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[インタビュー]オリジナルへの敬意と現代的アップデート。エムツーの開発陣に訊く,新作「ナイトストライカーGEAR」誕生の背景
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印刷2025/10/23 11:00

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[インタビュー]オリジナルへの敬意と現代的アップデート。エムツーの開発陣に訊く,新作「ナイトストライカーGEAR」誕生の背景

 1989年にタイトーがリリースしたアーケードゲーム「ナイトストライカー」は,スプライトを駆使した疑似3D表現とハイスピードな疾走感,そしてZUNTATAサウンドが融合した“体験型シューティング”として,今なお根強い人気を誇っている。
 その精神を現代に蘇らせる新作が,本日(2025年10月23日)発売となる「ナイトストライカーGEAR」PC / Nintendo Switch)だ。

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 本作を手がけるのは,数々の移植・復刻プロジェクトで高い評価を得たエムツー。今回は開発を率いるプロデューサーの堀井直樹氏,ディレクターの井内ひろし氏にメールインタビューを行い,オリジナルへの思い,新たに導入されたシステムの狙い,そして現代のプレイヤーにどう楽しんでほしいかを聞いた。

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 なお,本作の発売を記念して,エムツー公式Xではフォロー&RPキャンペーンを実施する。抽選で「サイバースティック」やガレージキットなどが当たる。応募期間は2025年11月9日まで。詳細は公式X(@M2_game)を確認してほしい。

「ナイトストライカーGEAR」公式サイト


4Gamer:
 「ナイトストライカー」というIPを“新作として蘇らせる”に至った経緯を教えてください。単なる復刻移植ではなく,「GEAR」という形になったのはなぜでしょう。

堀井直樹氏:
 復刻版をタイトーさんが企画するであろうタイミングで提案しました。
 今のテクノロジーで「ナイトストライカー」の新作を作ったら,スゴいものになるのではないか? という妄想は膨らんでいたので,「やる機会があるとしたら今であろうな」と考え,できるできないはさておき「やりたい!!」と手を挙げました。

4Gamer:
 1989年のアーケード版を踏まえて,「絶対に変えない」「あえて変える」といった判断基準はどのように設定されましたか。

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井内ひろし氏:
 判断の基準は,今回の「GEAR」でのゲームプレイにおいて大事かどうか? という部分になります。
 「GEAR」でのプレイが成立しなければ絶対に変えたくなくても変えざるを得ませんし,昔のデータや方法を再現しようとしても,プログラムの言語もハードウェアの性能も変わってしまっているので,そのままというのはなかなか難しい問題です。
 重要なのはそのゲームで行われている措置や挙動が,何を目的としているかを汲み取ることで,そのコンセプト的な部分を生かせるかどうかです。
 また,あえて変える場合というのは,新作として必要な措置だと思いますので,何を新たに提供できるのか? という考え方になります。

 例えば,ミサイルの挙動であったり,プレイヤーのプレイによって変化する内部難度の変化,3Dスクロールでのスピード感といった部分は意味合い的にできるだけ変えずに残そうと思いました。
 ただし,難度による挙動の変化などは極端にならないようにしたりと,今できる配慮はしています。
 とくにミサイルだけは角度のついたグラフィックスを持ったり,Z軸(奥行方向)への積層にしたりすると,とても変というか「ナイトストライカーらしくない」と思ったので,これだけは前から見た「まるい」ミサイル固定にしました。

 また,ミサイルに限らず,「ナイトストライカー」のオブジェクトの挙動にはカメラの前で大きく,強制的に画面の外へ外れるという動作があります。
 これはゲームとしてオブジェクトが画面を覆ってしまうと奥が見えなくなってしまうための措置ですが,今のグラフィックスでこの措置を行うと結構不自然に見えてしまうため,少し変えて極力自然になるような改変をしています。
 企画や開発の「変える」「変えない」のせめぎ合いというのは,そういったことをやってみたうえでの試行錯誤と積み重ねによって決まることも多いです。

4Gamer:
 従来の「ナイトストライカー」にはなかったシステムを導入した狙いを教えてください。プレイヤーの体験をどう拡張しようと考えたのでしょうか。

井内氏:
 まず,続編を作るにしても,似たものを作るにしても,新作を作るうえでは前の発展形を作るというのが私の考え方です。
 今回,掲げたコンセプトは「シンプルかつ爽快」なので,プレイヤーの仕様はホバー形態とフィギュア形態を基本に最小限まで削りました。
 それ以外に必要なことは,自動もしくはプレイ上の任意選択でできるようにしたということです。

 3Dシューティングというのは企画者には厄介な代物で,実際あまりできることがありません。多くの3Dシューティングはショット,ロックオンミサイル(ホーミング系)というのが基本になると思います。そのほかの遊びを作りにくい(ネタがない)わけです。
 ただ,出てくる敵を倒すのみという遊びも「有り」ですし,ゲームをクリアすることが「大目的」であればそれだけで完結するというのも事実です。
 しかし,プレイに飽きが来てしまいやすいですし,何度もプレイしたくなるということを目指すのであれば,「中目的」や「小目的」を入れることでゲームを「面白く」または「楽しく」できます。

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 私は過去にも何度か言っていますが,ゲームというのは駆け引きだと思っています。プレイに利点があれば,リスクも付きまとう。そのような関係をゲームの面白さだと思っています。
 今回入れた「GEARゲージを使用したフィギュア形態のホーミングショット」は結構万能な武器です。しかし,GEARゲージを使いすぎるとホバー形態のノーマルショット(連射力と一定間隔で発射されるホーミングショット)が弱体化します。
 その駆け引きをうまく使って楽しんでほしいと思うのと,敵側の編隊にはDestroy The Captainというシステムを入れ,編隊中の赤い隊長機を倒すと編隊が全滅し,その全機体分のGEARゲージが回復(フィギュア形態のホーミングショットでも回復可能)することをテクニカルな「小目的」としました。繰り返しプレイすることに,緊張感を維持できるようにしています。
 同じシステムにすることにこだわることなく,同じ素材を使ってできるだけ元のゲームの面白さを引き出して楽しんでもらえたら良いと考えています。

4Gamer:
 原作はワイヤーフレーム的な疑似3D表現が特徴的でしたが,どのような技術的アプローチで再構築したのか,開発の工夫を教えてください。

井内氏:
 1989年からは36年も経過してしまっています。ハードウェアの性能的にはかなり進化しました。
 今回,堀井から言われたのは「とにかくスプライトでやってくれ」ということでした。スプライトといっても現在ではポリゴンと変わりありませんので,2D平面の絵で構成してくれということですね。
 道路の部分は背景面もラスタースクロールも使えませんのでポリゴンという形で制作していますが,そのほかのものはすべて2Dのグラフィックスで作成しています。

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 オブジェクトも背景も,主にモデル作成したものをプリレンダリングして2Dにしていますが,ほとんどの敵はZ軸(奥行方向)に対してパーツに分割したものを積層構造にし,XY軸で移動させたときに,そのZ軸座標に応じて立体的なズレが生じる構造になっています。ボスなどは大きめなので分かりやすいと思います。
 レンダリングした機体のグラフィックスをそのまま拡大縮小回転させると,どうしてもペラ1枚の看板が回転しながら迫ってくるだけのように見えてしまいます。これを積層構造にして,Z軸に応じてズレを与えることで,ポリゴンモデルのような自然な立体感に近くなるわけです。

 プレイしてもあまり感じられないかもしれませんが,それは自然な動きに近くなり違和感が緩和されているということで,本当に1枚の絵で表示したら,ペラペラな平面が飛んでくる違和感が強くなると思います。
 また,背景においてもSKYのビル群やDESERTの砂丘など,たくさんのスプライトを置くことで,景観を表現できるようになりました。ハードウェアの進化のおかげという部分もあります。

 ただし,ゲームにおいて疑似3Dという表現はまったく間違いはなくて,3Dポリゴンで行うゲーム開発と違うのは座標系(とくにZ軸)の距離感などで大ウソつきともいえる調整が必要なことです。
 ここばかりはサジ加減という感じではありますが,正直な3D座標空間で作るとこのようなゲームにはなりにくいです(ただし,3Dポリゴンでもできないわけではありません)。

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4Gamer:
 ZUNTATAサウンドの遺伝子を受け継ぎつつ,新規楽曲を加えています。サウンド面はどのようなコンセプトで制作されたのでしょうか。

井内氏:
 今回のサウンド担当は,元ZUNTATAの瓜田幸治さんです。何人か候補を選んで,最近はどのようなサウンドをやっているか,CDを聴かせてもらいました。
 「アリス・ギア・アイギス」で瓜田さんが担当された曲を聴いて,「これ,このまま欲しいな」と思ったのが始まりです。ほぼ即決でしたね。

 「ナイトストライカー」当時,FM音源とPCMで高木正彦さんが作られた曲が強烈すぎたんですね。同じような方法でやっても,たぶん勝てないなと思いました。
 同じことをやったら「真似」で終わって,それ以上はないですし。そのあたりは瓜田さんも葛藤したんじゃないですかね。

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 どういう背景グラフィックスにするかは見えていましたので,たとえば車のCMで煌びやかなラスベガスの街を走るスパイアクション的な絵に合いそうなシネマティックなサウンドが良いと思いました。
 瓜田さんはZUNTATA出身ですし,オケ物,シネマティックなサウンドで頼んでも,おそらくゲーム音楽としてのメロディアスな部分は残してくれるだろうと踏んでお願いしました。

 実際,出来も素晴らしく,新しいナイトストライカーのサウンドになったと思います。
 途中,迷われてテクノっぽいものを作られてきたのですが,ZUNTATA NIGHT配信での初お披露目,当日にボツとさせていただきました。その節は大変失礼いたしました。

4Gamer:
 原作では分岐ルートによる多彩な展開が魅力でした。「GEAR」ではどのように拡張,あるいは再定義しましたか。

井内氏:
 制作時間の関係上,フルサイズでの分岐ルートは制作できなかったのですが,ステージの前半と後半で少し趣を変える。中ボスを登場させる。ボスは全ステージに別のものを用意する,といった拡張は行いました。
 ステージの長さやトンネル内での時間関係などは,テンポ感がありますので原作からあまり大きくは変えていません(多少,長めなくらい)。
 ゲームとしては,敵セットの密度を多めにセットしていることと,Destroy The Captainでの集中度,Wipe Outの成立を狙うことを考えると,このぐらいの長さのほうが遊びやすいのでは? と思っています。

4Gamer:
 移植や復刻で培ってきた御社のノウハウは,「GEAR」の開発にどのように生かされていますか。新作を手がける際に,社内で意識する点や制作体制の違いはありますか。

堀井氏:
 移植をしていたことで原作の内容をつぶさにデータとして取り出すことができるのは,アドバンテージといえると思います。
 原作のステージデータなどはすべて閲覧できる形になっていますし,グラフィックスも当然のように自由に扱えます。
 ですが,今作ではそこまで原作にとらわれることはありませんでした。「GEAR」に原作のステージを再現する……などの仕様があったら,おそらくはノウハウが大活躍していたと思います。

 また意識することについてですが,新作の場合は原作をどこまでどのように変えていくか考える,それが移植チームと大きく違う点になろうかと思います。
 原作を繊細に見つめ直し,目的に合わせて大胆に再構築する……これはなかなかに度胸がいることですし,やり甲斐のあることではないでしょうか。

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4Gamer:
 当時のファンと新しいプレイヤー,それぞれにどのような体験を届けたいと考えていますか。

井内氏:
 ゲームをクリア(とくに1CC)していくときのドキドキ感。量ではなく質として繰り返し遊べる楽しさ。それに尽きます。
 どの時代においても面白さや楽しさを感じる部分というのは,それほど大きな違いはないと思っています。
 好みの問題はまた別ですが,現在作っているゲームにしても10年後,20年後でも遊んでくれる人がいたり,世代交代して遊んでもらえたりすることを望んでいますし,それを踏まえたゲーム開発・販売をしていかないといけないなとは常々考えています。

4Gamer:
 PC(Steam)版を予定されていますが,海外のプレイヤーやコミュニティを意識して制作されましたか。

井内氏:
 それこそ「ナイトストライカー」が作られた1989年や1990年代は,海外版のための調整をしたり,グラフィックスの変更があったりして作るほうも大変でした。
 今考えると,あのときの海外対応って必要だったんですか? という感じがしないでもありませんが……。

 今日,海外でゲームを販売する場合でもゲームやグラフィックスの調整の差はなくなりました。ですので,それほど意識はしていません。
 日本の文化は日本の文化として認められるようになったということですかね?
 むしろ,「ナイトストライカー」は海外での知名度が低いそうなので,どうやって宣伝していくべきか知りたいですね。Steamで開発されている多くの開発者の悩みでもあると思いますけど。

4Gamer:
 「GEAR」の開発を経て,今後は御社のオリジナル作品をどう展開していきたいか,展望を教えてください。

堀井氏:
 「GEAR」の開発を経て……ですか。こういった路線の新作は望まれていると考えていますので,今後も機会を作って貪欲にやっていきたく思いますし,作っているものもあります。
 開発が大詰めになった「アレスタブランチ」をはじめとしたリリース待ちのタイトルがありますし,未発表の企画を温めてもいます。
 また,井内のチームは「ウブスナ」の開発に戻っています。「ウブスナ」をお待ちの方は楽しみにしていただきたく思います。私はこれを世に問うために生きていると言ってもいい。

「ナイトストライカーGEAR」公式サイト


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