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「Dark and Darker」の著作権紛争,控訴審もNexonが勝訴
下記の記事は,GAMEVU(→リンク)に掲載された記事を,許可を得て翻訳したものです。可能な限りオリジナルのまま翻訳することに注力していますが,一部日本の読者の理解を深めるために,注釈の追記や,本文や画面写真の追加・変更をしている箇所もあります。(→元記事)
「Dark and Darker」をめぐるNexonとIRONMACEの著作権紛争で,控訴審判決が2025年12月4日に確定した。ソウル高等法院民事5-2部は,IRONMACEに57億6400万ウォン(約6億1000万円)の損害賠償を命じた。
ただし,Nexonが主張してきた著作権侵害の疑いは依然として認められなかった。賠償額は2月の一審判決の85億ウォンから約30億ウォン減額されたもので,裁判所の損害賠償算定方式の変更を反映した結果だ。
今回の訴訟は2021年にさかのぼる。当時Nexonは新規開発本部で「P3」と呼ばれていた未公開プロジェクトを進行中だった。このプロジェクトは中世ファンタジーを背景としたFPSとして設計されていたが,開発チーム長を務めていたチェ・ジュヒョン氏が2021年7月にNexonを退社したことが論争の始まりとなった。
チェ氏は社内情報を個人サーバーに持ち出した疑いがあるなか,IRONMACEを創立し,類似したコンセプトのゲーム「Dark and Darker」の開発を開始した。NexonはP3開発に投入されたアイデアや技術的ノウハウ,リソースなどがすべてIRONMACEに無断流用されたとして,2021年に訴訟を開始した。
当時の訴訟はゲーム業界における技術流出と開発者の転職問題というセンシティブな事案と結びつき,業界から高い関心を集めた。Nexonは著作権侵害だけでなく営業秘密侵害,さらには「Dark and Darker」のサービス差し止めまで請求したが,一審では期待よりも限定的な判決となった。
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今年2月の一審で裁判所はIRONMACEの営業秘密侵害を認めつつも,P3と「Dark and Darker」の間に著作権侵害があるとするNexonの主張は棄却した。裁判所はゲームのジャンルやシステム的構造はアイデアの範疇であり,著作権保護の対象にはなり得ないと判断。具体的なコードやアートアセットの直接複製の証拠が不足しているとして,Nexonのサービス差し止め請求も退けた。一審判決でNexonの請求が認められたのは,営業秘密侵害に基づく85億ウォンの損害賠償のみだった。
今回の控訴審判決で裁判所は,IRONMACEの営業秘密侵害の範囲をさらに拡大して認定した。チェ氏が持ち出したP3関連の開発プログラムとソースコードも,営業秘密として追加で認められたのだ。
しかし賠償額の算定では,裁判所は一審とは異なる基準を適用した。一審が不正競争防止法上の損害額「推定規定」を適用して請求額全額を認定したのに対し,控訴審では客観的資料をもとに直接損害額を算定した。
裁判所は営業秘密が「Dark and Darker」開発に与えた寄与度を15%と評価し,営業秘密保護期間中にIRONMACEが実際に上げた売上と利益を基準に約57億ウォンを損害額として決定した。この判断には,営業秘密侵害が認められた期間中,IRONMACEの売上がさほど大きくなかった点などが反映された。
著作権侵害の有無は控訴審でも同様に否定された。キム・デヒョン部長判事は「P3と『Dark and Darker』の表現形式は実質的に類似していない」と明示し,これを受けてIRONMACEが請求していた「著作権非侵害確認請求」も一審に続き維持された。
Nexonの核心的主張である著作権侵害は,結局控訴審でも認められなかった。Nexonは最終弁論で著作権侵害の認定と賠償額の引き上げを強く主張したが,裁判所は両ゲームが中世ファンタジーFPSという共通ジャンルを持っていても,表現方式の類似性が不足していると判断した。
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今回の判決は,ゲーム業界内で異なる評価を受けている。Nexonは営業秘密の認定範囲を広げ,事実上「追加勝訴」を得たという立場だが,核心的争点だった著作権侵害が最終的に認められなかった点は大きな心残りとなった。Nexon側は損害賠償額が減少したことは残念だとしつつ,判決文を検討するという。
一方,IRONMACEは著作権紛争で控訴審まで完勝したものの,営業秘密侵害の責任は一審より重くなった。IRONMACE側は,チェ氏の「Dark and Darker」はNexon在職時代に構想した固有のアイデアを基盤としており,転職後に別途開発した創作物だという立場を最後まで維持した。
控訴審判決で賠償額は減少したものの,営業秘密侵害の範囲が幅広く認められた点は,ゲーム開発会社の核心技術情報の法的保護を一層強化する契機になるとみられる。とくに開発過程で獲得したソースコードやビルドファイルなどの技術資料の営業秘密性が明確に立証されたことで,今後類似の技術流出事件で裁判所が開発会社の権利をより強力に保護する可能性が高まった。
NexonとIRONMACEはともに大法院への上告を検討中だという。ただし法理的な誤りがない限り,控訴審判決が最終判決として実質的な影響力を行使する可能性が高いという見方が支配的だ。
(著者:パク・サンボム)
Access Accepted第755回:Steam Next Fest最大の話題作だった「Dark and Darker」に持ち上がった大きな疑惑
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- ライター:奥谷海人
- 奥谷海人のAccess Accepted
- PC
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Dark and Darker
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