来場者数6万2196人はeスポーツ大会のギネス記録！？ 北京国家体育場で行われた「Honor of Kings」のプロリーグ「KPL」決勝戦レポートをお届け

試合はグランドファイナルにふさわしい激戦に次ぐ激戦。最終的には4：2でAGが勝利を収める結果に

左が「All Gamers Esports（AG）」，右が「Wolves Esports」のチームロゴ

　すでに述べたが，今回のグランドファイナルは「All Gamers Esports（AG）」と「Wolves Esports」の2チームによる決戦だ。

　簡単にチームの紹介をしておくと，AGは成都を拠点とするチームで，KPLの2025年シーズンでは春季大会と夏季大会の両方で優勝を果たしている。その勢いのままグランドファイナルでも勝ち上がり，この決勝戦へと駒を進めた。なお，昨年のグランドファイナルでも勝利しており，今回は連覇がかかった決戦となる。

　一方，Wolves Esportsは重慶を拠点とするチーム。KPL2025シーズンの春季大会ではトップ6，夏季大会ではトップ4の成績を残した。今回はAGに対する挑戦者的な立ち位置のチームだ。

　なお，今回の試合はBo7（Best of 7）の形で行われ，4本先取したチームが勝利となる。

AGはいわゆる「ディフェンディングチャンピオン」の立ち位置。優勝候補の大本命で，今回は連覇がかかった戦いとなる

今回，AGに対する「挑戦者」となるのがWolves Esports

　初戦は，青サイドのWolvesが曹操，蚩奼，西施，仁傑，盾山。赤サイドのAGがシャルロット，アグド，王昭君，魯班7号，魯班大師という陣容で開始。

　試合はWolves・TrAck選手の仁傑がAG・shuai選手の魯班大師にファーストキルを決めたのを皮切りにWolvesが猛攻を仕掛ける形となる。

　そのままWolvesは各レーンのAGのタワーを落としていき，ついにはAG側のクリスタルまで迫る。これで試合は決まったのかと思いきや，ここで驚きの粘りを見せるのがAG。YINUO選手の魯班7号がWolvesに対して連続キルを決め，ギリギリのところで相手を押し返し，流れはAGがカウンターを仕掛ける形に。

　その勢いのままAGはWolvesの各タワー，そしてついにはクリスタルを落とし，初戦はAGの勝利となった。

あわやクリスタルが落とされるかというところで，連続キルを決めていくYINUO選手の魯班7号。AGの驚異的な辛抱強さが目立った試合だった

　2戦目は青サイドのAGがバイロン，ナコルル，ハイノ，公孫離，張飛。赤サイドのWolvesが呂布，大司命，小喬，蒼，空空児という陣容。

　今回も，試合はWolves・Sakura選手の呂布がAG・Ran選手のバイロンに対してファーストキルを決めるところから始まるが，しばらく状況はお互いが譲らない一進一退の攻防に。

　流れが変わったのは，試合開始から約14分が経ったダークタイラントを巡る攻防の中で，WolvesがAGに対して2キルを決めたシーンだ。ここで一気に流れはWolvesへと傾き，そのままAGのクリスタルを落として2戦目はWolvesが制した。

乱戦の中でWolvesが2キルを決めたシーン。このまま一気にAGの本陣へと攻め上がり，15分17秒にクリスタルを陥落した

　3戦目は，青サイドのWolvesが馬超，元流の子・タンク，沈夢渓，百里守約，蘇烈。赤サイドのAGが孔子，楊戩，嬴政，エリン，ドリアという陣容で開始。

　今回も，ファーストキルはWolves・Huan選手の沈夢渓がAG・YINUO選手のエリンに決める形から始まる。いったんはWolvesが合計2キルを先に達成してキル数は2-0となるのだが，中盤でAGが反撃開始。

　ミドルレーン近くでAG・Ran選手の孔子がWolves・One選手の蘇烈をキルしたのを皮切りに次々とキルを決め，最終的にはWolveの3キルに対しAGが9キルという展開でAGの勝利となった。

序盤はWolvesがやや優勢に見えたが，中盤からAGが押し返し，最後は2-0から3-9というキルスコアに。

　4戦目は，青サイドのAGが影，猪八戒，沈夢渓，戈婭，蘇烈。赤サイドのWolvesが蒙恬，ナコルル，不知火 舞，白龍，少司縁という陣容に。

　この試合では，AG・YINUO選手の戈婭がWolves・Sakura選手の蒙恬にファーストキルを決め，これまでの展開で初めてAGからキルを決める形となる。YINUO選手はそのままWolves・Huan選手の不知火 舞にも連続キルを決めるが，Wolves・Pang選手のナコルルがYINUO選手の戈婭をキルして負けじと反撃。

　しかし，試合全体はAGペースで進み，10分経過時点でのキルスコアはAGが7，Wolvesが2となり，AGが大きくリードする形となる。16分頃には本陣近くの攻防でWolvesが辛抱強い守りを見せ，キルスコアも11-7まで戻すが，最終的には戦場の中央近くで両者の攻防が行われる中，ひっそりとファームレーンからWolves本陣に迫ったミニオンとAG・Shuai選手の蘇烈がクリスタルを落とし，AGの勝利となった。

　なお，これでAGが合計3勝となり，王手をかける形となる。

戦場の中央近くで戦いが行われる中，ひっそりとファームレーンからWolves本陣に迫りクリスタルを叩くミニオンの図

　5戦目は，青サイドのAGが曹操，夏侯惇，女媧，蒼，太乙真人。赤サイドのWolvesが関羽，ナタク，王昭君，戈婭，張良という陣容でスタート。

　後がなくなったWolvesだが，この試合ではPang選手のナタクがAG・Zoe選手の夏侯惇に対してファーストキルを決める。そのまま試合はWolves優勢で進み，15分経過時点でのキルスコアはAGの1に対し，Wolvesは5に。

　さらに，約17分が経過した頃には，Wolvesが立て続けに2キルを決め，その勢いは止まらない。そのまま本陣に迫ったWolvesがAG本陣のクリスタルを落とし，意地を見せる結果となった。

Wolves・TrAck選手の戈婭がAG・Ran選手の曹操をキルし，キルスコアが1-7になるシーン。王手をかけられたが，「そのまま勝たせはしないぞ」というWolvesの意地が垣間見られる展開だった

　6戦目は，青サイドのWolvesが影，タイガー，アンジェラ，公孫離，東皇太一。赤サイドのAGが蒙恬，大司命，不知火 舞，后羿，少司縁という陣容。

　この試合は，Wolves・Sakura選手の影がAG・Ran選手の蒙恬にファーストキルを決めるが，その直後にAG・Sheng選手の不知火 舞がWolves・One選手の東皇太一をキルするというお互いが譲らぬ攻防から始まる。

　そのまま試合は一進一退という状況で進み，約10分が経過した時点でキルスコアは4-4と拮抗する。しかし，約12分が経過した頃に，クラッシュレーンでAGがWolvesに対して2キルを決めるなどし，その均衡は崩れていく。

　そうして，AGはアドバンテージを取りながら徐々にWolvesの本陣へと迫り，約14分が経過した頃にWolvesのクリスタルを陥落。この瞬間，AGの優勝が決定し，約4億3000万円の賞金を手にした。

拮抗した展開の激戦を制し，AGが連覇を決定したシーン。その活躍からFMVPの称号を得たのはYINUO選手だ

　なお，本大会は英語のライブ配信もYouTubeで行われているので，動画を見たいという人はそちらで確認しよう。

観客がケミカルライトを手に応援する姿も印象的。中国におけるeスポーツの盛り上がりをこれでもかというぐらい感じさせられた

　このようにして，結果はAGの連覇という形で終わったのだが，試合以外でも驚かされたのは，その観客の盛り上がりだ。スタジアムではさまざまな観客がケミカルライトなどのグッズを手に，選手たちを熱心に応援する姿が見られた。


　それぞれのチームには応援団らしき団体もおり，試合開始時などに大歓声をあげるのも印象的だった。まさしくそれはサッカーや野球など人気のプロスポーツと比べても遜色がないもので，本作や中国のeスポーツの人気の高さにとにかく驚かされた。日本のeスポーツもいずれこれほどの規模に成長してくれたら，と思わずにはいられない。

　本大会のレポートは以上となる。「Honor of Kings」のさらなる発展，そして，日本のeスポーツ大会の今後の成長にも期待したい。