座をめぐる確執があったのはご存じのとおりですが,本作では国松が闇に堕ち,妖怪の力を借りて竹千代を襲う筋立てになっています。一方,追い詰められた竹千代は時を越える力を得て,さまざまな時代で妖怪と戦うことになるのです。
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4Gamer:
竹千代と国松の確執をテーマに選んだのには,どんな理由があったのでしょうか。
柴田氏:
まず,“時を越える物語”というコンセプトが先にありました。であれば,舞台が天下泰平の世から戦国時代へと移り変わるほうが,盛り上がりも作りやすい。そのうえで,主人公の成長を描くには,のちに将軍となる竹千代が適任だと考えました。
4Gamer:
なるほど。時を越えた冒険を経て,主人公が将軍にふさわしい人間に成長していくわけですね。
安田氏:
はい。「仁王」は,常に主人公の成長を描いてきたシリーズでもあります。竹千代はそれぞれの時代でさまざまな人物と出会い,関係性を築いていきます。また彼らと心を通じ合わせることで,これまでと同様に守護霊の分霊を授かることができます。
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4Gamer:
竹千代はサムライとニンジャの2つのスタイル切り替えて戦いますが,これにもストーリー的な裏付けがあるのでしょうか。
柴田氏:
守護霊に対して霊感が強い体質なのが理由となっています。柳生宗矩に侍の剣技,服部半蔵からは忍者の技を習っていた竹千代ですが,国松によって江戸を追われたとき,彼らの守護霊を分霊として受け取りました。その影響で,スタイルチェンジが可能となったわけです。
ちなみに新たな守護霊を手に入れると,フィールドを高速で駆けたり,特定の壁を走ったり,「NINJA GAIDEN」の「飛鳥返し」のようなアクションで崖を登ったりもできるようになります。
4Gamer:
そもそもなんですが,“時を越える”というコンセプトは,どういった理由から生まれてきたのでしょうか。
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史実に忠実でありながら,よりスケールの大きい物語を描くためなのが一つ。またオープンフィールドで広大になった風景に,ビジュアル的な変化を付けたかったのもあります。
4Gamer:
時代によって景色が変わると。確かに,先ほどプレイした試遊版の建物は,なんとなく平安っぽいと感じました。
柴田氏:
はい。日本の歴史に明るい人なら,恐らくぱっと見で大まかな時代が分かると思います。さらに現世だけでなく,地獄の風景も時代で変化します。α体験版では戦国時代の焦熱地獄でしたが,平安時代は何もかもが凍り付いた極寒地獄というように。平安時代のフィールドが雪原なのは,極寒地獄の影響があるからなんですよ。
4Gamer:
ちゃんとストーリー上の理由があるわけですね。トレイラーでは卑弥呼が登場していましたが,古代も舞台になるのですか。
安田氏:
現時点でお話しできるのは,江戸時代と戦国時代,そして平安時代が登場するということまでですね。
柴田氏:
トレイラーに登場するキャラクターでは,シリーズ初登場となる武田信玄にも注目していただきたいです。東京ゲームショウの試遊台で戦える相手でもあるので。また製品版では,「仁王2」のDLCに出てきた源義経も登場します。シリーズファンや歴史好きの人は楽しみにしていてください。
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4Gamer:
国松役に本郷奏多さん,卑弥呼役に土屋太鳳さんというキャスティングも発表されています。どちらも俳優さんですが,この配役にはどういった狙いがあるのでしょうか。
柴田氏:
はい。前者は徐々に狂気に飲み込まれていく国松というキャラクターを表現できる方ということで,本郷さんにお願いしました。一方,卑弥呼は神秘的で芯があり,和服の似合う女性というイメージにピッタリの土屋さんにお願いしています。
安田氏:
「仁王」シリーズは妖怪が登場するのに加え,今回は時を越えるという要素を持った,ダークファンタジー作品です。であればこそ,歴史ものとしてリアリティーを担保するには,実在の俳優さんの演技や存在感が欠かせません。今回は声だけでなく,フェイシャルキャプチャを使ってお二人のビジュアルまで再現していますので,
4Gamer:
なるほど。ということは,卑弥呼はかなり重要な役どころになりそうですね。
柴田氏:
それは製品版のお楽しみということで(笑)。
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α体験版を経て,プレイヤーの選択を尊重するデザインへ
4Gamer:
では,ストーリーからは少し離れて,現在の開発状況について聞かせてください。まず2025年6月にはα体験版が配信されましたが,その反響はいかがでしたか。
安田氏:
新要素であるスタイルチェンジとオープンフィールドには,概ね好評をいただいています。体験版を出したときって,「新要素が足りない」とか「新要素があっても受け入れづらい」という意見をいただくことが多いのですが,今回はそれとは対照的で少し驚きました。
柴田氏:
どちらも大きな変化ですので,どう受け止められるか不安だったのですが,手応えを感じましたね。
安田氏:
その一方で,前作をやり込んだ皆さんからは,武器の切り替えや武技の操作性について「これまでどおりがいい」という意見を多くいただいています。こうした要望に応えるべく改修を行い,またどうしても変えられないところはオプション項目で選択できるようにするなど,最終調整を進めています。
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4Gamer:
変更したのは,具体的にどんな部分でしょうか。
柴田氏:
「スタイルを切り替えずに戦いたい」という要望に応えるべく,スタイルを切り替える「転心」の封印を,スキルからオプション項目に移動しました。また装備できる武器は,α体験版では近接と遠距離で1つずつでしたが,「仁王2」と同じ2つずつに戻しています。
4Gamer:
転心の封印がオプションになったということは,ゲーム開始直後からスタイルを縛れるということですか。
柴田氏:
そうです。どんなスタイルでプレイするかはプレイヤーの自由であるべきなので,ここはスキルで縛るのではなく,オプションで設定できるようにしました。スキルで縛るとなると,どうしても何かしらのトレードオフが発生することになりますので。
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安田氏:
転心には,そもそもの機能として「大技返し」があります。敵の大技を跳ね返すこの使い方は,これまでにも存在していたものですが,α体験版までは同時にスタイルが切り替わる仕組みになっていました。それ自体は意図的なもので,「スタイルチェンジを使ってほしい」という開発側からのメッセージだったんですが,少し恣意的に過ぎたというか。
4Gamer:
なるほど。
安田氏:
ここはチーム内にもさまざまな意見があり,迷っていた部分ではあったんです。しかし,α体験版で多くの要望をいただいて,もっといろいろな遊び方を許容すべきだと思い直しました。
柴田氏:
前回のインタビューでもお話したとおり,「スタイルを切り替えなくてはならない」「どちらかのスタイルでないと戦えない」ようにはしたくなかったんですよ。
[インタビュー]「仁王3」で目指すのは,サムライとニンジャの「転心」やオープンフィールドといった新しさと「仁王」らしさの両立
![[インタビュー]「仁王3」で目指すのは,サムライとニンジャの「転心」やオープンフィールドといった新しさと「仁王」らしさの両立](/games/916/G091606/20250603034/TN/012.jpg)
日本を舞台としたダーク戦国アクションRPG「仁王3」がついに発表された。5年ぶりの続編発表に喜んでいるファンも多いだろう。まだまだ謎の多い「仁王3」について,キーマンであるTeam NINJAのゼネラルプロデューサーである安田文彦氏と,プロデューサーの柴田剛平氏に話を聞いた。
4Gamer:
確かにメカニクスとして考えると,スタイルを切り替えたほうが戦いやすいとか,あるいはそもそも一方でしかダメージを与えられないといったギミックがあったほうが自然に思えます。
柴田氏:
ええ。実際そういったアイデアは,チーム内からも上がっていました。しかし,それは“強制”であって“選択”ではない。なので,この種のアイデアはすべて却下し,常に選択肢を増やす選択を続けてきました。
安田氏:
攻略における自由度の高さは,「仁王」シリーズにおける価値ですからね。例えばターン制のRPGであれば,こうしたギミックは楽しいと思います。しかし「仁王」のようなアクションゲームではより慎重な,ファジーな調整が求められます。であればこそ,自由度は大切にしなければならない。
4Gamer:
確かにそのほうが万人ウケするというか,今風なのかもしれないですね。
安田氏:
だとしたらTeam NINJAのゲームは,もっとヒットしてると思いますけど(笑)。でも,こうしたファジーな部分は,これからも大事にしていきたいと思っています。
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4Gamer:
スタイルごとに持てる武器を増やしたのも,自由度を求めたがゆえでしょうか。
柴田氏:
そうですね。本作ではスタイルの切り替えがあるだけに,武器の切り替えをなくすことでシステムを整理したのですが,「1スタイルの中で武器を使い分けたい」という要望が思いのほか多かったんです。
4Gamer:
個人的にもこの変更は嬉しいですね。近接武器を切り替えたときに発動する特殊攻撃の「紫電」がカッコよくて,前作ではこれを組み込んだ連続技をかなり練習したものです。指が覚えていたので,なくなったことに違和感を覚えていました。
安田氏:
長く続いているシリーズでは,こうしたちょっとした操作テクニックがプレイヤーの皆さんの財産になり,継承すべき価値になっていくことがあります。……理解しているつもりではありましたが,今回改めて気付かされました。
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4Gamer:
もう一つ,公開されているフィードバックレポートによると,今後の改善点として「体力侵蝕」の緩和が挙がっていました。地獄でダメージを受けると,体力の上限が削られていくフィーチャーですが,なぜここにメスを入れたのでしょうか。
柴田氏:
体力侵蝕は,通常フィールドと高難度エリアである地獄を差別化し,さらなる刺激とプレッシャーを感じていただくために用意したものになります。その一方で,アクティブに戦えばこの影響を抑えられる仕組みでしたが,α体験版はこのプレッシャーが大きすぎ,理不尽なほどになっていました。
4Gamer:
確かにボスと再戦すると,体力上限が半分近く減ったところからスタートする感じでしたね。
柴田氏:
なので,今回は倒された地点に残る守護霊を回収すると,体力侵蝕を取り除けるよう変更を加えています。また回収に失敗した場合も全快からの再スタートできるようになり,さらに道中の探索で得られる「地蔵の加護」があれば,基本的な回復手段である「仙薬」でも侵蝕を回復できるようになりました。
4Gamer:
再戦しやすくなるのはありがたいです。ではゲームバランスとしては,ややマイルドにして自由度を優先する方向性なんですね。
柴田氏:
はい。繰り返しになりますが,特定のスタイルや武技がなければ進めない,といったバランスにはならないように調整しています。ぜひ自分なりの攻略を見つけていただけたら嬉しいですね。
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シリーズ初! 武田信玄がボスキャラクターとして登場
4Gamer:
先ほど東京ゲームショウの試遊版をプレイしましたが,妖怪化した武田信玄のビジュアルにかなり驚かされました。
柴田氏:
試遊版では平安時代の雪原をオープンフィールドで探索できるモードと,強力なボスキャラクターである武田信玄とのバトルが楽しめるモードを用意しています。
武田信玄と言えば“甲斐の虎”ということで,あの四本腕の姿は獅子をモチーフとしています。さらには“風林火山”にちなんだ技などもあるので,挑戦される方はお楽しみに。また製品版では,カリスマに富んだ人間としての信玄も登場しますので,こちらもご期待ください。
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4Gamer:
かなり強かったですが,あれは何割くらいの人が勝てる想定ですか。
安田氏:
想定としては5%前後でしょうか※。体験版を出すときはいつも悩むんですが,「Wo Long: Fallen Dynasty」では予想以上に撃破されてしまい,特典のTシャツがなくなってしまったので,それよりは難しめになっています。
※実際の撃破成功者は289名だったとのこと。試遊に参加した総数が4424名(ボスに挑戦しなかった人も含む)なので,約6.5%ということになる。
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柴田氏:
試遊版は時間制限があり,また回復の仙薬も少な目なので,そもそも条件が厳しめなんですよね。製品版では,じっくりと鍛えて挑めるようになっていますので,そこはご安心ください。
4Gamer:
分かりました。最後にメッセージをいただけますか。
柴田氏:
α体験版をダウンロードされた方,またTGSに来場してくださった多くの皆さんも,プレイしていただきありがとうございました! まだ体験できていない方もいらっしゃると思いますが,公式サイトやコーエーテクモのYouTube番組では,公式番組のアーカイブをはじめ,いろいろな動画が視聴できるようになっています。気になる方は,ぜひそちらをチェックしてもらえたら嬉しいですね。
安田氏:
ナンバリングとしては6年ぶりの新作ということで,長年のファンの皆さんはもちろん,シリーズに触れるのが今回初めてという皆さんの期待に応えられるよう,TeamNINJAもラストスパートを頑張っているところです。発売までもう少しお時間をいただきますが,続報を期待しながらお待ちください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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「仁王3」公式サイト
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