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[インタビュー]小島秀夫監督が語る,「DEATH STRANDING 2」の“つながり”に込めたもの。出演俳優陣の魅力や裏話も満載
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印刷2025/06/27 15:30

インタビュー

[インタビュー]小島秀夫監督が語る,「DEATH STRANDING 2」の“つながり”に込めたもの。出演俳優陣の魅力や裏話も満載

 2025年6月26日,都内にて「DEATH STRANDING WORLD STRAND TOUR 2 in Tokyo」が開催された。
 このイベントは,同日にリリースされた「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」の発売を記念した催しだ。小島秀夫監督をはじめ,押井 守監督,津田健次郎さん,星野 源さん,兎田ぺこらさんといった豪華ゲストが参加し,トークステージ,参加者とのQ&Aセッションなどを実施した。

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 KOJIMA PRODUCTIONSは本日(2025年6月26日),PlayStation 5用ソフト「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」の発売記念イベント「DEATH STRANDING WORLD STRAND TOUR 2 in TOKYO」で,最新のトレイラーを含む複数の新情報を公開した。

[2025/06/26 20:50]
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 コジマプロダクションは本日(2025年6月26日),「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」と,「クロネコヤマト」で広く認知されているヤマト運輸とのコラボレーションを発表し,特設サイトをオープンした。2社は2020年にもコラボを開催しており,5年ぶりの企画となる。

[2025/06/26 11:37]

 本稿では,イベントの直前に行われた小島秀夫監督のグループインタビューをレポートする。なお,ゲームのネタバレにあたる内容も含まれているため,読み進めるタイミングにはご注意を。

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「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」公式サイト



今回は“たったひとりではない”サムの物語


──本日,発売を迎えての心境をお聞かせください。

小島秀夫監督(以下,小島監督):
 2019年に1作目の「DEATH STRANDING」がリリースされて,翌年から今作の準備に入ったんですけど,すぐコロナ禍になり,リモート勤務の体勢になりました。それで,ちょっと僕も病気をしまして,けっこう大変な時期があって。ゲーム作りがこのままできるかどうかっていうところまでいったんです。
 これまでゲームを40年近く作ってきましたけど,一番のピンチでしたから,ようやく発売を迎えるにあたっては,「みんなよくやった,自分もよくやった」みたいな感じですね。

 ただ,アーリーアクセスがあって,もうすでに世界各所で「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」は遊ばれていますから,今までの発売日イベントとはちょっと時代が変わった感じがあります。
 昔であれば,発売日にサイン会とかして,会社の帰りに買って帰って,今日の晩から遊ぶ……という感じだったけれど,もう皆さんだいぶプレイしている方がいたので。そこはちょっと違いますけど,非常に嬉しく思っています。

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──「DEATH STRANDING」と「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」では反響の違いはありましたか。

小島監督:
 前作のほうが反響はあったと思います。なぜかというと,当時この世に存在しないゲームだったことと,僕のゲームを期待した人たちの「メタルギア」の新作ではなかったという驚きで(笑)。
 ゲームの導入部分とかテンポとかは,この世にないゲームを作るために,意図的に尖らせていた部分があります。

 「DEATH STRANDING」は5年間で2000万人が遊んでくれていて,その土台の上に続編を作ろうということなので,前作ファンの人には当然喜んでもらいたいです。
 でも,当時のテンポについていけなかった人にも遊んでもらえるように,そのときのデータをかなり参考にして,テンポ感とかシステムとかを変えましたし,背負子を下ろして思いきり走るようなこともできるようにとか,そういったこともかなりコントロールしました。

 ただ,やっぱりまったく違うものを作ってはいけないと思っていたので,「DEATH STRANDING」の雰囲気とか,山を踏破する感じが好きな人のために,続編という位置づけのなかでちょっと尖ったことをしたというイメージです。

──ゲームデザイン,シナリオ,演出などの面で,前作ではできなかった,あるいはあえてやらなかった挑戦を今作で行ったという点があれば教えてください。

小島監督:
 前作は(サムが)たったひとりで山を越え,川を越え,人を届けに行く。そういうゲームだったんです。……ポットの中にルーちゃんはいますけど,ルーはしゃべらないんでね。すごく孤独ですけど,自分みたいな人がネットの向こう側にいっぱいいて,それを共有するっていうゲームでした。
 今回は“マゼラン号”が(サムに)ついてくるんですね。ただ,その地域にカイラル通信をまずつながないといけない。マゼラン号は通信圏外までサムを追いかけられないので,新天地に行くのはやっぱりひとりです。まあ,ドールマンは一緒にいますけど。

 マゼラン号はカイラル通信圏内であればどこでも移動できるので,そこがちょっと前とは違います。ランボーにも帰る家があったと思うんですけど,サムにも帰る家があったと。
 マゼラン号に行くと,メンバーがどんどん増えていきます。彼ら同士のいざこざがありつつも,どんどん仲良くなって絆を深めているのを,帰宅するたびにサムは見るんです。

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 前作を制作するときは,スタジオを立ち上げたばかりでスタッフも少なかったですから,登場人物をあまり増やさなかったんですね。プライベートルームでは,大体3〜4人が集まるシチュエーションが多かったんですけど,それはドラマとして少し格好悪いんですね。
 今回はマゼラン号にいっぱい人が来るので,5〜6人が集まって演技をするっていうことを目指しました。でも,スケジュール合わせも難しいし,CGがリアルタイムなんで,描画も難しいんですね。
 人数が増えてくるとポリゴン数やテクスチャーの量が増えてしまいますし。地味なところですけど,頑張って何とか完成したかなと思います。

──前作を作っているときに,すでに「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」のシナリオを書いていたとお話されていますが,2作を合わせたものがサムの物語だという考えが,かなり早い段階からあったのでしょうか。

小島監督:
 そうではないですね。サムの今後についてとか,“デス・ストランディング”のことを解明するとか,1.5とか2にあたるような物語を妄想はしていましたが,コロナ禍があってそのアイデアは全部捨てました。
 これ,ここで言うていいのかな……あの,前作を作っていた頃のエンディングって,今とまったく違うんですよね。最後,サムがどこかで待ち合わせをしていて,そこにフラジャイルが遅れてくる。なんでジャンプしてこないのかと聞くと,「できなくなった」と。そのままふたりはデートに行く……まあ,やめときましょう,こんな話(笑)。

 これはコロナ禍の前に考えていた話ですが,しんちゃん(アートディレクションを手掛ける新川洋司氏)には,おしゃれなふたりのデート姿のラフ画を描いてもらっていました。

──サムを再び主役として起用するにあたって,前作から描きかたを変えた部分,もしくは変えなかった部分があれば教えてください。

小島監督:
 ノーマン・リーダスさんを緻密に描きたかったので,RIGとかAIラーニングの新しいテクノロジーを入れて,筋肉のシミュレーションなども含めていろいろやりましたけど。

 前作だと,サム・ポーター・ブリッジズはプライベートルームに入ったとき,ノーマン・リーダスになってしまう。あそこはもう,サムじゃなくて彼のアドリブで全部撮っています。僕のコンセプトでは, “ノーマン・リーダスと遊ぼう”というシステムなんです。
 だけど,ちょっとそれは物語的に変やな……というのがありまして,今回のプライベートルームでは前みたいなリアクションをとらせることはやめました。サムの股間を見たらサムがパンチしてくるとか,そういうのはなくしてしまいました。変だったので。

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──続編でもタッグを組むことになった,サム役のノーマン・リーダスさんに,小島監督が最も惹かれる点,また本作のパフォーマンスに注目してほしい点があれば教えてください。

小島監督:
 スティーブン・マックイーンとか,チャールズ・ブロンソン……彼らは僕の子供のときのヒーローなんですけど,ノーマンはどちらかと言うと,そういう方々と同じ,いわゆるスーパースター,ロックスターというか。もうノーマンが立っているだけで,心にくる。
 クリント・イーストウッドもそうですけどね。ダスティン・ホフマンのような,性格俳優でいろんな役をやるっていうよりも,ノーマン・リーダスっていうキャラがもうそこにある。そんな魅力を出したいので,なるべく作りも寄せています。

 あんまり多くを語れないですが,今作はサムが号泣するシーンがけっこう多いんですよ。当然,撮影のときはノーマンに泣いていただくんですけど,ある日,朝イチで泣いてもらうシーンを撮りまして。あとで「朝から泣かしやがって」と,ちょっとムッとしてたことがありました(笑)。それぐらいサムが泣きますね,今回。

──フラジャイルやトゥモロー,タールマンをはじめ,今回はホログラムではない生身の人間とのつながり,関係性が強調されているように感じました。これはコロナ禍を経て前作から変化した部分と思われますが,意識的に前作から変えた部分をお聞かせください。

小島監督:
 先ほど少し言いましたが,ひとりだったサムに,今回は家(マゼラン号)があって,そこにいろんなキャラクターがいて,いわゆる人間関係という厄介な問題が出てくるんですね。言い合いがあったりとか,意見が分かれたりとかもします。なんて言うんでしょうね,集団のなかの孤独みたいな,そこを描こうとしています。
 あんまり深く言いませんけど,サムにもいろいろ事情がありますから,サム的にはそこでの仲間のサポートが,ちょっと余計なお世話だという……そのあたりは,前作にはなかったドラマですね。“複数のなかでの孤独感”みたいなのは,出そうとしています。

 コロナ禍で“置き配”が流行ってしまいました。僕的には(サムの配送先の)ホログラムの人と仲良くなって,部屋の中に入るようにしようとしたんですけど,ちょっとそれはコンセプトを考えてやめました。やっぱり彼の家はマゼラン号にあるので。
 これ,言っちゃいますけどいいですよね,アーリーアクセスが始まってるから。えー,いろんなホログラムの人たちと親密度を上げてマックスになると,奥の扉が開いたりします! 中で休憩できます。(そこまでいくのは)なかなか大変ですけど。

──ノーマン・リーダスさんやエル・ファニングさん,レア・セドゥさんと共に日本から忽那汐里さんがメインキャラとして出演していますが,彼女とのお仕事はいかがでしたか。これをきっかけに,つながりのある日本の俳優とタッグを組む可能性はありますか。

小島監督:
 これは技術的な問題ですけど,アジア人ってCG化するとけっこう似ないんですよ。スキャンにしても,顔の凹凸があんまりないっていうのと,とくに女性とか若い人は肌が綺麗すぎて,つるっとしてしまうんですよね。
 日本人だけじゃなくて韓国の人なども,美しいきめ細かい肌なのでCGに見えるんです。逆に,お年寄りなど,シワやそばかすがいっぱいある方が,どっちかというとディテールが出るんです。
 日本人のCG化がなかなか似ないので,前とは違うテクノロジーを使いました。その実験を兼ねて,忽那さんにお願いして,まあまあ満足いくものができました。次はもうちょっとレベルを上げると思うんですけど。

 日本の人にも作品に出てほしいんですが,ロスでノーマンとかエルさんとかレアさんと一緒にスタジオで収録をするので,ネイティブぐらい英語がしゃべれないとちょっと困る。撮影が終わったら一緒にご飯も行きたいですし。
 ということで,ネイティブの英語ができる人をものすごく探したんです。忽那さんはオーストラリア出身だったんで,英語が話せます。彼女にオファーしようにもアドレスが分からずにいたところ,菊地凛子さんと彼女が友達っていう情報を入手しまして,菊地さんにメールを送って,忽那さんのアドレスを聞いたんです。
 菊池さんからのメールには「私は出ないのか」と,一行書いてありました(笑)。

 忽那さんのレイニーも,けっこううまくできたと思います。黒髪も表現が難しいんですよね,リフレクションとかを含めて。もうちょっと次の段階にいくとうまくいくので,日本の俳優さんとも一緒にできればと思います。日本を舞台にしてもいいんですけどね。

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──エル・ファニングさんや忽那汐里さんがメインキャラとして起用されましたが,決め手となった作品やイメージなどはありますか。また,彼女たちの演技や人間性がキャラクターに作用したエピソードなどがあれば教えてください。

小島監督:
 エルさんは,もう子役の頃から出演している映画を見てファンでしたから,いつか一緒に仕事したいなと思っていました。「フランケンシュタイン」の作者の役(※「メアリーの総て」)が非常に良かったんです。こういう演技もするんだなと思って,ずっと気に留めていたんですけど,友達のニコラス・ウィンディング・レフン監督が,彼女を起用して(※「ネオン・デーモン」),最高だというので紹介していただいて。

 もうデジタルでは配信されていますけど,ウッドキッドに今回サントラをやってもらっています。「TO THE WILDER」といういい曲があって,これは3年ぐらい前に来日したとき,僕の隣で作曲をしてもらいました。
 エルさんは歌えるということを知っていたので,デュエットしてほしいとウッドキッドに言ったら,実はエルさんとウッドキッドは友達で,一緒にライブをしたことがあるというんです。
 これはもう“つながり”かなと。そういうことで,「TO THE WILDER」は,デュエット版も出ています。

 忽那さんも,ポッキーのCMに出演している頃から知っていますし,英語もできるし,お会いしたら素敵な方だったんで,一緒にやろうということになりました。
 あの,意外と僕は完璧主義者に見えますけど,現場では俳優さんの言うことを聞くので,お互いに意見を出しあいながらうまいことやっています。忽那さんは立派ですよ,全然物怖じせず,すごく自然にみんなと馴染み,仲良くしてくれました。

──本作では,エル・ファニングさんや忽那汐里さんをはじめ,多くのキャストが歌う演出がありますが,そこにはどのような意図やビジョンが込められていたのでしょうか。

小島監督:
 どこまで言おうかな……。僕の中で,けっこう「ミュージカル」なんですよ。ほぼ,みんなが歌います。プレイした方は分かると思うんですけど。レアさんにも,本当は「TO THE WILDER」も含め歌ってもらおうと思っていたんですけど,結果的にはやめることになりました。
 “歌”がテーマのひとつでもあるので,そういうことで言うと,本来は全員が歌うべきだったんですけど。

──ときに無口なサムの代弁者であり,ツッコミやボケ役でもあるドールマンですが,彼とサムが一緒に旅をする形に決めた理由はどういったものでしょうか。

小島監督:
 バディものが好きだというのもありますけど,やっぱり今回は「たったひとり」っていう状況から変えたかったんですね。マゼラン号はサムについてきますが,呼べない状況もあるんです。そこでドールマンとしゃべりながら旅をする。
 ゲームのシステムで,けっこうありますよね。プレイヤーが分からないこと教えてくれる,このへんにいる(左上を指差して)ロボットだとか,「ポートピア連続殺人事件」の“ヤス”みたいな,ああいうのね。
 あれは都合がいいんですよ。「スナッチャー」でも「メタルギア」でも出てきますけど。プレイヤーが分からないことに遭遇したとき,誰かが教えてくれる。これがドールマンなんですね。

 その場の雰囲気を変えてくれるというか,緊張しているサム(=プレイヤー)をちょっと和やかにするという役目もありますが,これはけっこう難しくて。
 最初,実験としてAIでボイスを録って,テキストを書いて,あらゆるものに反応するバージョンを作ったんです。プレイヤーがちょっと進むと,「川がある,気をつけろ,深いぞ」とか,全部先に言うんですよ。あまりにもうるさくて,全然自分でプレイできへんという(笑)。

 途中のバージョンはけっこうしゃべりを抑えたんですね。1時間ぐらいドールマンが黙っていると,彼と旅していることを忘れてしまうんですよ。マゼラン号のプライベートルームで,ドールマンを壁にかけるシーンになって「あっ,ドールマン持ってたんや」って気づく。これも変なんですね。
 ということで,ちょっと悩んだ挙句,今のバージョンになりました。遊んで確かめてみてください。

──今作では,マゼランマンやニールのカットシーンなど,自身が手がけてきた過去の作品を彷彿とさせるビジュアル,演出が取り入れられているかと思います。あえてそういった要素を入れることの狙いは何でしょうか。

小島監督:
 そんなに意図してないですけどね。ニールさん,バンダナをつけたら「スネーク似だ」と言われていますけど,あれはニールさんがバンダナを巻いているだけなんですよ。
 ルカ・マリネッリさんを発見して映画を見て,そのとき「スネークみたいにバンダナを巻いたら似合うな」って僕がどこかでつぶやいたら,それがニュースになったということもあって,ちょっといたずらを仕掛けたっぽいところはありますけど。
 ルカ・マリネッリさんは「メタルギア」を遊んで育ったらしいんで,あのシーンを依頼したときも喜んでいましたね。

 マゼラン号は,コロナの前か後かな。しんちゃんにデザインを頼んでいたんですけど,まだプロット段階での発注だったので,原子力潜水艦みたいな,長い,でかいデザインがいっぱいあがってきたんです。イメージは,もっとちっちゃい潜水艇や「ミクロの決死圏」みたいな感じ……ということで,映画を観たしんちゃんが描いてくれた中に,前から見た図のマゼラン号があって,それが気に入ったんですね。
 それをしんちゃんがさらにデザインしていったら,なんかこう,ちょっと見たことあるようなノーズで……。巨人の頭につけてもらったら,なんか……似てたっていう。それだけの話です。狙っているわけじゃないです。まあ,やめときましょう,こんな話は!(笑) 

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──豪華な面々が並ぶプレッパーズは,どのように選び,出演することになったのでしょうか。監督が出演してほしいと自らお声がけすることもあったのでしょうか。

小島監督:
 カメオというか,モブシーンなので,だいたい「MetaHuman」で作っている会社が多いと思うんですけど,人間味がないんですね。10年後にはどうなっているかは分かりませんけど。
 うちのスタジオに遊びに来てくれる人たちの中に,出たいっていう人がいっぱいいるんで,スキャンして,どんな役がいいかを聞いて出てもらっているんですけど,ものすごい数の人が来て撮ったので,全員は入れられなかったんです。
 撮ったけれど,結局出てない人もいて申し訳ない。というわけで,皆さん知り合いの方ですね。

──作中で最もシンパシーを感じる人物は誰ですか。

小島監督:
 自分が作ったキャラなんで,あんまりそういうのはないけれど,ヒッグスとかかな。自由に生きてていいですよね。ヒッグスはドラマの中でもゲーム寄りのキャラなんで,ちょっとデフォルメしています。今回はすごいですよ。

──先日のインタビューで,コロナ禍を経験したら,つながりすぎたらダメなのではと思うようになったとおっしゃっていましたが,小島監督にとってどういうことがつながりすぎになるのでしょうか。

小島監督:
 例えばスマホで,AIが僕にいろんなものを紹介してくるじゃないですか。なんかああいうのがちょっと嫌ですよね。
 人間の生活には“偶然”が必要だと思うんですよ。朝起きて会社に行く,学校に行く,誰かと会うっていうのも含めてですけど,その間に誰かとぶつかったりとか,知らない人に出会ったりとか,そういうことの連続があって,そこに自分の選択が加わって人生を作ると思うんですけど,全部ネットでつながって,デジタルが誘導して,決められた生活になってしまうのでは……と。
 それがちょっと怖かったんです。そういうことで,つながりすぎということを言っています。

 前作からそうなんですけど,カイラル通信っていう概念は,「自分の24時間のデータをUCAに全部あげる。その代わり,UCAが持っている他人の生活の24時間のデータを全部もらえる,その人の過去から先祖のことから全部分かってしまう」というものです。
 その代わり安全が保障されるんですけど,そういうのが果たしていいことなのか? と。

──つながりすぎている人に対し,「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」はどういうメッセージを込めていますか。

小島監督:
 これも難しいですけど,テクノロジーを否定しているわけではないです。今さらネットをなしにしろ,とはまったく言いません。すごく便利で,コロナのときも,ネットがあったから助かった人もいっぱいいるといると思います。
 だけど,そこに依存するのはちょっと危険かなと思います。AIと一緒ですね,使い方なんです。世界中がつながっているテクノロジーを自分がどう使うかっていうことを,「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」の“SSS”でゆるいつながりを感じながら,ちょっと考えてほしい。

 僕の中でのひとつの答えは,最後のほうでキャラクターに言わせています。どう皆さんが感じるかですね,いろんな意見があっていいと思うので。
 結局,「つながりを断つべきか」っていうとそうではなく,「このテクノロジーを使って,今後どういう生き方をするか」という選択ですよね。

──小島監督は対面や肉体的な感覚といった,デジタルではないリアルなつながりの意味を重要に捉えられていると思います。つながりすぎてしまった世界において,人間の身体性が持つ意味をどのように考えていますか。

小島監督:
 (僕は)昭和の人間なんでね。人間は肉体と心というふたつを持って,死んでしまうと魂になるんですけど,肉体がある以上,肉体的な移動というか,個としての移動が絶対必要だと思うんです。
 例えば,皆さん今日ここに来られたじゃないですか。コロナのときは自宅からネットで参加していましたよね。今日,皆さんは家を出てさまざまな交通手段で来るなかで,いろんな人に出会ったり,風景を見たりしたはずで,その偶然が自分の人生を彩ると思うんです。

 メタバースでハワイの風景を見てもいいですけど,実際に行ってみたら全然違います。「行ってみたら違う」っていうのは,匂いや温度だけじゃなくて,行くまでの間に飛行機に乗るとか,いろんなことがある中での冒険です。そういう刺激がないと駄目だと思うし,そこを感じてほしい。

──制作中に孤独を感じる瞬間はありましたか。あるとしたら,それをどう乗り越えているのでしょうか。

小島監督:
 乗り越えていません! とくにコロナのときは,ほぼ会社に誰もおらず,ひとりでシナリオを考えて書くという作業でした。最後のほうは,皆さんも会社に出てきて一緒にやりましたけど,僕は原作者・ゲームデザイナー・監督なので,ちょっとスタッフとは違う立場なんですね。
 なので,一緒に仕事をしていて楽しい気持ちはありますが,非常に孤独です。

 例えば,もし「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」に対して「売れへんなとか,おもんないな」と思ったとして,そんなこと言えませんよね。嘘つかな,あかんでしょ。でもそんなことは誰にも,家族にも言えませんし。
 ずっと心に閉じ込めて日々を過ごしていると,それがストレスとして溜まってくることがあって。僕がギレルモ・デル・トロ監督,ニコラス・ウィンディング・レフン監督と仲がいいのはそこなんですよ。皆さん同じです,映画の現場も。
 何百人,何千人のスタッフがいても,やっぱり責任者はひとりなんで,ずっとひとりで悩んでるんですね。どうしようかな,明日どうやって撮ろうかなっていう。それはやっぱり,同じ立場の人としかしゃべれないというか。

 たまに集まってそういう話をして,孤独を癒しています。これも「DEATH STRANDING」と同じですよ。「俺ひとりだけ孤独や」と思っていたら,「あっ,なんだデルトロ,お前もそうか。なんや,レフンちゃんもそうなんだね」と,そんな感じです。ゲームの話はまったくしません。

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──インフラが整っていく快感が好きで,今作も国道建設に勤しみましたが,さらにモノレールの敷設もあります。ソーシャルストランドシステムをプレイヤーにどのように楽しんでもらいたいか,お聞かせください。

小島監督:
 いろんなところで言っていますけど,僕はあんまり国道建設しないですよ。カイラル結晶を入れるぐらいで,基本は人が作ったものを使うスタンスです。
 前作を出したときにいろんなデータが集まったんですね,ヒートマップとか。それを見ると意外や意外,国道建設ばっかりやってる人がいて。僕はどこが面白いのかが分かりませんけど,そういうことであれば,もうちょっと建設物を用意してあげたいということで,大量輸送ができて,自分も乗れて,バイクも車も運べるモノレールを用意しました。
 どのように楽しむかということについては,前作と同じです。自分ひとりじゃなく,世界中に自分みたいな人が見えないけれどいっぱいいて,お互いいいねを与え合って……この間接的なつながりを楽しんでください。

 今回,車とバイクをカスタマイズできます。前作のシステムでは,人の車やバイクを使い捨てる形でした。最近,駅とかマンションとかに置いてある,あの赤い自転車(シェアサイクル)の感覚ですね。色を変えたりマークをつけたり,機能を向上させたりできるんです。
 ずっとゲームプレイをしていて自分のバイクがスタックしたり,水中で使えなくなったりすると,無性に腹が立つんです。雪山で落下してもやっぱり嫌です。
 自分のパイクや車をなるべく修理して,マゼラン号に持っていって,ずっと最後まで使えるように,その点は強化しました。前回の使い捨てとは,ちょっと違うシステムになっています。

──PS5用ソフトとして開発するにあたり,PS5ならではの技術はどのように生かされていますか。とくに触覚や聴覚での体験設計に関する例があれば,詳しくお聞きしたいです。

小島監督:
 テクノロジーの水準はどんどん急スピードで上がっていますが,作りかたには影響がないというか,変わっていません。60フレームで動くとか,描画がすごく美しいとか,ロードが速いとかはありますけど。
 その延長線上の最新テクノロジーなので,PSからPS2になったときくらいの変わりかたではないです。裏方的な部分ではけっこう進化していますけど,体感的にはそんなに分からないかもしれないですね。
 振動に関しては新しいテクノロジーがあったんで,びっくりしてもらえると思います。特殊な装置で音を録音して,それを振動に変換するみたいな技術を使っていますので,ちょっと今までとは違うと思います。楽しんでください!

──夜空に浮かぶ監督の星座など,随所に散りばめられた遊びや小ネタは小島監督のタイトルらしい要素だと思いました。これらはディレクションによって生まれたのでしょうか。スタッフたちが率先して取り入れたのでしょうか。

小島監督:
 こういうのは僕が入れています。スタッフは僕が言っても知らん顔しますから(笑)。
 もう星座の話を皆さん,知っているんですか? 温泉で夜空を見上げると,すごい綺麗な星空が見えるんですね。そこでズームを押すと星座が出てきて。ルーちゃんとかいろいろ出てきますから,遊んでみてください。ちょっとドン引きする人もいるかもしれません。

──長年クリエイターとして第一線を走り続けてこられました。「なぜ作り続けるのか」という問いに,今はどんな答えを出されますか。

小島監督:
 トム・クルーズと一緒です。僕の人生はものづくりに捧げてますんで。それが最優先ですし,喜びというか。脳みそが動き続ける限りは,作りたいなと思っています。周りに迷惑をかけるようになったらちょっと考えますけど,今のところ,死ぬまで作りたいとは思っていますね。

──小島監督は映画好きで知られ,ゲームにも映画的な表現を取り入れられていますが,逆にゲームでしか提供できない娯楽性についてどうお考えですか。今回,ゲーム固有の娯楽性を提供するために意識的に行った点があれば教えてください。

小島監督:
 映画を作っているつもりはないです。カットシーンはありますけど,ゲームなんですよ。さっきの星座の話もそうですけど,サムが変な帽子を被れるとか,ゲームでしかできないことを考えるのが基本ですね。
 ただ,やっぱりライティングとかキャラクターの造形,演出や音入れなどは,映画を見て育ったので影響を受けていますけど。「映画を作っているわけではない」というのは意識しています。
 「小島は映画が作りたいんやろ」とかいう人もいますけど,そんなことはなくて,ゲームを作っています。

──ストーリーの語り口がとても分かりやすくなっていると感じました。もちろん複雑な部分もありますが,目的自体がはっきりとしているため,物語をすんなりと楽しめました。意図的に分かりやすさを重視して作られたのでしょうか。

小島監督:
 前作は配達でつないでいくゲームではなかったので,「メタルギア」の1作目もそうですけど,隠れないと死んじゃうようなゲームデザインなんですね。ですから,隠れないとダメなストーリーを作りました。
 今作はもうちょっと広いところに届けたいということで,ストーリーも簡単にしたつもりはないですが,ちょっとシンプルにはしてます。ゲームのシステムのテンポを上げて,プレイヤーの挙動も速くしたので,物を配達しながら分かる程度のストーリーラインで。本当は複雑にしたいんですけどね。

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──小島監督の声を読者に届ける私たちゲームメディアも,いわば配達人です。損傷率0%でお届けしますので,ゲームプレイを楽しみにしているファンに配達するべきメッセージをお聞かせください。

小島監督:
 配達するゲームですが,あんまりそういうことを考えずに,エンターテイメントとして遊んでください。自由度もかなりあるので,戦闘が苦手な方は遠回りしたらいいですし,戦闘をやりたい人は武器とかもたくさん用意されているのでまっすぐ進んでもいいですし。配達だけしたい人,道路を作りたい人はそれをずっとやっていてもいいので,いろんな遊びかたを試してもらって。
 その向こう側のストーリーラインで,つながることとはどういうことかっていうドラマが展開するので,それを(プレイヤーに)持って帰ってもらうと。そして,自分の日常でも“配達員”になっていただければと思います。

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