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ガルクラから武道館へ! 「トゲナシトゲアリ LIVE in 日本武道館 “奏檄の叫”」ライブの模様を振り返る
メディアミックスプロジェクト「ガールズバンドクライ」から誕生した彼女たちが,満員の観客を前に熱のこもったステージを繰り広げた。
TVアニメでも象徴的に描かれてきた日本武道館は,キャラクターを演じつつリアルバンドとして活動するトゲトゲにとっても特別な場所。その舞台に立った彼女たちのライブの模様を本稿でレポートしていく。
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アニメ「ガールズバンドクライ」公式サイト
代表曲から新曲まで――武道館の幕開け
会場は北側にステージが設営されていたが,客席は全方位に開放されており,場所によって見え方は異なるものの,360度どこからでもライブを楽しめるようになっていた。
開演前には,過去に対バンライブを行ったShe is Legendの楽曲などが流れ,些細な部分ながらもトゲトゲがこれまで積み重ねてきた歩みを感じさせる演出だった。
今回のライブに登場したのは,ボーカルの理名さん(井芹仁菜役),ギターの夕莉さん(河原木桃香役),ベースの朱李さん(ルパ役)の3名。
休養中の美怜さん(安和すばる役/ドラム)と凪都さん(海老塚智役/キーボード)は少しずつ回復しているとのことだが,残念ながら欠席となった。
そのため本公演は,サポートとして宮内沙弥さん(ドラム),鈴木栄奈さん(キーボード)を迎えた5人編成でのパフォーマンスとなった。
会場が暗転すると満員の客席に大きな歓声が響き渡った。モニターに映し出されたカウントダウン表示に合わせて観客も声を重ね,ゼロになると同時に曲がスタート。
記念すべき武道館ライブの幕開けを飾ったのは,TVアニメ「ガールズバンドクライ」のオープニング主題歌「雑踏、僕らの街」だ。理名さんが歌い出すと会場はさらに大歓声に包まれ,1曲目からステージと客席の熱量が一気に高まっていく。
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続く2曲目は,TVアニメ「ガールズバンドクライ」Blu-ray/DVD第1巻の特典CDに収録された「碧いif」。まさに挨拶代わりの2曲で,メンバーそれぞれの個性を存分に感じさせ,素晴らしいライブのスタートを切った。
2曲を終えたところで最初のMCへ。朱李さんはステージの形がTVアニメのオープニングを再現していることに触れた。
今回のステージは3人の足元に直接映像を投影できる構造になっており,その周囲を取り囲むようにライティングが設置されている。
楽曲ごとに演出は大きく変化し,足元の映像に加えて,天井や壁を彩るレーザーなども駆使された。豪華で派手な演出が次々と繰り出される様子は,非常に印象的だった。
続いて披露されたのは「武道館,最高の1日にしていきましょう! 楽しんでいくぞ!」という力強い掛け声から始まった「闇に溶けてく」。
歌い終えるとすぐに朱李さんがスタイリッシュなベースソロで観客を魅了し,そのまま理名さんの歌声が響く「空白とカタルシス」へと流れ込む。力強さあふれる歌唱と,落ちサビ前の夕莉さんによるギターソロに漂う色気が印象的だった。
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序盤ながら会場のボルテージはさらに上昇。2度目のMCでは「気合が入りまくってます!」と語り,理名さんは「皆さんのお陰でこんなことになっちゃってます。ありがとう!」と感謝を伝えた。
さらに3人それぞれが武道館への想いを明かし,別々の音楽活動をしていた自分たちが集まり,思いもよらなかった景色を目の前にしている――そんな奇跡のような出来事に胸を熱くしていた。
MCのあとは,赤いレーザーで曲名さながらの赤い糸を描き出した「蝶に結いた赤い糸」,少しネガティブな歌詞ながらも相反する力強さが光るアップテンポロック「ダレモ」,青を基調としたライティングとサビで大きく手を振る振付が印象的な「運命に賭けたい論理」と,タイプの異なる3曲を立て続けに披露。
ステージ前方に移動してのパフォーマンスもあり,気持ちよさそうに歌い奏でる3人からは,これまでの経験で培った余裕や安定感がにじんでいた。
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続くMCでは,理名さんが武道館ならではの方角ごとの煽りで観客を盛り上げ,朱李さんの「やれんのか!?」という叫びから「無知のち私」へ突入。叫ぶようなボーカルで一気に熱量を高め,その勢いのまま「サヨナラサヨナラサヨナラ」へつなげる。
ステージにはファイアー演出も加わり,観客とメンバーの熱気にさらに拍車がかかった。
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そこから一転,「最期の禱り」で熱気を少し落ち着かせたあと,会場が暗転し,楽器のセッティングが開始される。ステージ中央に運ばれたキーボードを目にした瞬間,客席にはざわめきが広がった。その期待を背に理名さんが登場し,キーボードの前に腰掛ける。
そして始まったのは「誰にもなれない私だから」の弾き語り。1音1音を丁寧に響かせ,感情を込めて歌い上げると,会場は大きな拍手と歓声に包まれた。
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ここで20分のインターミッション(休憩)が挟まれた。こうした形式はやや珍しいが,観客にとってはありがたい仕組みでもある。今後のライブで広がっていく可能性も感じられた。休憩中にはTVアニメのライブダイジェスト映像が流れ,会場は“休憩中”とは思えないほどの盛り上がりを見せていた。
弾き語りやBGM演奏,特別なひととき
後半に入ると,ステージ上にはこたつが設置され,桃香の部屋をイメージした空間に。インターミッションが終わると夕莉さんと朱李さんがこたつに入り,ギターとベースを手に「雑踏、僕らの街(彷徨う)」を演奏した。
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1曲のみでこたつコーナーは終わったが,続いて宮内さん(さや姉)と鈴木さん(えなっち)が合流し,「宣戦布告」を披露する。普段なかなか聴けないBサウンドトラックの生演奏に,会場からは新鮮な感動の声が上がっていた。
曲が終盤に差しかかると理名さんが登場。そのまま「視界の隅 朽ちる音」へとつながり,ライブはいよいよ後半戦に突入した。
後半最初のMCでは,弾き語りやサントラ演奏の感想に加えてあらためて自己紹介。ひとりずつ出身県や年齢を添えながら一言を語り,サポートで参加しているさや姉さんとえなっちさんの紹介も行われた。
後半の立ち上がりは,しっとりと聴かせる「吹き消した灯火」。柔らかな空気が会場を包み込むと,続いて夕莉さんによる桃香バージョンの「空の箱」が披露され,そこへ理名さんが加わってふたりの「空の箱」へと発展する。
終盤に向かって力強さを増していくナンバーで,会場の熱が再び高まっていった。
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次のMCでは,夕莉さんが武道館がTVアニメでも大切な場所であることに触れ,そのシーンとともに武道館正面で撮影した3人の写真がモニターに映し出された。アニメを追い越すように,先に武道館の舞台に立ったトゲトゲ。まだまだ先へ進んでいく――そんな決意を感じさせる流れだった。
続く「傷つき傷つけ痛くて辛い」では,ラストに背中を向けて小指を立てるポーズが強烈な印象を残す。
そして「極私的極彩色アンサー」では,激しい強弱の切り替えが映える歌声とキーボードが際立ち,クールなパフォーマンスで観客を魅了した。
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そろそろ終盤というところで,理名さんによる2度目の方角を分けた煽りに続き,客席360度を使ったウェーブが実施された。会場の空気は温かく,和やかなムードに包まれていた。
しかしその雰囲気を一変させたのが,本ライブで初披露となった新曲「飛べない蝶は夢を見る」だ。落ち着いていた会場のボルテージが一気に跳ね上がり,さらに定番曲「爆ぜて咲く」へと続くと,バズーカ演出とともに「爆ぜて咲いた!」の大合唱が響き渡り,この日一番の盛り上がりを見せた。
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「残り全力で行くぞ,武道館!」という理名さんの声を合図にラストスパートへ突入。「渇く、憂う」「声無き魚」「運命の華」を怒涛の勢いで披露し,「運命の華」の最大のコールポイント「1,2,3,4!」では会場全体の声が揃い,圧巻の一体感を生み出した。
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走り抜けたあとのMCでは,理名さんが「ちゃんと伝えたい」と手紙を朗読。過去の経験や,オーディションを経て「ガールズバンドクライ」に参加したことで生まれた歌う理由を真摯に語った。
そして最後に披露されたのは,「この武道館ライブのテーマのように演奏してきた」と紹介された「生きて生きてゆく」。理名さんの想いを受けて,これまで以上に特別な響きを持った曲として観客の心に刻まれた。歌い終えると「武道館,ありがとう」と感謝を伝え,トゲトゲはステージをあとにした。
アンコールと新発表で大団円へ
しかし,これで終わる武道館ではない。盛大なアンコールに応えて3人が再び登場すると,会場は大きな歓声に包まれた。
理名さんは「ここまで無事に辿り着けたことに安心した」と胸の内を明かし,朱李さんと夕莉さんは「これまでツアーをしたことがないから,次はツアーをやりたい」と希望を語る。
アンコール1曲目に披露されたのは,デビュー曲であり,トゲトゲと「ガルクラ」,そしてファンとの始まりの歌「名もなき何もかも」。原点とも言えるこの曲は,年月を経てさらに力強く,感情を揺さぶる一曲へと進化していた。
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曲が終わるとモニターには「特報」の文字が映し出され,続々と新情報が発表されていく。冠ラジオ番組「トゲナシトゲアリのトゲラジ〜川崎から世界へ〜」,ゲーム「ガールズバンドクライ First Riff」(ガルリフ)の続報,そして「トゲナシトゲアリ Zepp Tour 2026 “拍動の未来”」の開催決定。
なかでも大歓声が巻き起こったのは,「ガールズバンドクライ」完全新作映画の制作決定の一報だった。
数々の発表に熱気が高まるなか,いよいよ最後の1曲へ。アンコール2曲目として披露されたのは,2025年10月3日に全国上映が始まる「劇場版総集編 ガールズバンドクライ【前編】青春狂騒曲」のオープニング主題歌「もう何もいらない未来」だ。疾走感あふれるサウンドはトゲトゲらしいロックで,この先のライブでも定番曲となりそうな力強さを感じさせた。
こうして幕を閉じたトゲナシトゲアリ念願の武道館ライブ。サポートメンバーを含め,全員で作り上げたステージであったことは間違いない。
数々の発表と共に,今後の「ガールズバンドクライ」への期待はさらに高まるばかりだ。
アニメ「ガールズバンドクライ」公式サイト
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ガールズバンドクライ First Riff
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(C)東映アニメーション(C)DONUTS
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