
インタビュー
[インタビュー]「New VIRTUA FIGHTER」Projectは分かりやすさを重視し,システムからグラフィックスまであらゆる方面からリアリティを追求する[TGS2025]
「バーチャファイター」シリーズの最新作「New VIRTUA FIGHTER」Projectが,その姿を現わしつつある。2025年9月25日に配信された特番では,「New VIRTUA FIGHTER」Projectのプロデューサーである山田理一郎氏とバトルディレクターの武田洋介氏が,新たなシステムについて解説を行ったが,今回4Gamerは,会場で山田氏にインタビューを行い,そのコンセプトなどを聞いてきた。
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「New VIRTUA FIGHTER」Projectでは,従来の「スタンダード」と,逆転をコンセプトとしたまったく新しいルールの「アップライジング」という2つのルールで試合が行われる。そのうえで「フロウガード」「ブレイクアンドラッシュ」「スタナー&スタンコンボ」「シグネチャーカット」という新システムが紹介された。
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●フロウガード
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ガードとは別の防御であり,「いなし」を表現したもの。スタイリッシュな動きで,ブレイクアンドラッシュと関連がある。従来のシステムとは違った攻防の駆け引きがあるという。通常のガードでは攻撃を防げても部位ダメージは受けてしまうが,フロウガードは部位ダメージを受けないようだ。
●ブレイクアンドラッシュ
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攻撃を当てることで相手の身体の部位にダメージを蓄積させて破壊する。部位ダメージはラウンドをまたいでも継続し,破壊した側は攻撃のチャンスが生まれるという。
●スタナー&スタンコンボ
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スタナー(stunner)から派生する,新たなコンボシステム。相手を空中に浮かせるようなものではなく,よりリアリティのある動きになっている。なお,従来の空中コンボも存在はするとのこと。
●シグネチャーカット
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公式サイトでは新システムとして触れられていないが,印象的なフィーチャーなので紹介したい。KO時に発生する痛みを表現したカットインで,どのようにKOしたかで変化するという。
これらの新システムは,どのような意図をもって作られ,どんな駆け引きを生み出してくれるのか。TGS 2025会場にいたプロデューサーの山田理一郎氏にさっそく話を聞いてみた。
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは新システムのコンセプトについて教えてください。
山田理一郎氏(以下,山田氏):
コンセプトは「リアリティ」です。現在は今までどおりのものを作っていればいいという状態ではなく,新作を作るなら唯一性があるものでなければなりません。それならキーワードは「バーチャファイター」シリーズが大切にしてきたものであり,皆さんが期待している「リアリティ」だろうとなりました。
リアルではなく「リアリティ」といういい方をしているのは,我々はリアルな格闘技ものを作りたいわけではないからです。シリーズはもともとカンフー映画の影響を受けており,作りたいのは映画的なアクションになります。リアリティがあり,新しい技術や新しいアイデアへとトライしていきたい。だから今回発表させていただいたなかにアップライジングという新ルールが含まれているわけです。
4Gamer:
ゲームの世界でリアリティというとグラフィックスの写実性を示すことが多いです。しかし,「New VIRTUA FIGHTER」Projectで追求するリアリティは,グラフィックスからバトルの内容まで多岐にわたっているということですよね。
山田氏:
そうです。以前動画で公開させていただいたウルフにしても,彼の生きざまやバックボーンを考えつつキャラクターデザインをしています。これまでのシリーズでは格闘技のスタイルそのものがデザインになっていたところがありました。今回はキャラクターの人生や,実際にいるような雰囲気を大事にしてデザインしています。
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4Gamer:
今回明かされた新システムについて,あらためて紹介をお願いします。
山田氏:
最初に出させていただいた開発前コンセプトムービーでも映画的で流れるような攻防を描きましたが,これをゲームに落とし込んだのが「フロウガード」です。格闘ゲームのガードは記号性が高いところがあり,ガードを固めているところが似たような見た目になってしまっていました。
それでは僕らが目指すリアリティとは違うわけです。「バーチャファイター」のバトルではスピード感が大切ですが,フロウガードはゆっくり見ないと分からないところがあり,うまく見せる方法も考えなければならないと思っています。
「ブレイクアンドラッシュ」は,分かりやすさとこれまでと違うゲーム性を求めたもので,どこを狙うかの駆け引きをシステム的に見せようという狙いもあります。フロウガードという守りがあるので,そのままだと守る側が有利になり,ゲーム展開が遅くなってしまいます。我々としては守り有利ではなく,攻めることで活路が開けるようなゲームにしたいんです。あとは「部位を破壊する」というフィーチャーはゲーマーではない人にも直感的で分かりやすいですし,絵的にも面白い試みだと思っています。
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「バーチャファイター」をプレイされる初心者の方から「何をしていいか分からない」というお声があり,そこに対応したという側面もあるのが「スタナー&スタンコンボ」です。2D格闘ゲームだと,飛び込みから連続技を決めてスーパーコンボという一連の流れがあって分かりやすいですが,「バーチャファイター」ではシステムが違い過ぎるため,よく分からないと感じる初心者もいます。そこで「この技を当てるところからスタートする」という要素を用意したわけです。当てると相手の体勢が崩せる技というのは分かりやすいし,想像もしやすいですしね。
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4Gamer:
これまでの「バーチャファイター」を俯瞰したうえで,分かりやすさと新しさを備えた要素を導入しているという印象です。
山田氏:
直感的で分かりやすく,覚えなくても納得できるようなものを作っていくのが目標となります。
4Gamer:
先ほど,ゲームスピードが速いとフロウガードが分かりづらいという話がありましたが,ゲームスピードはどれくらいになるのでしょう。
山田氏:
従来作と同じになると思います。「バーチャファイター」は決着が早いのがいいところです。なんといってもショート動画に収まるくらいの早さですからね。2D格闘ゲームだと飛び道具があるので,間合いを詰めるところからのスタートとなります。しかし「バーチャファイター」だと近い間合いからスタートします。つまり,集中力高く戦う場面がパッとすぐに出てくるわけで,こうした良さは大事にしていきたいと思っています。
4Gamer:
それぞれの新システムは,どんな操作になるのでしょう。
山田氏:
現在はいろいろな操作方法をテストしている段階です。基本的に新要素はシンプルな入力にする予定で,ゲームパッドで遊びやすい入力形態は絶対に実現しなければならないと考えています。そのうえで,ひょっとしたらボタンが増えるかもしれません。ただ,思想としてP,K,Gで操作できるシンプルさや,分かりやすさは守らなければならないと考えています。
4Gamer:
新システムの入力はある程度難しいものになるのでしょうか。
山田氏:
今回はとにかくプレイへのハードルを下げたいと考えています。もともと「バーチャファイター」は誰でも遊べるよう,レバーやボタンをガチャガチャやるようなプレイでもそこそこ遊べるものとし,結果として格闘ゲームをまったく遊ばない人を呼び込むことに成功しました。こうした考え方は大事にすべき部分だと思いますので,あまり複雑なものにはしたくないのです。
4Gamer:
現役で「バーチャファイター」や「バーチャファイター2」をプレイしてきたベテラン勢も問題なくプレイできるものを目指していると。
山田氏:
そうですね。開発陣もそうした世代に近い者が多いですし。まずは「バーチャファイター」にまったく触ったことのない若い世代が問題なくプレイできる形とし,そのうえでベテラン勢も遊べるようにする調整を目指しています。
4Gamer:
組み手的な流れるような攻防に挑戦されているのが野心的だと感じられました。これまでもさまざまなゲームが目指した難しいテーマであり,実現するのが難しい要素のようにも感じられます。
山田氏:
ゲーム性を考えると,思い切ったことができず,いろいろとやりづらい側面もあったテーマではないかと思います。ただ,我々としては守るものがありません。それなら新しいものに挑戦すべきというのが「バーチャファイター」のコンセプトですし,シリーズを手掛けられた鈴木 裕さんの作品に一貫しているところでもあります。
シリーズには一連の流れがあり,「バーチャファイター5」でこれまでのものはほぼ完成していると思います。それなら大きく違うものを作るべきだし,同時に面白いものとするトライもしなければなりません。
4Gamer:
部位ダメージはキャラクターの外見にも反映されるのでしょうか。
山田氏:
そこは見せていきたい部分です。ダメージ表現があったり,部位ダメージを負った状態だとラウンドスタート時にも変化があったりと,見た目で相手の様子が分かるようにしたいですね。
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4Gamer:
これまでのシリーズに出てきた技の中で,関節技や特定の部位に大きなダメージを与えそうなものの価値が上がるようなことが起こったりも?
山田氏:
そうしたこともあるもしれません。現時点では,新要素に関する技は基本的に新技として用意したいと考えていますが,これで最終決定というわけではありません。それぞれのキャラクターがどのように部位ダメージを蓄積していくかは,バランスを調整しながらいろいろと試している段階です。
4Gamer:
既存キャラクターたちの戦術が新システムで変わるような可能性はありますか。
山田氏:
新システムが入ることで,キャラクターのバランスもおのずと変わると思います。ただ,そのキャラクターが持つイメージは守らなければなりません。
4Gamer:
配信では,空中コンボの重要度を下げたい,という話がありました。ゲーム的なリターンが低いから選ばなくなっていくのか,それとも浮かせ技自体を少なくしていくのかどちらでしょう。
山田氏:
どちらかといえばリターンが少なくなると思います。これまでは,浮かせ技には説得力がありましたが,そのあとでつないでいく技は必ずしもそうではありませんでした。浮かせたあとに普通のパンチを刻んでも浮きが維持されるなど,空中コンボがつながるように浮く調整をしていたからですね。
キャラクターや状況によっても変わりますが,今は長い空中コンボはつながらなくなっていく方向性であるとしかいえません。もちろん,空中コンボを否定しているわけではありません。ただ,このゲームでは違ったアプローチをしたいのです。そのなかでコンボ練習に代わって上達している感覚を味わえる要素が必要ですし,いろいろな問題を解決していく必要があるとも思っています。
4Gamer:
スタナーからスタンコンボをつなげる際には,どんなルールがあるのでしょう。
山田氏:
どのようなものにするかは検討中です。そこを探す楽しみもあっていいと思いますが,こちらから示す必要があるかもしれません。
4Gamer:
シグネチャーカットについて聞かせてください。今回の動画では,負けた側が顔面を蹴られて歯が折れていました。どこまでの表現を追求するのでしょうか。
山田氏:
端的にいってしまうと,CERO-Dの範疇に収めた表現になります。我々はグロテスクなものを作りたいわけではなく,リアリティがあり,手応えのある表現を見せたいんです。
頭部にクリティカルな一撃が入ったら失神KOが起こるし,歯も折れるし,戦意を失って倒れるようなこともあるでしょう。格闘家たちが戦ったらこうしたことが起こるだろうという出来事に,エンタメ要素を加えて描画しています。ただ,流血表現が苦手な方はおられますので,オプションで表示の有無は付けたいと考えています。
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4Gamer:
アップライジングについてはいかがでしょうか。
山田氏:
遊びを変えたいということで作った新たなルールです。シューティングのルールから派生してバトロワ系が生まれたように,ゲームはルールを変えることでより大きくなっていく可能性があります。これまでプレイしていなかった人も,楽しそうだから遊んでみたいと思えるようなものを提供していきたいです。もちろん,面白いものでなければダメなので,いろいろと試しているところです。
4Gamer:
どのようなルールになるか,楽しみにしています。では最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
山田氏:
今回の配信では,バトルの映像をとおして我々が考えている部分をお伝えさせていただきました。次回の情報公開からは,ゲーム全体の雰囲気を見せられればと思いますので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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